GODS:黒光の章 ― 神々に支配された世界で、選ばれし俺は黒き革命を起こす ―

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第2巻:NORK

第21章:陶酔の日

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勝利は慰めとなるかもしれない…あるいはより深い傷となるかもしれない。

誰かが戦場で倒れるとき、それは必ずしも身体への直接的な打撃によるものではない。時々、痛いのは流された血ではなく、その崩壊のきっかけとなるものである。壊れたプライド。打ち砕かれた希望。いかなる叫びよりも大きく響く沈黙。

今日、スタンドからはエデン・ヨミの名前が叫ばれる。祝われました。怖かった。感心した。しかし、その戦闘で鍛えられた顔の裏、痛みを前にしてもひるまない穏やかな眼差しの裏には、自分が勝ったのかどうかわからない、あるいは単にまだ負けていないだけなのかどうかわからない若者がいます。

世界は恐怖と興味が入り混じった気持ちで見守っている。結局のところ、エデンとは何でしょうか?ヒーローになる予感?変装したモンスター?それとも、彼に救いを見出す人々の期待に流された殉教者でしょうか?

暗い隅で、誰かが彼を黙って見守っている。笑い声が響くバーで、誰かが勝利を祝ってグラスを掲げている。そしてアスガルドの奥深くでは…他の勢力がすでに動き始めています。

なぜなら、この高揚感の後の日々で、戦争の残響がより鮮明になるからだ。

そして誰もがエデンを再び復活させることを望んでいるわけではない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

