櫻家の侵略者

眠りん

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三十九話 謝罪ゲーム

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 諭を電話で呼び出すが出ない。塾でバイトだと思い出し、ラインで「すぐに僕の実家に来るように」と送る。
 話し合いが終わってから五時間して諭は櫻家にやってきた。
 もう夜の十時だ。両親が出張中で良かったと安堵する。今この家の家長は陽翔だ。

(愛しい愛しい僕の諭。簡単には逃がさないよ)


 諭は家に来た時点で怯えた様子だ。
 なにしろ、直陽と歌陽が物凄く睨んでいた。陽翔と樹良はニコニコと笑顔で出迎え、桜子はまだ怖がっているのか、陽翔の後ろに隠れていた。

 櫻家にある一番奥の部屋。元々は陽翔の部屋だったが、今や物置になっている部屋に、諭を押し込んだ。
 きょうだい全員で扉を塞ぐように立つ。諭を正座をさせ、五人で責めるような視線を向けた。

「よくも、僕の大事な弟と妹に最低な事をしてくれたね? しかも、桜子にはこんなストレスまで与えてくれて。
 本当、恨めしいよ」

「陽翔っ! ごめん! もうしないから! 一度だけ許して欲しい! もう絶対しないから!
 弟や妹を今後は大事にするって約束する!!
 だから……」

「まだそんな戯言ざれごと言ってんの? 許せるわけねぇだろ?」

「陽翔がそんな事言うなんて。そんな人じゃなかったじゃないか」

「お前が僕をちゃんと見れてなかったんだよ。
 樹良が諭に僕がドSだって教えたけど信じなかったんだって?」

「だって、陽翔は優しくて、天使で、俺の事を凄く愛してくれた。そんなの信じられるわけないだろ」

「そっか。じゃあ僕がこれから自分で証明していかないといけないね。
 それで諭に嫌われても、僕は諭を自由にするつもりはないけどね」

「ごめんなさい! 何度でも謝るから許してよ!!」

「僕に謝られてもね……。あっそうだ。とりあえず、まずは弟と妹達、一人一人に謝ってくれる?
 一人でも諭を許したら、僕も許してあげようか悩んであげてもいいよ」

「本当か!?」

「うん。だから必死に謝るんだよ。逆に許す子が一人もいなかったら、今後のお前の人生、僕が決めてあげるからね。
 直陽、諭の前に出てあげて」


 そう言われて、諭を睨んだままの直陽が前に出た。

「な、直陽! すみませんでした! 許して下さい!!
 お前なら許してくれるだろ? 俺、直陽に悪い事なんてしてないんだから」

 泣きながら懇願する諭に、直陽は困ったようにだが答えた。

「うん。最初は酷かったけど、諭の事好きになって、俺、諭に好かれたくて見た目とか頑張った。俺は、諭には何一つ酷い事はされてないよ」

「だよな!!」

「でも、桜子にした事は許せない。お前を同じ目に遭わせてやりたいって思うくらい、憎いよ。
 それまでは愛してた。でも、もう嫌いだよ。
 何度謝られても許せない」

「直陽っ、ごめんなさいっ、謝るから、俺を見捨てないで! 見捨てないで下さい」

「無理。何度謝られても許さない」

 絶望に顔を青くさせる諭に、陽翔はクスクスと笑った。

「直陽は許さないって。残念だったね。じゃあ次は歌陽だね」

 次に歌陽が諭の前に立つ。

「な、なぁ、歌陽は、俺と利害が一致してた筈だ。優しくしてあげただろ? なぁ、謝るから、俺の味方してくれよ!」

「もう利害一致してないからイヤ」

「実の兄と恋愛出来ないから、俺を通じて陽翔を感じてたんだろうが」

「陽にぃね、私を彼女にしてくれたの~」

 幸せそうな笑みを浮かべる歌陽。諭はすぐに陽翔に抗議した。

「え? はぁ!? 陽翔! なんで、こいつ妹じゃん! 俺は? 俺の事捨てるのかよ!?」

「歌がね、僕の事愛してるんだって。僕はゲイだし、歌は妹だし。けど、それが歌を拒む理由にはならないかなって。
 諭、君は随分僕の家を掻き乱してくれたよね? 簡単に捨ててやらないから覚悟して」

 陽翔が見せた顔に、諭は一気に血の気が引き、何も言えなくなってしまった。
 代わりに、おずおずと歌陽に頭を下げて訴えた。

「歌陽、ごめんなさい。俺を助けてください」

「イヤ。桜子にした事だけはどうしても許せないんだ。桜子はね、私の天使なの。
 綺麗に、清楚に育つように、私、桜子には汚いものを見せないように、一生懸命育てたんだ。
 だから、あなたがした事は一生許さないよ」

「あはは。残念。
 諭にヒントをあげようかな。皆ね、自分にされた事で怒ってないんだ。お前が桜子にした事で激怒してんの。
 謝り方、分かったかな?」

 陽翔はニコニコした顔を向けた。怒りが増すほどに笑顔になる。

「じゃあ次は僕かな」

 樹良が諭の前に立った。

「すみませんでした。桜子さんに、あんな事……樹良君にされた事をやり返したくて、してしまいました。
 どうか許して下さい! もうしませんから!」

 諭は土下座で謝った。だが、樹良はクスクスと笑い始める。

「はは、僕が許さないのは分かってたでしょ?
 確かに僕も悪かったところもあったよ。その点は僕から諭に謝るね。
 ごめんなさい。もうしません」

「樹良君!」

「でもさぁ、この中で一番か弱い桜子にストレスぶつけるのってどうなの?
 正直、諭の事殺したいって思ったよ。でもまぁ、チャンスくらいはあげよっか。欲しい?」

「もちろん!!」

「じゃあ恒例の選択タイムだよ。
 この先ずーーーーっと僕に犯され続けるっていうなら、今回の件許してあげる。陽にぃも許してくれるかもよ?
 でもこの期に及んで陽にぃから離れたくないって言うなら許さない。
 どっちか選んで」

「えっ!? なんで、そんな選択……」

 諭は困惑している。陽翔も、樹良がそのような選択をすると思っていなかったので少し拍子抜けた。

「樹良? 勝手に変な選択肢出さないでくれない? これじゃ僕の計画が──」

 陽翔が抗議したが、諭の中ですぐに答えが出ていたようだ。
 樹良はその答えが分かっていたからこそ、そんな選択肢を出したのだと、すぐに理解した。

「やだぁっ、俺は陽翔のものなんだ。絶対に離されてたまるか!!」 

「じゃあ許さないよ~。はぁ、また失恋した」

 樹良は寂しげに身を引いた。

「樹良……」

「良かったね、陽にぃ。好きな人にこんなに愛されて。僕、諭が桜子にした事、どうしても許せなかった。
 でも、どう考え直しても嫌いになれなかったんだ」

 陽翔にはその気持ちがよく分かる。勝手な事をした樹良への苛立ちもあったが、それ以上に同情した。

「樹良にも辛い思いさせたな」

「僕はいいの。一番辛いのは桜子だから」

「ん。最後は桜子だよ。僕が守るからおいで」

 陽翔は桜子に手を差し伸べた。桜子は諭の前に立つのが怖いようで震えている。そんな小さな身体を支えながら二人で諭の前に立った。
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