転生勇者の成れの果てー圧倒的力を持つ転生勇者とそれを見守る人たちの話ー

リン

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第5話 やっぱり人生ハードモード

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ーー暗い、どんよりと暗い場所で目を覚ました俺は「ふぅ……。」と、この世界に初めての溜息を吐いた。

目が覚めるとそこはただただ暗い空間で、自分が今どういう状況であるのかを、の俺はハッキリと理解していた。


「(うん……これはホントにのスタートだな。なんて言うか……普通の奴だったら、もう人生諦めるレベルだよな。うん。こんな風にしてーーをこんなゴミの掃き溜めみたいな所に?マジで俺の人生って、転生直後からハードだよな。
 はぁ……とりあえずは、身の回りに危険がないかを確認しますか。それから……魔力は普通にあるし、せめて歩けるレベルくらいまでは身体を調しとくかな。)」


ーー何という運命の嫌がらせだろうか?目を覚ました俺が初めに目にしたのは、目の前にたくさん拡がる……ゴミの山。

そして、そんなゴミの山の上で身の回りのゴミを掻き分けようと手を動かし……そこで自身の手が可愛くプニプニとした小さな幼児の手になっていて、自分が紛うことなき赤子に転生したことを確認した。

いや……正確には転生ではなく、この赤子が飢え死ぬ寸前に、その魂に入り込んだというのが正しいのだろう。なので俺がこの身体に入ることで何とかそのまま生きながらえることが出来たのだが、今も身体に入った俺に、この身体は激しい空腹を訴えているのだ。


「(とりあえずは……10代くらいの身体まで成長することにしますか。あんまり大きくなっても、余計に食べないといけないし、なにより……持ち合わせの服がないしな。この申し訳程度に包み込んだ、俺を捨てる時に包んでいたこのボロい布切れしかな。)」


そうして、ようやくちゃんと手足が動かせる10歳くらいに身体を合わせた俺は、変わった視線から辺りをキョロキョロと見渡す。

周りに落ちている物と言えば……何やらよく分からないガラクタや生ゴミなど、たまに多少のボロい布製品が落ちているくらいだ。


「そうだな……何も無いよりマシってやつかな。あんまり過去の能力の中には生活面に向いてる魔法はないんだよな。でも、今はとにかく寄せ合わせの魔法で……そうだな。『クリーン』で布をキレイにして、『コネクト』でモノとモノを繋ぎ合わせよう。まあ……クリーンもコネクトも元々は治癒系魔法と強化系魔法だけど、魔法ってのはこんな風に使うモノだからな。……そういえば昔、『魔法は想像した奇跡』だって言われたっけ。それなら、魔法によってキレイになった服をイメージして……よし!上手く出来た!」


そして俺は、何とか自身の持つ魔法を組み合わせて、とりあえず自分に合うサイズの服を作り出すことに成功した。

ひとまずは、これを着て食料を手に入れてから、その後のことを考えよう。そう思って、このゴミだらけの場所から抜け出した。


ーーそして俺はこの世界に転生して、初めて見る街の風景なのだが……正直、あまり活気がある光景であるとは言えず、何処となく街の住民たちの表情も暗く感じる。


「うーん、とりあえず……まずは食料を確保しに行くか。この世界に来て間もないから勝手が分からないが……どこかに行けば、食べるアテくらいは探せるかもしれないしな。」


そして、俺はその活気のない街を歩き、どこかに食べる物のアテがないのかを探す。

……しかし、どこを行ってもそのような食べる物のアテを見つけることは出来ず、自身の身体がかつてない程、空腹の限界を迎えていることに気が付いた。


ーーすると、そんな空腹の限界を示すようにして、思ったように身体の自由が利かなくなり……気が付くと足がもつれるように絡んで、その拍子にドスリと転んでしまう。


「(ヤバ……い、予想以上に腹の減りが早過ぎる……。このままでは……転生後に何もすることが出来ず……俺はーー)」


しかし俺は、そんな絶体絶命の状況であっても……どうにかして助かりたいという気持ちよりも、「ああ、やっぱりそうなるのか。」と、どこか諦めの気持ちの方が大きい。

やはり俺は今世でもダメなのか……。そんな絶望にも似た諦めの気持ちが押し寄せる。


「(……もう、いいか……。全部、全部。もう自分の本当の名前だって忘れたし、俺って何の為に生まれてきたのかな。周りに良いように利用されるだけ利用されて、後はそこに俺の居場所がないなんて……あんまりだ。
 でも、俺はもう輪廻の輪から外れた身だ。この後はもう……俺が、きっとこのまま消えるようにしてーー)」


ーーそして、ブラックアウトした視界のはしで、誰かを呼ぶ女の声が聞こえたような気がしたが……おそらく、最後に聞こえた幻聴か何かなのだろう。最後の瞬間まで、自分ではない誰かの声に意識が行くなんて……本当に俺はどうしようもないな。

そんな自分の最期に苦笑しつつ、俺は静かにそっと目を閉じるのだった……。
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