闘技場の観客席には、まだ先ほどの戦いの余韻が響き渡っていた。

医師たちが急いでフィールドに駆け込む中、レイは倒れたまま微かに呼吸し、その身体は疲労で小刻みに震えていた。

観客たちは不思議な沈黙に包まれていた。拍手すべきか、静かに敬意を表すべきか分からずにいるようだった。



その空気を破ったのは、オーディンの雷鳴のような声だった。



「インスティテュート・ゴッズ……第二試合の勝者だ。エデン・ヨミが勝利した!」



その瞬間、ゴッズの生徒たちは歓声を上げて爆発した。

互いに抱き合い、涙を流す者、地面に崩れ落ちて安堵する者……皆が一つの勝利に沸いていた。



高塔の上から、その光景を黙って見下ろすヨウヘイ。

腕を組み、驚きと苛立ちが入り混じった表情で、唇を噛みながら呟いた。



「……ありえない……」



その一方、ゼフは信じられないような笑みを浮かべて呟く。



「おいおい……マジかよ。とんでもねえ悪魔だな、エデン・ヨミ……」



さらに遠く、スタンドの陰に身を潜めた白衣の男が一人、無言で戦場を見つめていた。

その顔は影に隠れていたが、微かに呟いた言葉には、不気味なほどの感情が滲んでいた。



「……悪くないな」



―――――



その頃、エデンは静かに控室へと向かう通路を歩いていた。

勝利の熱気など、もうそこにはなかった。ただ、冷たい空気と、疲労の重さだけが彼の身体を支配していた。



「クソっ……」

彼はふらつきながら思った。

「……立っているのがやっとだ……」



乾いた咳が響き、彼は自分の手を見る。そこには鮮やかな赤。血。

足が止まり、そして次の瞬間――



「……冗談だろ……?」



彼の膝が崩れ落ちた。控室のベンチにたどり着く直前、意識を失い、床へと倒れ込んだ。



―――――



一方、ノルクの控室には、まるで戦の敗北直後のような重い空気が満ちていた。

ナイは怒りに満ちた顔で室内を行ったり来たりし、やがて怒鳴り声を上げた。



「ふざけんなよ! あんな負け犬にどうして負けたんだよッ!?」



レイは傷つき、虚ろな目で顔を上げた。



「すまない……想像以上に、強かった。あいつは……完全に悪魔だった。あの目は……」



だがナイは聞く耳を持たなかった。

電気のような魔力を掌に集め、雷光がほとばしる――

その瞬間、肩に置かれた重みが、彼の動きを止めた。



「子供じみた真似はやめろ、ナイ」



オーディンの冷たい視線が、ナイを貫いた。



「……じいちゃん」



「我々全員が……エデン・ヨミを甘く見ていた。私も、お前も、全員だ」



ナイは悔しさを堪えきれず、目を伏せた。



「……分かってる。もう、失望させたりしない」



「言葉ではなく、結果で示せ」

オーディンは冷たく言い放ち、その場を後にした。

ナイも無言のまま、それに続いた。



レイは一人残され、深く息を吸い込んで、震える声で呟いた。



「……完敗だった……ごめんよ、母さん……。僕は……最後まで、誇りになれなかった……」



―――――



別の通路。アフロディーテとシュウが息を切らして走る。

そして、倒れているエデンを見つけると、彼女はすぐに膝をついた。



「エデン! エデン!」

強く揺さぶりながら叫ぶ。



ゆっくりと、彼の目が開いた。



「……ん? 何だ……?」



「よかった……無事で……」

アフロディーテは涙混じりに微笑んだ。



「……勝ったのか……?」



「うん。ちゃんと勝ったわ」



「……よかった……」

そう呟いた直後、再び彼は意識を手放した。



「医者を呼んでくる!」

シュウが駆け寄り、立ち上がろうとするが、



「待って」

アフロディーテが突然止めた。



「え?」



「エデンの……傷が、ない……?」



シュウは困惑する。



「……え? でも……あれだけの怪我を……」



二人は言葉を失った。

エデンの身体は、まるで戦っていなかったかのように、どこにも傷がなかった。



「どういうことだ……」

シュウが呆然と呟く。



アフロディーテは震えながら目を見開いた。



「これは……尋常じゃない。たとえ再生能力が高くても、こんなのは……シュンのそれをはるかに超えてる……百倍はある……」



「じゃあ……どうすれば……?」



「医者は呼ぶべきよ。まだ、彼の身体の仕組みは分かっていない。何も断言はできない」



「……わかった!」



そう言って走り去るシュウを見送りながら、アフロディーテは眠るエデンの顔を見つめ続けていた。

その胸の中には、無数の疑問が渦巻いていた。



『この力は……誰のもの? 悪魔のもの? エデン自身のもの? それとも……両方……?』

『そして……この力は、どこまで届くの……?』



勝利の余韻がまだコロシアムの通路に響いていた。だが、そのすべてが歓喜に満ちたものではなかった。

観客の熱狂から離れた裏通路を、ナイが無言で歩いていた。だが、その表情には苛立ちがにじんでいた。

先ほどオーディンに言われた言葉が、重く彼の背にのしかかっていた。



やがて彼は、古代の装飾が施された柱にもたれかかっていたトールと出くわした。

雷神は、すぐに皮肉めいた笑みを浮かべる。



「おやおや……どうやら、思い通りにはいかなかったようだな、我が息子よ」



ナイは苛立ちを隠そうともせず、冷たい視線を返した。



「気にする必要はない。俺の戦いに“波乱”なんてない」



トールは腕を組み、笑いをこらえるように口角を上げた。



「味方が負けた直後とは思えないほどの自信だな」



「当然だ。俺が負けるわけがない」

ナイの瞳は燃えるように赤く光っていた。



だが、トールの次の言葉が、ナイの誇りをあっさり刺し貫いた。



「なるほどな……それにしても、フラストレーションにまみれたお前の顔は初めて見たぞ。よっぽど堪えてるようだ」



「黙れッ!」

ナイが怒りに任せて叫んだその瞬間、空気が一変した。



空間がきしみ、重圧が通路を包み込む。

古の神の威圧。トールの視線が、稲妻のようにナイを貫いた。



「親に向かってその口の利き方はないだろう、クソガキが」



ナイは思わず一歩下がり、その場に膝をついた。

全身が震え、呼吸すらままならない。まるで天から世界の重みを背負わされたかのように。



(クソっ……息が……こいつ……怪物だ……!)



