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出合い
お人好しー②
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「よし! 腹もいっぱいになったし、行くか!」
「え?? どこに??」
「いいから、いいから。キノも行くぞ」
キルロさんはまたニカっと笑い、私の背中を押して行きます。
キルロさんのお店は街の中央からは、かなり離れた外れにありました。そびえ立つ八角形の巨大なギルドを目指し歩き始めます。
この世界を支えるギルドの周りは華やかで、たくさんの人に溢れていました。
それはたくさんの人の目があるという事。
私は躊躇してしまいます。
足の運びは鈍くなり、キルロさん達と距離を置いてしまいます。私なんかと一緒にいる所を見られたら、きっと迷惑。あんなに良くして貰ったのに、それはダメ。
私はいつものように俯き、いつも以上に足を引きずっていました。
「エレナ、顔を上げるんだ」
「でも⋯⋯」
「何を気にする? オレもキノもここにいる。さぁ、行くぞー!」
キルロさんは私の肩に手を置くと、前を指差します。
くすんだ灰色の前髪の隙間から、世界を覗くと、溢れんばかりの人と飛び交う声。体がすくんで、足が動きません。
「大丈夫だ」
肩に置いたキルロさんの手に、力が込められました。その手が私を優しく後押ししてくれます。
「ほらな。なんてこたぁない」
足を動かす私に優しい言葉を掛けて、勇気づけてくれます。
私は気が付くと足を止め、中央にそびえ立つギルドの真下からその巨大な建造物を見上げていました。
たくさんの人を吸い込んでは、吐き出して⋯⋯どれだけの人がこの世界にいるのかな?
「エレナ、もしかしてギルドを見るのは初めてか?」
「遠くからしか見た事なかったから⋯⋯」
私が感嘆の声を上げると、キルロさんは膝をつきギルドを指差します。
「あれがどういうものか知っているか?」
私が首を横に振ると、柔らかい笑みを浮かべ、キルロさんは続けます。
「あそこがギルドだってのは知っているよな。八か所の大きな扉があって、扉ごとに扱っている物が違うんだ。たとえば、オレとかエレナの親父さんとかが良く使うのは3番。冒険者が請け負う、素材集めや、モンスター駆除なんかの依頼を扱っている。他の扉には、衣類や布を扱う所、食べ物や飲み物を扱う所。住民や冒険者の登録、ソシエタスの加入手続きなんかも請け負っている。ここが日々、みんなの生活を支えているんだ。エレナもその内イヤでも世話になるぞ。成人したら登録しないとならないからな」
「⋯⋯ソシエタスって何?」
「なんつうか、集団? 商社? 大人数が所属している大規模な集合体かな。店とかと違って、冒険に特化した所、製作に特化した所、それこそ何でもやっている所とか、いろんな種類のソシエタスがあって、ソシエタスに加入していると報奨金の多い大規模な依頼を受ける事が出来るんだ。いやぁ~個人と比べると額の差があり過ぎて、やんなっちゃうんだよな」
キルロさんは渋い顔をして、頭を掻いて見せます。何だかその姿が可笑しくて、笑ってしまいました。
「キルロさんは、ソシエタス入っていないの?」
「なんか、面倒そうで。気ままに出来る方が性に合っているみたいだ」
「そっか⋯⋯」
「あ! そうだ。これから行く所では、話し言葉は丁寧にするんだ。です、ます、語尾に付けて丁寧に話す事を心掛けろ」
「どこに行くの?」
「行くの? じゃない、行くのですか? だ。まぁ、オレにはそれでいいんだけどな」
「ど、どこに行くのです⋯⋯か?」
「そうだ。今から、ある店に行く。お客さん相手の商売だから、しゃべり言葉は丁寧にが基本だ」
「うん」
「うんじゃない」
「は、はい」
「それそれ」
キルロさんはまた頭にポンと手を置いて、笑ってくれました。
大きなギルドを通り過ぎても、人の波は引きません。たくさんの人の熱を感じます。私はいつの間にか顔を上げている事に気が付きました。不思議です。今日一日でいろいろ起こり過ぎて、これは夢なんじゃないかと思ってしまいます。
夢なら醒めないで、どうかお願い。
私はまた足を止めます。キルロさんが、不思議そうに私を覗きました。
「どうした? もうすぐそこだぞ?」
「あ、あの、どうして私にこんなに良くしてくれるの⋯⋯ですか?」
そう。なんで私なんかに。みんなが忌み嫌う私なんかに。
俯く私の顔を覗き込み、またニカっと笑ってくれました。
「アハハハ。そんな事を気にしていたのか? そんなものは簡単だ⋯⋯」
キルロさんが少し間を開けます。私は釣られて顔を上げました。
「キノの友達は、オレにとっても友達だ。さぁ、行こう」
何だかその言葉に心が凄くポカポカしました。体中に力が湧く不思議な感じ。
私は軽くなった足で、地面を蹴っていきます。いつもより力強い足取りで歩いていました。
「これからエレナにある人物に会って貰う。まぁ、いい奴だから緊張しなくていいぞ。ちゃんと丁寧に思った事を言えば大丈夫」
「⋯⋯はい?」
一体何がどうなるのかさっぱり分かりません。
私はキルロさんに言われるがまま、後ろをついて行きます。
ギルドから少し歩いた、街の中心部にほど近い所で私達は立ち止まりました。
「え?? どこに??」
「いいから、いいから。キノも行くぞ」
キルロさんはまたニカっと笑い、私の背中を押して行きます。
キルロさんのお店は街の中央からは、かなり離れた外れにありました。そびえ立つ八角形の巨大なギルドを目指し歩き始めます。
この世界を支えるギルドの周りは華やかで、たくさんの人に溢れていました。
それはたくさんの人の目があるという事。
私は躊躇してしまいます。
足の運びは鈍くなり、キルロさん達と距離を置いてしまいます。私なんかと一緒にいる所を見られたら、きっと迷惑。あんなに良くして貰ったのに、それはダメ。
私はいつものように俯き、いつも以上に足を引きずっていました。
「エレナ、顔を上げるんだ」
「でも⋯⋯」
「何を気にする? オレもキノもここにいる。さぁ、行くぞー!」
キルロさんは私の肩に手を置くと、前を指差します。
くすんだ灰色の前髪の隙間から、世界を覗くと、溢れんばかりの人と飛び交う声。体がすくんで、足が動きません。
「大丈夫だ」
肩に置いたキルロさんの手に、力が込められました。その手が私を優しく後押ししてくれます。
「ほらな。なんてこたぁない」
足を動かす私に優しい言葉を掛けて、勇気づけてくれます。
私は気が付くと足を止め、中央にそびえ立つギルドの真下からその巨大な建造物を見上げていました。
たくさんの人を吸い込んでは、吐き出して⋯⋯どれだけの人がこの世界にいるのかな?
