モラハラ夫との離婚計画 10年

桐谷 碧

文字の大きさ
13 / 56

13

しおりを挟む
 鼻歌まじりで洗濯物を干しながら大変なことに気がついた。

 もし、あの二人が本気で付き合い出して私が邪魔になったら即離婚。

 まずい、いま離婚を切り出されても。

 すばやく計算する、年間600万×3年で1,800万に不倫の慰謝料で300万円。

 うーん。目標にはほど遠い。残りの人生を考えてもやはり6000万は欲しいところだ。

 仕方ない――。

 この技はなるべく避けたかったが、いや、そんな事を言ってる場合じゃないか。

 決意するや否や私はクローゼットを漁り、某アイドルの衣装を引っ張り出した。ドンキで売ってたやつ。

 素早く着替えて洗面台に向かうと髪をとかして高めのツインテールを作り、夫が結婚前にどハマりしていたアイドルの一人に寄せた。全然よらないけど……。

 雰囲気はある、こんな時だけは凹凸のない平べったい体は様になる。幼児体型。化粧もそれに合わせてナチュラルにした。

「よし」

 一つ気合を入れると玄関の扉が開く音がする。猫撫で声で迎えた。

「おかえりぃー。二日も会えなくて寂しかったにゃん」

 グーを二つ作って上目遣いで夫を見つめた。夫は一瞬驚いた表情を作った後に、同じようにぐーを作り私のそれにコツンと合わせた。違う、グータッチじゃない。それは原監督。

「どーした。変なもんでも博多で食わされたか?」

 くっ。まるで冷めた対応。そんなにえりこの体が良かったのか。

「好きでしょ、こーいう格好」

「昔はな、それより部屋散らかってた――」

 喋りながらリビングに入る夫、辺りを見渡して目を見開いた。

「すげー、いつの間に」

「あっ、うん。お寿司とか残ってたけど捨てちゃったよ」

「いや、ぜんぜん。やっぱ女は家事が出来ないとなぁ。優香はすごいよ」

 三年の結婚生活で初めて家事を労われた。クソ野郎に褒められてもね……とは不思議と思わなくて素直に嬉しかった。

「いつもありがとうな」

 そう言って抱きしめてきた夫からは香水の匂いが微かにした、シャネルのチャンス。

 むかし、出会った頃に私がつけていた香水。夫が大好きだと言った私の香り。

 今は別の女の匂い――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...