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第14話 襲撃 3
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ボクはオズワルドの背後から化け物をそっと覗いた。
赤黒く溶岩のように燃え盛るゴリラに翼があるような化け物が、ボクたちに向かって飛んでくる。
カーティスは殺気を全身にまとって化け物を睨み叫ぶ。
「やはり狙いはセインさまかっ! このカーティス、命に代えてもセインさまをお守りしますっ!」
「無理をするな、カーティス! 我も戦えるっ!」
セインも真剣な表情を浮かべて剣を構えている。
ボクたちのすぐそばにいるけど、カーティスも、セインも、オズワルドに守ってもらう気なんて欠片もないようだ。
クラスメイトなのにボクとは大違いだ。
緊張感が張り詰めるなか、化け物の羽ばたきと共に、熱気がボクたちを襲った。
「熱っ!」
空気だというのに燃えてしまいそうな熱気だ。
オズワルドが冷気をまとわせた剣を振って熱気を払う。
しかし化け物本体が溶岩のように熱い。
吐く息すら生き物では危険な熱さだ。
「くそっ! 空から来られたら、手も足も出ないっ」
オズワルドが嘆いている。
もともとオズワルドは文官だ。
劣性とはいえアルファだから人間相手ならそれなりの勝負になるが、化け物相手は最初からムリだ。
「アイリスッ! 今行くぞっ!」
お母さまの声が聞こえる。
大剣を振るい戦い慣れしているお母さまなら、この化け物もなんとかなるかもしれない。
だが。
「うわっ、壁がっ!」
「木がっ!」
屋敷の壁や庭の木が来客たちの上に降り注ぐのを薙ぎ払いながら進むお母さまの歩みは遅い。
ドスン、バンッと何かが落ちたり壊れたりする音や振動を感じるものの、助けはなかなか来ない。
自分たちで何とかするしかないのだ。
「アイリス。心配しなくていい。オレにだって多少の魔法は扱える」
オズワルドは右手で剣を構えながら襟元からネックレスにぶら下がる魔法道具を取り出した。
あれは防御壁が展開されるやつだ。
ボクがオズワルドにプレゼントしたものだよ。
ずっと身に着けてくれていたんだ。
嬉しいね。
……って、そんな場合じゃないっ。
「来るぞっ、オレの陰に隠れて!」
「はいっ」
ボクは再びしっかりとオズワルドの陰に隠れた。
でもなんで?
化け物はギラギラと光る赤い目でボクを見ている。
狙いはボク?
え? なんで?
ボクの腕のなかでシロが震えている。
守ってあげるよ、シロ。
でもボクの足はガタガタ震えて、立ってるだけでせいいっぱいだけどね!
化け物はドンと地上に足をつけた。
鳥のような足は炎が上がっていて、近くの花壇の花が枯れた。
熱のせいかもしれないが、瘴気も出ている可能性もある。
もし瘴気が出ているのなら、近付かれただけで人間の命を脅かす。
しかもボクたちのほうへ地面を揺らしながら近付いてきている。
異変に気付いたセインが声を上げた。
「あの化け物、アイリスを狙っているのか⁉」
「分かりませんっ。アイリスさまを狙っていると見せかけて、本当の狙いはセインさまかもしれませんっ! 油断なさらないようにっ」
「分かっているっ」
カーティスに注意されて、セインがイラっとした声を上げた。
おいおい、セイン。
この事態で変に騒ぐなよ。
化け物がギロッとセインを睨んだ。
うわぁー、こわーい。
そのままセインのほうへ行ってくれないかなぁ?
などとボクが思っていると、化け物は再び顔の向きを変えて、ガッとこちらを見た。
怖い。
ボク、化け物の恨みをかうようなことしてないよー。
化け物ゴリラは天に向かって吠えた。
轟音が辺りを揺るがす。
でも……。
マキシム?
あの化け物、名前を呼んでないか?
