76 / 89
第五章「聖女と神騎士」
76.真っすぐに、正々堂々と。
しおりを挟む
「お、おい。嬢ちゃん、あんまりくっつくなよ……」
【漆黒の悪魔】を討伐したロレンツ。
聖女となったアンナの治療魔法で体力も全回復し、軍が残していった馬に乗りネガーベルへと帰還していた。
馬を操るロレンツの前で横に座りべったりとくっつくアンナ。それを後ろから見ているキャロルが思う。
(う~ん、なんかぁ、ロレロレって~、ラスボスを倒したヒーローみたいでぇ、アンナ様はお姫様みたいじゃん?? って、アンナ様はお姫様かぁ~)
ゆっくりと歩く馬にふたり一緒に乗って歩く。それはまさに世界を救ったヒーローとヒロインの凱旋のようである。
(え~、ってことは、キャロルってばぁ、引き立て役の脇役ってことぉ~??)
今更ながらキャロルは自分の置かれた立ち位置に気付き、むっとする。だが思う。
(でも聖女様に、神騎士様だからなぁ。しっかたないか~)
そこでめげないのが彼女の獲り柄。そう思いつつも絶対にロレンツを諦めない。
(むふっ、むふふっ……)
一方のアンナは幸せの絶頂だった。
念願の聖女になれ、しかもロレンツと口づけを交わし永遠の愛を誓った。もはや彼女はロレンツの恋人とか婚約者と言う地位を得た気分であった。
「ねえ、ロレンツぅ~」
ロレンツに抱きつきながらアンナが甘い声で言う。ロレンツが困った顔で答える。
「だからあんまりくっつくんじゃねえ。危ないぞ」
「むふっ、むふふっ……」
アンナはそんな照れているロレンツが可愛いと心から思った。
「あ、パパだ!!!!」
ネガーベル王城。戻ってきた王城前ではロレンツ達を心配していたイコやリリー、ミンファ、そして小隊長達がその帰りを待っていた。
(良かった、本当に良かったご無事で。……でも、何あれ)
銀髪の美しい女性ミンファ。彼女も先のキャロルと全く同じ感情を抱く女性のひとりだった。ミンファが馬上でロレンツに抱き着きながら凱旋するアンナを見て思う。
(きっとご主人様がその竜ってのを倒してくれたんですね。でも、凱旋は分かるんだけど、なんかヒーローとお姫様って感じで面白くないわ……)
そんな嬉しさと嫉妬が混じったミンファをよそに、体全身で喜びを表すイコが一直線にロレンツの元へと駆け寄る。
「パパぁ!!」
「よお、イコ。無事だったか!!」
ロレンツもアンナと共に馬から降りてイコを抱きしめる。
「良かった。無事で……」
イコを抱くロレンツの顔が優しい父親の顔となる。その目にはうっすらと涙も浮かぶ。そしてリコと一緒にいたリリーとミンファに向かって礼を言った。
「ふたりともありがとう。心から礼を言う」
「いえ、私はご主人様の言いつけを守って……」
褒められたミンファが照れそうに答える。ロレンツはその後ろにいた小隊長にも気付き声を掛ける。
「おめえは……? そうか、ありがとよ」
小隊長が敬礼して答える。
「いえ、とんでもないです!! 我々はロレンツ殿に恩を返したいだけ。お礼を言うのはこちらです」
ロレンツがそれに笑顔で応える。
「アンナ様!!!」
そしてリリーが涙を浮かべながらアンナに抱き着く。
「リリー」
アンナもリリーをぎゅっと抱きしめて言う。
「ただいま、リリー」
「アンナ様ぁ……、くすん……」
あの強気なリリーが珍しく涙ぐむのを見て、アンナもやはりまだ彼女も子供なんだなと思い直した。
「キャロル様!!」
小隊長と兵士達が、ロレンツと一緒に戻ってきたキャロルに敬礼して挨拶する。小隊長が尋ねる。
「キャロル様、あの黒い竜は討伐されたんでしょうか」
キャロルがピンク色の髪をかき上げながら答える。
「えー、黒い竜ぅ?? うん、ロレロレがやっつけちゃったよ~」
「おお!!」
兵士達の間から歓声が上がる。そしてキャロルの続けて言った言葉は更に皆を驚かせた。
「あとね~、アンナ様が聖女になっちゃったよ!! それからロレロレは何とぉ……、神騎士になりましたぁ~!!」
あまりに唐突で驚愕の言葉に皆が一瞬静かになる。そしてすぐに狂喜乱舞となる。
「ア、アンナ様、本当ですか!!?? おめでとうございます!!!!」
「やりましたね!! アンナ様!!!」
「え? 神騎士って、あのおとぎ話の中の人物でしょ??」
「ロレロレ様、神騎士って、すごーーーーーい!!!」
周りに集まり出す兵士達。
一緒に並ぶアンナとロレンツに祝福の拍手が送らされる。アンナは照れながら皆に感謝する。
「うん、みんなありがとう。私、諦めなくて良かったわ!!」
そう言ってアンナが隣に並ぶロレンツの腕に抱き着く。
(むかっ!!)
