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第21話 愛ある偽装
オラノスは腕を組み、ソファに寝そべったラファーガを見てブツブツ呟く。
「妊娠はめでたいことだが……いや、めでたいか? まぁそれはともかく。ラファーガが妊娠していることがバレたら国防上、マズイな?」
「そうですな、国王陛下」
オラノスの言葉に、宰相であるストーム侯爵は激しく頷く。
休憩室は急遽、会議室へと様相を変えた。
(面倒なことになったが、私は早くもこの子が愛おしい。生まれてくる日が待ち遠しいな?)
ラファーガの楽しそうな様子に、オラノスは右手で自分の顎を掴みながら唸る。
ストーム侯爵は青い顔をして両手を自分の頬に当てながら口を開く。
「【軍神】さまが妊娠している、なんてことを他国に知られたら、王国の危機を招くことになりかねません」
「んー……そうだよなぁ。どうするか……」
真面目な顔をして唸る国王と宰相を見て、老医師はどうってことないといった様子で言う。
「ラファーガさまが妊娠しているのではなく、イーリスさまが妊娠されていることにすればよいのではないですか? その程度の嘘なら許されるでしょうし、男を孕ませるなんて流石は【軍神】さまだという話にもっていけるでしょう」
「「おっ⁉ その案、乗った!!!」」
「「え⁉」」
国王と宰相が老医師の提案に喜んで乗っかるのを見ながら、ラファーガとイーリスは驚きの声を上げた。
とはいえ、国王と宰相相手にラファーガたちが反対の意見を通せるはずもなく。
国防のためというの名目で、イーリスの偽装妊娠が決定したのだった。
◇◇◇
ラファーガは慣れない領地経営に集中するという名目で、王家主催の夜会以降、屋敷に引きこもる生活を続けた。
イーリスの方はといえば、宰相補佐としての仕事が再開した。
毎日のように城へ向かい、父であるストーム侯爵から仕事を教え込まれた。
「イーリスさまだ」
「おい、あの腹を見ろ。太ったというには、あまりに不自然だ」
「噂は本当だったんだな」
「妊夫か」
「流石は【軍神】さまだなー。男まで孕ませてしまうとは!」
イーリスはイライラしながら城の廊下を歩いていた。
(ラファーガの妊娠に気付かれるのはマズイけど、オレが好奇の視線を浴びるのも納得できねぇー。ラファーガは凄いよ? そこは認めてくれて嬉しいよ? でもなぁ。オレを性的な目で見るのはヤメロ!)
イライラしていやらしい視線を向ける貴族たちに殴りかかりたくなるイーリスだった。
妊娠を偽造するために、腹に綿を詰めたクッションのようなものをベルトで巻き付けているのも、イライラする原因のひとつだ。
(偽物とはいえ邪魔だし、妙に暑いのが嫌だ。だがこれもラファーガと生まれてくる子のためだ。我慢しよう)
イーリスはラファーガを愛しているし、生まれてくる子も愛おしい。
(安心して暮らせるように、オレは自分にできることを頑張らなきゃ)
宰相の執務室への扉を開けながら、イーリスは改めて心に誓った。
「おはようございます」
イーリスが元気に挨拶して室内に入れば、父であるストーム侯爵が気遣わしげな表情を浮かべて聞く。
「おはよう、イーリス。今日の調子はどうだ?」
「上々です、父上」
(父上が気にしているのはラファーガの体調だけど、それをそのまま言うわけにはいかないからな)
国王であり、ラファーガの親友であるオラノスもそうだ。
イーリスの体調を聞くふりをしてラファーガの体調を気遣っている。
(まぁ、皆。ラファーガのことと、オレとラファーガの子どもの心配をしてくれているわけだし? オレもココで踏ん張って頑張らないとな。イラつくからって貴族を殴って、偽装妊娠がバレたら一大事だ!)
イーリスは父となる日を楽しみにしながら、父になるための妙ちくりんな試練と向き合っていた。
◇◇◇
屋敷に戻れば、ふっくらした腹を抱えたラファーガがイーリスを出迎える。
「ただいま、ラファーガ」
「おかえり、イーリス」
「体調はどうだい?」
ソファにゆったりと寝そべるようにして座っているラファーガの隣にイーリスは潜り込むようにして座ると、彼の腹を撫でた。
「ふふ。今日も医師が診察に来たけど……順調なようだよ」
「そうか」
ラファーガの妊娠は極秘事項だ。
老医師は隠し通路を使ってラファーガの診察に来ていた。
「なにせ男の妊娠だからな」
「あぁ……それはもちろんだけど……」
「ん? どうした? ラファーガ?」
イーリスは不安そうなラファーガに気付いて、その顔を覗き込んだ。
「妊娠はめでたいことだが……いや、めでたいか? まぁそれはともかく。ラファーガが妊娠していることがバレたら国防上、マズイな?」
「そうですな、国王陛下」
オラノスの言葉に、宰相であるストーム侯爵は激しく頷く。
休憩室は急遽、会議室へと様相を変えた。
(面倒なことになったが、私は早くもこの子が愛おしい。生まれてくる日が待ち遠しいな?)
