【完結】無敗の軍神は愛しき夫の子を孕む【全年齢BL】

天田れおぽん

文字の大きさ
10 / 25

第10話  新生活

しおりを挟む
 美しい見た目に反して意外と気さくなイーリスは、あっという間に屋敷に馴染んだ。

 執事エタンセルも笑顔で主人へ言う。

「よい方がおいでになって、よかったですね、旦那さま」
「ん、そうだな」

 ラファーガはエタンセルから書類を受け取りながら返事をした。
 イーリスには宰相補佐という仕事があるが、新婚ということで長期休暇を与えられている。
 ラファーガの方は、今日も執務室で机の前に座って執務にあたっていた。

「ですが、これが結婚かと言われると悩みますね」
「それを言うなよ、エタンセル」

 ラファーガは澄ました顔をしている執事に向かって苦笑を浮かべた。
 イーリスとの生活は楽しいが、妻を迎えたというのには程遠い。

「男性同士ということもありますが、これはただの同居です」
「ハハッ。そりゃ、そうだよ」

 正解を胸を張って言う執事に、ラファーガは声を上げて笑った。
 最近見ることの少なくなった無邪気な笑顔に、エタンセルは目元を緩めて主人を見る。
 
「でもイーリスさまに来ていただいてよかったです。屋敷のなかに花が咲いたようで……おや話題の主は、本物の花に囲まれておいでですね」
「ん?」

 ラファーガは執事の視線を追って、窓の外を見た。
 執務机の後ろにある窓からは庭が見える。
 庭の真ん中では、イーリスが花を抱えて笑っていた。
 
「まだ雪が残っているというのに、咲いている花もあんなにあるんだな」
「流石に温室の花も混ざっていると思いますが、それでも季節は確実に春へと向かっていますね」

 ラファーガは執事に向かって頷きながら思う。

(イーリスさまのいる生活は、本当に華があるな)

 気さくなイーリスは、使用人たちとも気軽に話す。
 そうすることで王国を上手く動かすヒントを探しているようにも見えるが、話しかけられた側に悪い印象を与えるものではない。

(イーリスさまは、未来の宰相さまだからな。使用人たちも喜んで情報提供するだろう。彼と話すのは楽しいし)

 取っつきにくい印象のイーリスだが、話しだせば楽しいし、使用人たちの話も聞いてくれるとあって、使用人たちからの人気も高いようだ。
 もちろんラファーガもファンの1人だ。
 そして花を抱えるイーリスを見て、自分もあの花のように抱きしめられたい、と思ったりもする。

(だが、この気持ちを彼に知られて嫌われたくない。どうせ死ぬならこのまま……)

 ラファーガには、自分の本心をイーリスに伝えるつもりはなかった。

(イーリスさまの一番の関心事は国のことだ。私は国防上のかなめ。事情を知れば、無理をしてでも私を抱こうとするだろう)

 それは嫌だとラファーガは思ったのだ。
 イーリスに対して複雑な思いを抱くラファーガの心の内など知らない執事は、無邪気に尋ねる。

「昨日は、お2人で乗馬をなされたのでしょう?」
「ああ。屋敷周辺の案内を兼ねてな」
「意外とイーリスさまはアクティブでいらっしゃる」

 鍛錬場に通っていたイーリスは、乗馬も得意だ。

「乗馬も上手だし、剣の腕前もなかなかだよ」

 執事は驚いた表情を大袈裟に作った。

「それは意外ですね。意外といえば、食事量もです。あんなに細いのに……」
「そうだな。大人になってからは、食事を共にする機会もなかったが。子供の頃と食べる量がそう変わっていないとは思わなかったから、驚いたよ」

 屋敷にして初めて2人で食事をしたとき、10代の少年並みの食欲を見せるイーリスにラファーガは目を丸くした。
 執事は目を細めて言う。

「ふふ。でもイーリスさまにつられて、旦那さまも沢山召し上がるようになってよかったです」
「2人で摂る食事は楽しいからね」

 少し照れながらラファーガは答えた。
 イーリスとの生活は楽しい。
 このままずっと何十年と続けていきたいほどに。
 そんなラファーガの思いをあざ笑うように、呪いは徐々にラファーガの体を蝕んでいる。

(でもイーリスさまの意に沿わないことを強いて呪いを解くより、このまま死んでしまったほうがマシだ)

 ラファーガの決意は固かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の (本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である) 異世界ファンタジーラブコメ。 魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、 「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」 そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。 魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。 ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。 彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、 そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』 と書かれていたので、うっかり 「この先輩、人間嫌いとは思えないな」 と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!? この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、 同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、 「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」 「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」 とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑) キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、 そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。 全年齢対象です。 BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・ ぜひよろしくお願いします!

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

処理中です...