(むかっ、むかっ!!)
それを見たミンファとキャロルがむっとする。兵士のひとりが前に出てアンナに言った。
「アンナ様、実は先の避難の際に腕を怪我してしまって……、早速なんですが聖女様のお力で治癒して頂けませんでしょうか……」
アンナは笑顔で頷いて言う。
「ええ、もちろんよ。みんなを癒して安寧をもたらす。それが私の仕事。さ、腕を出して」
「ありがとうございます!!」
兵士は頭を下げてから怪我をした腕をアンナに差し出した。アンナがそれに軽く触れ治癒魔法を唱える。
「完全回復」
皆が新聖女アンナに注目した。
ロレンツとアンナがが【漆黒の悪魔】を討伐してネガーベル王城に帰る少し前、先にこの城に搬送された聖騎士団長エルグの報を聞き妹のミセルが慌てて駆けつけた。
「お兄様っ、お兄様っ!! お気を確かに!!!」
兵士達の馬に乗せられまったく身動きができないエルグ。
身に着けていた鎧は破壊され、体中その赤い髪と同じ鮮血の赤に染まっている。もう以前のイケメンの面影はない。エルグは全身の骨を砕かれた後、【漆黒の悪魔】に追撃を受けもう話すこともできない程の危篤状態であった。ミセルが大声で叫ぶ。
「早く、早く、治療室へ!!!!」
だが半壊したネガーベル王城。
多数の怪我人で溢れる城内にエルグを運び込む余裕はなかった。エルグに付き添っていた兵士が深刻な顔で言う。
「ミセル様!! 聖女であるあなたが治療をお願いします!!!」
(!!)
ミセルは思い出した。
まったく同じような光景を以前経験したことを。
(怖い、怖い怖い……)
あの時の周りの冷たい視線。
耳を塞ぎたくなるような心無い言葉。
『聖女就任式』でニセの聖女だとバレそうになった時のことがミセルの頭の中でぐるぐると回り出す。
「お兄様、お、お兄様……」
震えながら倒れそうになるミセル。
目の前には真っ赤な血に染まって動かなくなっている兄。ただその目だけしっかりとミセルを見つめ、助けを求めているような気がする。兵士が言う。
「ミセル様、早く!!」
「わ、私……」
そんな彼女の頭にその男の声が響いた。
『正々堂々とやりな。だったら褒めてやる』
(正々堂々……)
ミセルは震えている体に力を入れぎゅっと兄を見つめる。そして兵士に言った。
「ちょっと待ってて!! すぐに戻るわ!!」
『輝石』を持ち合わせていないミセルは、急ぎ自室へと向かう。半壊した王城。多くの混乱した人がごった返す中、ミセルは一心不乱に走った。
(お兄様を助ける、お兄様を助ける。それは決して聖女じゃなくてもいいこと!!!)