ラファーガの楽しそうな様子に、オラノスは右手で自分の顎を掴みながら唸る。
ストーム侯爵は青い顔をして両手を自分の頬に当てながら口を開く。
「【軍神】さまが妊娠している、なんてことを他国に知られたら、王国の危機を招くことになりかねません」
「んー……そうだよなぁ。どうするか……」
真面目な顔をして唸る国王と宰相を見て、老医師はどうってことないといった様子で言う。
「ラファーガさまが妊娠しているのではなく、イーリスさまが妊娠されていることにすればよいのではないですか? その程度の嘘なら許されるでしょうし、男を孕ませるなんて流石は【軍神】さまだという話にもっていけるでしょう」
「「おっ⁉ その案、乗った!!!」」
「「え⁉」」
国王と宰相が老医師の提案に喜んで乗っかるのを見ながら、ラファーガとイーリスは驚きの声を上げた。
とはいえ、国王と宰相相手にラファーガたちが反対の意見を通せるはずもなく。
国防のためというの名目で、イーリスの偽装妊娠が決定したのだった。
◇◇◇
ラファーガは慣れない領地経営に集中するという名目で、王家主催の夜会以降、屋敷に引きこもる生活を続けた。
イーリスの方はといえば、宰相補佐としての仕事が再開した。
毎日のように城へ向かい、父であるストーム侯爵から仕事を教え込まれた。
「イーリスさまだ」
「おい、あの腹を見ろ。太ったというには、あまりに不自然だ」
「噂は本当だったんだな」
「妊夫か」
「流石は【軍神】さまだなー。男まで孕ませてしまうとは!」
イーリスはイライラしながら城の廊下を歩いていた。
(ラファーガの妊娠に気付かれるのはマズイけど、オレが好奇の視線を浴びるのも納得できねぇー。ラファーガは凄いよ? そこは認めてくれて嬉しいよ? でもなぁ。オレを性的な目で見るのはヤメロ!)
イライラしていやらしい視線を向ける貴族たちに殴りかかりたくなるイーリスだった。
妊娠を偽造するために、腹に綿を詰めたクッションのようなものをベルトで巻き付けているのも、イライラする原因のひとつだ。
(偽物とはいえ邪魔だし、妙に暑いのが嫌だ。だがこれもラファーガと生まれてくる子のためだ。我慢しよう)
イーリスはラファーガを愛しているし、生まれてくる子も愛おしい。
(安心して暮らせるように、オレは自分にできることを頑張らなきゃ)
宰相の執務室への扉を開けながら、イーリスは改めて心に誓った。
「おはようございます」
イーリスが元気に挨拶して室内に入れば、父であるストーム侯爵が気遣わしげな表情を浮かべて聞く。
「おはよう、イーリス。今日の調子はどうだ?」
「上々です、父上」
(父上が気にしているのはラファーガの体調だけど、それをそのまま言うわけにはいかないからな)
国王であり、ラファーガの親友であるオラノスもそうだ。
イーリスの体調を聞くふりをしてラファーガの体調を気遣っている。
(まぁ、皆。ラファーガのことと、オレとラファーガの子どもの心配をしてくれているわけだし? オレもココで踏ん張って頑張らないとな。イラつくからって貴族を殴って、偽装妊娠がバレたら一大事だ!)
イーリスは父となる日を楽しみにしながら、父になるための妙ちくりんな試練と向き合っていた。
◇◇◇
屋敷に戻れば、ふっくらした腹を抱えたラファーガがイーリスを出迎える。
「ただいま、ラファーガ」
「おかえり、イーリス」
「体調はどうだい?」
ソファにゆったりと寝そべるようにして座っているラファーガの隣にイーリスは潜り込むようにして座ると、彼の腹を撫でた。
「ふふ。今日も医師が診察に来たけど……順調なようだよ」
「そうか」
ラファーガの妊娠は極秘事項だ。
老医師は隠し通路を使ってラファーガの診察に来ていた。
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「あぁ……それはもちろんだけど……」
「ん? どうした? ラファーガ?」
イーリスは不安そうなラファーガに気付いて、その顔を覗き込んだ。
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