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逃走中

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「で、どうやって河原まで行く?」
「そうねぇ」

 マスミとリオは、そっと窓の外を見た。
 案の定、黒いスーツの人たちが外をウロウロしているのが見えた。
 道行く人や庭に出ている人に話を聞きながら、コチラに向かってくるようだ。

「どうやってごまかすか」
「ミュルに変身して貰うのは?」
「それはいいわね」
「小さい物になれるのかなぁ」
「ミュ?」

 ミュルは何度か変身してみせた。が、大きさを変えるのは難しいようだった。キーホルダーに変身しても、サイズが変わらないなら大き過ぎて付けられない。

「もう、こうなったら、散歩に行くふりして出かける方が早くない? 大きなぬいぐるみを抱えて道を行くより、犬の散歩のほうが目立たないわ」
「そうだね。リオの言う通りだ。そうしようか」
「うん」

 さっそく三人組と一匹は河原に行くことにした。

 家を出ると、パパさんが庭いじりをしていた。

「散歩がてら、河原に行ってみるねー」
「ああ、行ってらっしゃい。河原で見つけたなら、飼い主さんもそこを探しているかもしれないからね」
「うん、分かってる。じゃ、行ってくる―」
「行ってきまーす」
「またあとでー」

 ハルカとミュル、マスミとリオという順番で通りに出ていく。敷地を出る時には、あたりに黒いスーツの大人たちがいないタイミングを見てからにした。そうして正解だった。ハルカたちが家を出たとの入れ違いに、黒いスーツの大人が、パパさんに話しかけるのが見えたからだ。ハルカたちは追いつかれないように、急いで河原まで駆けて行った。
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