「エレナ、もしかしてギルドを見るのは初めてか?」
「遠くからしか見た事なかったから⋯⋯」
私が感嘆の声を上げると、キルロさんは膝をつきギルドを指差します。
「あれがどういうものか知っているか?」
私が首を横に振ると、柔らかい笑みを浮かべ、キルロさんは続けます。
「あそこがギルドだってのは知っているよな。八か所の大きな扉があって、扉ごとに扱っている物が違うんだ。たとえば、オレとかエレナの親父さんとかが良く使うのは3番。冒険者が請け負う、素材集めや、モンスター駆除なんかの依頼を扱っている。他の扉には、衣類や布を扱う所、食べ物や飲み物を扱う所。住民や冒険者の登録、ソシエタスの加入手続きなんかも請け負っている。ここが日々、みんなの生活を支えているんだ。エレナもその内イヤでも世話になるぞ。成人したら登録しないとならないからな」
「⋯⋯ソシエタスって何?」
「なんつうか、集団? 商社? 大人数が所属している大規模な集合体かな。店とかと違って、冒険に特化した所、製作に特化した所、それこそ何でもやっている所とか、いろんな種類のソシエタスがあって、ソシエタスに加入していると報奨金の多い大規模な依頼を受ける事が出来るんだ。いやぁ~個人と比べると額の差があり過ぎて、やんなっちゃうんだよな」
キルロさんは渋い顔をして、頭を掻いて見せます。何だかその姿が可笑しくて、笑ってしまいました。
「キルロさんは、ソシエタス入っていないの?」
「なんか、面倒そうで。気ままに出来る方が性に合っているみたいだ」
「そっか⋯⋯」
「あ! そうだ。これから行く所では、話し言葉は丁寧にするんだ。です、ます、語尾に付けて丁寧に話す事を心掛けろ」
「どこに行くの?」
「行くの? じゃない、行くのですか? だ。まぁ、オレにはそれでいいんだけどな」
「ど、どこに行くのです⋯⋯か?」
「そうだ。今から、ある店に行く。お客さん相手の商売だから、しゃべり言葉は丁寧にが基本だ」
「うん」
「うんじゃない」
「は、はい」
「それそれ」
キルロさんはまた頭にポンと手を置いて、笑ってくれました。
大きなギルドを通り過ぎても、人の波は引きません。たくさんの人の熱を感じます。私はいつの間にか顔を上げている事に気が付きました。不思議です。今日一日でいろいろ起こり過ぎて、これは夢なんじゃないかと思ってしまいます。
夢なら醒めないで、どうかお願い。
私はまた足を止めます。キルロさんが、不思議そうに私を覗きました。
「どうした? もうすぐそこだぞ?」
「あ、あの、どうして私にこんなに良くしてくれるの⋯⋯ですか?」
そう。なんで私なんかに。みんなが忌み嫌う私なんかに。
俯く私の顔を覗き込み、またニカっと笑ってくれました。
「アハハハ。そんな事を気にしていたのか? そんなものは簡単だ⋯⋯」
キルロさんが少し間を開けます。私は釣られて顔を上げました。
「キノの友達は、オレにとっても友達だ。さぁ、行こう」
何だかその言葉に心が凄くポカポカしました。体中に力が湧く不思議な感じ。
私は軽くなった足で、地面を蹴っていきます。いつもより力強い足取りで歩いていました。
「これからエレナにある人物に会って貰う。まぁ、いい奴だから緊張しなくていいぞ。ちゃんと丁寧に思った事を言えば大丈夫」
「⋯⋯はい?」
一体何がどうなるのかさっぱり分かりません。
私はキルロさんに言われるがまま、後ろをついて行きます。
ギルドから少し歩いた、街の中心部にほど近い所で私達は立ち止まりました。
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