ミセルは半壊した部屋の中から『輝石』を手にすると、すぐに兄の元へと向かった。
「ミセル様!!!」
戻って来たミセルに兵士が声をかける。
ミセルは片手にその奇跡の石を握りながら言う。
「私はまだ聖女じゃありません。でも、お兄様は私が助ける!!!」
「おお……」
そして光るミセルの手。
同時に傷が癒えて行くエルグ。
「ミ、ミセル……」
擦れた声で兄のエルグが名前を口にする。ミセルはその兄の手を握りしめて言う。
「お兄様、お兄様、良かった……」
ミセルは涙を流しながら兄の一命を取り留めたことに安堵した。そして思う。
(ミセルはまっすぐ頑張りました。少しは褒めて頂けますか、ロレ様……)
ミセルは兵士に運ばれて行くエルグと共に城内へと向かった。
「完全回復」
そう治癒魔法を唱えたアンナを皆が見つめた。
「……あれ?」
何も起こらない。
聖女であるはずのアンナの治癒魔法が発動しない。
「え、え? なんで!?」
焦ったアンナが下位魔法を唱える。
「回復……」
「……」
やはり何も起こらない。
(な、なんで、どうして!!??)
真っ青になるアンナ。周りからは冷たい視線と共に猜疑の目が向けられる。
「あ!」
その時ロレンツが急に驚いたような顔をした。そして隣に居るアンナと共に、皆に背を向け小さな声で言う。
「お、おい、嬢ちゃん!!」
「な、なによ!」
治癒魔法が発動しなくて焦るアンナが苛ついて答える。ロレンツは自分の右手の甲を見せて言った。
「模様が、ハートの模様が復活している……」
「!!」
ロレンツの右手甲には先程聖女の解呪で消えたはずの黒のハートの模様が、見事に完全な形で復活していた。ロレンツが言う。
「ま、まさか……」
(呪剣……)
(げっ!!)
ロレンツの右手には神騎士になり現れるはずのない漆黒の剣が再び握られていた。ロレンツが言う。
「戻っちまったんだ、俺も……、嬢ちゃんも……」
「ちょっと~、ふたりで何を話しているんですぅ~??」
背を向けて何やらひそひそ話をするふたりにキャロルが不満そうに言う。アンナが青い顔でロレンツに言う。
「ど、どうしよう……」
「まあ、仕方ねえな。振り出しに戻る、だ。はははっ」
アンナはこんな状況になっても呑気に笑う銀髪の男を見て深く溜息をついた。
【漆黒の悪魔】を討伐したロレンツ。
聖女となったアンナの治療魔法で体力も全回復し、軍が残していった馬に乗りネガーベルへと帰還していた。
馬を操るロレンツの前で横に座りべったりとくっつくアンナ。それを後ろから見ているキャロルが思う。
(う~ん、なんかぁ、ロレロレって~、ラスボスを倒したヒーローみたいでぇ、アンナ様はお姫様みたいじゃん?? って、アンナ様はお姫様かぁ~)
ゆっくりと歩く馬にふたり一緒に乗って歩く。それはまさに世界を救ったヒーローとヒロインの凱旋のようである。
(え~、ってことは、キャロルってばぁ、引き立て役の脇役ってことぉ~??)
今更ながらキャロルは自分の置かれた立ち位置に気付き、むっとする。だが思う。
(でも聖女様に、神騎士様だからなぁ。しっかたないか~)
そこでめげないのが彼女の獲り柄。そう思いつつも絶対にロレンツを諦めない。
(むふっ、むふふっ……)
一方のアンナは幸せの絶頂だった。
念願の聖女になれ、しかもロレンツと口づけを交わし永遠の愛を誓った。もはや彼女はロレンツの恋人とか婚約者と言う地位を得た気分であった。
「ねえ、ロレンツぅ~」
ロレンツに抱きつきながらアンナが甘い声で言う。ロレンツが困った顔で答える。
「だからあんまりくっつくんじゃねえ。危ないぞ」
「むふっ、むふふっ……」
アンナはそんな照れているロレンツが可愛いと心から思った。
「あ、パパだ!!!!」
ネガーベル王城。戻ってきた王城前ではロレンツ達を心配していたイコやリリー、ミンファ、そして小隊長達がその帰りを待っていた。
(良かった、本当に良かったご無事で。……でも、何あれ)
銀髪の美しい女性ミンファ。彼女も先のキャロルと全く同じ感情を抱く女性のひとりだった。ミンファが馬上でロレンツに抱き着きながら凱旋するアンナを見て思う。