限界寸前で――その威圧が、まるで幻だったかのようにすっと消えた。

そして、トールが背を向けながら口を開いた。



「俺が“良い父親”だなんて言う気はさらさらない」

「結局、俺は神だ。神は子を育てるように造られていない」



足音を響かせながら、トールはゆっくりと歩き去っていく。

そして、影に消える直前に、肩越しに言葉を残した。



「……健闘を祈るぜ、息子よ」



ナイはまだ地面に膝をついたまま、拳を強く握りしめていた。

やがて顔を上げたその瞳には、怒りではなく――



世界に己の存在を刻みつけたいという、燃えるような衝動が宿っていた。



―――――



アスガルドの屋根を、ゆっくりと月が照らしていた。

戦いの熱狂が残る街の片隅。

その喧騒から遠く離れた医務室には、張り詰めた静寂が流れていた。



エデンはベッドに横たわり、意識を失っていた。

呼吸は浅く、しかし安定しており、表情は静かに眠る者そのものだった。



シュウは壁にもたれて立ち、アフロディーテは無言で医師の動作を見守っていた。

診察を終えた医師は、困惑の表情で眼鏡を押し上げながら言った。



「驚きました……外傷も内傷も、まったく見当たりません。あの戦いを目の当たりにした私としては……信じがたいですね」



アフロディーテは眉をひそめ、腕を組んだ。



「何か原因は考えられる?」



「生まれつき異常なまでの再生能力を持っているとしか……しかし、それでもこれは規格外です」

「この回復速度は、どんな上級の半神にも見られません」



シュウは思わずアフロディーテを見た。



「つまり……エデンは、自分で治ったのか?」



アフロディーテはすぐには答えず、ただエデンの顔を見つめ続けた。



「ええ……でも、“普通の回復”ではない」

「これはもう“再生”じゃない。常識を超えてる……シュンの再生能力を100倍にしても、到底追いつかない」



医師はうなずきながらも、目の驚きは消えていなかった。



「何かあったら、すぐに呼んでください。とにかく、今は絶対安静が必要です」



「感謝するわ、先生」



医師が部屋を出たあと、静寂が戻った。



その沈黙を破ったのは、シュウだった。



「結局……エデンって、何者なんだ?」



アフロディーテはしばらく黙っていた。

やがて、目を細めて言った。



「それが一番、怖いの」

「記録上、彼はゲンの孫のはず。でも、ゲンには子がいた記録が残っていない」

「両親も不明。なのに、あの力……」



シュウの目が細まる。



「血筋じゃない……ってことか?」



アフロディーテは静かに窓の外を見つめた。

月明かりが、穏やかに部屋を照らしていたが――彼女の目には影しか映っていなかった。



「たぶん……“運命”の方かもしれない」



再び視線をエデンへ。

その顔は安らかだった。だが、その安らぎはどこか不気味で、静かすぎる。



「もしそれが本当なら……」

シュウは小さく呟いた。

「……あいつは何のために生まれてきたんだ?」



アフロディーテは答えなかった。

その問いは、夜の静けさと共に、答えのないまま宙に残された。



北欧の酒場は、温もりと喧騒に包まれていた。

粗削りな木のテーブル、古のヴァイキングたちの歌声、そこに佇むバルドルの姿は、静けさそのものだった。

彼は一杯のミードを傍らに置きながら、急ぐこともなく静かに待っていた。



やがて扉が開き、その場の空気が凍りついた。

アフロディーテが現れたのだ。

相変わらずの輝きを放ちながら、彼女は場にいた者たちの心を奪っていく。

それに本人は、まるで気づいていないかのようだった。



「遅れてごめんね」

彼女は席へと向かいながら言った。



「気にしないで」

バルドルは馴染みある笑みを浮かべた。

「ただ、また君が場を黙らせたようだ。いつも通りにね」



「また大げさなことを」

アフロディーテの瞳には、柔らかな茶目っ気が宿っていた。



バルドルが演奏者に合図を送り、止まっていた音楽が再び酒場を満たす。

女神は対面に腰を下ろし、彼女のために注がれた一杯を手に取った。



「不思議ね」

そう呟きながらミードを口にする。

「こうして穏やかに話すのは、本当に久しぶり」



「最後にこうしたのは……大戦のあとだったかな」

「世の中は随分と変わった。全部が良い方向とは限らないけど」



アフロディーテはうなずき、しばし沈黙が二人の間に馴染む。

まるで古い友人のように、静かに。



「バルドル……」

やがて彼女は真剣な声音で切り出した。

「エデンのことを話したい」



「エデン・ヨミ?」

バルドルが眉を上げる。

