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第7話 庇護下の子供たち
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ーー温かい、仄かに感じるそのぬくもりに、ぼんやりとだが……俺は意識を取り戻した。
ここは一体どこだろう?ぼんやりとした思考の中では、俺はもう死んでしまったはずなんだけど……いまいち今の、温かなものに全身を包まれている感覚が呑み込めない。
「(ここは……天界……?でも……妙に身体の感覚がリアルだし、転生だってもう……。
それなのに感じるこの温かさはどこから?俺はあそこで倒れてから……その後?)」
そこでようやくハッキリとした意識を取り戻した俺は……ハッとして閉じていた目を開け、思わず周りを確認するると、なぜか目の前には見知らぬ女の人とこちらを興味深げに見つめる5・6人の子供たちがいて!?
するとその目の前の女性は、俺が目を覚ましたのを確認したはずなのに……なぜか手に持ったスプーンを「あーん。」と言って俺に近づけて、具材少なめのスープをこちらにズイっと笑顔で運んでくる。
そして、俺はそこで初めて……自分が寝ぼけながらも、目の前の女性によってテーブルに置かれたスープや少しのパンなどを食べさてもらっていたことに気が付いた。
「あの!俺は……むぐ!?んぐ……んぐ。」
「急いで食べなくても大丈夫ですよ。誰もあなたから料理を取り上げませんから。でも、良かったです。ちゃんと目を覚ましてくれて。
先程までの雛鳥の餌付けのような……意識はないのに、お料理を運んだらちゃんと食べてくれる状態も可愛かったんですが、やはり目を見て、お互いにコミュニケーションを取りながらのお食事の方が楽しいですからね。」
などと言って、俺の目の前に座る女性ーーおそらく歳は20歳前後くらいで、おっとりとした性格の銀髪美人が、再び俺の口元にスプーンに乗った……今度は小さなイモ系の具材をいそいそと運んで来て食べさせてくる。
そして、今度はそれに伴い小さな女の子2人が、「あたしもする!」「そ、そのリサもお世話してみたい……。」と言って、俺の周りを2人してバタバタしている。
しかし、そんな2人に待ったをかけたのが、おそらく子供たちの中では年長、大体12歳前後の少女がそれぞれ女の子を俺から引き剥がす。
「こら、ノエルにリサ、あなたたちがお手伝いしてもクロエ先生の邪魔になるだけでしょ。今はクロエ先生がお世話してくれるから、先生に頼まれたら……その時にお手伝いしてあげて。それにあんまり急にお世話しても、男の子の方もビックリしちゃうでしょう?だから、ここはクロエ先生に任せて、あなたたちは食べ終わったお皿を下げてちょうだい。」
「はーい、また後で一緒にお話しするー!」
「う、うん。ノエルちゃんと一緒に……リサも新しい子とお話しをする。ま、また後で……ね?ちょっとの間だけバイバイ。」
そうして、俺の周りでバタバタしていた2人、ノエルとリサは、どちらもベクトルは違うが俺と仲良くするのが目的で、このようにジタバタとお手伝いをせがんでいたらしい。
突然ではあるが、2人の幼女からのアプローチには素直に驚いた。自分も彼女たちと同じように幼い見た目になっているが、こうしてハッキリ仲良くしたいと言われると……正直言って、あまり悪い気はしない。
この姿であることに、それ程の利点を見出してはいなかったが……幼い容姿もそれなりに良いものなのかもしれない。
ーーそれに……この姿であるからこそ、目の前の女性、クロエと呼ばれているこの人に助けられたこともあるので、しばらくの間はこの姿で過ごすことにしようと思う。
現実問題として、かなり自分の魔力が減ってしまっているのを感じる。なので……ある程度の魔力が回復するまでは、ここにいて彼女の世話になろうと思う。
尤もーー彼女がそれを俺に対しても、許してくれればの話ではあるのだが。
「あの……クロエ……さん、俺、行く場所がなくて……。ここに少しの間いても……いいですか?……無理ならすぐ出て行くから。」
