4 / 4
第四話
しおりを挟む
「バッカじゃねーか、オレ」
オズワルドは自宅の庭の片隅で木の根元に腰を下ろし、良く晴れた午後の空を見上げ、タバコの煙を吐き出しながら独り言ちる。
今日は散々忙しく動いたあとの休日だ。
あの後、バタバタとことは動いてリアンは王太子と結ばれた。
妊娠が発覚して公式行事は後回しとなったが、リアンは王太子の正妃となる。
番ってしまったアルファとオメガの繋がりは深い。
伯爵家では家柄が釣り合わない、とか、男オメガを未来の王妃にするには、とかいろいろと反対の声もあったが王太子が押し切った形だ。
(オメガだアルファだと理由をつけて、横からかっさらっていきやがって、あのクソ王太子)
オズワルドに出来ることといったら、心の中で王太子を罵るくらいのものだった。
リアンも王太子のことが好きなのであれば、オズワルドに反対できる余地などない。
彼がどうしても嫌だというのなら攫って駆け落ちでもなんでもしたのだが、と思ったところでオズワルドは首を振った。
彼らは出会ってしまった。
もう引き離すことはできない。
オズワルドには年の数だけチャンスがあったが、王太子は一晩でそれを掴んでリアンを手に入れた。
世の中は不公平だと思う。
せめて出世して一泡吹かせてやりたいと思っても、相手は王太子。
奴には絶対、勝てぬのだ。
(こうなりゃ、謀反でも企てるしかないじゃないか)
オズワルドは物騒なことを考えて一人嗤う。
やさぐれて、くゆらすタバコの煙が目に染みる。
(オレって、随分と惨めなアルファだな……)
自分を哀れみながら、オズワルドは煙草を口から離し、ふぅ~と煙を吐き出した。
その時だ。
オズワルドの鼻先を、爽やかなミントに柑橘類が混ざったような、まさに青春という香りがかすめていった。
「うきゃっ」
甲高い知らない声と共に、木から何かが振ってきた。
「うわっ⁉」
慌ててオズワルドが抱き留めれば、腕の中には、くるくる巻き毛の男の子。
淡い茶色の髪に、金色に近い茶色の瞳、白い肌をしていて低い鼻の周りにはソバカスが散っていた。
男の子からは、淡く爽やかな青春の香りが漂っていた。
使用人たちが、この子を探し回っているような声が遠くから聞こえる。
オズワルドは、腕の中に納まっている男の子から目が離せなかった。
男の子もオレをジッと見つめている。
この時オズワルドは、この男の子に十年もの長きにわたり待たされることになるとは、思いもしなかったのだった。
~おわり~
オズワルドは自宅の庭の片隅で木の根元に腰を下ろし、良く晴れた午後の空を見上げ、タバコの煙を吐き出しながら独り言ちる。
今日は散々忙しく動いたあとの休日だ。
あの後、バタバタとことは動いてリアンは王太子と結ばれた。
妊娠が発覚して公式行事は後回しとなったが、リアンは王太子の正妃となる。
番ってしまったアルファとオメガの繋がりは深い。
伯爵家では家柄が釣り合わない、とか、男オメガを未来の王妃にするには、とかいろいろと反対の声もあったが王太子が押し切った形だ。
(オメガだアルファだと理由をつけて、横からかっさらっていきやがって、あのクソ王太子)
オズワルドに出来ることといったら、心の中で王太子を罵るくらいのものだった。
リアンも王太子のことが好きなのであれば、オズワルドに反対できる余地などない。
彼がどうしても嫌だというのなら攫って駆け落ちでもなんでもしたのだが、と思ったところでオズワルドは首を振った。
彼らは出会ってしまった。
もう引き離すことはできない。
オズワルドには年の数だけチャンスがあったが、王太子は一晩でそれを掴んでリアンを手に入れた。
世の中は不公平だと思う。
せめて出世して一泡吹かせてやりたいと思っても、相手は王太子。
奴には絶対、勝てぬのだ。
(こうなりゃ、謀反でも企てるしかないじゃないか)
オズワルドは物騒なことを考えて一人嗤う。
やさぐれて、くゆらすタバコの煙が目に染みる。
(オレって、随分と惨めなアルファだな……)
自分を哀れみながら、オズワルドは煙草を口から離し、ふぅ~と煙を吐き出した。
その時だ。
オズワルドの鼻先を、爽やかなミントに柑橘類が混ざったような、まさに青春という香りがかすめていった。
「うきゃっ」
甲高い知らない声と共に、木から何かが振ってきた。
「うわっ⁉」
慌ててオズワルドが抱き留めれば、腕の中には、くるくる巻き毛の男の子。
淡い茶色の髪に、金色に近い茶色の瞳、白い肌をしていて低い鼻の周りにはソバカスが散っていた。
男の子からは、淡く爽やかな青春の香りが漂っていた。
使用人たちが、この子を探し回っているような声が遠くから聞こえる。
オズワルドは、腕の中に納まっている男の子から目が離せなかった。
男の子もオレをジッと見つめている。
この時オズワルドは、この男の子に十年もの長きにわたり待たされることになるとは、思いもしなかったのだった。
~おわり~
942
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話
雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。
樋口(27)サラリーマン。
神尾裕二(27)サラリーマン。
佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。
山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
えっ⁉続きは?続きはどこですか???
オズワルドと幼ない番の話はどこですかー!
オズワルドにはぜひ幸せになってほしい!
感想ありがとうございまーす。(笑)
オズワルドと幼い番の話は
「愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記」
になります。
オズワルドの幸せは……まだまだ遠いですが。(笑)
よろしかったら読んでみてください。
感想ありがとうございましたー。°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
切ない失恋話にキュンキュンしてたらハッピーエンドが空から降ってきた!面白かったです!後日談もあると嬉しいです。
ありがとうございます!
BL大賞で遊べるように、後日談も計画中でーす。
感想ありがとうございました。m(_ _)m
どうかどうか、オズワルドと男の子のその後を、お願いします(人∀・)
.。.:*・'(*゚▽゚*)’・*:.。.
感想ありがとうございました。m(_ _)m