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17,孤独
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「はあ? 喧嘩?」
母は呆れたように眉間に皺をよせた。結局行くあてもない私は電車で三十分の実家に帰る。咄嗟に奪い取ったスマートフォンがあれば最近は財布も必要ない。
「うん、ちょっと」
「どうせ、原因はあなたなんでしょう? まったくあんなに出来た旦那さんいないわよ」
ああ、、、。言うと思った。八方美人の内弁慶。私以外には礼儀正しく行儀良く。愛想も良ければ気前もいい。
「はやく謝っちゃいなさいよ、長引いても仕方ないでしょ」
謝る? 私が? 何を?
「離婚、とか……どうかな?」
母の目が途端にスッと据わる。お茶を一口啜ると勢いよくテーブルに置いた、飛沫が飛び散り顔にかかる?
「熱っ」
「このバカ! あんたみたいにだらしない女、他に誰が貰ってくれるの! いい加減にしなさい! 子供も出来ないあんたに文句も言わない出来た旦那さんじゃないの!」
意図的に作ってないんだよ、あんな奴の子供を可愛がれるか。
「ほら、お茶飲んだらさっさと帰る、まったく、この子は」
疫病神を追い払うように家から出された。帰りたくない、どうしよう。
どうしようなんて考えながら行き先は決まっていた、家にも、実家も追い出されたの、だから来ちゃった。
わざわざ実家に行ったのは自分に言い訳する為、恒くんに同情させるため。
電車を乗り継ぐ、家は分かってるから。いきなり行ったら迷惑かな。今日は月曜日、会う日じゃないから少し不安。
恒くんが住むマンションに着いた頃には十二時を回ってた。SNSに送ったメッセージには返信がない。
三階の一番端、電気はついてるからまだ寝てない。それでもオートロックのインターホンを鳴らすのは躊躇われて、エントランスに入っては出てをくり返した。
どうしようか悩んでいると恒くんの部屋のベランダに人影が見えた。
「あっ」
と思った声を無理やり喉の奥に押し込んで体を電柱の影に隠した。人影は髪の長い女だった。
女がタバコを咥えて火につける様子をじっと観察していた。
「だれ?」
小声で呟く。部屋間違えたかな。そんな気もする。
するとベランダに人影がもう一つ、それは愛おしそうに女を後ろから抱きしめる。女が差し出した吸いかけのタバコに口をつけた。オレンジ色の先端が一瞬、明るくなる。
「恒くん……?」
違う、恒くんはタバコ吸わないし。あの女誰だし。もう十二時過ぎてるから今は火曜日。私の日。
二人がベランダから部屋に入ったのを見送ると、フッと電気が消えた。私は混乱と嫉妬が入り混じる感情のまま走ってエントランスを目指す。
オートロックの301を押すと『ピーンポーン』と静かなエントランスに鳴り響く。
出ない、恒くん。出て。
何度も押す、何度も、何度も。
何の反応も無かった、ポケットに入れたスマートフォンが鳴っている。
「恒くん!」
急いで取り出した拍子に手元から離れて床に落ちた。拾うと画面がバキバキに割れていたけど着信は続いてる。
歪んだ画面に表示されたのは旦那の名前だった。私はスマートフォンを思い切り地面に叩きつけるとそれはやっと静かになった。
母は呆れたように眉間に皺をよせた。結局行くあてもない私は電車で三十分の実家に帰る。咄嗟に奪い取ったスマートフォンがあれば最近は財布も必要ない。
「うん、ちょっと」
「どうせ、原因はあなたなんでしょう? まったくあんなに出来た旦那さんいないわよ」
ああ、、、。言うと思った。八方美人の内弁慶。私以外には礼儀正しく行儀良く。愛想も良ければ気前もいい。
「はやく謝っちゃいなさいよ、長引いても仕方ないでしょ」
謝る? 私が? 何を?
「離婚、とか……どうかな?」
母の目が途端にスッと据わる。お茶を一口啜ると勢いよくテーブルに置いた、飛沫が飛び散り顔にかかる?
「熱っ」
「このバカ! あんたみたいにだらしない女、他に誰が貰ってくれるの! いい加減にしなさい! 子供も出来ないあんたに文句も言わない出来た旦那さんじゃないの!」
意図的に作ってないんだよ、あんな奴の子供を可愛がれるか。
「ほら、お茶飲んだらさっさと帰る、まったく、この子は」
疫病神を追い払うように家から出された。帰りたくない、どうしよう。
どうしようなんて考えながら行き先は決まっていた、家にも、実家も追い出されたの、だから来ちゃった。
わざわざ実家に行ったのは自分に言い訳する為、恒くんに同情させるため。
電車を乗り継ぐ、家は分かってるから。いきなり行ったら迷惑かな。今日は月曜日、会う日じゃないから少し不安。
恒くんが住むマンションに着いた頃には十二時を回ってた。SNSに送ったメッセージには返信がない。
三階の一番端、電気はついてるからまだ寝てない。それでもオートロックのインターホンを鳴らすのは躊躇われて、エントランスに入っては出てをくり返した。
どうしようか悩んでいると恒くんの部屋のベランダに人影が見えた。
「あっ」
と思った声を無理やり喉の奥に押し込んで体を電柱の影に隠した。人影は髪の長い女だった。
女がタバコを咥えて火につける様子をじっと観察していた。
「だれ?」
小声で呟く。部屋間違えたかな。そんな気もする。
するとベランダに人影がもう一つ、それは愛おしそうに女を後ろから抱きしめる。女が差し出した吸いかけのタバコに口をつけた。オレンジ色の先端が一瞬、明るくなる。
「恒くん……?」
違う、恒くんはタバコ吸わないし。あの女誰だし。もう十二時過ぎてるから今は火曜日。私の日。
二人がベランダから部屋に入ったのを見送ると、フッと電気が消えた。私は混乱と嫉妬が入り混じる感情のまま走ってエントランスを目指す。
オートロックの301を押すと『ピーンポーン』と静かなエントランスに鳴り響く。
出ない、恒くん。出て。
何度も押す、何度も、何度も。
何の反応も無かった、ポケットに入れたスマートフォンが鳴っている。
「恒くん!」
急いで取り出した拍子に手元から離れて床に落ちた。拾うと画面がバキバキに割れていたけど着信は続いてる。
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