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From The Past To The Future
手紙
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心の傷は厄介だ。
目に見えないくせにいつまでもジクジクと痛みや熱となって精神を蝕んでいく。
まさに今の母のように…
ティセから兄(王)がやってくることが決まってから母はどんどん衰弱していく。
お父様から聞いた子供の頃の母の話しは聞くに堪えないものだった。
今の精神状態で母はおじ様の三日間の滞在を耐えられるのだろうか……
トントン
母の部屋のドアをノックする。
きっとこれを見せたら怒られるだろうなぁ…
でも……
母の専従の侍女が扉を開ける。
ベッドで横たわる母の手を握る。
「お母様、フレイヤです。」
握り返す母の手が切なく震える。
「フレイヤ…会いに来てくれたの。学園もあるのに私の執務まで…ごめんね」
母の手を両手で包み込む。
「大丈夫ですよ。お母様の力になれて嬉しいんですよ。」
母の表情が明るくなる。
「フレイヤにそう言ってもらえると安心するわ」
他愛のない話をしながら母の落ち着くのを待つ。
「今日はお母様に叱られるのを覚悟でここにきました。
お母様これを……」
私は侍女から箱を受け取ると母の前に置く。
「これは?」
母は少し考えた後、箱を開ける。
中の手紙の封蝋でそれがティセの王族からのものだとわかったのだろう。
母の顔が険しくなる。
「フレイヤ!!
何故あなたがこれを…」
母が私をきつくにらみつける。
「お父様からティセで受けたあるまじき行為の話しは聞きました。」
母の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「五歳の誕生日の時、偶然見てしまったのです。
執事が私に贈られてきたプレゼントの山からこの手紙と小さな包みを取って隠したのが気になって…だから取り戻したんです。私宛のものだったから…」
私は箱から一枚の手紙を取って読み始める。
「愛しの姪へ
九歳の誕生日おめでとう。
君のお母さんの九歳の事を思い出してみたんだ。君のお母さんが九歳の時に庭に野良猫が迷いこんでね。
二人で皆に内緒で飼うことにしたんだ。
二人して隠れて猫にエサをあげたり毛繕いしてあげたりして……
結局、庭師に見つかってしまって処分されてしまってね。二人して大泣きしたんだ。
君もお母さんに似て動物が好きなのかな?
君と君の家族の一年が幸せでありますように…」
母の手に手紙をわたす。
「おじ様はお母様を愛していらっしゃいます。
どの手紙にもその歳のお母様との思い出が書いてあるんです。
五歳の時、お母様とピクニックに行って蜂に刺されたこと。
六歳の時、ピアノのレッスンが嫌でドレスルームに隠れたこと
・
・
・
十七歳の時、帝国へ嫁いでしまったこと。」
母は声をあげて泣きだした。
「お兄様…私、お兄様の事を……」
私は母の背中を優しくさする。
「お母様、大丈夫です。
お母様にはお父様や公爵家の皆や私と弟妹が側にいます。
だから大丈夫です。」
心の傷は厄介だ。
私にも記憶の底に眠る忌々しい傷がある。
それは何度、転生しても
どんなに幸せになっても消えることはない傷。
時折、記憶の底から這い出てきては心に陰をおとす。
「嫌...助けて……」
真夜中過ぎうなされて目覚める。
「大丈夫…これは夢……
大丈夫…もう……」
部屋に差し込む月明かりに照らされて左手の薬指の指環が光る。
ディアの顔が脳裏に浮かぶ…
「ディア……」
指環に唇をおとす。
堪らなくディアに逢いたくなった。
目に見えないくせにいつまでもジクジクと痛みや熱となって精神を蝕んでいく。
まさに今の母のように…
ティセから兄(王)がやってくることが決まってから母はどんどん衰弱していく。
お父様から聞いた子供の頃の母の話しは聞くに堪えないものだった。
今の精神状態で母はおじ様の三日間の滞在を耐えられるのだろうか……
トントン
母の部屋のドアをノックする。
きっとこれを見せたら怒られるだろうなぁ…
でも……
母の専従の侍女が扉を開ける。
ベッドで横たわる母の手を握る。
「お母様、フレイヤです。」
握り返す母の手が切なく震える。
「フレイヤ…会いに来てくれたの。学園もあるのに私の執務まで…ごめんね」
母の手を両手で包み込む。
「大丈夫ですよ。お母様の力になれて嬉しいんですよ。」
母の表情が明るくなる。
「フレイヤにそう言ってもらえると安心するわ」
他愛のない話をしながら母の落ち着くのを待つ。
「今日はお母様に叱られるのを覚悟でここにきました。
お母様これを……」
私は侍女から箱を受け取ると母の前に置く。
「これは?」
母は少し考えた後、箱を開ける。
中の手紙の封蝋でそれがティセの王族からのものだとわかったのだろう。
母の顔が険しくなる。
「フレイヤ!!
何故あなたがこれを…」
母が私をきつくにらみつける。
「お父様からティセで受けたあるまじき行為の話しは聞きました。」
母の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「五歳の誕生日の時、偶然見てしまったのです。
執事が私に贈られてきたプレゼントの山からこの手紙と小さな包みを取って隠したのが気になって…だから取り戻したんです。私宛のものだったから…」
私は箱から一枚の手紙を取って読み始める。
「愛しの姪へ
九歳の誕生日おめでとう。
君のお母さんの九歳の事を思い出してみたんだ。君のお母さんが九歳の時に庭に野良猫が迷いこんでね。
二人で皆に内緒で飼うことにしたんだ。
二人して隠れて猫にエサをあげたり毛繕いしてあげたりして……
結局、庭師に見つかってしまって処分されてしまってね。二人して大泣きしたんだ。
君もお母さんに似て動物が好きなのかな?
君と君の家族の一年が幸せでありますように…」
母の手に手紙をわたす。
「おじ様はお母様を愛していらっしゃいます。
どの手紙にもその歳のお母様との思い出が書いてあるんです。
五歳の時、お母様とピクニックに行って蜂に刺されたこと。
六歳の時、ピアノのレッスンが嫌でドレスルームに隠れたこと
・
・
・
十七歳の時、帝国へ嫁いでしまったこと。」
母は声をあげて泣きだした。
「お兄様…私、お兄様の事を……」
私は母の背中を優しくさする。
「お母様、大丈夫です。
お母様にはお父様や公爵家の皆や私と弟妹が側にいます。
だから大丈夫です。」
心の傷は厄介だ。
私にも記憶の底に眠る忌々しい傷がある。
それは何度、転生しても
どんなに幸せになっても消えることはない傷。
時折、記憶の底から這い出てきては心に陰をおとす。
「嫌...助けて……」
真夜中過ぎうなされて目覚める。
「大丈夫…これは夢……
大丈夫…もう……」
部屋に差し込む月明かりに照らされて左手の薬指の指環が光る。
ディアの顔が脳裏に浮かぶ…
「ディア……」
指環に唇をおとす。
堪らなくディアに逢いたくなった。
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