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第10話 小さな勇気
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「じゃあ……行ってくる。クロエは今日も教会でのお勤めがあるし、カフカも今日は清掃の手伝いがあるから……俺とリサの2人だけで市場まで買い物してくるよ。」
「ーーちょっと待ってネモ、買い物ならわたしもついて行こうか?いくらネモが10歳にしてはしっかりしているとは言え、いきなり年少のリサと二人だけって言うのは……。」
ーー少し日を重ねて早数日。俺がクロエたち孤児たちとの生活を始めて、早くも数日の月日を経たのだが……何だろう?
どうも、年長組と先生であるクロエ、そのみんなが(特にクロエとアルトが)俺に対して過剰に気配りをしてくるような気がする。
しかし今回に限っては、俺には2人だけで行く明確な目的が存在するので……申し訳ないが彼女には遠慮してもらうことにする。
「いいや、アルトは教会の手伝いとかをしといて欲しい。俺はリサと2人きりで買い物に行きたいからさ。ほら……少しリサとは距離があるから。だから、今日はリサと2人だけで行かせてくれないか?ーー頼むよ。」
「……うん。そういう事情ならわたしが出張るのも野暮ね。じゃあ、リサのことをお願いね?さっきも言ったように、くれぐれも危ないことは避けるようにね。まだ短い付き合いだけど、ネモはしっかりしてるって分かるし、変なことにはならないと思うけど……ネモも危なくなったら迷わず助けを呼んでね?それだけはわたしと約束して……いい?」
「ああ、もちろん。いざとなればリサだけでも逃すようにはするよ。じゃあ……教会のことは頼んだ。遅くても夕刻までには帰る。」
そして、俺は教会を出てリサが準備をして出て来るのを待つが……どうにも、最後にアルトが見せた、どこかもどかしさを感じさせるその表情が不思議と俺の心に残った。
それはどこかもどかしいそうで、それ以上にとても寂しそうにも俺には見えたのだった。
ーーセントレア・ゲート前にてーー
「……ようやく着いた。国王に呼ばれたけど、別に何も変わらない。普通の街並み。」
人族最大の中央都市セントレア・ゲート前にて、ひとりのフードを深く被った女が無感情な様子でぽそりと呟いた。
彼女が見るのはいつも通りの少し活気のない街並み、ここには国王の命令によって呼び戻されたので、一体何が起きたのかと思ったのだが……街並みを見る限り、特に何の違和感を感じることもないし、不穏な気配などもどこからも感じることはなかった。
「(……どうして、わたしはここに呼ばれたの?たしかに少し街の周りに魔物が多いような気はしたけど、わざわざSランク冒険者のわたしを呼ぶ必要ある?こっちに近かったからしょうがなく帰って来たけど……って、ん?あれは……あそこで何か起きてる?)」
そして、溜息混じりの彼女が目の前にあるゲートを抜けて、すぐ近くにある商店へと目を向けるとーーそこには何やら多少の人だかりのようなものが出来ている。
そこで、彼女は少しの興味が湧いて、あまり関わらないつもりではあったが……とりあえず、その人だかりの中にあるものを見ようと、人の輪の間から中の様子を伺うとーー子供?
