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ヴァイデル国の依頼
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ーハイドsideー
「本当に行くのか?ハイド」
「そう何度も聞くな」
「…だってヴァイデル国は今、変な動きがあるからさ」
「リチャード、俺はお前を信用してこの国を頼むんだ…弱気になられたら心配になる」
ハイドはリチャードにそう言うと、リチャードは何も言えなくなる。
心配になるのは本当だ、だからリチャードには堂々としてほしい。
正直いつ帰ってくるか分からない、だからこそリチャードには他の騎士を導いてほしい。
ヴァイデル国の事は騎士なら誰もが聞いた事があるだろう。
ハイドがハーレー国の騎士と会ったと話し、何人かヴァイデル国に調査に向かおうとした。
しかし、通行手形がないと入れないと言われて門前払いだった。
ヴァイデル国の王族とハイドはまだ繋がりがあるが連絡を取ろうと伝書鳩を飛ばしたが、何も返事がなかった。
だから、ヴァイデル国に行く事が出来なかった。
今回行く事になったのは、ミゼラから手紙をもらったからだ。
ヴァイデル国からなら連絡を取れるのか分からないが、ヴァイデル国主催のパーティーに呼ばれた。
ハイドの名前は手紙には書かれていなくて、婚約者と書かれていた。
ハイドの名前を書けない理由…一度もこういう行事に呼ばれた事がない。
誰かに隠さないといけない…ミゼラの精一杯のSOSだと思った。
本当は何の用なのか具体的な内容は分からないが、ヴァイデル国に向かった。
嫌な予感を感じながら…
愛馬でラウラの街まで走り、ここから馬は通れないから歩いてヴァイデル国に向かう。
この前はとても暑い砂漠地帯で、体力がかなり消耗された。
しかし、この砂漠は変だ…全然暑くない。
それどころかとても冷える、まだ明るいというのに…
これなら馬を走らせても問題はないだろうが、なにが起きるか分からないから愛馬を危険なところに連れていくわけにはいかない。
しばらく歩いていると、ヴァイデル国の門に到着した。
「通行手形は」
「ここにある」
「確かに」
ハイドは手紙に添えられた通行手形を見せると屈強な顔をした門番に、ヴァイデル国への入国を認められた。
持ち物検査をされて、手紙に書かれた通りに武器や身分が分かるものは持ってきていなくてすぐに通された。
そのままヴァイデル国に入ると、すぐに異変に気付いた。
この前まではなかった光景がそこにあった。
街を見回るような騎士が大勢いた。
それにあの騎士は…
ハイドは腰に手を当てると、武器がない事を思い出した。
ハーレー国の騎士は堂々と街を歩いていて、周りの人達は全く気にしていなかった。
ハーレー国の騎士服を知らないとは思えない…ヴァイデル国の国民はハーレー国の騎士と会った事があるだろうに…
「…この光景はいったい」
「これが今のヴァイデル国です」
「…っ、ミゼラ様」
「お待ちしておりました、こちらです」
ミゼラが突然ハイドの隣にいて驚いた。
ミゼラは顔を布で半分隠していて、ハイドを見つめていた。
国の王族が顔を隠さなきゃいけない状況とはいったいなんなんだ…お忍びという事か。
ミゼラに案内されるように、後ろから着いていくとやはりヴァイデル国の異変が目立つ。
まずは首輪と手枷を付けた人間がいる、これは可笑しい…奴隷がいたのはハーレー国とその同盟国だけだ。
イズレイン帝国は奴隷制度を禁止していて、その同盟国も奴隷制度を禁止していた。
ヴァイデル国はイズレイン帝国と同盟国だ、だから奴隷制度なんてある筈がない。
ミゼラが足を止めたのは、城の裏側にある人一人しか入らないような小さな扉だった。
正面から入れない事情…ハーレー国の騎士…そして奴隷制度を考えると何となく分かった。
扉は物置に続いているみたいで、ミゼラはそのまま物置を出た。
周りを警戒しながら、ミゼラは廊下を進みハイドは城の中を見渡した。
城の中にまでハーレー国の騎士がいて、かなり進んでしまっているようだ。
…ハーレー国がヴァイデル国を侵略するのが…
とある部屋に入ると、数人の女性達がいた。
落ち着いた女性の部屋…雰囲気からしてミゼラの部屋だろうか。
「ミゼラッ」
「お母様、お姉様…ハイド様を呼んでまいりました」
ミゼラは女性達に近付き、そう言った。
ミゼラの話からすると、王妃と姉の姫なのだろう。
ヴァイデル国は代々女性が国を守ってきていた。
