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夜の帝王とオカマバー。
●2006/01/30(月) オカマバーの夜①
先週末、いわゆるオカマバーに連れて行かれた。けれど、
それで彼との関係がどうにかなった、なんてことはない。
というわけで、今日はオカマバーの話。
若手女子数人が、後学のためにと
夜の街のスペシャリストに頼み込んだ、のはいいが。
なんでオレまで?
それは、夜の帝王が僕の新人時代のメンターだから。
「別に、獲って食われたりはしない」って、アナタそんな。
行きつけのオカマバー、だけどオレはオンナ専門だ、って。
女の子は、こういうのが好きだから、
レパートリーに入れとくもんだよ、って。
アンタ、そこでニヤッとしない、ニヤッと。
というわけで、まずは雰囲気のいい和風居酒屋で食事。
しこたま食べて飲んで、23時を過ぎた頃にいざ目的地へ。
さすがに帝王、常連らしい。
扉を開け、誰かが振り返った途端、
「あら~、○○ちゃ~ん、今日はまたカワイイ子たくさん連れて~」
黄色いけど、太い声。
テレビでは見たことがある。街中で、それと思しき人とすれ違ったこともある。
けれど間近で実物を、しかも接近してくるのを見るのはまた格別だ。
それまでキャッキャッと騒いでいた女子達も、咄嗟に反応できない。
でも、彼女(彼?)たちは、こういう反応に慣れているんだろう。
「そんなとこで固まってないで、ホラこっち来なさいな」
しなしなと、僕らを奥へと誘導する。
「アラ、カレシ私の好みだわ」
とか言われても、本当の心はそこになく、
営業用の、職業として鍛錬されたスキルがあるだけ。
だから、どうということはなく。僕も営業スマイルを返す。
水割りが出され、ちょっと乾き物が出て、場が落ち着く。
改めて店内を見回すと、そこには2種類のオカマがいると気づいた。
・男性の原形を残している人。女装してる男だと分かる。
・完全に女性にしか見えない人。ややデカイ女、というくらい。
ドレスの胸元はシリコンで、スネ毛はエステとホルモン注射。
取るものも取って、まあスラリとしたスレンダー美人。
いつの間にか女子たちも復活し、どこの化粧品を使ってるとか、
ホルモン注射を自分も打ちたいとか、女同士の会話で盛況。
ある種、芸能人に会った感覚に近いんだろう。
滅多に実物に遭遇する機会はない、だから、千載一遇のチャンスを逃すまい。
彼女達は、止め処もなく会話を続けていた。
僕の元メンターは、ママと思しき人と何やら話しこんでいる。
(ママというのは、美川憲一を小奇麗にしたような人だ)
なんとなく居場所がない。
でも居心地が悪いのではなく、僕はすっぽりエアポケットの住人。
それはそれで心地よく、ざわめく周囲をなんとなく見ていた。
「退屈してるみたいですね」
声をかけられ振り返ると、キレイ系OLが微笑みかけていた。
言うまでもなく、彼女であり彼であるオカマ嬢だ。
後でもらった名刺によると、彼女の名前はメグさん。
(源氏名だから公表してもいいだろう)
本当の名前に、「恵」という文字が含まれているから、
その源氏名をつけたのだと笑っていた。
これがまた、10人の女性を並べ、
この中で誰が一番キレイかと10人の男に問えば、
10人が10人とも彼女を指差す、というほどの美形。
しかし。あぁ、しかし。
その喉仏なんですよ。
●2006/01/31(火) オカマバーの夜②
メグさんは、なんと僕と同じ27歳。
「女性に歳を聞くのはヤボよ」なんてちょっと睨まれたが、
小さな声で教えてくれた。
27と聞いて驚いたものの、思っていたより若いのか、老けているのか。
よく考えてみると、そのどちらでもない。
年齢を感じさせないというか、
年齢というものがこの人に存在すること自体、想像できないというか。
きっと、いくつと答えられても驚いたと思う。
成り行きで、二人だけの会話。
誰かに聞かれる心配はないから、いろいろ個人的なことを聞いてしまった。
彼女にしてみれば、客に聞かれることランキングの
上位項目ばかりだったかもしれないけど。
現在彼女は、ある男性と同居中。