「おい、ガキども!今持ってる有り金全部こっちに寄越しな!そもなくば、ちょっと痛い目にあうかもしれねーな?あるんだろ?そのちっこい方のガキが持ってる、肉を買うためのまあまあの教会の金がな!」
「……っ、ネ、ネモくん……!」
「大丈夫、リサは俺が守るから心配するな。まさかこんなに早く面倒なことになるとは思ってなかったが……まあ、これくらいなら大したことはない。ーー悪いことは言わないから、ここは引いた方がいいぞ。お前が冒険者なら、こんな盗賊まがいのことを小さな子供に対して行うことのヤバさは分かるだろ?」
「な、なんだと!?このガキ!」
すると、人だかりの中心にいる少年ーーしかし、少年と呼ぶにはまだまだ小さい男の子が幼く小さい女の子を庇うような形で、その前にしっかりと立ち塞がっている。
とは言え……もちろんその男の子の前に立つ男は大の大人で、残念なのだがただの男の子がひとりで勝てる相手ではないだろう。
「(でも……周りの人たちは心配そうに2人を見ているけど、最終的には何もしようとしない。結局は自分に関係ない面倒にはどこまでも他人事。弱ければ、誰かを助けようとさえ思わない。こんなに小さな男の子でさえ後ろの女の子を庇おうとしているのに。)」
彼女はそんなーー当たり前であるが……どこまでも無情な現実に、改めて人族という種族の薄情な側面を垣間見てしまうのだった。
なので、誰も助けないのならここは自分がと、ただ見ていることしか出来ない人たちを押しのけ、ふたりを助けるべく前に進み出ようとしたところーー「……っ!ネモくん!」
「ネ、ネモくんが怖い目に合うくらいなら、お金なんて全部いらない!お金をあげたらお買い物は出来ないけど……それでもいいの。ネモくんに痛いことしないで……ください。お、お金はここに置いていきますから。」
「おお?そっちのチビの方は聞き分けがいいじゃないか。仕方ないから……そのチビに免じて、お前のことは痛めつけないでやるよクソガキ。そのチビには感謝しろよ。」
すると驚いたことに、ネモくんと呼ばれた男の子の後ろで震えていた小さな女の子は、そのネモくんが引き下がらないことによって、目の前の男にひどい目に遭わされると知ると、勇敢にも……震えながらではあるが、ネモくんの前にサッと立ち、お金を全額置いていく代わりにネモくんを助ける選択肢を選んで見せたのだった。
そしてそんな女の子の勇気ある決断に、彼女は考えるよりも先に行動に移っていた。
具体的には、女の子からお金の入った袋を奪い取ろうとした男の背中に、軽い(Sランク冒険者基準での)衝撃を加える魔法を放とうとしてーーえっ!?
完全に男の死角から放った、大の大人でも吹っ飛ぶ衝撃を持つ魔法の発動が、まるで何事もなかったかのように……突如としてかき消えてしまったのだった。
「(魔法が……何らかの力でキャンセルされた?でもそんな魔法、上級魔法の中でも簡単に発動出来るものなんて……。それに、誰がわたしの魔法を止めたというの?)」
そうして、彼女が心の動揺を抑えることが出来ずにいる中、ネモくんと呼ばれていた男の子が立ち去ろうとする男の背中に声を掛けて、何かを男に告げると同時にーーなぜか男は彼女のことを食い入るように見つめたのち、急に青い顔をしたかと思うと、たちまちその場から逃げてしまったのだった……。
「ーーちょっと待ってネモ、買い物ならわたしもついて行こうか?いくらネモが10歳にしてはしっかりしているとは言え、いきなり年少のリサと二人だけって言うのは……。」
ーー少し日を重ねて早数日。俺がクロエたち孤児たちとの生活を始めて、早くも数日の月日を経たのだが……何だろう?
どうも、年長組と先生であるクロエ、そのみんなが(特にクロエとアルトが)俺に対して過剰に気配りをしてくるような気がする。
しかし今回に限っては、俺には2人だけで行く明確な目的が存在するので……申し訳ないが彼女には遠慮してもらうことにする。
「いいや、アルトは教会の手伝いとかをしといて欲しい。俺はリサと2人きりで買い物に行きたいからさ。ほら……少しリサとは距離があるから。だから、今日はリサと2人だけで行かせてくれないか?ーー頼むよ。」
「……うん。そういう事情ならわたしが出張るのも野暮ね。じゃあ、リサのことをお願いね?さっきも言ったように、くれぐれも危ないことは避けるようにね。まだ短い付き合いだけど、ネモはしっかりしてるって分かるし、変なことにはならないと思うけど……ネモも危なくなったら迷わず助けを呼んでね?それだけはわたしと約束して……いい?」
「ああ、もちろん。いざとなればリサだけでも逃すようにはするよ。じゃあ……教会のことは頼んだ。遅くても夕刻までには帰る。」
そして、俺は教会を出てリサが準備をして出て来るのを待つが……どうにも、最後にアルトが見せた、どこかもどかしさを感じさせるその表情が不思議と俺の心に残った。
それはどこかもどかしいそうで、それ以上にとても寂しそうにも俺には見えたのだった。
ーーセントレア・ゲート前にてーー
「……ようやく着いた。国王に呼ばれたけど、別に何も変わらない。普通の街並み。」
人族最大の中央都市セントレア・ゲート前にて、ひとりのフードを深く被った女が無感情な様子でぽそりと呟いた。
彼女が見るのはいつも通りの少し活気のない街並み、ここには国王の命令によって呼び戻されたので、一体何が起きたのかと思ったのだが……街並みを見る限り、特に何の違和感を感じることもないし、不穏な気配などもどこからも感じることはなかった。
「(……どうして、わたしはここに呼ばれたの?たしかに少し街の周りに魔物が多いような気はしたけど、わざわざSランク冒険者のわたしを呼ぶ必要ある?こっちに近かったからしょうがなく帰って来たけど……って、ん?あれは……あそこで何か起きてる?)」
そして、溜息混じりの彼女が目の前にあるゲートを抜けて、すぐ近くにある商店へと目を向けるとーーそこには何やら多少の人だかりのようなものが出来ている。
そこで、彼女は少しの興味が湧いて、あまり関わらないつもりではあったが……とりあえず、その人だかりの中にあるものを見ようと、人の輪の間から中の様子を伺うとーー子供?
