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番外編・温泉回!
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そんなことを思っている間にも、あかりはその攻撃の手をますます強め、素早く、鋭くしていきながら冬丘を追い詰めていっている。
そうなると冬丘もさすがに無駄口を叩いている余裕はなくなり。口唇を固く噛み締めながら、真剣な表情であかりの攻撃を必死に防ぎ続けていた。
だが。戦っている二人はそれでいいかもしれないが、その上に乗っているほうはたまったものではない。
あかりと冬丘は実力が伯仲しており、そのため互いに手加減する余裕もなく本気の攻撃を繰り広げている。それはつまり肩の上や背中に乗っている聖や参ノ宮のことを気遣う余裕もないということで。
「ぎょへぇーっ!」
「ひええぇ~っ!」
真空撃やら衝撃波やら闘気技やらが雨あられと飛び交う中。聖たちはうっかりその攻撃を受けることがないように、または振り落とされないように、激しく動き回る騎馬の身体にしがみついて、悲鳴をあげながら小さくなっているしかなかった。
思わぬ派手な戦いを間近で見ることが出来て、観客たちは大喜びだが。高レベル戦士同士の戦いに巻きこまれた形の聖と参ノ宮からすれば、冗談抜きで生命の危険に陥りかねない。
「……んー。なんて言うか。あれってもうすでに騎馬戦でもなんでもないよなー」
「そろそろ止めたほうがいいんじゃないかしらリーダー? あのままだとそのうち死人が出かねないと思うんだけど」
「やめたほうがいいですよ。あのレベルの戦いに下手に首をつっこんだら、こっちの身のほうが危ないですから。いまのボクたちに出来ることは、神代さんたちの無事を祈りながら、ただ黙って見物……いえ、見守っていることだけです」
ふと聖が観客席のほうに目をやると。いつの間にお湯から上がったのか、賢悟、小夢、敦哉(生きていた)の三人が並んで体育座りをしながら戦いの様子を眺め、いかにも他人ごとといった口ぶりで勝手なことを言っている様子を見ることが出来た。
春山夏池秋里の三人も、賢悟たちから少し離れた場所で同じように体育座りをしながら、他人ごとのようにくつろいだ表情を浮かべつつ、あかりと冬丘の戦いをのんびり眺めたり声援を送ったりしている。
(……あいつら~。人が生きるか死ぬかの瀬戸際にいるって時に~)
そんな思いを、聖は憎々しげな視線にこめて賢悟ら六人に叩きつけた。
ともあれ。いつまでもこのままというわけにはいかない。
ずっと熱いお湯に浸かり続けながら激しい戦いを繰り広げているあかりと冬丘はもちろん、聖と参ノ宮も暑さのためかなり意識がもうろうとしてきている。
そろそろ温泉から上がらないと、冗談抜きで誰かが大怪我してしまうかもしれないし。そこまで行かなくても四人そろってゆでダコのようになって、明日一日熱にうなされながら布団の上で過ごす羽目になってしまうかもしれない。
だが、だからと言ってどうすればいい? 高レベル戦士同士の戦いに、たかがレベル四の僧侶でしかない聖になにが出来るというのか。
《聖ちゃん!》
途方に暮れている聖の耳に不意に、静かだが力強く低い声が響いてきた。
(これは、熊さんの声?)
間違いない。迷宮内での戦闘中で、聖たちが迷ったり戸惑ったりした時。いつも必ず的確で適切なアドバイスを放ってくれる、頼もしく安心感をもたらしてくれる声。いま聖の耳に飛びこんできた声は、それと全く同じものだったのだ。
だけどこの大歓声の中、熊さんの声がこんなにもはっきり聴こえるわけがない。戸惑う聖だったけれど。次の瞬間あることに思い至って、観客席にいる熊さんと愁貴のほうにと目を向ける。
聖の視線に気がつくと、熊さんはさりげなく右手の人差し指を天井にと向けた。その指の先へと視線を追いかけた聖の視界に入ってきたのは、薄絹をまとった二〇歳くらいの、はかなげな顔立ちと長くとがった耳を持つ美女の姿だった。
(……風の精霊、シルフ!?)
