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プロローグ
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なぜ僕は全てを失った?
僕が弱かったから?僕に力が無かったから?
___力があればこんな事にはならなかったのか?
街中のあらゆる方向、至る所から助痛々しい悲鳴が…必死に助けを求めるような声が耳に入ってくる。それは啜り泣くような声から悲痛な断末魔の様な叫び声まで様々で、それはその声を発している一人一人にそれぞれにかけがえの無い人生がある事を表している。いや、最早"あった"と…言うほうが正しい人間も中にはいるのだろう。
もし、僕が変わりに死んでいたら…もしかしたら、そんなこの世を去った人たちも未だに生きて悲鳴を上げたり、必死に生きようと全力で藻掻くことが出来ていたのかもしれない…
「・・・っぁぁ!」
僕は絶望の底から来る叫び声を身体の外に吐き出して楽になろうとするが、喉の奥に何かが支えているかのようになぜか声を上手く発することが出来ない。
父親を殺した。そうすれば、奴隷のようなクソみたいな生活を終えて誰よりも幸せな生活を送っていけるようになると…そう信じて疑っていなかったからだ。
お母さんを守れなかった。この世で最も愛していた人…僕のことを、あの吐瀉物や排泄物を混ぜ合わせて煮詰めたような父親から、己がなんど傷つけられようとも守ってくれた人。手の届く所にいたのに…僕があと少しだけでも早く覚悟を決めれていたら助けられたかも知れないのに。
皆を助けるために頑張っている"お姉さん"の事を助けようとした。独りぼっちになり絶望の底に居た僕を、震えながらも明るく照らしてくれたお姉さんは間違いなく僕の恩人だ。今思えば、他人のために迷わず命を掛けられる人と初めて出会い、それに触れる事によって僕も感化されたのかもしれない。
僕やお姉さんのことを助けてくれた、気のいい皆と全員で一緒に生き残りたかった。皆とても良い人たちで、助けを求める人たちを決して見殺しにはしなかった。だけど…だからこそそんな人達だから、僕とお姉さんを逃がすために皆は犠牲になってしまった。
「ごめん…ごめん…ごめんなさい…」
僕の喉から絞り出すような声で発せられた言葉は"謝罪"だった。それと共に胃酸が逆流してきて、喉の奥が焼けるように熱い感覚を覚える。
そうだ、僕が生きているから皆が死ぬのだ。お母さんだって、お姉さんだって、他の皆も僕の事なんかを助けようとしなければ死ぬことなんて無かったんだ。
死にたい、楽になりたい、あの世でもう一度お母さんに会いたい…これが僕の本心だ。これ以上他人に不幸をばら撒いてしまうくらいなら…いっそもうここで…
「・・・っぅぅ…ぅぁ…!」
僕は声を押し殺すように抑えながら、涙を流しながら目の前の"それ"に縋り付く。
それは、"先程までお姉さんだったもの"。僕自身が手に掛けたお姉さんの身体は冷たくなり、目にはもう光がなく、僕の事を照らしてくれる様な明るい口調で喋ってくれることももう無い。そんなお姉さんの遺体を見て、僕は思い直す。
自ら死を選ぶ?それは許されない。ここで僕が死んでしまえば、僕を助けるために死んでしまったお母さんとお姉さん、優しかった皆…その他の全員の死に意味が無くなってしまう。
だから僕は、この先、生きて生きて生きて生きて生きて!何が何でも全ての元凶を殺す…それが、僕に出来る皆への最大の償いだから___
そう決心した僕の胸に青白い光が確かに宿るのを感じ、僕はお姉さんの遺体に手を合わせてからゆっくりと立ち上がる。
「お姉さん…ありがとう。僕、貴方達の分まで精一杯生きるよ…!」
此処から先に絶望は要らない。だから、お姉さんには悪いけど"絶望"はここに置いて行かせてもらうよ。
その代わり、誰よりも幸せになって見せるから。天国で見ててよね___
僕が弱かったから?僕に力が無かったから?