「えっ?ああ……もちろん大丈夫ですよ?それも予想してここに連れてきたのですから、そのようにあまり畏まらなくても大丈夫です。
そうですね……。わたしのことは、クロエでもクロエ先生でも大丈夫ですから、あなたの好きなように読んでくれて構いません。
それで……あなたのお名前を教えてもらっていいですか?それと良ければ、今の年齢とかも教えてくれたら嬉しいです!」
すると、驚くべきことに……とは言えないかもしれいが、クロエは殆ど二つ返事で俺の申し出を了承してくれて、内心では……ホッとすると同時に、彼女の良心に付け込んでいる自分自身に少し自己嫌悪してしまう。
このように自分も相手のことを利用しようと考えているから、今までもただ利用されるだけ利用されて捨てられたのかもしれない。
今更ながらにそんなことを、軽く自傷気味になりつつもそのように思った。
しかし……これは困った。俺の名前……俺の名前ってなんだっけ?いつからか「勇者さま!英雄さま!」と呼ばれていたから、自分の本当の名前さえも忘れてしまっている。
そこで俺が咄嗟に思いついた、仮初の自分の新しい名前はーー
「ーーネモ、俺の名前は……ただのネモ。年齢は……そうだな、今日でちょうど10歳になったところかな。改めて、クロエと他の子供たち、俺は色々と世間知らずな所があるけど、仲良くしてくれると……とても嬉しい。」
「はい!よろしくお願いしますね。わたしも含め、子供たち一同あなたのことを歓迎します。……ここにいる限り、あなたはもう1人ではありません。みんながあなたの家族で、ネモくんも今日からわたしたちの家族です!」
そうしてーー俺はこの世界に来て、初めて息を付ける居場所を自分から求め、そしてそれを遂に得ることが出来たのだった。
もしかすると……これまでの人生で、多くを得ると同時に、沢山のものを切り捨てていたのかもしれない。そしてその中にはーー本当に大切にしないといけない、掛けがない人やモノが……得てきたモノ以上に多く混ざっていたのかもしれない。
そう考えるならば、名前も何もかもを無くしてしまった今の俺には、何でもないただのネモ、何にも持たないネモという名前は、皮肉にもとてもお似合いなのかもしれない……。
ここは一体どこだろう?ぼんやりとした思考の中では、俺はもう死んでしまったはずなんだけど……いまいち今の、温かなものに全身を包まれている感覚が呑み込めない。
「(ここは……天界……?でも……妙に身体の感覚がリアルだし、転生だってもう……。
それなのに感じるこの温かさはどこから?俺はあそこで倒れてから……その後?)」
そこでようやくハッキリとした意識を取り戻した俺は……ハッとして閉じていた目を開け、思わず周りを確認するると、なぜか目の前には見知らぬ女の人とこちらを興味深げに見つめる5・6人の子供たちがいて!?
するとその目の前の女性は、俺が目を覚ましたのを確認したはずなのに……なぜか手に持ったスプーンを「あーん。」と言って俺に近づけて、具材少なめのスープをこちらにズイっと笑顔で運んでくる。
そして、俺はそこで初めて……自分が寝ぼけながらも、目の前の女性によってテーブルに置かれたスープや少しのパンなどを食べさてもらっていたことに気が付いた。
「あの!俺は……むぐ!?んぐ……んぐ。」
「急いで食べなくても大丈夫ですよ。誰もあなたから料理を取り上げませんから。でも、良かったです。ちゃんと目を覚ましてくれて。
先程までの雛鳥の餌付けのような……意識はないのに、お料理を運んだらちゃんと食べてくれる状態も可愛かったんですが、やはり目を見て、お互いにコミュニケーションを取りながらのお食事の方が楽しいですからね。」
などと言って、俺の目の前に座る女性ーーおそらく歳は20歳前後くらいで、おっとりとした性格の銀髪美人が、再び俺の口元にスプーンに乗った……今度は小さなイモ系の具材をいそいそと運んで来て食べさせてくる。
そして、今度はそれに伴い小さな女の子2人が、「あたしもする!」「そ、そのリサもお世話してみたい……。」と言って、俺の周りを2人してバタバタしている。