そのことに気がついて、聖は思わず唾を飲みこむ。
驚いた聖が視線を戻すと、愁貴がいたずらっぽい表情を浮かべながらぱちりと左目をつむって見せる様子が目に入った。どうやらこのシルフ、召喚士である愁貴が熊さんの指示に従ってこっそりと召喚したもののようである。
なるほど。先ほどはシルフが風を操ることで、熊さんの声を聖の耳にだけこっそり届けたのだろう。なのでこの大歓声の中でも、聖は熊さんの声をはっきり聞き取ることが出来たということのようだ。
シルフは風の精霊だけあって、空気の流れがない所では召喚出来ない。
だがこの大浴場は開閉出来る窓こそないものの、空気の入れ変えのための通風孔や排気口などは至る所に設置されていた。そのためわずかながら空気の流れがあるために、召喚条件はクリアしている。
しかし魔法使いや僧侶と同じく、召喚士とてむやみやたらに精霊を喚び出すことは禁止されているのだ。
いまシルフは浴場の天井近くに浮かんでいるし、観客たちは聖たち(と言うか、あかりと冬丘の戦い)に注目しているためその存在は気づかれていないようだけれど。もしもバレたら、愁貴がなんらかの罰を受けることになってしまうかもしれない。
それなのに何故熊さんは……と怪訝に思った聖だったけれど。そんな聖の耳に、シルフがさらなる熊さんの声を届けてきた。
《違法は承知の上だがね。君たち四人の体力ももはや限界のようだ。このままだと君ら……特に冬丘くんと入野さんは熱中症と脱水症状を併発して、かなり深刻な状態になってしまうかもしれないからね》
聖の疑問を解消するように、熊さんが穏やかに言葉を紡ぐ。
《そろそろドクターストップをかけてもいい状況だけど。この大会は景品は豪華だけれどしょせん、一企業の親朴会みたいなものだからねえ。生憎、いざという時のためのドクターなんてものは用意されていないんだ》
だが一社員でしかない熊さんがそろそろこの勝負はやめさせるべきだと言ったところで、熱狂している観客たちは納得しないだろうし。そもそも完全に頭に血が昇っている状態のあかりが、おとなしく言うことを聞くとも思えないと熊さんは続けた。
《仕方がないので、緊急避難ということで愁貴くんに頼んでこっそりとシルフを召喚してもらったというわけさ。大丈夫。後でなにか問題になったとしても、愁貴くんには絶対、責任がかぶさることがないようにするから》
「で、ですけど。ここでシルフを召喚したからと言って、事態が好転するとはとても思えないんですけど? まさかシルフに突風を起こしてもらって、あかりさんや冬丘さんを吹き飛ばすというわけにもいかないですし」
聖は半分独り言のように、口の中で小さく呟いただけだったが。シルフはその声を今度は熊さんの耳に届けてくれたらしく、熊さんは大きくうなずいて見せた。
《もちろん、その通りだ。シルフには私と君との会話の中継をしてもらうつもりで召喚してもらっただけだよ。この事態を収拾させるのは、聖ちゃん。君の仕事だ》
「えっ? あ、あたしですか!?」
《ああ。僧侶であり、入野さんのすぐ近くにいる君にしか出来ないことだ。察するところ入野さんは長くお湯に浸かりすぎているせいで頭に血が昇って、一時的に精神が錯乱している状態なんだと私は見ているが。聖ちゃんはどう思う?》
「は、はい。あたしもそうだと思います」
《なら、話は簡単だ。僧侶の呪文である『精神安定』を彼女に向けて使えばいい》
「『精神安定』をですか?」
聖は素っ頓狂な声をあげる。
『精神安定』は僧侶系レベル一の呪文で。もちろん聖は使用することが出来る。
その効力は戦いに熱中しすぎて狂戦士のようになってしまったり、あるいは敵による精神系の攻撃を受けてまともな判断力を失ってしまったりした仲間の精神を落ち着かせて、正気に戻すこと。
前にこの呪文をかけられたことがある賢悟は『バケツ数杯分の冷たい水を、頭から一気にかぶせられたようだった』と言っていた。なるほど。この呪文なら確かに、熱くなり過ぎた頭を冷やすにはもってこいで。あかりたちの戦いを止めることは出来るだろう。
