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ロリはボスと対峙した
しおりを挟むそれからドルーガ達は馬を進め、新たな戦場へと向かった。
「おっかしいな、この辺りで魔獣と兵士達が戦っているハズなんだが…」
ドルーガが辺りを見回しても、人っ子一人いない。これは逆に不気味だった。
「僕達の勢いに怯んで、どこかに隠れているんですかね!さあ出てこい魔獣!猫型でも兎型でも鼠型でも、何でもこい!!」
「ナッジ様、ずいぶん可愛い種類の魔獣しかおりませんわね!
……ってキャッ?!地震?!」
突然、地面がグラグラと揺れる。
馬が動揺した為周囲はなだめるのに必死だ。
「ドラ様、これは一体…?」
そうライネベルテがドルーガに聞くが、彼は遠くを見ていた。そして驚いているのか、口が半開きになっている。
「おいおいおい…何なんだよありゃあ…」
彼の目線の先には、ゴゴゴゴ…という音と共に、こちらへ這いずってくる何かがいた。
あれは…
「…う、うそ…竜…?!」
ライネベルテも開いた口が塞がらない。
緑色の長い胴体に、真っ赤な瞳。口元には長髭があり、四つの足には鋭い爪がついていた。
「お、おかしいわ!この大陸には竜なんて種類の生物はいないはずよ…!」
前世の日本であれば「ドフォッ!魔訶不思議ファンタジー!!」と大興奮したであろう。
しかし今魔獣としてこの場にいるという状況は、非常に、まずい。
某でんでん太鼓を持った子供が乗っている竜なら危なかった、アレは空を自由に飛んでいるから。そんなのは戦いようが無い。
竜ってどうやって倒すんだっけ?と、これまでのファンタジー知識をフル稼働させて考える。
「リュウ?なんだそりゃ??
美味いのk『ハイハイ倒して食べてみたらいいですわドラ様』
……なんか、ロリが冷てぇ…」
色々考え込むライネベルテに冷たくあしらわれたドルーガは、ションボリした。
すると、竜は不意に地面に爪を立てて、何かを引きずり出した。
……地面に隠れていた、土竜型の魔獣だ。そのまま、いとも簡単に爪で裂いた。
「ひ、ひいいーっ!!なんて力だ…!」
ナッジは先程の勢いはどうしたのか、竜の攻撃力を見てビビり出した。
「…あの目の赤さ…オラ達の味方って訳じゃなさそうだな。魔獣も人間も、見境なく攻撃しているって感じか。厄介だな。
お前ら、ひとまず散らばれ!まとまってても的になるだけだ。体が長くて動き自体は遅せぇから、落ち着いて行動しろ。
弓を持っているヤツは目を狙え!少しは有利になるだろ。オラは弱点を探す!」
「ぎょ、御意!!」
ナッジも、他の兵達も指示に従った。
しかし…竜はドルーガとライネベルテがいる方向に目を向け、ズルズルと追いかけてきた。
「オイオイ…やっぱり魔獣は王族を狙うってのは本当だな…。
ロリ、少し飛ばすぞ。しっかり籠の中に入ってろ。顔は出すなよ」
「は、はい!」
ライネベルテは言う通りにしようとして、少しだけ竜を覗き見た。よく見ると、首元に瞳と同じ赤い色の、大きな玉がついていた。
ドルーガは目眩しのため、森を横切る。ものすごい速さだ。
竜は彼等だけしか見ておらず同じく森へ進んで行くが、途中岩や木に当たったのか、若干スピードが落ちていた。
森を抜けたドルーガ達は、なおも竜から逃げようと走るが、突然横から並走する何かが現れた。
…リンリンとランランだった。それを見たライネベルテは籠から上半身を出した。
「リンリン達、無事だったのね!良かった!」
「ガウッ」
「ガウ」
リンリンは走りながら、竜がいる方角に向かって「ガウッ!」と言った後、右前足で自分が首につけている鈴を指した。
「?鈴が弱点?いえ、違うわね…
あ、もしかして!竜が首につけてたでっかい玉に何かあるの?」
「ガウッ!」と、リンリンは頷いた。
「何でリンリンがそんな事を知っているのかしら…?ま、まさか…竜もリンリン達と同じく別の星から…?」
ライネベルテがそう言いかけた所で、ドルーガが叫んだ。
「!危ねぇ!!」
「キャアッ!!」
いつの間にか、竜が近くまで迫っていた。
竜は側にあった岩を掴み、こちらへ投げてきたのである。
とりあえず避けられたが、籠から出かけていたライネベルテはその反動で落ちそうになった。
「わわっ!…ふー、危なかったわ。あーもう!本当ムカつくわね!あの竜!!
ドラ様、なんとなく弱点がわかりましたわ!ヤッてしまいましょう!!」
ライネベルテはブチ切れた。
「お?好戦的だなロリ!
で、どうすりゃいいんだ?」
「竜の首元にある赤い玉…アレを壊す事が出来れば、少しは弱体化すると思いますわ!
瞳と同じ色ですし、アレは魔石の類かと。きっと悪いヤツが相当な力を込めたのですわ」
「そうか。実はオラも疑問に思ってたんだ。あんなに大きな動物をどうやって魔獣化させたのかって。
他の魔獣と比べてなりふり構わずこっちを追いかけてくるし、知性がまったくねぇんだ。操られてるっていうか…きっとその石に何かあるんだろう」
「かも知れませんわね!
ああ、でもここからだと距離があるし…何よりどうやってあの竜の首元に飛び込めばいいのかしら…」
ライネベルテは悩んだ。いくらその玉に近づいて破壊できたとしても、そのまま竜が暴れれば潰されてペシャンコだ。
すると、ドルーガは静かに言った。
「…コレの出番かも…しれないな」
彼はそう言うと、腰に下げていた剣を抜き取った。
「あら?ドラ様は普段剣はお使いになりませんわよね?」
「ああ、コレは…ロリなら王族だから知っているだろう。神器の一つ、女神の剣だ」
「え!それが?!」
ドルーガが無防備に腰に下げていた剣。
これは各国の王族しか知らない、神器と呼ばれる強力な武器である。
「ああ。古の時代…この地を治める女神が…くれた、うん、まあ、スッゲェ強え武器って言われてるよな!」
「今めちゃくちゃ端折りましたわね!」
それっぽい語りをするかと思ったら、いつも通りのドルーガだった。
~ドルーガが端折った箇所~
古の時代。この地を治める女神が、大陸を支配しようとする邪心者と戦った。その際に人間にも助けを求め、彼等に与えた武器が女神の神器と言われている。剣、盾、羽衣の三種類ある。
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