転生ロリ王女は脳筋王子をおとしたい

須田トウコ

文字の大きさ
37 / 55

ロリはボスと対峙した

しおりを挟む
 
 それからドルーガ達は馬を進め、新たな戦場へと向かった。

「おっかしいな、この辺りで魔獣と兵士達が戦っているハズなんだが…」

 ドルーガが辺りを見回しても、人っ子一人いない。これは逆に不気味だった。

「僕達の勢いに怯んで、どこかに隠れているんですかね!さあ出てこい魔獣!猫型でも兎型でも鼠型でも、何でもこい!!」
「ナッジ様、ずいぶん可愛い種類の魔獣しかおりませんわね!
 ……ってキャッ?!地震?!」

 突然、地面がグラグラと揺れる。
 馬が動揺した為周囲はなだめるのに必死だ。

「ドラ様、これは一体…?」

 そうライネベルテがドルーガに聞くが、彼は遠くを見ていた。そして驚いているのか、口が半開きになっている。

「おいおいおい…何なんだよありゃあ…」

 彼の目線の先には、ゴゴゴゴ…という音と共に、こちらへ這いずってくる何かがいた。
 あれは…

「…う、うそ…竜…?!」

 ライネベルテも開いた口が塞がらない。
 緑色の長い胴体に、真っ赤な瞳。口元には長髭があり、四つの足には鋭い爪がついていた。

「お、おかしいわ!この大陸には竜なんて種類の生物はいないはずよ…!」

 前世の日本であれば「ドフォッ!魔訶不思議ファンタジー!!」と大興奮したであろう。
 しかし今魔獣としてこの場にいるという状況は、非常に、まずい。
 某でんでん太鼓を持った子供が乗っている竜なら危なかった、アレは空を自由に飛んでいるから。そんなのは戦いようが無い。
 竜ってどうやって倒すんだっけ?と、これまでのファンタジー知識をフル稼働させて考える。

「リュウ?なんだそりゃ??
 美味いのk『ハイハイ倒して食べてみたらいいですわドラ様』
 ……なんか、ロリが冷てぇ…」

 色々考え込むライネベルテに冷たくあしらわれたドルーガは、ションボリした。

 すると、竜は不意に地面に爪を立てて、何かを引きずり出した。
 ……地面に隠れていた、土竜型の魔獣だ。そのまま、いとも簡単に爪で裂いた。

「ひ、ひいいーっ!!なんて力だ…!」

 ナッジは先程の勢いはどうしたのか、竜の攻撃力を見てビビり出した。

「…あの目の赤さ…オラ達の味方って訳じゃなさそうだな。魔獣も人間も、見境なく攻撃しているって感じか。厄介だな。
 お前ら、ひとまず散らばれ!まとまってても的になるだけだ。体が長くて動き自体は遅せぇから、落ち着いて行動しろ。
 弓を持っているヤツは目を狙え!少しは有利になるだろ。オラは弱点を探す!」
「ぎょ、御意!!」

 ナッジも、他の兵達も指示に従った。
 しかし…竜はドルーガとライネベルテがいる方向に目を向け、ズルズルと追いかけてきた。

「オイオイ…やっぱり魔獣は王族を狙うってのは本当だな…。
 ロリ、少し飛ばすぞ。しっかり籠の中に入ってろ。顔は出すなよ」
「は、はい!」

 ライネベルテは言う通りにしようとして、少しだけ竜を覗き見た。よく見ると、首元に瞳と同じ赤い色の、大きな玉がついていた。
 ドルーガは目眩しのため、森を横切る。ものすごい速さだ。
 竜は彼等だけしか見ておらず同じく森へ進んで行くが、途中岩や木に当たったのか、若干スピードが落ちていた。

 森を抜けたドルーガ達は、なおも竜から逃げようと走るが、突然横から並走する何かが現れた。
 …リンリンとランランだった。それを見たライネベルテは籠から上半身を出した。

「リンリン達、無事だったのね!良かった!」

「ガウッ」
「ガウ」

 リンリンは走りながら、竜がいる方角に向かって「ガウッ!」と言った後、右前足で自分が首につけている鈴を指した。

「?鈴が弱点?いえ、違うわね…
 あ、もしかして!竜が首につけてたでっかい玉に何かあるの?」
「ガウッ!」と、リンリンは頷いた。

「何でリンリンがそんな事を知っているのかしら…?ま、まさか…竜もリンリン達と同じく別の星から…?」

 ライネベルテがそう言いかけた所で、ドルーガが叫んだ。

「!危ねぇ!!」
「キャアッ!!」

 いつの間にか、竜が近くまで迫っていた。
 竜は側にあった岩を掴み、こちらへ投げてきたのである。
 とりあえず避けられたが、籠から出かけていたライネベルテはその反動で落ちそうになった。

「わわっ!…ふー、危なかったわ。あーもう!本当ムカつくわね!あの竜!!
 ドラ様、なんとなく弱点がわかりましたわ!ヤッてしまいましょう!!」

 ライネベルテはブチ切れた。

「お?好戦的だなロリ!
 で、どうすりゃいいんだ?」
「竜の首元にある赤い玉…アレを壊す事が出来れば、少しは弱体化すると思いますわ!
 瞳と同じ色ですし、アレは魔石の類かと。きっと悪いヤツが相当な力を込めたのですわ」
「そうか。実はオラも疑問に思ってたんだ。あんなに大きな動物をどうやって魔獣化させたのかって。
 他の魔獣と比べてなりふり構わずこっちを追いかけてくるし、知性がまったくねぇんだ。操られてるっていうか…きっとその石に何かあるんだろう」
「かも知れませんわね!
 ああ、でもここからだと距離があるし…何よりどうやってあの竜の首元に飛び込めばいいのかしら…」

 ライネベルテは悩んだ。いくらその玉に近づいて破壊できたとしても、そのまま竜が暴れれば潰されてペシャンコだ。
 すると、ドルーガは静かに言った。

「…コレの出番かも…しれないな」

 彼はそう言うと、腰に下げていた剣を抜き取った。

「あら?ドラ様は普段剣はお使いになりませんわよね?」
「ああ、コレは…ロリなら王族だから知っているだろう。神器の一つ、女神の剣だ」
「え!それが?!」

 ドルーガが無防備に腰に下げていた剣。
 これは各国の王族しか知らない、神器と呼ばれる強力な武器である。

「ああ。古の時代…この地を治める女神が…くれた、うん、まあ、スッゲェ強え武器って言われてるよな!」
「今めちゃくちゃ端折りましたわね!」

 それっぽい語りをするかと思ったら、いつも通りのドルーガだった。



~ドルーガが端折った箇所~
古の時代。この地を治める女神が、大陸を支配しようとする邪心者と戦った。その際に人間にも助けを求め、彼等に与えた武器が女神の神器と言われている。剣、盾、羽衣の三種類ある。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。  婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。しかしその虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。  虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!? 【この作品は、別名義で投稿していたものを加筆修正したものになります。ご了承ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...