しかし、そんな2人に待ったをかけたのが、おそらく子供たちの中では年長、大体12歳前後の少女がそれぞれ女の子を俺から引き剥がす。
「こら、ノエルにリサ、あなたたちがお手伝いしてもクロエ先生の邪魔になるだけでしょ。今はクロエ先生がお世話してくれるから、先生に頼まれたら……その時にお手伝いしてあげて。それにあんまり急にお世話しても、男の子の方もビックリしちゃうでしょう?だから、ここはクロエ先生に任せて、あなたたちは食べ終わったお皿を下げてちょうだい。」
「はーい、また後で一緒にお話しするー!」
「う、うん。ノエルちゃんと一緒に……リサも新しい子とお話しをする。ま、また後で……ね?ちょっとの間だけバイバイ。」
そうして、俺の周りでバタバタしていた2人、ノエルとリサは、どちらもベクトルは違うが俺と仲良くするのが目的で、このようにジタバタとお手伝いをせがんでいたらしい。
突然ではあるが、2人の幼女からのアプローチには素直に驚いた。自分も彼女たちと同じように幼い見た目になっているが、こうしてハッキリ仲良くしたいと言われると……正直言って、あまり悪い気はしない。
この姿であることに、それ程の利点を見出してはいなかったが……幼い容姿もそれなりに良いものなのかもしれない。
ーーそれに……この姿であるからこそ、目の前の女性、クロエと呼ばれているこの人に助けられたこともあるので、しばらくの間はこの姿で過ごすことにしようと思う。
現実問題として、かなり自分の魔力が減ってしまっているのを感じる。なので……ある程度の魔力が回復するまでは、ここにいて彼女の世話になろうと思う。
尤もーー彼女がそれを俺に対しても、許してくれればの話ではあるのだが。
「あの……クロエ……さん、俺、行く場所がなくて……。ここに少しの間いても……いいですか?……無理ならすぐ出て行くから。」
「えっ?ああ……もちろん大丈夫ですよ?それも予想してここに連れてきたのですから、そのようにあまり畏まらなくても大丈夫です。
そうですね……。わたしのことは、クロエでもクロエ先生でも大丈夫ですから、あなたの好きなように読んでくれて構いません。
それで……あなたのお名前を教えてもらっていいですか?それと良ければ、今の年齢とかも教えてくれたら嬉しいです!」
すると、驚くべきことに……とは言えないかもしれいが、クロエは殆ど二つ返事で俺の申し出を了承してくれて、内心では……ホッとすると同時に、彼女の良心に付け込んでいる自分自身に少し自己嫌悪してしまう。
このように自分も相手のことを利用しようと考えているから、今までもただ利用されるだけ利用されて捨てられたのかもしれない。
今更ながらにそんなことを、軽く自傷気味になりつつもそのように思った。
しかし……これは困った。俺の名前……俺の名前ってなんだっけ?いつからか「勇者さま!英雄さま!」と呼ばれていたから、自分の本当の名前さえも忘れてしまっている。
そこで俺が咄嗟に思いついた、仮初の自分の新しい名前はーー
「ーーネモ、俺の名前は……ただのネモ。年齢は……そうだな、今日でちょうど10歳になったところかな。改めて、クロエと他の子供たち、俺は色々と世間知らずな所があるけど、仲良くしてくれると……とても嬉しい。」
「はい!よろしくお願いしますね。わたしも含め、子供たち一同あなたのことを歓迎します。……ここにいる限り、あなたはもう1人ではありません。みんながあなたの家族で、ネモくんも今日からわたしたちの家族です!」
そうしてーー俺はこの世界に来て、初めて息を付ける居場所を自分から求め、そしてそれを遂に得ることが出来たのだった。
もしかすると……これまでの人生で、多くを得ると同時に、沢山のものを切り捨てていたのかもしれない。そしてその中にはーー本当に大切にしないといけない、掛けがない人やモノが……得てきたモノ以上に多く混ざっていたのかもしれない。
そう考えるならば、名前も何もかもを無くしてしまった今の俺には、何でもないただのネモ、何にも持たないネモという名前は、皮肉にもとてもお似合いなのかもしれない……。
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