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それも愛?これも愛?
小さな恋の物語
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「あなたが病弱だから夫がよそに女をつくるのよ。」
幼い頃の記憶は母の怒号と父親の冷たい視線からはじまる。
そんな私に唯一優しかったのが祖父母だった。
帝国のノーマン領に子供専用の病院があると知ると祖父母はすぐに入院の手続きをとってくれた。
病院には貴族も平民も関係なく、病状によって部屋が割り当てられ、食事のメニューも病状で決められていた。
私の病状は重く、医師や看護師達の休憩所の近くの部屋が割り当てられた。
だからフレイヤ嬢の話しは会う前から知っていた。
私より二つ下の女の子で、医師よりも才女で優しく母親ゆずりの美しさだと…
始めてみた時、天使かと思った。
誰にでも優しく穏やかに接する姿に心を奪われたのだ。
「今日はお嬢様が紙芝居を読んでくださるそうなので、お外へ出てみましょうか?」
私を車椅子に乗せて看護師が中庭へと連れ出す。
四歳の女の子が物語を考え、絵を書き、読み聞かせる…正直、紙芝居には興味すらわかなかった。
ただお嬢様に会えるのが嬉しかった。
でもいざ紙芝居が始まるとすぐに紙芝居の世界に引き込まれてしまった。
それは希望、愛、友情、夢、勇気どれもがキラキラ輝いていて生きる気力をあたえてくれるストーリーとコミカルで可愛らしい動物のキャラクターが皆の心を掴んだからだ。
その日は朝から雨で私の病状は芳しくなかった。
咳が止まらず、息ができない…このまま死んでしまうのでは医師ですらあきらめかけた時、フレイヤ嬢が私の背中優しくさすってくれたのだ。
フレイヤ嬢が手を当てた部分が温かくなる。
「ルビー君、大丈夫すぐに良くなるわ。
ゆっくり、ゆっくり息をするの…鼻から吸って…口ではいて…もう一度、鼻から吸って…口ではいて…」
身体中に不思議な力がみなぎっていく。
小さな小さな手がとても心強く温かく優しく感じた。
半月後、私は無事にティセへと戻ることができた。
後に祖父から教えてもらった。
曾祖父の婚約者が先の王妃で聖女だったと……
曾祖父は婚約者を愛していたけど、聖女は王様と結ばれなくてはならないという掟があり泣く泣く別れたと…
そして王妃様の孫にあたる王女様がノーマン公爵家に嫁ぎ、その娘がフレイヤ嬢だと…
「もしかしたらフレイヤは曾祖母と同じ聖女かも知れないね。
いいかいアルモンド、この事は誰にも言ってはいけないよ。
聖女だと知られたら、この国に殺されてしまうから…絶対に知られては駄目だよ。」
祖父母が亡くなり子供から大人へと変わる頃、ティセの聖女について知ることになる。
何故、祖父があんなに秘密にしたがったのかも…
聖女は「自己犠牲により聖なる力を放つことができる」と……
その言葉通り、先の聖女は死ぬまで血を抜かれ、死んでもなお薬剤として髪の毛すら売られていった。
フレイヤ嬢は知っているのだろうか…自分が聖女かも知れないということを…
私を救ってくれた小さな天使を守らなければ…
でもティセと帝国では接点すらもてなかった。
だから王から国交を深める為、フレイヤ嬢との見合いを言い渡された時は天にも上る気持ちだったのに…
まさかよりによって皇太子の婚約者になってしまうなんて……
「フレイヤ嬢は今、幸せですか?」
私の言葉にすぐに
「はい。」
と応える彼女は私の知っている小さな天使ではなく、一人の女性なんだと思い知らされる。
「アルモンド様は?」
だからフレイヤ嬢にそう聞かれた時、本音がこぼれ落ちてしまった。
「貴女と結ばれなかったことだけ除けば幸せです。」と……
幼い頃の記憶は母の怒号と父親の冷たい視線からはじまる。
そんな私に唯一優しかったのが祖父母だった。
帝国のノーマン領に子供専用の病院があると知ると祖父母はすぐに入院の手続きをとってくれた。
病院には貴族も平民も関係なく、病状によって部屋が割り当てられ、食事のメニューも病状で決められていた。
私の病状は重く、医師や看護師達の休憩所の近くの部屋が割り当てられた。
だからフレイヤ嬢の話しは会う前から知っていた。
私より二つ下の女の子で、医師よりも才女で優しく母親ゆずりの美しさだと…
始めてみた時、天使かと思った。
誰にでも優しく穏やかに接する姿に心を奪われたのだ。
「今日はお嬢様が紙芝居を読んでくださるそうなので、お外へ出てみましょうか?」
私を車椅子に乗せて看護師が中庭へと連れ出す。
四歳の女の子が物語を考え、絵を書き、読み聞かせる…正直、紙芝居には興味すらわかなかった。
ただお嬢様に会えるのが嬉しかった。
でもいざ紙芝居が始まるとすぐに紙芝居の世界に引き込まれてしまった。
それは希望、愛、友情、夢、勇気どれもがキラキラ輝いていて生きる気力をあたえてくれるストーリーとコミカルで可愛らしい動物のキャラクターが皆の心を掴んだからだ。
その日は朝から雨で私の病状は芳しくなかった。
咳が止まらず、息ができない…このまま死んでしまうのでは医師ですらあきらめかけた時、フレイヤ嬢が私の背中優しくさすってくれたのだ。
フレイヤ嬢が手を当てた部分が温かくなる。
「ルビー君、大丈夫すぐに良くなるわ。
ゆっくり、ゆっくり息をするの…鼻から吸って…口ではいて…もう一度、鼻から吸って…口ではいて…」
身体中に不思議な力がみなぎっていく。
小さな小さな手がとても心強く温かく優しく感じた。
半月後、私は無事にティセへと戻ることができた。
後に祖父から教えてもらった。
曾祖父の婚約者が先の王妃で聖女だったと……
曾祖父は婚約者を愛していたけど、聖女は王様と結ばれなくてはならないという掟があり泣く泣く別れたと…
そして王妃様の孫にあたる王女様がノーマン公爵家に嫁ぎ、その娘がフレイヤ嬢だと…
「もしかしたらフレイヤは曾祖母と同じ聖女かも知れないね。
いいかいアルモンド、この事は誰にも言ってはいけないよ。
聖女だと知られたら、この国に殺されてしまうから…絶対に知られては駄目だよ。」
祖父母が亡くなり子供から大人へと変わる頃、ティセの聖女について知ることになる。
何故、祖父があんなに秘密にしたがったのかも…
聖女は「自己犠牲により聖なる力を放つことができる」と……
その言葉通り、先の聖女は死ぬまで血を抜かれ、死んでもなお薬剤として髪の毛すら売られていった。
フレイヤ嬢は知っているのだろうか…自分が聖女かも知れないということを…
私を救ってくれた小さな天使を守らなければ…
でもティセと帝国では接点すらもてなかった。
だから王から国交を深める為、フレイヤ嬢との見合いを言い渡された時は天にも上る気持ちだったのに…
まさかよりによって皇太子の婚約者になってしまうなんて……
「フレイヤ嬢は今、幸せですか?」
私の言葉にすぐに
「はい。」
と応える彼女は私の知っている小さな天使ではなく、一人の女性なんだと思い知らされる。
「アルモンド様は?」
だからフレイヤ嬢にそう聞かれた時、本音がこぼれ落ちてしまった。
「貴女と結ばれなかったことだけ除けば幸せです。」と……
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