12 / 62
12
しおりを挟む
窓際に立った兄が窓の外を眺めているので、私もつられるように同じ方向を見れば夕日によってオレンジ色に照らされた美しい森の一角、周囲の木々よりひときわ高く沢山の枝を伸ばしている樹に、黒い鳥たちが「カァ、カァ」という鳴き声を上げながら集まっていることに気付いた。
「あ、カラスだ。北海道にもいるのね」
「カラスは地域によって色や大きさ種類に多少の違いはあるが大体、世界中どこにでもいるからな」
「こんな寒い場所で生きていけるなんて、カラスってたくましい鳥よねぇ……」
「それにしても、ずいぶん集まってるな……。カラスは寝る時、群れで過ごすが」
「この森を寝床にしてるのね」
兄が自分のアゴに指をかけて何やら考え込んでいる。私が再び、窓の外に視線を向けると黒いカラスたちとは明らかにサイズが違う大きな鳥が舞い降りて来て、カラスたちが大きな鳥に遠慮するかのように避ける様子が見えた。
距離が遠いのではっきりとは分からないが、大きな体長に鋭いクチバシやツメを持っているのは分かる。そしてその特徴はさきほど、このペンションに入った時に見た物を彷彿とさせた。
「あら? もしかして、あれってオオワシじゃない?」
「そうだな……。遠目ではっきりとは分からないが、あの大きさと特徴は……」
「わ~! 動いてるオオワシを生で見たの初めて! せっかくだから、もっと近くで見たいなぁ!」
「オオワシやオジロワシを直接、見ることが出来るツアーもある。確か、海の方なら流氷とアザラシとオオワシやオジロワシを見ることが出来るはずだ。前日までに予約すれば今の時季なら間に合うだろう。行くか?」
兄の提案は非常に魅力的だし、すぐにでも首を縦に振ってしまいたい所だが、ここに来た当初の目的を達成しないまま物見遊山を優先するというのは如何なものかと思う。やはり観光をするならやるべきことを済ませてからにすべきだろう。
「ううっ。行きたいけど、沖原沙織さんの依頼が片付いてからにするわ」
「そうか……」
「あっ、夕食の時間だわ! 行きましょう!」
時計を見れば18時を回っていた。兄と取り留めなく話をしている内にすっかり日も傾いている。お腹もすいてきたきた頃なのでちょうど良い。私は兄と共に部屋を出てウキウキと階段を下り食堂に入った。
食堂の中には宿泊客らしき老夫婦の姿などがあったが、まだ時間が早い為かさほど混雑しているという程でも無さそうだ。私と兄は席に着き、三つ編みのウェイトレス横塚千香さんに夕食を頼む。すると程なくして夕食が乗ったトレイが運ばれてきてテーブルの上に置かれた。
ジャガイモやニンジンなど野菜がたっぷり入ったシチューの注がれたメインの大皿を中心に、白磁器の皿に盛られているレタス、トマト、ブロッコリー、紫キャベツのみずみずしい野菜サラダ、こんがりとキツネ色に焼かれたパン。赤い薄切り肉が盛られた小皿、白い湯気を立てる黄金色のコーンスープなどが食欲をそそる美味しそうなニオイを漂わせている。
「うわー。美味しそう! あれ、このお肉は……?」
「そちらのローストはエゾ鹿肉の薄切りです。メインは北海道の有機野菜とエゾ鹿肉のシチューです。ごゆっくりどうぞ」
ウェイトレスの横塚千香さんがにっこりと微笑んで去った後、私はテーブルの上に視線を戻した。白磁器の小皿に盛られた薄切り肉の鮮やかな赤色に視線がクギ付けになる。今まで私が見てきた肉とは明らかに別物だ。
「これが鹿肉。すっごい赤いわね……」
「鹿肉は鉄分が多い。それが見た目の色にも現れてるんだろう」
「へぇ、そうなの?」
兄の言葉を受けてためしに一切れ鹿肉の薄切りを食べてみると意外と柔らかく、色の割に血なまぐさくも無かった。酸味のあるソースのおかげで食欲が増す味だ。
「ふむ。色味はきついけど、意外と生臭くも無いしクセがなくて食べやすいわね」
「それは良かった。狩った後、迅速に処理したかいがあるよ」
「あ、金森さん」
ペンションオーナーの金森さんはいつの間にか食堂に入っていたようで、私や兄が食事をしている姿を見ていたようだ。
「日本で一般的によく食べられてるのは鶏肉、豚肉、牛肉でその三種類の中では牛肉が最も鉄分が多いんだけど、鹿肉は牛肉よりもずっと多くの鉄分が含まれてるから貧血予防にも良いと言われているし、高たんぱくで低カロリーだから、すごくヘルシーな食材なんだ」
