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一緒に Ⅳ
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「わぁぁーー!」
「なにこれなにこれ? お祝いごと?」
みんなが嬉しそうにさわぐ。
テーブルの上には、普段は食卓にあがらない肉や素朴な焼菓子が並んでいるからだ。
「もう。みんな、そんなに子供みたいにはしゃいで」
「ユーディア。私は、まだ子供よ」
「そうだったわ。エンジュはしっかりしてるから忘れてた」
今、エンジュと話をしているのは、義姉のユーディア。
とにかく優しくて美しくて、優しくて美しい。
2回言ってしまうくらい大好きな義姉だ。
濃紫の髪色に薄いブルーの瞳をしていて、見つめられると胸がドキドキする。
明日はユーディアの18才の誕生日だから、もしかして今日のごちそうの理由はそれかもしれない。
「みんな、席について」
「そうだ。大切な話がある」
義両親は普段はめったにしない真面目な顔で、食卓の横に立った。
「ユーディアが明日から、王都へ働きに行くことになった」
想像通りだ。
この村は過疎化していて働く場所は少ない。
若者はみんな王都へ出ていってしまうのだ。
続けて、義父が話す。
「あと追加で働き手を受け入れてくれるそうだ。誰か一緒に行きたい者はいないか?」
ついでだからどうか、という感じに軽く言ってはいるが、ちょっと行ってすぐ帰って来るという距離ではない。
それに対象者はエンジュとグランしかいない。
きっと自分の意志のもと行かせたいという意向から、みんなの前で発言させるつもりだろう。
「はーーーい」
そんな簡単なものだとではない事を全く知らない、グランより一つ年下の義弟のユンティは、元気に手を上げた。
あわてて、それを止めようとグランは席を立ったが、その前に義母の優しい声が響く。
「私は、行きませんよ?」
その言葉に、ゆっくりとピーンと立てた腕を下げていった。
まだ、母親からは離れられないらしい。
「間違えましたぁー」
また、静かになっていく。
そこで、ユーディアが話をしだした。
「良いのよ。私は一人で行くわ。まだ、みんなは小さいし……」
「いや、でも。この機会を逃すと一生、この村で生活する可能性も出でくる。今回は幸運にも宿付きの食堂へ紹介されたから良いものの、こんな機会はなかなかないぞ……!」
一度もこの村から出たことがない父親が、かなり王都へのあこがれがあるのかユーディアの言葉をさえぎる。
王都から来た母親も、将来的には村に戻ってきたとしても、一度くらいは王都に見せてあげたいと悩んでいるようだ。
「……じゃ、僕、行こうと思います!」
グランが、元気に手をあげる。
直後に、エンジュとユンティの泣きそうな顔も横に見えるが、心配しなくても良い。
実は、僕には考えがあるのだ。
「なにこれなにこれ? お祝いごと?」
みんなが嬉しそうにさわぐ。
テーブルの上には、普段は食卓にあがらない肉や素朴な焼菓子が並んでいるからだ。
「もう。みんな、そんなに子供みたいにはしゃいで」
「ユーディア。私は、まだ子供よ」
「そうだったわ。エンジュはしっかりしてるから忘れてた」
今、エンジュと話をしているのは、義姉のユーディア。
とにかく優しくて美しくて、優しくて美しい。
2回言ってしまうくらい大好きな義姉だ。
濃紫の髪色に薄いブルーの瞳をしていて、見つめられると胸がドキドキする。
明日はユーディアの18才の誕生日だから、もしかして今日のごちそうの理由はそれかもしれない。
「みんな、席について」
「そうだ。大切な話がある」
義両親は普段はめったにしない真面目な顔で、食卓の横に立った。
「ユーディアが明日から、王都へ働きに行くことになった」
想像通りだ。
この村は過疎化していて働く場所は少ない。
若者はみんな王都へ出ていってしまうのだ。
続けて、義父が話す。
「あと追加で働き手を受け入れてくれるそうだ。誰か一緒に行きたい者はいないか?」
ついでだからどうか、という感じに軽く言ってはいるが、ちょっと行ってすぐ帰って来るという距離ではない。
それに対象者はエンジュとグランしかいない。
きっと自分の意志のもと行かせたいという意向から、みんなの前で発言させるつもりだろう。
「はーーーい」
そんな簡単なものだとではない事を全く知らない、グランより一つ年下の義弟のユンティは、元気に手を上げた。
あわてて、それを止めようとグランは席を立ったが、その前に義母の優しい声が響く。
「私は、行きませんよ?」
その言葉に、ゆっくりとピーンと立てた腕を下げていった。
まだ、母親からは離れられないらしい。
「間違えましたぁー」
また、静かになっていく。
そこで、ユーディアが話をしだした。
「良いのよ。私は一人で行くわ。まだ、みんなは小さいし……」
「いや、でも。この機会を逃すと一生、この村で生活する可能性も出でくる。今回は幸運にも宿付きの食堂へ紹介されたから良いものの、こんな機会はなかなかないぞ……!」
一度もこの村から出たことがない父親が、かなり王都へのあこがれがあるのかユーディアの言葉をさえぎる。
王都から来た母親も、将来的には村に戻ってきたとしても、一度くらいは王都に見せてあげたいと悩んでいるようだ。
「……じゃ、僕、行こうと思います!」
グランが、元気に手をあげる。
直後に、エンジュとユンティの泣きそうな顔も横に見えるが、心配しなくても良い。
実は、僕には考えがあるのだ。
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