その男性が、彼女を「女」として見ているのか、
「男」として見ているのか、「その中間」として見ているのか。
(ちなみに彼女は豊胸手術だけでなく、ナニの切除もしている)
それは、彼女にも分からない。
「性別なんて、どうでもいいんじゃない?」
精神的には女、戸籍上は男、肉体的にはその中間。
すべての性を持ち合わせる彼女は、穏やかに微笑する。
なぜ、男であることを捨てたのか。
子供のころから、好きになるのは男の子。
最初の頃は、友達だから好きなんだと思っていた。
だから小学生の間は、自分の中に「女」がいることには気づかなかった。
変わったのは、中学に通うようになってから。
そのころ一番好きだった友人に、彼女ができた。
ひたすら羨む仲間の中で、彼女だけは違った。
仲間達の羨望は、彼女ができた「彼」に向けられている。
彼女の羨望は、彼を恋人にできた「彼女」に向けられていた。
それが、自分の中の、本当の自分に気づいたきっかけだった。
仲間内では、決して触れることのない部分にまで、触れることが許された「彼女」。
彼の両親も知ることのない、彼の姿を知る権利を得た「彼女」。
それが許せないのは、自分がそれを求めているから。
さすがに彼女も、最初は戸惑ったそうだ。
それが「普通でない」ことは知っていたし、
そんな自分が受け入れられることは、ほとんどないことも理解できた。
本気で自分がそうなのか、何度も自分を疑って、
そうじゃないんだと思い込むことに、成功しかけた事もあった。
「ダイエットと同じで、リバウンドするのよ」
普通らしくあろうと、無理して女の子と付き合うこともあった。
人並みに振る舞おうとアダルトビデオを見て、
彼女を興奮させるものが、友人たちとはやはり違うことを発見させられもした。
「どんなに頑張ってもダメなら、受け入れるしかないのよね」
そうして、彼女は受け入れた。
先週末、いわゆるオカマバーに連れて行かれた。けれど、
それで彼との関係がどうにかなった、なんてことはない。
というわけで、今日はオカマバーの話。
若手女子数人が、後学のためにと
夜の街のスペシャリストに頼み込んだ、のはいいが。
なんでオレまで?
それは、夜の帝王が僕の新人時代のメンターだから。
「別に、獲って食われたりはしない」って、アナタそんな。
行きつけのオカマバー、だけどオレはオンナ専門だ、って。
女の子は、こういうのが好きだから、
レパートリーに入れとくもんだよ、って。
アンタ、そこでニヤッとしない、ニヤッと。
というわけで、まずは雰囲気のいい和風居酒屋で食事。
しこたま食べて飲んで、23時を過ぎた頃にいざ目的地へ。
さすがに帝王、常連らしい。
扉を開け、誰かが振り返った途端、
「あら~、○○ちゃ~ん、今日はまたカワイイ子たくさん連れて~」
黄色いけど、太い声。
テレビでは見たことがある。街中で、それと思しき人とすれ違ったこともある。
けれど間近で実物を、しかも接近してくるのを見るのはまた格別だ。
それまでキャッキャッと騒いでいた女子達も、咄嗟に反応できない。
でも、彼女(彼?)たちは、こういう反応に慣れているんだろう。
「そんなとこで固まってないで、ホラこっち来なさいな」
しなしなと、僕らを奥へと誘導する。
「アラ、カレシ私の好みだわ」
とか言われても、本当の心はそこになく、
営業用の、職業として鍛錬されたスキルがあるだけ。
だから、どうということはなく。僕も営業スマイルを返す。
水割りが出され、ちょっと乾き物が出て、場が落ち着く。
改めて店内を見回すと、そこには2種類のオカマがいると気づいた。
・男性の原形を残している人。女装してる男だと分かる。
・完全に女性にしか見えない人。ややデカイ女、というくらい。
ドレスの胸元はシリコンで、スネ毛はエステとホルモン注射。
取るものも取って、まあスラリとしたスレンダー美人。
いつの間にか女子たちも復活し、どこの化粧品を使ってるとか、
ホルモン注射を自分も打ちたいとか、女同士の会話で盛況。
ある種、芸能人に会った感覚に近いんだろう。
滅多に実物に遭遇する機会はない、だから、千載一遇のチャンスを逃すまい。
彼女達は、止め処もなく会話を続けていた。
