モラハラ夫との離婚計画 10年

桐谷 碧

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1,モラハラ夫の日常

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「うるさい! テレビが聞こえないだろバカ」

 食べ終えた食器はすぐに洗えと夫が言ったのは昨日の事だったが、私は「あ、ごめんね」と言ってシンクの蛇口を閉めた。

 テレビ画面ではプロ野球の中継、食い入るように画面を見つめる夫にバレないようにスコアを確認すると案の定ひいきのチームが負けていた。

 リビングにある三人掛けのソファで横になって焼酎を飲んでいるので私が座れるスペースは余っていない。もっとも野球には興味がないしゆっくり座っている時間もない。

 野球中継が終わる前に風呂を洗って湯を溜める、仕事に行く前に干しておいた洗濯物を取り込んで寝室で畳んでいると「おーい」と呼ばれた。

「焼酎おかわり」

「あっ、うん」

 寝転んだままの態勢でグラスを右手で掲げている、それを慎重に受け取りキッチンに入ると冷蔵庫からカットしてあるレモンを入れて氷を足す。

 計量カップで正確に焼酎の量を測ってから入れると炭酸水をゆっくりと注いだ。以前焼酎が濃すぎると、前蹴りを腹に喰らってからは正確に分量を測るようにした。夫はその様子を見て満足そうに頷いていた。正解だったようだ。

「置いとくね」

ガラス製のローテーブルにグラスを置いて寝室に戻り途中だった洗濯物を畳む。家政婦のような生活も慣れてしまえば我慢できる。

 夫とのセックスをのぞけば――。

 ワイシャツにアイロンをかけて明日着ていく予定のスーツ、靴下、ハンカチを専用のハンガーにかけておく。以前ハンカチを忘れた時にはスタンガンを当てられた、防犯用にと夫から私にプレゼントされたそれは、気を失うほどの電撃だった。

 夫は決して顔は殴らない、セックスの時に腫れていると萎えるからだと泥酔した時に言っていたが、世間体を気にしているのはマンションの住人や管理人に対する態度からも明らかだった。

優香ゆうかー」

 甘ったるい声色に背筋が凍りついた、夫のスイッチは突然入る、CMに好みの女が出ていたり、若いアイドルがミニスカートで映し出されると、とたんに欲情する。そして寝室の扉が開かれた。

「制服着てくれよ、セーラー服が良いなぁ」

 下卑た笑みを浮かべながら寝室に入ってきた夫の下半身はすでに大きく膨らんでいる、身長は170センチにも満たないのにアレのサイズは私が見た中でも群を抜いて大きかった。体のサイズとは比例しないようだ。

 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い――。

 そんな内心はおくびにもださずに「うん」と頷いた。通販で夫が購入した安っぽい生地のセーラー服はスカートの丈が以上に短い。ルーズソックスとセットで置かれていた。

「ルーズソックスがない制服なんてネタの無い寿司と一緒だろーが!」

 裸足でベッドに入った時に激昂する夫を初めて見た時にはすでに何かを諦めていたのかも知れない。

「ハァハァ……優香、いれるぞ」

 私を立たせたまま、壁に手を突かせて後ろから挿入してくる夫を他の男に無理やり変換する、そうしないと濡れないから。

「うん、いいよ」

 結局、その日はカチューシャまで装備させられると無駄に長い挿入時間を歯を食いしばって耐え忍んだ。幸か不幸かバックでするのが好きな夫に顔は見られない。いい気味だ、この下手くそ。

 結婚して三年、離婚まであと七年――。
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