賞金王と呼ばれた男 〜童貞の果てしなき挑戦〜

桐谷 碧

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プロローグ

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「佐藤いけー」

「ジュキヤー!」
「寿木也くーん、頑張ってー」

 佐藤 寿木也さとうじゅきやは勢いよくピット離れすると、ターンマークの一番内側を周り舳先へさきをスタート方向に向けた、ヘルメット越しにも住之江競艇場の大歓声が聞こえてくる。

『競艇史上最年少賞金王』

 今から始まるおよそ一分四十五秒のレースで佐藤が得る栄冠は、賞金の一億円以上に価値があるものだった。

 スムーズなピット離れから綺麗な三対三の体形に落ち着く。『イン屋』も『捲り屋』もいない今日の優勝戦メンバーは一号艇の佐藤の優勝をより確実なものにさせた。実際にオッズは佐藤からの三連単は三桁配当がズラリと並んでいる。

 電光掲示板に映るオッズをみて佐藤は更に気合いが入る、幼い頃から周りの人間に期待されていた佐藤にプレッシャーは存在しなかった、周りの期待をそのままエネルギーに変換していく。

 大時計が回り始め長針が三時を過ぎる、いつものタイミングでスロットルレバーを握るとスタートラインに向かって走り出した、赤いカポックの三号艇が目に入ったが、佐藤は気に留める様子もなく自らのタイミングでスタートラインを全速で切った。

 全艇スタートは正常、佐藤は一マークに向けてスロットルレバーを握りこむと他艇より半艇身前に出る、この時点で優勝を確信した佐藤は慌てることなく一マークを周る。バックストレッチに入りチラリと後ろを振り返るが、すでに五艇身以上の差が開いていた。

 ターンマークを一つクリアする度に後続との差は開いていく、最後のターンマークを周りゴールラインを通過すると佐藤は右手で握っていたハンドルを離して拳を突き上げた。

 観客席に向かってガッツポーズをすると、割れんばかりの大歓声はいつまでも止むことなく佐藤の耳にこだました。
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