(きっとご主人様がその竜ってのを倒してくれたんですね。でも、凱旋は分かるんだけど、なんかヒーローとお姫様って感じで面白くないわ……)
そんな嬉しさと嫉妬が混じったミンファをよそに、体全身で喜びを表すイコが一直線にロレンツの元へと駆け寄る。
「パパぁ!!」
「よお、イコ。無事だったか!!」
ロレンツもアンナと共に馬から降りてイコを抱きしめる。
「良かった。無事で……」
イコを抱くロレンツの顔が優しい父親の顔となる。その目にはうっすらと涙も浮かぶ。そしてリコと一緒にいたリリーとミンファに向かって礼を言った。
「ふたりともありがとう。心から礼を言う」
「いえ、私はご主人様の言いつけを守って……」
褒められたミンファが照れそうに答える。ロレンツはその後ろにいた小隊長にも気付き声を掛ける。
「おめえは……? そうか、ありがとよ」
小隊長が敬礼して答える。
「いえ、とんでもないです!! 我々はロレンツ殿に恩を返したいだけ。お礼を言うのはこちらです」
ロレンツがそれに笑顔で応える。
「アンナ様!!!」
そしてリリーが涙を浮かべながらアンナに抱き着く。
「リリー」
アンナもリリーをぎゅっと抱きしめて言う。
「ただいま、リリー」
「アンナ様ぁ……、くすん……」
あの強気なリリーが珍しく涙ぐむのを見て、アンナもやはりまだ彼女も子供なんだなと思い直した。
「キャロル様!!」
小隊長と兵士達が、ロレンツと一緒に戻ってきたキャロルに敬礼して挨拶する。小隊長が尋ねる。
「キャロル様、あの黒い竜は討伐されたんでしょうか」
キャロルがピンク色の髪をかき上げながら答える。
「えー、黒い竜ぅ?? うん、ロレロレがやっつけちゃったよ~」
「おお!!」
兵士達の間から歓声が上がる。そしてキャロルの続けて言った言葉は更に皆を驚かせた。
「あとね~、アンナ様が聖女になっちゃったよ!! それからロレロレは何とぉ……、神騎士になりましたぁ~!!」
あまりに唐突で驚愕の言葉に皆が一瞬静かになる。そしてすぐに狂喜乱舞となる。
「ア、アンナ様、本当ですか!!?? おめでとうございます!!!!」
「やりましたね!! アンナ様!!!」
「え? 神騎士って、あのおとぎ話の中の人物でしょ??」
「ロレロレ様、神騎士って、すごーーーーーい!!!」
周りに集まり出す兵士達。
一緒に並ぶアンナとロレンツに祝福の拍手が送らされる。アンナは照れながら皆に感謝する。
「うん、みんなありがとう。私、諦めなくて良かったわ!!」
そう言ってアンナが隣に並ぶロレンツの腕に抱き着く。
(むかっ!!)
(むかっ、むかっ!!)
それを見たミンファとキャロルがむっとする。兵士のひとりが前に出てアンナに言った。
「アンナ様、実は先の避難の際に腕を怪我してしまって……、早速なんですが聖女様のお力で治癒して頂けませんでしょうか……」
アンナは笑顔で頷いて言う。
「ええ、もちろんよ。みんなを癒して安寧をもたらす。それが私の仕事。さ、腕を出して」
「ありがとうございます!!」
兵士は頭を下げてから怪我をした腕をアンナに差し出した。アンナがそれに軽く触れ治癒魔法を唱える。
「完全回復」
皆が新聖女アンナに注目した。
ロレンツとアンナがが【漆黒の悪魔】を討伐してネガーベル王城に帰る少し前、先にこの城に搬送された聖騎士団長エルグの報を聞き妹のミセルが慌てて駆けつけた。
「お兄様っ、お兄様っ!! お気を確かに!!!」
兵士達の馬に乗せられまったく身動きができないエルグ。
身に着けていた鎧は破壊され、体中その赤い髪と同じ鮮血の赤に染まっている。もう以前のイケメンの面影はない。エルグは全身の骨を砕かれた後、【漆黒の悪魔】に追撃を受けもう話すこともできない程の危篤状態であった。ミセルが大声で叫ぶ。
「早く、早く、治療室へ!!!!」
だが半壊したネガーベル王城。
多数の怪我人で溢れる城内にエルグを運び込む余裕はなかった。エルグに付き添っていた兵士が深刻な顔で言う。
「ミセル様!! 聖女であるあなたが治療をお願いします!!!」
(!!)
