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第7話 間違いなく犯人はここにいる
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すると、リアムが耳元でささやいた。
「信じていいと思いますよ。アントワーヌ嬢が良からぬ連中とコンタクトを取っていたことは確認が取れています」
ルシアは驚いてリアムの顔を見た。
「そうなの?」
「はい」
小声でやり取りし、ルシアはアリサにほほ笑んだ。
「もし本当だとしたら、ノースポール男爵令嬢様は私の恩人になります。ご自分の立場が悪くなるかもしれないのに、ご忠告をくださってありがとうございました」
アリサは驚いたように目を見開き、その後ほっとして少し涙ぐんだ。
「そんな、お礼を言われるようなことではありません。ご無事でよかったです」
「でもその後、あなたは大丈夫だったの?アンドレイ侯爵令嬢様からお叱りを受けたのではなくて?」
「いえ、ワインをかけたところを遠目に見て喜んでいたようですわ。その後、大変なことが起きてしまって…。炎上…してしまったのですわ。だからその後、お話はしていないのです」
アリサは、炎上と口にした時に、ちらりとリアムに視線をやった。
目が合ったリアムはにこりときれいな笑みを見せた。
王家の影がやったのではないかと噂になっているが、間違いなく犯人はここにいる、と悟った。
「そのお話は友人から聞きましたわ。怖いわね」
「…ええ、本当に。今回はうやむやになりましたけれど、スカーレット様は執念深いお方です。今後も十分お気をつけくださいね」
「わかりました。ありがとう」
「では、ドレスの弁償の件は後程当家に請求していただければと存じます」
「…弁償は結構ですわ」
ドレスは大変な高額商品であった。
おそらく男爵家程度では簡単に支払える額ではない。
下手をしたら男爵家の年間収入を大きく上回る弁償額になるかもしれない。
アリサにはドレスひとつにどれほどの金がかかっていることなど、想像がつかないのだった。
「そういうわけにはいきませんわ!」
「実は、家の者がとても手間暇かけて用意してくれた物だったので、染め物工房に出して染め直そうと思っているの。きれいに染まればまた着られるから、弁償の必要はないわ」
「…大切なドレスだったのですね。本当にごめんなさい。それならば、せめて染め直しの費用だけでも払わせてください」
(どうしましょう…)
ルシアは困ってリアムに視線をやった。
リアムはほほ笑み頷くと、ルシアの代わりにアリサに言った。
「たしか、ノースポール男爵領は染め物業が盛んでしたね。腕の良い職人を紹介していただければ、当方としては大変助かるのですが、いかがでしょう」
アリサはぱぁっと笑顔を作ってリアムを見た。
「ええ!染め物職人の知り合いはたくさんいますわ。もしご迷惑でなければ、ドレスをお預かりさせてください」
「お願いしていいのかしら」
「スチュワート伯爵令嬢様、ぜひそうさせてください。完成したらまたこちらへお持ちしてよろしいですか?」
「明日には領地へ戻ろうと思っているの。もしよければ領地の方へ届けてくださる?」
「かしこまりました」
「ではお願いするわね。それから、ルシアとお呼びになって」
「わたくしなどがお名前で呼んでよろしいのですか?」
「恩人ですもの。名前で呼んでください」
「…嬉しいです!わたくしのことも、アリサと呼んでください!」
「ええ、そうさせていただくわね」
ルシアとアリサはにっこりと笑い合った。
その後、アリサはドレスを受け取り持ち帰った。
そのことはノースポール男爵の耳にも入り、とんでもないことをしでかしたと仰天した。
その後すぐにスチュワート伯爵宛てに詫び状が届いた。
リアムはその晩、スチュワート伯爵ローガンの執務室に呼び出された。
リアムがノックすると、しばらくしてからローガンの声がした。
「入れ」
「失礼いたします。お呼び出しに応じ参りました」
ローガンは執務机に備え付けられた椅子にゆったりと腰を掛けていた。
リアムは執務机の前に立った。
「報告していないことがあるな?」
「はい、ございます」
「報告しろ」
「はい」
リアムはナリス第二王子の生誕パーティーで起きたことを、事実の通り報告した。
ローガンは静かに聞いていたが、額に青筋が立って、かなり怒っていることが見て取れた。
リアムが報告を終えると、ローガンは厳しい表情のまま言った。
「なるほど。アンドレイの娘の髪が燃えたのはお前の仕業か」
「はい」
「王宮では魔術を使えないふりをしろと言っただろう。宮廷魔術師以外は魔術を使えないように妨害シェルターが起動しているのだ。お前が簡単に魔術を使ってしまっては問題になる」
「…申し訳ありません。つい」
「お前はルシアのことになるとすぐに感情的になる。自分の感情をコントロールできなくてはルシアの側に置くことはできないぞ」
「はい、わかっています」
「ルシアは心優しい子だ。お前が令嬢たちの髪を燃やしたと知ったら傷つく」
「…以後、気を付けます」
リアムが反省したとみて、ローガンはふむ、と小さく頷いた。
「それで?ルシアを愚弄されて、どう落とし前をつけようと考えている?まさか、髪を燃やしただけで終わるつもりか?このままルシアを危険にさらし続けるつもりではあるまいな」
「もちろんです。明日には領地に帰り、万全の警護体制を取ります。…アンドレイ侯爵家はつぶします。自分にまかせていただいても?」