「おい、ガキども!今持ってる有り金全部こっちに寄越しな!そもなくば、ちょっと痛い目にあうかもしれねーな?あるんだろ?そのちっこい方のガキが持ってる、肉を買うためのまあまあの教会の金がな!」
「……っ、ネ、ネモくん……!」
「大丈夫、リサは俺が守るから心配するな。まさかこんなに早く面倒なことになるとは思ってなかったが……まあ、これくらいなら大したことはない。ーー悪いことは言わないから、ここは引いた方がいいぞ。お前が冒険者なら、こんな盗賊まがいのことを小さな子供に対して行うことのヤバさは分かるだろ?」
「な、なんだと!?このガキ!」
すると、人だかりの中心にいる少年ーーしかし、少年と呼ぶにはまだまだ小さい男の子が幼く小さい女の子を庇うような形で、その前にしっかりと立ち塞がっている。
とは言え……もちろんその男の子の前に立つ男は大の大人で、残念なのだがただの男の子がひとりで勝てる相手ではないだろう。
「(でも……周りの人たちは心配そうに2人を見ているけど、最終的には何もしようとしない。結局は自分に関係ない面倒にはどこまでも他人事。弱ければ、誰かを助けようとさえ思わない。こんなに小さな男の子でさえ後ろの女の子を庇おうとしているのに。)」
彼女はそんなーー当たり前であるが……どこまでも無情な現実に、改めて人族という種族の薄情な側面を垣間見てしまうのだった。
なので、誰も助けないのならここは自分がと、ただ見ていることしか出来ない人たちを押しのけ、ふたりを助けるべく前に進み出ようとしたところーー「……っ!ネモくん!」
「ネ、ネモくんが怖い目に合うくらいなら、お金なんて全部いらない!お金をあげたらお買い物は出来ないけど……それでもいいの。ネモくんに痛いことしないで……ください。お、お金はここに置いていきますから。」
「おお?そっちのチビの方は聞き分けがいいじゃないか。仕方ないから……そのチビに免じて、お前のことは痛めつけないでやるよクソガキ。そのチビには感謝しろよ。」
すると驚いたことに、ネモくんと呼ばれた男の子の後ろで震えていた小さな女の子は、そのネモくんが引き下がらないことによって、目の前の男にひどい目に遭わされると知ると、勇敢にも……震えながらではあるが、ネモくんの前にサッと立ち、お金を全額置いていく代わりにネモくんを助ける選択肢を選んで見せたのだった。
そしてそんな女の子の勇気ある決断に、彼女は考えるよりも先に行動に移っていた。
具体的には、女の子からお金の入った袋を奪い取ろうとした男の背中に、軽い(Sランク冒険者基準での)衝撃を加える魔法を放とうとしてーーえっ!?
完全に男の死角から放った、大の大人でも吹っ飛ぶ衝撃を持つ魔法の発動が、まるで何事もなかったかのように……突如としてかき消えてしまったのだった。
「(魔法が……何らかの力でキャンセルされた?でもそんな魔法、上級魔法の中でも簡単に発動出来るものなんて……。それに、誰がわたしの魔法を止めたというの?)」
そうして、彼女が心の動揺を抑えることが出来ずにいる中、ネモくんと呼ばれていた男の子が立ち去ろうとする男の背中に声を掛けて、何かを男に告げると同時にーーなぜか男は彼女のことを食い入るように見つめたのち、急に青い顔をしたかと思うと、たちまちその場から逃げてしまったのだった……。
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