僕の元メンターは、ママと思しき人と何やら話しこんでいる。
(ママというのは、美川憲一を小奇麗にしたような人だ)
なんとなく居場所がない。
でも居心地が悪いのではなく、僕はすっぽりエアポケットの住人。
それはそれで心地よく、ざわめく周囲をなんとなく見ていた。
「退屈してるみたいですね」
声をかけられ振り返ると、キレイ系OLが微笑みかけていた。
言うまでもなく、彼女であり彼であるオカマ嬢だ。
後でもらった名刺によると、彼女の名前はメグさん。
(源氏名だから公表してもいいだろう)
本当の名前に、「恵」という文字が含まれているから、
その源氏名をつけたのだと笑っていた。
これがまた、10人の女性を並べ、
この中で誰が一番キレイかと10人の男に問えば、
10人が10人とも彼女を指差す、というほどの美形。
しかし。あぁ、しかし。
その喉仏なんですよ。
●2006/01/31(火) オカマバーの夜②
メグさんは、なんと僕と同じ27歳。
「女性に歳を聞くのはヤボよ」なんてちょっと睨まれたが、
小さな声で教えてくれた。
27と聞いて驚いたものの、思っていたより若いのか、老けているのか。
よく考えてみると、そのどちらでもない。
年齢を感じさせないというか、
年齢というものがこの人に存在すること自体、想像できないというか。
きっと、いくつと答えられても驚いたと思う。
成り行きで、二人だけの会話。
誰かに聞かれる心配はないから、いろいろ個人的なことを聞いてしまった。
彼女にしてみれば、客に聞かれることランキングの
上位項目ばかりだったかもしれないけど。
現在彼女は、ある男性と同居中。
その男性が、彼女を「女」として見ているのか、
「男」として見ているのか、「その中間」として見ているのか。
(ちなみに彼女は豊胸手術だけでなく、ナニの切除もしている)
それは、彼女にも分からない。
「性別なんて、どうでもいいんじゃない?」
精神的には女、戸籍上は男、肉体的にはその中間。
すべての性を持ち合わせる彼女は、穏やかに微笑する。
なぜ、男であることを捨てたのか。
子供のころから、好きになるのは男の子。
最初の頃は、友達だから好きなんだと思っていた。
だから小学生の間は、自分の中に「女」がいることには気づかなかった。
変わったのは、中学に通うようになってから。
そのころ一番好きだった友人に、彼女ができた。
ひたすら羨む仲間の中で、彼女だけは違った。
仲間達の羨望は、彼女ができた「彼」に向けられている。
彼女の羨望は、彼を恋人にできた「彼女」に向けられていた。
それが、自分の中の、本当の自分に気づいたきっかけだった。
仲間内では、決して触れることのない部分にまで、触れることが許された「彼女」。
彼の両親も知ることのない、彼の姿を知る権利を得た「彼女」。
それが許せないのは、自分がそれを求めているから。
さすがに彼女も、最初は戸惑ったそうだ。
それが「普通でない」ことは知っていたし、
そんな自分が受け入れられることは、ほとんどないことも理解できた。
本気で自分がそうなのか、何度も自分を疑って、
そうじゃないんだと思い込むことに、成功しかけた事もあった。
「ダイエットと同じで、リバウンドするのよ」
普通らしくあろうと、無理して女の子と付き合うこともあった。
人並みに振る舞おうとアダルトビデオを見て、
彼女を興奮させるものが、友人たちとはやはり違うことを発見させられもした。
「どんなに頑張ってもダメなら、受け入れるしかないのよね」
そうして、彼女は受け入れた。
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漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
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休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
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