だけど……。
「で、ですが熊さん。迷宮内でない一般の場所で、しかも競技中の選手が呪文を使うというのはまずくないですか?」
《その心配はないだろう。このままではこの場にいる君ら四人とも熱中症を起こしてしまうかもしれないし、あるいは誰かが入野さんや冬丘くんの攻撃をまともに受けて大怪我をしてしまう危険性もあるからね》
なので緊急避難として、『精神安定』の呪文くらいなら使ったところで後々問題になるとは思えないと、熊さんは続けた。
「それはそうかもしれないですけど。でも、観客たちのこの熱狂の度合いをどう思います? あかりさんたちの戦いを見てこんなに興奮してるのに。そこであたしが呪文を唱えてその戦いを中断させちゃったら、不満が残るんじゃないですか?」
実際に温泉の中に入って戦っている選手たちほどではないにしても。結構長い時間熱い湯気が漂う浴場の中にいるせいで、観客たちも少なからず頭に血が昇っており、酔っ払ったような興奮状態にあるようだ。
確かに。ここで聖が『精神安定』の呪文を唱えれば、あかりを正気に戻すことは出来るだろう。けれど当然ながら、そうなれば彼女はもう戦いを続けようとは思わないはずである。
これまで狂戦士のように戦い続けてきたあかりが突如戦いをやめたら、観客たちはどういうことかと訝しく思うだろう。
だがそれもほんの一瞬のこと。なにしろ現在この温泉には四〇〇名ほどの観客がいて、その誰もがこの勝負を注視しているのだから。
となれば。そのうちの何人か……最低でも二~三人くらいはあかりに肩車されている聖が胸の前で聖印を組んでいたということ、つまりなんらかの呪文を唱えたせいであかりが冷静さを取り戻し、戦いを中断させたのだと気づくに決まっている。
そうなったら、冗談抜きで暴動が起こりかねない。
サッカーの試合を観戦していた観客たちがエキサイトしすぎてフーリガンと化し、暴れ回るなどという事件が度々あることからも分かる通り、スポーツ観戦というのは人間の闘争本能をかなり激しく刺激する効果があるものだ。
熱狂しながら楽しんで観ていた戦いが水入り……と言うかお湯入りとなって中途半端な形で終了したのではその闘争本能が行き場を失い不完全燃焼状態となり、不満がたまることは疑いない。
それでも普通の状態なら、暴動とまではいかないだろうけれど。前述の通り暑さと熱さに当てられているせいで、観客たちは酒に酔ったようになっている。
となればその不満を発散させるために暴力という手段を用いようとする者が出てこないとは断言出来ないだろう。
そして一人でも暴力を振るい出すものが出てくれば、後はもう連鎖的である。さすがに人死にが出るほどの大惨事にまでは至らないだろうが、女性や子供を中心に大怪我をする者が出てくる危険性は充分高いと聖は懸念しているのだ。
聖がその思いを告げると、熊さんはうーんと唸り声をあげた。
《考えすぎだとは思うが、絶対にあり得ないこととも言い切れないな。では、こうしよう……》
そう言ってから熊さんは、ある作戦を聖に伝えてきた。
「なるほど。それでお願いします」
聖は小さくうなずくと、観客たちに気づかれないよう口の中だけで小さく『精神安定』の呪文を唱え始めた。
「たああっ! 十文字真空覇っ!!」
そうこうしている間に、あかりは交差させた両手を大きく振り回すことで、自らの目の前に巨大な真空の刃を二本作り出した。
真空の刃は漢字の『十』の形に重なり合うと、そのままお湯しぶきを上げながら猛烈な勢いで冬丘と参ノ宮のほうへと向かっていく。
この攻撃はどうやらあかりのとっておき、奥義的なものらしい。聖の見たところ、その破壊力は侍である賢悟最大の必殺技、飛翔剣稲妻天舞をすらしのぐほどでないかと思われるほどだった。
「ひょええぇーっ!?」
それほどの攻撃が自分に向かって一直線に飛んでくる様子を目の当たりにした参ノ宮は恐怖のため、真っ青にした顔を大きく歪め、目に涙をいっぱいに浮かべながらいまにもちびりそうな悲鳴をあげる。