王妃の夫は戦争で他界して、今では女性しか居なくなってしまった。
だからハイドと婚約して、ハイドにこの国を守ってほしかったのかもしれない。
しかし、ハイドには唯一無二の愛しい人がいるから無理だ。
今はとりあえずなにがあったのか聞く事にした。
「いったいなにがあったんですか」
「国が、ハーレー国に支配されそうになっているんです」
「…何故、そんな事に」
「私達も分かりません、しかし…ハーレー国の騎士が復活している事は事実…そして他の国を次々と強制同盟を結ばせているんです」
強制同盟…それは過去にハーレー国がやっていた事だ。
普通の同盟は国と国が互いに友好関係を結びたいと決めて、初めて同盟が結ばれる。
しかし、ハーレー国は好き勝手他の国を利用して切り捨てるものだから、ハーレー国と同盟を結びたいのはハーレー国の強さを利用する国しかなかった。
そして、使える国に出向き餌で釣り力でねじ伏せて無理矢理同盟を結ばせていた。
ヴァイデル国もかつてはそうだったがイズレイン帝国に助けられ、イズレイン帝国と同盟を結んだ。
イズレイン帝国と同盟を結べばヴァイデル国だけではなく、他の国もハーレー国は手出し出来なかった。
「イズレイン帝国はハーレー国を倒し、ハーレー国が居なくなったと思い込んでいました」
「…確かにハーレー国の騎士は…俺が」
「しかし、亡霊になって出てくるなどと誰も思いませんでした」
ミゼラはそう言ってハイドに頭を下げた。
この国をハーレー国から守ってほしいと…
ハーレー国が何故復活したのか分からない、しかし…ハイドがヴァイデル国に来るまでハーレー国の騎士の亡霊がいるなんて知らなかった。
もっと同盟国の動きに気を付けていればこんな事にはならなかっただろう。
今悔やんでも仕方ない、今はハーレー国の侵略を食い止めなくてはいけない。
ミゼラの話によると、五日後に行われるヴァイデル国主催のパーティーでなにかが起こると言っていた。
ハイドはイズレイン帝国の英雄、名前だけでもかなり有名だ…ハーレー国の騎士にバレるわけにはいかない。
だからただのミゼラの婚約者として出席してほしいと頼まれた。
婚約者としてとは言うが実際恋人のフリをしろと言っているわけではない。
ただ、怪しまれない程度に普通に接するだけでいいらしい。
それがヴァイデル国を救うためならと了承した。
思っていたより、国は深刻な状態らしい。
「本当に行くのか?ハイド」
「そう何度も聞くな」
「…だってヴァイデル国は今、変な動きがあるからさ」
「リチャード、俺はお前を信用してこの国を頼むんだ…弱気になられたら心配になる」
ハイドはリチャードにそう言うと、リチャードは何も言えなくなる。
心配になるのは本当だ、だからリチャードには堂々としてほしい。
正直いつ帰ってくるか分からない、だからこそリチャードには他の騎士を導いてほしい。
ヴァイデル国の事は騎士なら誰もが聞いた事があるだろう。
ハイドがハーレー国の騎士と会ったと話し、何人かヴァイデル国に調査に向かおうとした。
しかし、通行手形がないと入れないと言われて門前払いだった。
ヴァイデル国の王族とハイドはまだ繋がりがあるが連絡を取ろうと伝書鳩を飛ばしたが、何も返事がなかった。
だから、ヴァイデル国に行く事が出来なかった。
今回行く事になったのは、ミゼラから手紙をもらったからだ。
ヴァイデル国からなら連絡を取れるのか分からないが、ヴァイデル国主催のパーティーに呼ばれた。
ハイドの名前は手紙には書かれていなくて、婚約者と書かれていた。
ハイドの名前を書けない理由…一度もこういう行事に呼ばれた事がない。
誰かに隠さないといけない…ミゼラの精一杯のSOSだと思った。
本当は何の用なのか具体的な内容は分からないが、ヴァイデル国に向かった。
嫌な予感を感じながら…
愛馬でラウラの街まで走り、ここから馬は通れないから歩いてヴァイデル国に向かう。
この前はとても暑い砂漠地帯で、体力がかなり消耗された。
しかし、この砂漠は変だ…全然暑くない。
それどころかとても冷える、まだ明るいというのに…
これなら馬を走らせても問題はないだろうが、なにが起きるか分からないから愛馬を危険なところに連れていくわけにはいかない。
しばらく歩いていると、ヴァイデル国の門に到着した。
「通行手形は」
「ここにある」
「確かに」
ハイドは手紙に添えられた通行手形を見せると屈強な顔をした門番に、ヴァイデル国への入国を認められた。