ミセルは思い出した。
まったく同じような光景を以前経験したことを。
(怖い、怖い怖い……)
あの時の周りの冷たい視線。
耳を塞ぎたくなるような心無い言葉。
『聖女就任式』でニセの聖女だとバレそうになった時のことがミセルの頭の中でぐるぐると回り出す。
「お兄様、お、お兄様……」
震えながら倒れそうになるミセル。
目の前には真っ赤な血に染まって動かなくなっている兄。ただその目だけしっかりとミセルを見つめ、助けを求めているような気がする。兵士が言う。
「ミセル様、早く!!」
「わ、私……」
そんな彼女の頭にその男の声が響いた。
『正々堂々とやりな。だったら褒めてやる』
(正々堂々……)
ミセルは震えている体に力を入れぎゅっと兄を見つめる。そして兵士に言った。
「ちょっと待ってて!! すぐに戻るわ!!」
『輝石』を持ち合わせていないミセルは、急ぎ自室へと向かう。半壊した王城。多くの混乱した人がごった返す中、ミセルは一心不乱に走った。
(お兄様を助ける、お兄様を助ける。それは決して聖女じゃなくてもいいこと!!!)
ミセルは半壊した部屋の中から『輝石』を手にすると、すぐに兄の元へと向かった。
「ミセル様!!!」
戻って来たミセルに兵士が声をかける。
ミセルは片手にその奇跡の石を握りながら言う。
「私はまだ聖女じゃありません。でも、お兄様は私が助ける!!!」
「おお……」
そして光るミセルの手。
同時に傷が癒えて行くエルグ。
「ミ、ミセル……」
擦れた声で兄のエルグが名前を口にする。ミセルはその兄の手を握りしめて言う。
「お兄様、お兄様、良かった……」
ミセルは涙を流しながら兄の一命を取り留めたことに安堵した。そして思う。
(ミセルはまっすぐ頑張りました。少しは褒めて頂けますか、ロレ様……)
ミセルは兵士に運ばれて行くエルグと共に城内へと向かった。
「完全回復」
そう治癒魔法を唱えたアンナを皆が見つめた。
「……あれ?」
何も起こらない。
聖女であるはずのアンナの治癒魔法が発動しない。
「え、え? なんで!?」
焦ったアンナが下位魔法を唱える。
「回復……」
「……」
やはり何も起こらない。
(な、なんで、どうして!!??)
真っ青になるアンナ。周りからは冷たい視線と共に猜疑の目が向けられる。
「あ!」
その時ロレンツが急に驚いたような顔をした。そして隣に居るアンナと共に、皆に背を向け小さな声で言う。
「お、おい、嬢ちゃん!!」
「な、なによ!」
治癒魔法が発動しなくて焦るアンナが苛ついて答える。ロレンツは自分の右手の甲を見せて言った。
「模様が、ハートの模様が復活している……」
「!!」
ロレンツの右手甲には先程聖女の解呪で消えたはずの黒のハートの模様が、見事に完全な形で復活していた。ロレンツが言う。
「ま、まさか……」
(呪剣……)
(げっ!!)
ロレンツの右手には神騎士になり現れるはずのない漆黒の剣が再び握られていた。ロレンツが言う。
「戻っちまったんだ、俺も……、嬢ちゃんも……」
「ちょっと~、ふたりで何を話しているんですぅ~??」
背を向けて何やらひそひそ話をするふたりにキャロルが不満そうに言う。アンナが青い顔でロレンツに言う。
「ど、どうしよう……」
「まあ、仕方ねえな。振り出しに戻る、だ。はははっ」
アンナはこんな状況になっても呑気に笑う銀髪の男を見て深く溜息をついた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!
黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。
「あれ?なんか身体が軽いな」
その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。
これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる