常夜行計画、実行せよ

イトウ 

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十四:建速

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「おおっ!そいつか。なんかよぉ、お前、生き返られて本当に良かったなぁ!!」

 そう大声で叫ばれ、肩を掴んで前後に思い切り揺らされる。
 うぅ、頭がフラフラして気持ち悪い。

「はいはい。そのあたりでやめて下さい。それ以上すると、あなたに何するか分かりませんよ」
「ハッハッハッ! 心が、狭すぎだなぁー」
「……どうかされましたか?何か、自分たちに意地悪をされると思っていたので、かえって不安ですが」
「心外だ。昔に比べたら、性格が丸くなったってもんだよ」
「…………はい。それだと、大変、助かるのですが?」

 えっと、仲良さそうだし。……これは、もう喋っても、大丈夫なやつか?とりあえず、昔の事を少しでも聞きたい。
 奏採は、建速に近づいて口を開く。

「あ、あの!…………っ……!!」

 話しだした瞬間に、何か食べ物が入ってきた。

「まぁ、何もしないわけ無いだろ。こんなに、楽しい事を見過ごすか」
「……………………奏採」
「ごめん、陽尊。約束破った」
「うん。だよね……見てた」

 しまった。

 陽尊が絶望の顔をしている。
 どうしよう。
 帰れないのが2人になってしまった。

 でも、久しぶりの食べ物だ。美味しいな。米だろうか。
 もう、今さらだし、味わって食べよう。
 もぐもぐしながら、2人の会話を聞く。

「なぁ、陽尊。八千矛やちほこは、どうしてる?」
「……食べ物を取りに行って、戻られていません」
「そうかぁ……残念だなぁ。じゃ、もう少し、ここにいてもらって遊ぶしかないなぁ」
「もしかして、寂しがり屋ですか?」
「正解っ!」

 ……なんか、陽尊のまわりの空気が冷たい。

 八千矛さんって、誰だろうって思ったけど、話の内容からして前に言ってた、地位の高い取引先かな?
 その相手のことを話す時の丁寧な口調からして、神様なのだろうか。

 俺は、別に今年は留年だし暇だから、すぐに帰られなくても問題ないけど、やっぱり陽尊は早く帰りたいのだろう。
 めずらしく憮然とした態度を見せているのを、上目遣いでジッと見る。

「陽尊、ごめんなさい」
「いいよ。どっちみち、奏採を一人で元の世界に返したくなかったから、気にしてない。ただ、そんなに美味しそうに食べるなら、八千矛を待たせないで地上で何か食べさせてあげれば良かったな、と思って。果物とかあったのに」
「あ、それ、気になってた!山道を登る時に、甘い香りがしてたし。」
「そう?じゃ、今から食べに行こうか…………では、建速さん、僕に用事はないんですね。失礼します」

 早口で言うと、一方的に帰ろうとしている。
 本当に良いのだろうか? 何か用事があって、呼んだのなら聞いたほうが良い気がするのだが。

「ね、陽尊。話を聞こうよ。後で、後悔するのも嫌だしさ」
「…………そうだね。たしかに奏採が言うなら」

 不服そうに、足を止めて引き返す。

「えらいえらい」
「何ですか?早く言って下さい」
「ほほう。その態度、この俺様に向かって言うか。なかなかに気概がある!!……まぁ、用事は、そこの奏採に対してなんだが」

 ……え、俺?

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