持ち物検査をされて、手紙に書かれた通りに武器や身分が分かるものは持ってきていなくてすぐに通された。
そのままヴァイデル国に入ると、すぐに異変に気付いた。
この前まではなかった光景がそこにあった。
街を見回るような騎士が大勢いた。
それにあの騎士は…
ハイドは腰に手を当てると、武器がない事を思い出した。
ハーレー国の騎士は堂々と街を歩いていて、周りの人達は全く気にしていなかった。
ハーレー国の騎士服を知らないとは思えない…ヴァイデル国の国民はハーレー国の騎士と会った事があるだろうに…
「…この光景はいったい」
「これが今のヴァイデル国です」
「…っ、ミゼラ様」
「お待ちしておりました、こちらです」
ミゼラが突然ハイドの隣にいて驚いた。
ミゼラは顔を布で半分隠していて、ハイドを見つめていた。
国の王族が顔を隠さなきゃいけない状況とはいったいなんなんだ…お忍びという事か。
ミゼラに案内されるように、後ろから着いていくとやはりヴァイデル国の異変が目立つ。
まずは首輪と手枷を付けた人間がいる、これは可笑しい…奴隷がいたのはハーレー国とその同盟国だけだ。
イズレイン帝国は奴隷制度を禁止していて、その同盟国も奴隷制度を禁止していた。
ヴァイデル国はイズレイン帝国と同盟国だ、だから奴隷制度なんてある筈がない。
ミゼラが足を止めたのは、城の裏側にある人一人しか入らないような小さな扉だった。
正面から入れない事情…ハーレー国の騎士…そして奴隷制度を考えると何となく分かった。
扉は物置に続いているみたいで、ミゼラはそのまま物置を出た。
周りを警戒しながら、ミゼラは廊下を進みハイドは城の中を見渡した。
城の中にまでハーレー国の騎士がいて、かなり進んでしまっているようだ。
…ハーレー国がヴァイデル国を侵略するのが…
とある部屋に入ると、数人の女性達がいた。
落ち着いた女性の部屋…雰囲気からしてミゼラの部屋だろうか。
「ミゼラッ」
「お母様、お姉様…ハイド様を呼んでまいりました」
ミゼラは女性達に近付き、そう言った。
ミゼラの話からすると、王妃と姉の姫なのだろう。
ヴァイデル国は代々女性が国を守ってきていた。
王妃の夫は戦争で他界して、今では女性しか居なくなってしまった。
だからハイドと婚約して、ハイドにこの国を守ってほしかったのかもしれない。
しかし、ハイドには唯一無二の愛しい人がいるから無理だ。
今はとりあえずなにがあったのか聞く事にした。
「いったいなにがあったんですか」
「国が、ハーレー国に支配されそうになっているんです」
「…何故、そんな事に」
「私達も分かりません、しかし…ハーレー国の騎士が復活している事は事実…そして他の国を次々と強制同盟を結ばせているんです」
強制同盟…それは過去にハーレー国がやっていた事だ。
普通の同盟は国と国が互いに友好関係を結びたいと決めて、初めて同盟が結ばれる。
しかし、ハーレー国は好き勝手他の国を利用して切り捨てるものだから、ハーレー国と同盟を結びたいのはハーレー国の強さを利用する国しかなかった。
そして、使える国に出向き餌で釣り力でねじ伏せて無理矢理同盟を結ばせていた。
ヴァイデル国もかつてはそうだったがイズレイン帝国に助けられ、イズレイン帝国と同盟を結んだ。
イズレイン帝国と同盟を結べばヴァイデル国だけではなく、他の国もハーレー国は手出し出来なかった。
「イズレイン帝国はハーレー国を倒し、ハーレー国が居なくなったと思い込んでいました」
「…確かにハーレー国の騎士は…俺が」
「しかし、亡霊になって出てくるなどと誰も思いませんでした」
ミゼラはそう言ってハイドに頭を下げた。
この国をハーレー国から守ってほしいと…
ハーレー国が何故復活したのか分からない、しかし…ハイドがヴァイデル国に来るまでハーレー国の騎士の亡霊がいるなんて知らなかった。
もっと同盟国の動きに気を付けていればこんな事にはならなかっただろう。
今悔やんでも仕方ない、今はハーレー国の侵略を食い止めなくてはいけない。
ミゼラの話によると、五日後に行われるヴァイデル国主催のパーティーでなにかが起こると言っていた。
ハイドはイズレイン帝国の英雄、名前だけでもかなり有名だ…ハーレー国の騎士にバレるわけにはいかない。
だからただのミゼラの婚約者として出席してほしいと頼まれた。
婚約者としてとは言うが実際恋人のフリをしろと言っているわけではない。
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