上 下
12 / 30

第十二話 復讐者②

しおりを挟む
「はいもしもし、浅間です」

 校長から聞き出した連絡先にさっそく電話すると中年女性の声が通話口から聞こえてきた、恐らく陽子の母親だろう。

「もしもし、斉藤と申しますが陽子さんはご在宅でしょうか」

「陽子は仕事に出ていますが、どういったご要件でしょうか」 

 よし、実家暮らし確定。

「あのですね、こちら消費者金融のアデルと申しますが、陽子さんのお支払いが滞っていましてね、大変困っているという訳です、何時頃にお帰りになりますか?」

「いつも、二十時くらいですが、しょ、消費者金融ですか」

 実家に住んでいる事と帰宅時間が分かったのだから、すぐに電話を切っても良かったのだがせっかくだから馬鹿を産んだ親にも少しお灸をすえる事にした。

「すでに三ヶ月の滞納になっていまして、当社としましても強硬手段に出ざるを得ない状況です、失礼ですがお母様でしょうか」

「はい、そうです、あの、強硬手段とは」

「ええ、弊社なんですが普通の金融機関とは少し違っていまして、まあ有り体に言えば闇金です、ですので裁判などの正攻法で返済を迫ることはできません、逆に捕まってしまいますから」

「やみきん……」

 母親は絶句しているようだ、そりゃ自分の娘が闇金に手を出していたら言葉もなくなるだろう。

「いくらなんですか?」 

「五百万です」

 練馬在住の一般家庭じゃ五百万は大金だろう、しかし用意できない程の額ではないはずだ、さてどう出るか。

「でも、闇金とかは返済しなくてもいいって……」 

 中々知識はあるようだ、まあ今日日ワイドショーでもこの程度の事はやっているから情報として持っているのだろう。

「もちろんです、闇金は犯罪ですから、しかし我々としてもそれは分かった上で商売している訳ですね、陽子さんにも当然了承して頂いています、つまりコレは法律を超えた約束、人間同士の信頼で成り立っているのですよ」 

「でも……」 

「お母さん、約束を破った人間を私共の世界ではどうするかご存知ですか」 

「……」

「ご想像にお任せします、では」

 暇つぶしにもならなかったが幾分気分はスッとした、会社員と言うことは夜には家に帰って来るだろう、スマートフォンに映し出された浅間陽子を見て画面に唾を吐きかけたくなった。

 頻繁に更新されているSNSはどれもブランド品の自慢やランチの写真で埋めつくされていた、精一杯加工を施した自撮りの写真でもブスなのが確認できる。こんなブスがアップした情報が一体何の役に立つのか不明だったが、それなりにフォロワーが付いている事に驚愕した。

 
しおりを挟む

処理中です...