___力があればこんな事にはならなかったのか?
街中のあらゆる方向、至る所から助痛々しい悲鳴が…必死に助けを求めるような声が耳に入ってくる。それは啜り泣くような声から悲痛な断末魔の様な叫び声まで様々で、それはその声を発している一人一人にそれぞれにかけがえの無い人生がある事を表している。いや、最早"あった"と…言うほうが正しい人間も中にはいるのだろう。
もし、僕が変わりに死んでいたら…もしかしたら、そんなこの世を去った人たちも未だに生きて悲鳴を上げたり、必死に生きようと全力で藻掻くことが出来ていたのかもしれない…
「・・・っぁぁ!」
僕は絶望の底から来る叫び声を身体の外に吐き出して楽になろうとするが、喉の奥に何かが支えているかのようになぜか声を上手く発することが出来ない。
父親を殺した。そうすれば、奴隷のようなクソみたいな生活を終えて誰よりも幸せな生活を送っていけるようになると…そう信じて疑っていなかったからだ。
お母さんを守れなかった。この世で最も愛していた人…僕のことを、あの吐瀉物や排泄物を混ぜ合わせて煮詰めたような父親から、己がなんど傷つけられようとも守ってくれた人。手の届く所にいたのに…僕があと少しだけでも早く覚悟を決めれていたら助けられたかも知れないのに。
皆を助けるために頑張っている"お姉さん"の事を助けようとした。独りぼっちになり絶望の底に居た僕を、震えながらも明るく照らしてくれたお姉さんは間違いなく僕の恩人だ。今思えば、他人のために迷わず命を掛けられる人と初めて出会い、それに触れる事によって僕も感化されたのかもしれない。
僕やお姉さんのことを助けてくれた、気のいい皆と全員で一緒に生き残りたかった。皆とても良い人たちで、助けを求める人たちを決して見殺しにはしなかった。だけど…だからこそそんな人達だから、僕とお姉さんを逃がすために皆は犠牲になってしまった。
「ごめん…ごめん…ごめんなさい…」
僕の喉から絞り出すような声で発せられた言葉は"謝罪"だった。それと共に胃酸が逆流してきて、喉の奥が焼けるように熱い感覚を覚える。
そうだ、僕が生きているから皆が死ぬのだ。お母さんだって、お姉さんだって、他の皆も僕の事なんかを助けようとしなければ死ぬことなんて無かったんだ。
死にたい、楽になりたい、あの世でもう一度お母さんに会いたい…これが僕の本心だ。これ以上他人に不幸をばら撒いてしまうくらいなら…いっそもうここで…
「・・・っぅぅ…ぅぁ…!」
僕は声を押し殺すように抑えながら、涙を流しながら目の前の"それ"に縋り付く。
それは、"先程までお姉さんだったもの"。僕自身が手に掛けたお姉さんの身体は冷たくなり、目にはもう光がなく、僕の事を照らしてくれる様な明るい口調で喋ってくれることももう無い。そんなお姉さんの遺体を見て、僕は思い直す。
自ら死を選ぶ?それは許されない。ここで僕が死んでしまえば、僕を助けるために死んでしまったお母さんとお姉さん、優しかった皆…その他の全員の死に意味が無くなってしまう。
だから僕は、この先、生きて生きて生きて生きて生きて!何が何でも全ての元凶を殺す…それが、僕に出来る皆への最大の償いだから___
そう決心した僕の胸に青白い光が確かに宿るのを感じ、僕はお姉さんの遺体に手を合わせてからゆっくりと立ち上がる。
「お姉さん…ありがとう。僕、貴方達の分まで精一杯生きるよ…!」
此処から先に絶望は要らない。だから、お姉さんには悪いけど"絶望"はここに置いて行かせてもらうよ。
その代わり、誰よりも幸せになって見せるから。天国で見ててよね___
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