「興味深いな。何かあったのか?」



「彼が……怖いの」

女神は、遠慮なく本音を口にした。



バルドルはふっと笑った。



「僕もだよ」



「えっ? あなたも?」



「当然さ。少しでも魔力の感知ができる者なら、彼が持つ“危険性”を感じ取れるだろう」

「彼のオーラは、死を伝える。それに、血を求めるような渇きもね。でも――」



「でも?」

アフロディーテが問い返す。



「――彼の中には、愛もある」

バルドルの声には、穏やかな確信があった。

「エデンは、野心でも復讐でもなく、守るために戦っている。たとえそれが、彼を怪物に変えてしまっても」



アフロディーテは言葉を飲み込んだ。



「今日の彼の行動を、正しいと思う?」

そう尋ねた。



「正しかったかは分からない」

「だが、意味はあった。愛から生まれた行為は、善悪の枠を超えることがある。君なら理解できるだろう、愛の女神」



女神は、どこか寂しげに笑った。



「そうね……私たちは、彼にあまりに多くを背負わせている。神たちも、仲間たちも……あなたも」



「それでも、彼は文句一つ言わず、それを背負い続けている」

「……でも、もう一人で抱えきれなくなる日は近い気がするよ」



アフロディーテは杯を持ち上げた。



「皆に一杯を。今夜は……まだ戦える者たちに、祝福を」



酒場は歓声と笑い声で満ちた。

ジョッキのぶつかり合う音が響き渡り、陽気な音楽が空間を彩る。



だがその喧騒のなかで、バルドルの瞳には、どこか陰りがあった。



「……羨ましいな」

彼は、ぽつりと呟く。



その背後――

誰にも気づかれぬほど密やかに、黒き影がゆらめいていた。

まるで、遥か昔から彼を見つめ続けている何かが、いまもそこに潜んでいるかのように。



夜は、欺くような静けさとともにアスガルドを包み込んでいた。

冷気は骨の髄まで染み渡り、城壁に立つ哨兵たちは退屈と寒さに耐えながら、眠気と闘っていた。



「くそっ、マジで凍えそうだ」

一人の衛兵が手を擦り合わせながらぼやいた。



「文句ばっか言うな」

もう一人がうんざりしたように応じる。

「巡回も戦闘もなくて楽な任務じゃねえか」



「そうだけどよ…退屈すぎるんだよな、これ」



その男は不満を漏らしながら、温めたワインを口にしようと振り返った。

だが、その唇に酒が届くことはなかった。

彼の首は音もなく切断され、頭部は転がり落ち、胴体はしばらく立ったまま、そしてゆっくりと雪に崩れ落ちた。



「な、なんだと…」

隣の衛兵が声を漏らす暇もなく、背後から闇の中から現れた影に喉を裂かれた。

手は通信機に伸ばそうとしたが、声はもう出なかった。

血が勢いよく噴き出し、最後に見たものは、歪んだ笑みだった。



「無駄だよ」

しゃがれた声が耳元でささやく。

「叫ぶ隙なんて与えない。ほら、静かに眠れ」



「もう少し効率的にやれよ」

別の影が現れ、冷えた鉄のような声を放つ。



「お前にはわかんねえだろ。殺しってのは“作業”じゃねえ。芸術だ」

先に話した男は、苛立ちを隠さず返す。



三人目の姿が、影からゆっくりと浮かび上がった。

その歩みは静かだが、足音のたびに空気が凍てつくような気配が広がっていく。



「侵入完了」

その男が低く告げた。

「そっちは?」



「とっくに終わった」

無関心な口調で三人目が返す。



「子供の遊びみたいなもんだな」

そう言い放つと、カメラは引きの構図へと移行する。

そこには、無数の切り刻まれた死体が、壊れた人形のように壁の上に散乱していた。



フードを深く被ったまま、未知の男・24号は手すりの上に立ち、その惨状を見下ろす。

その表情は見えない。だが、そこに宿る感情は、畏怖と侮蔑が入り混じった奇妙なものだった。



「正直、ゾッとするな…」

24号がぽつりと呟く。



「お前が弱いからだ」

25号が腕を組んだまま、感情なく返す。



「黙れよ。あいつは…伝説の戦士の血を引いてるってのに」

24号は舌打ちしながら言い返す。



「言い訳ばかりだ」

25号の声は冷たく、揺るがなかった。



そのやり取りの背後で、三人目――26号が、新たに築かれた死体の山に腰を下ろしていた。

彼の存在に言葉は要らない。

ただその輪郭だけで、見る者の魂を凍らせるのに十分だった。

月を背に、その輪郭が浮かび上がる。



静寂が夜を支配する。



そして――

ついに、26号が口を開く。



「待ってろ、エデン……迎えに行く」
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