そんなことを思った瞬間、ボクたちのほうへ大きな手が伸びてきた。
「危ないっ!」
オズワルドが叫びながら剣を振った。
ボクは両腕をクロスさせてシロを抱きしめながら化け物に手のひらを向けた。
鋭くて大きな黒い爪が、ボクの前を横切って、空を切る。
黒い爪の先と溶岩のような皮膚がピッと切れて、ボクたちの上に降り注いだ。
サッとオズワルドは避けたけれど、炎を上げて燃える鋭い欠片が彼に降りかかった。
ピッと頬をかすめた欠片のせいで、オズワルドの肌がスッと切れた。
白い肌に赤い血がツゥーと伝う。
その時、ボクの頭が怒りでカッと赤く染まった。
一瞬のことだ。
全身を何がが巡って。
気付いた時には、ボクの手のひらから白く強烈な光が化け物に向かって放たれていた。
赤黒く溶岩のように燃え盛るゴリラに翼があるような化け物が、ボクたちに向かって飛んでくる。
カーティスは殺気を全身にまとって化け物を睨み叫ぶ。
「やはり狙いはセインさまかっ! このカーティス、命に代えてもセインさまをお守りしますっ!」
「無理をするな、カーティス! 我も戦えるっ!」
セインも真剣な表情を浮かべて剣を構えている。
ボクたちのすぐそばにいるけど、カーティスも、セインも、オズワルドに守ってもらう気なんて欠片もないようだ。
クラスメイトなのにボクとは大違いだ。
緊張感が張り詰めるなか、化け物の羽ばたきと共に、熱気がボクたちを襲った。
「熱っ!」
空気だというのに燃えてしまいそうな熱気だ。
オズワルドが冷気をまとわせた剣を振って熱気を払う。
しかし化け物本体が溶岩のように熱い。
吐く息すら生き物では危険な熱さだ。
「くそっ! 空から来られたら、手も足も出ないっ」
オズワルドが嘆いている。
もともとオズワルドは文官だ。
劣性とはいえアルファだから人間相手ならそれなりの勝負になるが、化け物相手は最初からムリだ。
「アイリスッ! 今行くぞっ!」
お母さまの声が聞こえる。
大剣を振るい戦い慣れしているお母さまなら、この化け物もなんとかなるかもしれない。
だが。
「うわっ、壁がっ!」
「木がっ!」
屋敷の壁や庭の木が来客たちの上に降り注ぐのを薙ぎ払いながら進むお母さまの歩みは遅い。
ドスン、バンッと何かが落ちたり壊れたりする音や振動を感じるものの、助けはなかなか来ない。
自分たちで何とかするしかないのだ。
「アイリス。心配しなくていい。オレにだって多少の魔法は扱える」
オズワルドは右手で剣を構えながら襟元からネックレスにぶら下がる魔法道具を取り出した。
あれは防御壁が展開されるやつだ。
ボクがオズワルドにプレゼントしたものだよ。
ずっと身に着けてくれていたんだ。
嬉しいね。
……って、そんな場合じゃないっ。
「来るぞっ、オレの陰に隠れて!」
「はいっ」
ボクは再びしっかりとオズワルドの陰に隠れた。
でもなんで?
化け物はギラギラと光る赤い目でボクを見ている。
狙いはボク?
え? なんで?
ボクの腕のなかでシロが震えている。
守ってあげるよ、シロ。
でもボクの足はガタガタ震えて、立ってるだけでせいいっぱいだけどね!
化け物はドンと地上に足をつけた。
鳥のような足は炎が上がっていて、近くの花壇の花が枯れた。
熱のせいかもしれないが、瘴気も出ている可能性もある。
もし瘴気が出ているのなら、近付かれただけで人間の命を脅かす。
しかもボクたちのほうへ地面を揺らしながら近付いてきている。
異変に気付いたセインが声を上げた。
「あの化け物、アイリスを狙っているのか⁉」
「分かりませんっ。アイリスさまを狙っていると見せかけて、本当の狙いはセインさまかもしれませんっ! 油断なさらないようにっ」
「分かっているっ」
カーティスに注意されて、セインがイラっとした声を上げた。
おいおい、セイン。
この事態で変に騒ぐなよ。
化け物がギロッとセインを睨んだ。
うわぁー、こわーい。
そのままセインのほうへ行ってくれないかなぁ?
などとボクが思っていると、化け物は再び顔の向きを変えて、ガッとこちらを見た。
怖い。
ボク、化け物の恨みをかうようなことしてないよー。
化け物ゴリラは天に向かって吠えた。
轟音が辺りを揺るがす。
でも……。
マキシム?
あの化け物、名前を呼んでないか?
そんなことを思った瞬間、ボクたちのほうへ大きな手が伸びてきた。
「危ないっ!」
オズワルドが叫びながら剣を振った。
ボクは両腕をクロスさせてシロを抱きしめながら化け物に手のひらを向けた。
鋭くて大きな黒い爪が、ボクの前を横切って、空を切る。
黒い爪の先と溶岩のような皮膚がピッと切れて、ボクたちの上に降り注いだ。
サッとオズワルドは避けたけれど、炎を上げて燃える鋭い欠片が彼に降りかかった。
ピッと頬をかすめた欠片のせいで、オズワルドの肌がスッと切れた。
白い肌に赤い血がツゥーと伝う。
その時、ボクの頭が怒りでカッと赤く染まった。
一瞬のことだ。
全身を何がが巡って。
気付いた時には、ボクの手のひらから白く強烈な光が化け物に向かって放たれていた。
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