そんな参ノ宮の姿を見て、彼女のことを嫌っている聖でさえもさすがに少し気の毒に思えてきたが。そもそも彼女が余計な提案をしてあかりをこの大会に引っ張りこんだり、しなくてもいい挑発をしたりしなければこんなことにはならなかったのだ。
(自業自得と言うか、因果応報よねえ)
聖はげっぷのようなため息をついた。
だが冬丘も、そんなものをむざむざとその身に受けるわけがない。彼は闘気と気合いを最大限にこめた左の拳で、自分に向かって飛んでくる十字の刃を殴りつけた。
その衝撃で冬丘の左拳は裂け、少なからぬ量の血が噴き出したけれど。十文字真空覇も砕けて、冷たい風と化し周囲に飛び散っていく。
「地龍衝天撃っ!」
さらに。冬丘は今度は右手にも闘気をこめ、その拳で温泉の湯面を叩きつけた。
これもまた本来はお湯ではなく、地面に大きな圧力をかけた攻撃を打ちこむことで大量の土を一度に噴き上げ、敵を瞬時に生き埋めにするという恐ろしい技だ。
本来の土ではなくお湯に対して使ったため、あかりや聖が生き埋めになるということはなかったが。代わりに温泉内の湯量が一気に半分ほどに減ってしまう。
減った分のお湯がどこに行ったのかというと、無数のお湯しぶきとなって大浴場全体にと散らばり広がっていったのである。
「うわあっ!」
「きゃあっ!?」
いきなり自分たちのもとに飛び散ってきた高温のお湯に、観客たちは悲鳴をあげながら目をつむったり、とっさに腕を目の前で組んで顔面をかばおうとし始めた。
さらにはそれらお湯の生み出した大量の湯気が、短い時間ながらも浴場全体を白一色に染め抜いていく。
(……いまだっ!!)
聖は心の中で叫び声をあげると、落ちないよう必死につかんでいたあかりの頭から手を離し、胸の前で素早く聖印を組みつつ呪文の最後の部分を唱える。
「貴女の差し出した手がひとしずくの涙で濡れる。彼は驚き貴女を見るが、貴女の目は潤んでいなかった。やがて彼は気づくだろう。その涙が自分の目からこぼれたものだと。彼はとめどなく涙を流し、貴女の手を濡らし続ける……『精神安定』!」
そうして、聖はあかりに向けて渾身の力をこめた呪文を解き放つ。
そう。これが、熊さんの伝えた作戦だった。
聖に『精神安定』の呪文を使ってあかりを落ち着かせるよう言った後。熊さんはシルフの力を借りて、冬丘にも事情を説明した上である指示を出していたのだ。
それは観客たちの目を一時的にくらませることで、聖が呪文を唱えたことが誰にも気づかれないようにして欲しいというもの。
あかりと戦いたくなどない冬丘はその申し出を快諾し、タイミングを計って地龍衝天撃を放ち。観客席に向かって無数の湯しぶきを飛ばしたというわけである。
それにより観客たちは反射的に顔を覆い、しかも大量の湯気が発生したことで視界は大きくふさがれることとなった。
この状況ならば聖が聖印を組んだことが、ひいては呪文を唱えたことがバレる心配はない。つまり、聖が勝負に水ならぬお湯を差したのだとは誰にも気づかれずにすむというわけだ。
「……ひゃっ!? あ、あれ? あたしはなにを……?」
聖が放った呪文が効果を現し、あかりはハッとしたような表情を浮かべながらきょとんと首をかしげ、戸惑いの声を出した。
やれやれ、上手くいったかと聖はほっと胸を撫で下ろす。
だがまだ終わりではない。観客たちの興奮を完全に燃焼させるためには、この勝負にきちんと決着をつけさせなければならないのだ。
あかりが戦意を失った状態に陥っため、なし崩し的に戦いが終わりましたというのでは、やはり観客たちは納得せずに不満がたまってしまうだろう。
そのような事態になるのを防ぐためには、あかりが正気を取り戻したと観客たちが気づく前に、ルールに則った形で正当に勝負に決着をつけるしかない。
聖はげんなりとした気分でしょうがないなあと呟きつつ湿ったため息をこぼすと。湯煙が晴れ、大浴場の視界が元通りになったタイミングを見計らって、あかりの首にかけていた自らの足の力をゆっくりと緩める。するともちろん……。
ザバーン!
