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ロリは思い出した
しおりを挟むマルタナアイ大陸には三つの国が存在する。南のアイシス王国、西のタナノフ王国…そしてもう一つ、マルロワ王国。
大陸の東に位置するこの国から、物語は始まる。
―マルロワ王国の城内、謁見の間。
そこには王族が集まっており、一人の男が頭を抱えていた。マルロワ国王・レイドラントである。
「今回の三国武闘会の会場は、ここマルロワであるが…開催にあたり設備費、人件費、賞品と…中々苦しいな。吾輩困ってしまったぞ」
「そうねぇ…設備や人件費とかは三国の積み立て費から何とか捻出できるけれど…。
賞品だけは各国の特産品とかを出さないといけないですからね。どうしましょう」
と、その妻ロージアが答えた。会話は続く。
「本っ当この国は常に財政難よね!自分で言うのもなんだけど、私達王族にしては質素な生活をしてるわよ。なのになぜこんなにお金が無いのよ!」
そう嘆くのはマルロワ国第一子、リリディエラ王女。
「それは皆が働かずに魔法の研究ばっかりしてるからだよ。タナノフみたいに宝石が取れる訳じゃないし、アイシスみたいに農耕が盛んじゃないから特産品も無い。
強いて言えば魚が取れるくらい?ハハッ、じゃあ賞品は加工したスルメでいいじゃない」
投げやりに言うのは第二子、ルイトガルト王子。
「もうそれは以前やったのでしょう?お兄様。イカ臭いと不評だったそうじゃありませんか。
今年こそはちゃんとした賞品を用意しなければ…国の沽券に関わりますわ!」
そう年齢の割にしっかりした発言をするのは、第三子、ライネベルテ王女だった。
家族皆で仲良く、悩んでいるのだった。
と、次の瞬間…突然外が明るくなり、室内中が眩しくなった。
目を開けていられない程の明るさだった。
各々があまりの眩しさに耐えきれず、体を伏せる中…ライネベルテだけは、窓越しにその光を直視した。
「…な、何ですの…何かが頭の中に沢山入ってくるわ…」
彼女の頭に、次々と入ってくる情報。
一人の女性が、部屋の隅に座り何かをしている。
薄い本のようなものをめくっては絶叫し、また時には両手先でなにやら操作をしては発狂していた。
「何よこの女、不気味だわ…ニヤニヤしたかと思えば叫びだしたり…
あ!ちょっと!違うわそこは『彼に黒いノートを渡す』が正解よ。でないと『計画通りルート』に行かないじゃない…
って、何を言っているのかしらあたし…」
ライネベルテは頭が痛くなり、手で押さえ始める。
「この状況、あたし覚えてる…ここでルートを間違えたからその後筋肉ロードで苦労して…えっ…この記憶は…あたしの?
いやっ、頭が…頭が痛いわああああああ!」
そして、彼女は気を失った。
・・・・・・・
目が覚めると、ライネベルテはベッドに寝かされていた。
「うっ…まだ頭が少し痛い…。
でも思い出したわ。あたしは…あたしは…
前世の記憶がある…確か名前は…」
ブツブツ言っていたのが聞こえたのか、慌ててこちらへ来る者がいた。
「まあ!ロリ様!気がつかれましたのね!」
「…モネア」
彼女はライネベルテの世話係である。
「先程謎の発光現象がありましたでしょう?あの光を見て倒れたのですよ。すぐお医者様に見てもらいましたが、身体に異常はないそうです。
でもまだ頭が痛そうですわね。もう少し寝ていましょうね、ロリ様」
「……うん」
モネアにズレた布団をかけ直してもらい…彼女の巨乳が顔にボフッ!と当たりながら、ライネベルテはもうひと眠りした。
なお、ロリとはライネベルテの愛称。マルロワ国王族は代々、皆名前が長い為それぞれに愛称がついていたのである。
この時、ライネベルテ11歳。
前世の記憶が少しだけよみがえった。
以前は日本という国で生まれた、どこにでもいる筋肉大好きゲーアニオタク会社員であった。
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