「へぇ、そうなんですね」
「あ、カラスだ。北海道にもいるのね」
「カラスは地域によって色や大きさ種類に多少の違いはあるが大体、世界中どこにでもいるからな」
「こんな寒い場所で生きていけるなんて、カラスってたくましい鳥よねぇ……」
「それにしても、ずいぶん集まってるな……。カラスは寝る時、群れで過ごすが」
「この森を寝床にしてるのね」
兄が自分のアゴに指をかけて何やら考え込んでいる。私が再び、窓の外に視線を向けると黒いカラスたちとは明らかにサイズが違う大きな鳥が舞い降りて来て、カラスたちが大きな鳥に遠慮するかのように避ける様子が見えた。
距離が遠いのではっきりとは分からないが、大きな体長に鋭いクチバシやツメを持っているのは分かる。そしてその特徴はさきほど、このペンションに入った時に見た物を彷彿とさせた。
「あら? もしかして、あれってオオワシじゃない?」
「そうだな……。遠目ではっきりとは分からないが、あの大きさと特徴は……」
「わ~! 動いてるオオワシを生で見たの初めて! せっかくだから、もっと近くで見たいなぁ!」
「オオワシやオジロワシを直接、見ることが出来るツアーもある。確か、海の方なら流氷とアザラシとオオワシやオジロワシを見ることが出来るはずだ。前日までに予約すれば今の時季なら間に合うだろう。行くか?」
兄の提案は非常に魅力的だし、すぐにでも首を縦に振ってしまいたい所だが、ここに来た当初の目的を達成しないまま物見遊山を優先するというのは如何なものかと思う。やはり観光をするならやるべきことを済ませてからにすべきだろう。
「ううっ。行きたいけど、沖原沙織さんの依頼が片付いてからにするわ」
「そうか……」
「あっ、夕食の時間だわ! 行きましょう!」
時計を見れば18時を回っていた。兄と取り留めなく話をしている内にすっかり日も傾いている。お腹もすいてきたきた頃なのでちょうど良い。私は兄と共に部屋を出てウキウキと階段を下り食堂に入った。
食堂の中には宿泊客らしき老夫婦の姿などがあったが、まだ時間が早い為かさほど混雑しているという程でも無さそうだ。私と兄は席に着き、三つ編みのウェイトレス横塚千香さんに夕食を頼む。すると程なくして夕食が乗ったトレイが運ばれてきてテーブルの上に置かれた。
ジャガイモやニンジンなど野菜がたっぷり入ったシチューの注がれたメインの大皿を中心に、白磁器の皿に盛られているレタス、トマト、ブロッコリー、紫キャベツのみずみずしい野菜サラダ、こんがりとキツネ色に焼かれたパン。赤い薄切り肉が盛られた小皿、白い湯気を立てる黄金色のコーンスープなどが食欲をそそる美味しそうなニオイを漂わせている。
「うわー。美味しそう! あれ、このお肉は……?」
「そちらのローストはエゾ鹿肉の薄切りです。メインは北海道の有機野菜とエゾ鹿肉のシチューです。ごゆっくりどうぞ」
ウェイトレスの横塚千香さんがにっこりと微笑んで去った後、私はテーブルの上に視線を戻した。白磁器の小皿に盛られた薄切り肉の鮮やかな赤色に視線がクギ付けになる。今まで私が見てきた肉とは明らかに別物だ。
「これが鹿肉。すっごい赤いわね……」
「鹿肉は鉄分が多い。それが見た目の色にも現れてるんだろう」
「へぇ、そうなの?」
兄の言葉を受けてためしに一切れ鹿肉の薄切りを食べてみると意外と柔らかく、色の割に血なまぐさくも無かった。酸味のあるソースのおかげで食欲が増す味だ。
「ふむ。色味はきついけど、意外と生臭くも無いしクセがなくて食べやすいわね」
「それは良かった。狩った後、迅速に処理したかいがあるよ」
「あ、金森さん」
ペンションオーナーの金森さんはいつの間にか食堂に入っていたようで、私や兄が食事をしている姿を見ていたようだ。
「日本で一般的によく食べられてるのは鶏肉、豚肉、牛肉でその三種類の中では牛肉が最も鉄分が多いんだけど、鹿肉は牛肉よりもずっと多くの鉄分が含まれてるから貧血予防にも良いと言われているし、高たんぱくで低カロリーだから、すごくヘルシーな食材なんだ」
「へぇ、そうなんですね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる