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休めない2人

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魔法時計は15時をさしている。
そろそろ、お兄様たちは休憩の時間ね。
私はこの国の末の王女、名前はリリアという。この国の宰相としても貢献している。
少し前、この王宮は反逆者により内乱があった。
まだ。柱にキズなどが残っており、その時の激しさをものがたっている。
ただ、結界をお兄様がはってくれたので、死亡者など出すことはなかった。犯人も流刑をして、収束しているので被害はない。
あの時はまだ12才で、まだ小さかったから力になれなかったのがとても悔しい。17才になったら今なら魔術も上達して、私も協力して早く解決できたはず。
まわりは、ゆくゆくは女王なのでは、という声もあるが、皇太子殿下であるユルグお兄様には、さすがにかなわない。
それに、私にはウィルのお嫁さんになるっていう夢があるので考えたこともない。いざ、という時に、旦那様の側にいられないなんて、つらすぎる。
ウィルは、王家を総括して護衛をしている。
長身で、サラサラの深い海の色をした髪と目でとっても精悍な顔立ちである。そして、広い背中で私を守ってくれる。
王族の親やお兄様達、家族みんな頼りにしていて、私だけ特別というわけにはいかないから、一緒にいられなくても我慢しなくてはならない。でも、結婚したら毎日、私のもとに帰ってきてくれる事を夢みて私は事あるごとに、会いに行っているのである。
今も、裏ルートで手に入れたウィルの勤務時間の用紙を見て、休憩の時間に行こうと思い立った。
「ウィル、見つけたわ!森の奥の警備状況を調べているみたいね。休み時間くらい休めば良いのに。」
魔力感知で、ウィルの中にある魔力の特徴を探す。
モバイルポータルを使い、森の近くに出る。
そこから、全速力で走り森の土でヒールが汚れるのも気にせず、どんどん中へ入っていく。
「リリア王女様!」
「姫様!どうされましたか?」
走っている途中で各方向から、声が聞こえてくるが気にしない。そもそも私がウィルがいるところに現れるのはいつものことだ。
彼は、城と城下町との境界線にある結界のほころびを調べていた。少し、息を落ち着け、後ろからなるべく上品に聞こえるように声をかける。
「もう、休憩時間よ。仕事、何が残っているのかしら?手伝うわ。」
ウィルが、少し困った顔をして私の全身を見る。
「リリア様。お召し物が汚れています。」
「いいのよ。まだ汚れるんだから。あ、あそこ、少し結界が弱まってるわ。ウィル、ついてきてくれるかしら。」
手招きをして、まだ、修復するほどではないが、弱くなっている結界のそばまでくる。
警備隊には、あちらをお願い、と少し離れたところの結界修復を依頼する。
こっちは、ほころびが大きく、少し時間がかかりそうだ。
でも、長く二人きりになりたいから、申し訳ないな、と思いつつお願いする。
私は、修復のために結界に手をかざし簡単に元通りにしてから、ウィルを見つめた。
「リリア様、あなたこそ、お忙しいのですから休憩時間はお休みになられたらいかがでしょうか。」
私より頭ひとつ分高い身長のウィルを見上げ、ううん、と横を首をふり、返事をする。
「休み時間だから会いに来たの!なかなか会えないじゃない。」
すねた顔をして、そのまま、背伸びをする。何とかウィルの肩に手を置くことが出来た。
「ダメだった?私は昔からウィルが好きなの。お兄様からも、了承を得てるわ。もう問題ないと思うの。」
そう言って、そのまま、私は、ジャンプをしてウィルに抱きつく事に成功する。
着地した時ヒールがぐらついて、よろめいてしまったが、サッとウィルが支えてくれた。
その顔は、いつもの無表情よりも少しだけ恥ずかしそうにしていたから、嬉しくなって、わざとそのまましゃがみ込む。
「リリア様、足を痛めましたか?急いで、回復魔法をかけましょう。リリア様?」
そういって、私の横にしゃがみ込んだ。
私は、近くなった顔に、心配してくれてありがとう、と、ウィルのほっぺたを両手ではさむ。
「私が足を痛める訳ないじゃない。ダメだった?」
二人で森のしげみに隠れながら会話をする。
「それは、当たり前です。誰かに見つかったら、王家の皆様になんと説明すれば良いのか。」
私に興味がなさそうな返事に、私は、ムッとする。小さい頃からの教育のせいなのか、自分の事よりも国王やお兄様たちの事を真っ先に考えてしまうらしい。
「お兄様は良いって言ってるの。文句は言われないわ。」
「そう言われましても、こちらも準備というものがありますし。」
何を気にしているのか、分からない。
でも、あきらめるわけにはいかないこの恋に長期戦を覚悟した。









    
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