転生ロリ王女は脳筋王子をおとしたい

須田トウコ

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ロリはおしかけた

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 マルロワ国から王女がやってくる、いよいよその日。
 タナノフの王城、謁見の間には国王ダンデが玉座に座り、隣にはドルーガも在席していた。彼は側で控えているナッジにボヤく。

「おい、ナッジ。なんでオラは正装させられてるんだ?」
「何でって、王女様が来るからですよ」
「んなモンわかってる。でも前の武闘会で、普通の軍服で会ってるだろ。今更めかしこむ必要ないじゃないか?」
「相手は本来めかしこまなくてもド美人な方ですよ?!
 おそらく今日は今までにない程着飾って来る筈…きっと皆あまりの美しさに腰抜かすんじゃないですか?
 だから殿下も少しは見栄え良くしないと!ほら、顔はイイんですから似合ってる似合ってる」
「はぁ…窮屈だなぁ。早く褌一丁で体鍛えてぇなぁ」
「…しばらく褌は衣装部屋から取り上げておきますからね…」

 マルロワ随一の美女が来るのに、いつも通りマイペースなドルーガだった。
 しかし、玉座にいたダンデは言う。

「カカッ!ナッジよ、これでもドルーガは緊張しているのだ。
 ほれ、こめかみをポリポリかいてるだろ。これがコイツの癖だ。緊張したり焦ったりすると出てくる」
「あ、そうなんですね」
「…余計な事を言うなよ父上。
 おっ、そろそろご到着のようだぞナッジ。なんだか外が騒がしい」
「そうですか?…目だけでなく耳も良いんですね殿下は」

 しばらくすると、使者が入室の許可を取りに来た。王が許可し、いよいよご対面である。
 重厚な扉が開き、入ってきたのは…目が覚める程眩しい金髪に、輝くグレーの瞳。そして真っ白なドレスに身を包んだ王女だった。

 …しかし、その身長は低かった。また、本人はしずしずと歩いているつもりだろうが…はたから見ると「トコトコ」という音が聞こえるような、そんな可愛い歩き方だった。
 そこにいるタナノフ側の人間全てが、ポカンとした顔になった。ドルーガを除いて。

「お、いつぞやの小っさいのじゃないか!どうした?姉姫の付き添いか?」
 そうドルーガが問うと、先にナッジが気を取り戻し反応した。

「い、いえ殿下…これって…まさか…」
 その時、白いドレスを着た王女がカーテシーをした。とても気品があり、幼いながら王族の貫禄を感じさせる。
 そして、次に彼女が挨拶した瞬間。謁見の間は大混乱に陥った。

「はじめまして!この度武闘会の副賞として、タナノフ国王子ドルーガ様の元へ輿入れする事と相成りました。マルロワ国王女、ライネベルテでございます。
 皆様、ロリとお呼びになってくださいまし。これからどうぞよろしくお願い致しますわ!」

「なっ、なんだってぇぇーーー?!!」

 その場にいた全員が、そうハモるのだった。




・・・・・・・




 唐突の展開に、流石のダンデ王もびっくりした。

「お、おう?!マルロワから美人な王女が嫁いでくるとは聞いていたが…こんなに幼いとは!
 こらドルーガ!お前そんな趣味があったのか!」
「い、いやあ誤解だよ父上!オラは確かにリリディエラ王女が嫁いで来ると聞いて…ハッ!」

 ここでドルーガは、表彰式での彼女とのやり取りを思い出す。

『本当にいいのか?』
『ええ。喜んで、タナノフへ向かいますわ。それでよろしくて?』

 ………リリディエラ、とは言ってはいなかった。ドルーガは黙ってまたこめかみをポリポリとかきだす。
 それを見たダンデはため息をついた。

「…はぁ。さてはお前、一泡吹かされたな。
 普段ならカカッと笑って終わらせられるが…流石にこれは一国の王として怒ったほうがエエのだろうか…」

 戸惑う王にライネベルテは胸の前で両手を組み、必殺の上目遣いでじっと彼を見た。

「ごめんなさい陛下。ドルーガ様は何も知らなかったし、悪くないのです。
 あたしが…ロリが一目惚れしちゃったんです。武闘会中に、倒れた所を介抱して頂いて。
 それでリリディエラお姉様に無理を言って、姉様の代わりにタナノフへ来てしまったのです」

 時に甘えるように、時にしっかりと話すライネベルテに、王は心動かされ始める。

「お、おおう…ワイの息子に一目惚れするなんて、目の付け所がエエというか…しかし…」
「もし結婚が無理であれば…例えば、お試しに3ヶ月程お側に置いていただけないでしょうか?
 ロリは今、ドルーガ様のその素敵な正装姿を見て、益々惚れてしまいましたの。
 子供だって思われているだろうし、それは当たり前の反応です。でももう少しだけお話したいですし、ロリの事を知ってもらいたい…駄目ですか?」

 ズキュゥン!!!と、王の心に何かが撃ち込まれた。

「くっ…この…いじらしさ…!ワイは感銘を受けた!
 よし、では結婚前の…婚約のさらに前の…お試し期間として、3ヶ月の滞在を許可しよう!」

「ええっ?!陛下?!ドルーガ様の返事を聞かずにですか?!」
 すかさずナッジがつっこんだ。

「お、おおそうだった…どうだ、ドルーガ?お前はそれでいいか?」
 話を振られたドルーガはそれまでボーッとしていたが、ハッとしてライネベルテに質問した。

「な、なあ小っさいの…お前、肉は好きか?良く食べるか?」
「はい、タナノフの方々に比べて量は少ないでしょうけど…お肉だけじゃなく、お魚もお野菜も、好き嫌いなく食べますわ。食べる事は大好きですの!」
「よし、それなら気が合うな!じゃあ3ヶ月間よろしくな!」
「殿下ーーー?!!そんな基準でいいのですか?!!!!!」

 …もはや高速ツッコミマシンと化しているナッジであった。
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