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存在理由と私と帝②side帝
自身の存在理由とはなにか。
そう問われたならかつての俺は迷わずこう答えるだろう。
『母親の複製品であること』と。
愚かな話だと思うだろうが、母を知る人間は、誰一人としてそれを疑うことがない。
輝ける女王として君臨し続けた母の威光は、今も残像のように多くの人間の心に焼き付いている。
そしてその母そっくりに生まれた俺に彼らが求めたこと。
それが、『ありし日の母の姿をとどめ続ける為のお人形であること』だ。
複製品か意思を持たぬ人形か。
果たして楽な選択はどちらか。
考えた末に俺が選んだのは、自ら母の複製を演じることだった。
女言葉を使い、母の服を身に纏い、甘い臭いを周囲に振り撒く。
醜悪な、ただの複製品。
けれどそれが通用したのも精々が20代の半ばまで。
今となってはその面影を残していても、かつての母とは全くの別物。
彼らにとっての俺の価値は、その時全て無くなった。
ならばその先は自由に生きようと思ってみても。
母の幻影は何処までも俺に付きまとい、俺の姿を眩ませ続けた。
今はまだいいだろう。
だが容姿など、どうせいずれは色褪せる。
その時のことを考えるのが、俺にはとても恐ろしかった。
母の複製であることしか価値のない俺を、果たして誰が愛してくれるのか。
そんな屈折した思いを抱きながら足掻き続けていたある日。
暗い路地裏に微かな朱金の輝きをみた気がして覗きこんでみれば。
そこにいたのは、全身真っ黒な服を着た、痩せた子猫のような少女。
聞こえてきたのは、随分奇妙で、やけに切実な叫び声。
『目指すは無農薬でオーガニック!心優しくてお金もちで美味しい血液を持ってる人!!
そんな人がいたらどんな手を使ってでも口説き落として一生養ってもらうのに………!!』
……美味しい、血液?
それは、一体どういう意味だろう。
よくわからないが、『心優しい』というのはともかくとして、美容に気を使うために食事はオーガニックなものを好み、何一つ不摂生もせずにいる自分の血は、きっと彼女のいう条件に当てはまるのではないだろうかと。
なんとなく、そんな馬鹿なことを思った。
”一生養ってもらう”
その言葉はつまり、条件さえ合えば、この少女が一生、傍にいてくれるということで。
その為の条件が「美味しい血液」ならば、それを維持するための努力くらい、惜しむ理由はなく。
例え歳をとったとしても、血液だけが条件ならば何の問題もない。
そんな気がして。
気が付けばつい、声を掛けていた。
今思えばその時にはもう、俺は彼女に惹かれていたのだろう。
この、子猫のように甘く、気位の高いレジーナに。
※
「……あっ……!!もう……ダメっ………!!」
力なく宙をかく腕を捕まえ、指先にくちづけを送る。
あぁ、早くこの指に印を送らなければ。
自分のものだという、しっかりとした証を。
「細い指ねぇ……。今にも折れちゃいそう」
戯れにその指を口へと運べば、それだけで甘い声を上げて啼く。
可愛い可愛い、俺だけの子猫。
レジーナ。
お前が望むなら、俺は喜んですべてを投げ出そう。
この血も肉も、全て食らっても構わない。
その代わり。
「ーーーーーー俺を愛してくれ」
俺を。
俺だけを。
「……愛してるんだ、レジーナ」
傀儡の皇帝が、たったひとつ求めた輝き。
レジーナ。
お前だけが、俺の存在理由。
そう問われたならかつての俺は迷わずこう答えるだろう。
『母親の複製品であること』と。
愚かな話だと思うだろうが、母を知る人間は、誰一人としてそれを疑うことがない。
輝ける女王として君臨し続けた母の威光は、今も残像のように多くの人間の心に焼き付いている。
そしてその母そっくりに生まれた俺に彼らが求めたこと。
それが、『ありし日の母の姿をとどめ続ける為のお人形であること』だ。
複製品か意思を持たぬ人形か。
果たして楽な選択はどちらか。
考えた末に俺が選んだのは、自ら母の複製を演じることだった。
女言葉を使い、母の服を身に纏い、甘い臭いを周囲に振り撒く。
醜悪な、ただの複製品。
けれどそれが通用したのも精々が20代の半ばまで。
今となってはその面影を残していても、かつての母とは全くの別物。
彼らにとっての俺の価値は、その時全て無くなった。
ならばその先は自由に生きようと思ってみても。
母の幻影は何処までも俺に付きまとい、俺の姿を眩ませ続けた。
今はまだいいだろう。
だが容姿など、どうせいずれは色褪せる。
その時のことを考えるのが、俺にはとても恐ろしかった。
母の複製であることしか価値のない俺を、果たして誰が愛してくれるのか。
そんな屈折した思いを抱きながら足掻き続けていたある日。
暗い路地裏に微かな朱金の輝きをみた気がして覗きこんでみれば。
そこにいたのは、全身真っ黒な服を着た、痩せた子猫のような少女。
聞こえてきたのは、随分奇妙で、やけに切実な叫び声。
『目指すは無農薬でオーガニック!心優しくてお金もちで美味しい血液を持ってる人!!
そんな人がいたらどんな手を使ってでも口説き落として一生養ってもらうのに………!!』
……美味しい、血液?
それは、一体どういう意味だろう。
よくわからないが、『心優しい』というのはともかくとして、美容に気を使うために食事はオーガニックなものを好み、何一つ不摂生もせずにいる自分の血は、きっと彼女のいう条件に当てはまるのではないだろうかと。
なんとなく、そんな馬鹿なことを思った。
”一生養ってもらう”
その言葉はつまり、条件さえ合えば、この少女が一生、傍にいてくれるということで。
その為の条件が「美味しい血液」ならば、それを維持するための努力くらい、惜しむ理由はなく。
例え歳をとったとしても、血液だけが条件ならば何の問題もない。
そんな気がして。
気が付けばつい、声を掛けていた。
今思えばその時にはもう、俺は彼女に惹かれていたのだろう。
この、子猫のように甘く、気位の高いレジーナに。
※
「……あっ……!!もう……ダメっ………!!」
力なく宙をかく腕を捕まえ、指先にくちづけを送る。
あぁ、早くこの指に印を送らなければ。
自分のものだという、しっかりとした証を。
「細い指ねぇ……。今にも折れちゃいそう」
戯れにその指を口へと運べば、それだけで甘い声を上げて啼く。
可愛い可愛い、俺だけの子猫。
レジーナ。
お前が望むなら、俺は喜んですべてを投げ出そう。
この血も肉も、全て食らっても構わない。
その代わり。
「ーーーーーー俺を愛してくれ」
俺を。
俺だけを。
「……愛してるんだ、レジーナ」
傀儡の皇帝が、たったひとつ求めた輝き。
レジーナ。
お前だけが、俺の存在理由。
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