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番外 ※ 時間軸はランダムです。結婚後の話もあります。
ホワイトデーSS 1 ~ 甘いのはどっち? ~
しおりを挟む「・・・本日の報告は以上となります。これ以降は業務外の・・・ご相談を申し上げたいのですが、よろしいでしょうか」
「ん?ああ、構わないが」
この様な始まりから、先日の“バレンタインデー”の対となる“ホワイトデー”について、ディーノと話し合う事になった。
まず、わたしが義姉上からご教授された内容と、ディーノの知るところを纏めると概ねこの様になった。
・ホワイトデーの贈り物は、バレンタインデーに受け取った品の3倍以上の価値がある物である事。(本命に限るとか・・・どうやら相手との円滑な関係を保つ為に“義理”という物もあるそうだ)
・相手が喜ぶのは大前提であるが、贈る品は物に限らない事。(これは、バレンタインも同様だな。伊織からは、贈り物とそれ以上のものを受け取った。大変に喜ばしく・・・嬉しかった)
・・・ふむ。
伊織は普段から高価な物は勿論、何かを欲しがると云う事がほぼ皆無だ。
“ここには十分過ぎるほどに揃っているから、必要な物も欲しい物も無い”のだと、可愛い伊織への贈り物をと欲しいモノを尋ねれば、ふわりと笑ってそう云うのだ。
そして、たまの願いが、故郷の料理を作る為の食材くらいで、それも私に作ってくれるのだ。そして、その心の籠った食事を共にしながら、互いに食べさせ合う時の満ち足りた想いと、伊織の愛おしさは何にも代えようも無く。
そのような伊織の、なんといじらしく可愛い事と云ったら・・・愛おしくて堪らぬのだ。
伊織は私の、だ。何処にも誰にもやらぬ。
・・・む、話が反れた。
その他と云えば、“一緒に散歩がしたい”と伊織から私の手を握って、はにかみながら誘ってくれると云う、私にとって褒美でしかない事や、閨で睦み合い快楽に気をやる寸前に艶やかに色気を纏った伊織が・・・んんっ、これは私だけの秘事だ。
まあ兎も角、私の愛おしく可愛い人は、欲も我が儘(とも呼べぬが)も可愛らしく、とてもあの素晴らしい贈り物の3倍以上の価値ある、伊織を歓喜させる物事が思い至らぬのだ。
頭を抱える私の隣には、同様のディーノが居る。互いに、同じ悩みに陥っている様だ。普段は有能な侍従頭も、この様に考えあぐねる程に此の件は難解であるのだ。
欲しがるような物が思い当たらぬなら、伊織の好みから考えるよりないのだが・・・
そこで、以前の事が思い浮かんだ。
「・・・ん・・!うむ、これだ」
「殿下?何か、良いお考えが?」
まだ考えあぐねている様子のディーノに、サヴィンの好みから考えてはどうかとアドバイスし、伊織への贈り物の準備に取りかかる旨をディーノに伝え、早急に準備を整えるよう手配する。
伊織は少し前にもそれを美味しそうに食しながら、“・・・・したいなぁ”と呟いていた。サウディンでは、それをする文化が無く聞き馴染みの無い単語に、伊織のしたいと漏らした言葉が気になった。
それは、この国の気候的にも自然栽培は難しいく、一般にはあまり親しまれていない。
その為、それ自体が知られていない故に伊織の発した言葉の詳細が解らず、どういうものかを聞いていたのだ。
あの時の、小さな呟きを聞き逃さなかったことが、幸いしたな、うむ。
私は、伊織が喜ぶであろう贈り物が見つかった事で、心軽く執務室を後に出来そうだが。
ディーノは・・・ほう、何か良い考えが浮かんだようだな。心なしか、表情が穏やかに見受けられる。
「お前は、どの様なものにするのだ?」
少々興味があるため、そう尋ねた私に彼は鉄面皮を“にやり”と不穏に崩して云った。
「・・・以前、サヴィンの期待に沿えなかった事柄がございましたので。そのリベンジを、と」
ふむ・・・、どの様な事か気にはなるが。まあ、あの表情を見る限りあまり深入りせぬ方が良いな。
サヴィンはディーノであれば、どのような物事でも歓喜するだろう、うむ。
私は伊織に完璧な“ホワイトデー”を・・・そして、私が受け取った想いと幸せを彼にも感じて欲しいのだ。
伊織が嬉しいと、幸せだと微笑む様子を脳裏に浮かべながら、その日に想いを馳せる。
大切な人を想い何かをする事が、こんなにも楽しいのだと・・・伊織と出会っていなければ、私は生涯知る事は出来なかっただろう。
・・・ああ、伊織に今すぐに会いたい。
私は脳裏に浮かぶ最愛の人を、早く腕の中に抱き締めるため、残務整理の速度を上げた。
そうして私の宮の庭に、秘密裏に伊織への贈り物が造られた。
“イチゴ狩りがしたいなぁ”と呟いた伊織の、その希望を叶えるため。
そして、それを喜ぶ可愛らしい伊織が見たい私は、室温を細かく設定できる様に設計された小さな温室に、伊織の大の好物であるイチゴの畑を作ったのだ。品種は伊織の故国の馴染みのある物や、食味の優れている物を数種類揃え、3月14日に合わせて準備をさせると共に、庭師と共に私もその生育に携わった。
伊織への贈り物なのだ。人任せなどに出来よう筈がないだろう。
そして、当日まで伊織に悟られぬ様に細心の注意をはらい、携わっている者には箝口令を敷いた。
私はサプライズプレゼントの喜びと幸せを貰ったのだ。私も伊織に同じ様に・・・それ以上に喜んで欲しいのだ。
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この後のホワイトデーのお話は、3/14に出せるようにします・・・ガンバリマス(^_^ゞ
応援ありがとうございます!
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