モラハラ夫との離婚計画 10年

桐谷 碧

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「よくやった!」

 夫に妊娠を告げると破顔して喜んだ。罪悪感は無い。コイツに受けた仕打ちを思えば当たり前だ。

「だから、前蹴りとかやめてね……」

 ゆうくんと私の大切な子供。私はお腹を軽く撫でた。愛おしい。この中にいるんだ。

「ばーか、お前がされないように気をつけるんだろーが。事象は過程を経て一一」

「赤ちゃんに何かあったら殺すから……あなたの事。必ず殺す」

 私は視線に殺気を込めて睨みつけた。夫は目を見開いて後ずさる。

「冗談だよ、冗談。妊婦に前蹴りする奴がいるかよ」

 貴様は常識じゃ計れないんだよ。


 吐き気、匂い、眠気、頭痛。あらゆるつわりの症状が私を襲った。どうやらかなりひどい方らしい。

 かと言って夫が何か協力してくれる訳でもなく、仕事も普通にこなしている。妊娠を理由にセックスを拒否できる事だけが幸いだった。

 それでもあまりにひどい時には会社を休んで一日中横になっていた。そんな私を見て夫は言う。

『お前は大袈裟なんだよ、みんな普通に働いて家事もしてるだろ。そんなんだから派遣なんだよ』

『なあ頼むよ、口でしてくれよ。溜まってんだよ』

『お前は楽で良いよなあ』

 何を言われても平気だった。以前のような殺意も湧かない。だってお腹にいるのはあなたの子供じゃないから。あなたが協力する理由はない。しなくて良い。関わらないで。私たちに。


『なんか気持ちわりいな』

 次第に大きくなっていくお腹を見た夫の感想。もう口すら求めなくなっていた。次第に家に帰ってこなくなり私は精神的にも肉体的にも落ち着いていた。

 里帰りと言うほど距離は離れてないけど、出産直前は有給を取得して実家でのんびりと過ごした。

 恒くんは私の出産を祝ってくれたし、母も喜んだ。

『名前は決めたのか?』と父が聞く。

 女の子だと言う事は判明している、名前もゆうくんと二人で決めた。念のため夫に確認したが「何でも良いよ」とすでに興味を失っていた。

 そして離婚まで六年を切った夏の終わり。私は無事に出産した。

 不倫相手の子供を一一。
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