「よい。やれ」
「かしこまりました」
リアムは丁寧にお辞儀をして執務室から退出した。
「信じていいと思いますよ。アントワーヌ嬢が良からぬ連中とコンタクトを取っていたことは確認が取れています」
ルシアは驚いてリアムの顔を見た。
「そうなの?」
「はい」
小声でやり取りし、ルシアはアリサにほほ笑んだ。
「もし本当だとしたら、ノースポール男爵令嬢様は私の恩人になります。ご自分の立場が悪くなるかもしれないのに、ご忠告をくださってありがとうございました」
アリサは驚いたように目を見開き、その後ほっとして少し涙ぐんだ。
「そんな、お礼を言われるようなことではありません。ご無事でよかったです」
「でもその後、あなたは大丈夫だったの?アンドレイ侯爵令嬢様からお叱りを受けたのではなくて?」
「いえ、ワインをかけたところを遠目に見て喜んでいたようですわ。その後、大変なことが起きてしまって…。炎上…してしまったのですわ。だからその後、お話はしていないのです」
アリサは、炎上と口にした時に、ちらりとリアムに視線をやった。
目が合ったリアムはにこりときれいな笑みを見せた。
王家の影がやったのではないかと噂になっているが、間違いなく犯人はここにいる、と悟った。
「そのお話は友人から聞きましたわ。怖いわね」
「…ええ、本当に。今回はうやむやになりましたけれど、スカーレット様は執念深いお方です。今後も十分お気をつけくださいね」
「わかりました。ありがとう」
「では、ドレスの弁償の件は後程当家に請求していただければと存じます」
「…弁償は結構ですわ」
ドレスは大変な高額商品であった。
おそらく男爵家程度では簡単に支払える額ではない。
下手をしたら男爵家の年間収入を大きく上回る弁償額になるかもしれない。
アリサにはドレスひとつにどれほどの金がかかっていることなど、想像がつかないのだった。
「そういうわけにはいきませんわ!」
「実は、家の者がとても手間暇かけて用意してくれた物だったので、染め物工房に出して染め直そうと思っているの。きれいに染まればまた着られるから、弁償の必要はないわ」
「…大切なドレスだったのですね。本当にごめんなさい。それならば、せめて染め直しの費用だけでも払わせてください」
(どうしましょう…)
ルシアは困ってリアムに視線をやった。
リアムはほほ笑み頷くと、ルシアの代わりにアリサに言った。
「たしか、ノースポール男爵領は染め物業が盛んでしたね。腕の良い職人を紹介していただければ、当方としては大変助かるのですが、いかがでしょう」
アリサはぱぁっと笑顔を作ってリアムを見た。
「ええ!染め物職人の知り合いはたくさんいますわ。もしご迷惑でなければ、ドレスをお預かりさせてください」
「お願いしていいのかしら」
「スチュワート伯爵令嬢様、ぜひそうさせてください。完成したらまたこちらへお持ちしてよろしいですか?」
「明日には領地へ戻ろうと思っているの。もしよければ領地の方へ届けてくださる?」
「かしこまりました」
「ではお願いするわね。それから、ルシアとお呼びになって」
「わたくしなどがお名前で呼んでよろしいのですか?」
「恩人ですもの。名前で呼んでください」
「…嬉しいです!わたくしのことも、アリサと呼んでください!」
「ええ、そうさせていただくわね」
ルシアとアリサはにっこりと笑い合った。
その後、アリサはドレスを受け取り持ち帰った。
そのことはノースポール男爵の耳にも入り、とんでもないことをしでかしたと仰天した。
その後すぐにスチュワート伯爵宛てに詫び状が届いた。
リアムはその晩、スチュワート伯爵ローガンの執務室に呼び出された。
リアムがノックすると、しばらくしてからローガンの声がした。
「入れ」
「失礼いたします。お呼び出しに応じ参りました」
ローガンは執務机に備え付けられた椅子にゆったりと腰を掛けていた。
リアムは執務机の前に立った。
「報告していないことがあるな?」
「はい、ございます」
「報告しろ」
「はい」
リアムはナリス第二王子の生誕パーティーで起きたことを、事実の通り報告した。
ローガンは静かに聞いていたが、額に青筋が立って、かなり怒っていることが見て取れた。
リアムが報告を終えると、ローガンは厳しい表情のまま言った。
「なるほど。アンドレイの娘の髪が燃えたのはお前の仕業か」
「はい」
「王宮では魔術を使えないふりをしろと言っただろう。宮廷魔術師以外は魔術を使えないように妨害シェルターが起動しているのだ。お前が簡単に魔術を使ってしまっては問題になる」
「…申し訳ありません。つい」
「お前はルシアのことになるとすぐに感情的になる。自分の感情をコントロールできなくてはルシアの側に置くことはできないぞ」
「はい、わかっています」
「ルシアは心優しい子だ。お前が令嬢たちの髪を燃やしたと知ったら傷つく」
「…以後、気を付けます」
リアムが反省したとみて、ローガンはふむ、と小さく頷いた。
「それで?ルシアを愚弄されて、どう落とし前をつけようと考えている?まさか、髪を燃やしただけで終わるつもりか?このままルシアを危険にさらし続けるつもりではあるまいな」
「もちろんです。明日には領地に帰り、万全の警護体制を取ります。…アンドレイ侯爵家はつぶします。自分にまかせていただいても?」
「よい。やれ」
「かしこまりました」
リアムは丁寧にお辞儀をして執務室から退出した。
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