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へべれけと隣人
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コースも終盤選。これから出てくるデザート直前の炒飯も素晴らしく美味しかった。自分で作ると油っこくなったり、いまいちパラパラにならなかったりと難しいのだが、ここの炒飯はそんな杞憂なぞ全く不要で、人生でも一番のものだったと断言できる。このような料理の美味しさも手伝って、会話も結構盛り上がっていたと思う。誘われたときは色々不安に思うところもあったが、結局は楽しい食事会になった。私にしてはお酒も飲んだほうだが、それでも紹興酒二杯程度だ。これ以上飲んでしまうと明日の仕事に支障が出てしまう。
「……おや?」
しかし、厠のために中座し、卓に戻ってきたところで気づいたことがあった。テーブルの上に置いてあるものについてである。先程が述べているとおり、中華料理屋にある回転するテーブルなのだが、その中心にある紹興酒の容れ物。それが、二本ある。手を伸ばして軽く持ち上げてみると一本は完全に空、もう一本もあと一杯分あるかどうかという程度だ。
これ以上は言わなくても分かるだろう。あまり確認したくはないが一緒に食卓を囲んでいる二人の顔をよくよく見てみる。このお店はそこまで明るい照明を使っているわけでもなく、加えて白ではなく赤系統の温かな照明だ。パッと見ただけではその顔色を伺うことはできなかったのだが……。
まずは佐須杜さんだが、かなり顔が赤くなっている。化粧っ気のないその頬はチークを軽く塗ったかのような感じで、そこまでひどく酔っているわけではないと思う。もちろんさっきから仕事のことや学生時代のことなど色々と話しているのを見る限り、その様子には最初の方とそこまでの差異はないと思う。ただし、若干喉が枯れてきているかもしれないが、紹興酒も結構強いお酒だから仕方ないだろう。
他方で、人栄さん。元々は雪のように白い肌をしていたはずだったが、すでに普通の肌の色――ではない。肌色を通り越して真っ赤になっていた。よくよく考えればさっきから若干語調が強くなっていたり、声は大きくなってはいたが……。
「お二人とも、もしかしなくてもかなり飲んでしまっているのでは?」
「あん?私は大丈夫だ。これくらいじゃあ飲んだ内に入らねえよ」
おっと、大丈夫かと思われた佐須杜さんだが、正面から顔を見ているとその目はしっかり座っている。語調も丁寧なものから、素のものであろうざっくばらんなものになっている。
「うへへへ、ナコちん酔ってるうー。そんなに酔っちゃって明日は大丈夫ぅ?」
そして、見た目通り、もっと酷いのは人栄さんだろれつが明らかに回っていない。この調子だと自分で何を話しているかよく分かっていない、つまり酩酊状態なのではないだろうか。
「うるせぇよ、シノ。私はぜんぜん余裕なんだよお……そういうお前のほうがやべえんじゃねえか?」
「ひょー、そんなこと言うなんて!わぁたしもじぇんじぇんですぅー」
私の存在も忘れられたのか二人でやいのやいのと言い合っている。正直、こちらからすれば全然同レベルなのだが、そんなことを言って巻き込まれるのはごめんだ。
私はこっそり席を立ち、受付に居た初老の店員さんに話しかける。
「すいません、運転代行の手配は可能でしょうか?」
「もちろんでございます。コースが終了した後、10分後に来るような形でいかがでしょうか?」
素晴らしい。恐らく彼はこちらの食卓の様子をすでに把握していたのだろう。私が提案したかったことを先回りで伝えてくれる。
「ありがとうございます。それでお願いします。あと、会計をお願いします」
「承知致しました。領収書は必要でしょうか?」
「不要です。こちらのカードでお願い致します」
会計を確認すると、紹興酒二本をいれても2万円と少し程度。これならランチもさほど高くないだろう。是非今度来てみようと思う。
私は会計を済ませている間に、ちらりと卓を見てみると、さらに酒が回ったのか先程よりも大きな声で、かつへべれけな様子で楽しそうにしている二人が見えた。
楽しそうなら何よりだ。
「……おや?」
しかし、厠のために中座し、卓に戻ってきたところで気づいたことがあった。テーブルの上に置いてあるものについてである。先程が述べているとおり、中華料理屋にある回転するテーブルなのだが、その中心にある紹興酒の容れ物。それが、二本ある。手を伸ばして軽く持ち上げてみると一本は完全に空、もう一本もあと一杯分あるかどうかという程度だ。
これ以上は言わなくても分かるだろう。あまり確認したくはないが一緒に食卓を囲んでいる二人の顔をよくよく見てみる。このお店はそこまで明るい照明を使っているわけでもなく、加えて白ではなく赤系統の温かな照明だ。パッと見ただけではその顔色を伺うことはできなかったのだが……。
まずは佐須杜さんだが、かなり顔が赤くなっている。化粧っ気のないその頬はチークを軽く塗ったかのような感じで、そこまでひどく酔っているわけではないと思う。もちろんさっきから仕事のことや学生時代のことなど色々と話しているのを見る限り、その様子には最初の方とそこまでの差異はないと思う。ただし、若干喉が枯れてきているかもしれないが、紹興酒も結構強いお酒だから仕方ないだろう。
他方で、人栄さん。元々は雪のように白い肌をしていたはずだったが、すでに普通の肌の色――ではない。肌色を通り越して真っ赤になっていた。よくよく考えればさっきから若干語調が強くなっていたり、声は大きくなってはいたが……。
「お二人とも、もしかしなくてもかなり飲んでしまっているのでは?」
「あん?私は大丈夫だ。これくらいじゃあ飲んだ内に入らねえよ」
おっと、大丈夫かと思われた佐須杜さんだが、正面から顔を見ているとその目はしっかり座っている。語調も丁寧なものから、素のものであろうざっくばらんなものになっている。
「うへへへ、ナコちん酔ってるうー。そんなに酔っちゃって明日は大丈夫ぅ?」
そして、見た目通り、もっと酷いのは人栄さんだろれつが明らかに回っていない。この調子だと自分で何を話しているかよく分かっていない、つまり酩酊状態なのではないだろうか。
「うるせぇよ、シノ。私はぜんぜん余裕なんだよお……そういうお前のほうがやべえんじゃねえか?」
「ひょー、そんなこと言うなんて!わぁたしもじぇんじぇんですぅー」
私の存在も忘れられたのか二人でやいのやいのと言い合っている。正直、こちらからすれば全然同レベルなのだが、そんなことを言って巻き込まれるのはごめんだ。
私はこっそり席を立ち、受付に居た初老の店員さんに話しかける。
「すいません、運転代行の手配は可能でしょうか?」
「もちろんでございます。コースが終了した後、10分後に来るような形でいかがでしょうか?」
素晴らしい。恐らく彼はこちらの食卓の様子をすでに把握していたのだろう。私が提案したかったことを先回りで伝えてくれる。
「ありがとうございます。それでお願いします。あと、会計をお願いします」
「承知致しました。領収書は必要でしょうか?」
「不要です。こちらのカードでお願い致します」
会計を確認すると、紹興酒二本をいれても2万円と少し程度。これならランチもさほど高くないだろう。是非今度来てみようと思う。
私は会計を済ませている間に、ちらりと卓を見てみると、さらに酒が回ったのか先程よりも大きな声で、かつへべれけな様子で楽しそうにしている二人が見えた。
楽しそうなら何よりだ。
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