四〇〇人の観客が見守る中。聖はあかりの肩から落下して、温泉の湯船の中にと沈んでいった。あたかもあかりの激しい動きについていけず、力尽きて倒れてしまったのだと宣言するかのごとく。
聖が湯船の中から顔を出し、テッポウウオのように口からお湯を吹き出すと、観客席のほうから『おおっ!』というどよめきの声が上がり。
同時に『ピーッ!』という笛の音が鳴り。実況役であり審判でもある森本が手を振り回しながら、高々に宣伝の声をあげる。
「一二番、神代選手落下により失格! よって第四回温泉大騎馬戦大会は、六番、参ノ宮志津香選手の優勝と致します!」
そうなると冬丘もさすがに無駄口を叩いている余裕はなくなり。口唇を固く噛み締めながら、真剣な表情であかりの攻撃を必死に防ぎ続けていた。
だが。戦っている二人はそれでいいかもしれないが、その上に乗っているほうはたまったものではない。
あかりと冬丘は実力が伯仲しており、そのため互いに手加減する余裕もなく本気の攻撃を繰り広げている。それはつまり肩の上や背中に乗っている聖や参ノ宮のことを気遣う余裕もないということで。
「ぎょへぇーっ!」
「ひええぇ~っ!」
真空撃やら衝撃波やら闘気技やらが雨あられと飛び交う中。聖たちはうっかりその攻撃を受けることがないように、または振り落とされないように、激しく動き回る騎馬の身体にしがみついて、悲鳴をあげながら小さくなっているしかなかった。
思わぬ派手な戦いを間近で見ることが出来て、観客たちは大喜びだが。高レベル戦士同士の戦いに巻きこまれた形の聖と参ノ宮からすれば、冗談抜きで生命の危険に陥りかねない。
「……んー。なんて言うか。あれってもうすでに騎馬戦でもなんでもないよなー」
「そろそろ止めたほうがいいんじゃないかしらリーダー? あのままだとそのうち死人が出かねないと思うんだけど」
「やめたほうがいいですよ。あのレベルの戦いに下手に首をつっこんだら、こっちの身のほうが危ないですから。いまのボクたちに出来ることは、神代さんたちの無事を祈りながら、ただ黙って見物……いえ、見守っていることだけです」
ふと聖が観客席のほうに目をやると。いつの間にお湯から上がったのか、賢悟、小夢、敦哉(生きていた)の三人が並んで体育座りをしながら戦いの様子を眺め、いかにも他人ごとといった口ぶりで勝手なことを言っている様子を見ることが出来た。
春山夏池秋里の三人も、賢悟たちから少し離れた場所で同じように体育座りをしながら、他人ごとのようにくつろいだ表情を浮かべつつ、あかりと冬丘の戦いをのんびり眺めたり声援を送ったりしている。
(……あいつら~。人が生きるか死ぬかの瀬戸際にいるって時に~)
そんな思いを、聖は憎々しげな視線にこめて賢悟ら六人に叩きつけた。
ともあれ。いつまでもこのままというわけにはいかない。
ずっと熱いお湯に浸かり続けながら激しい戦いを繰り広げているあかりと冬丘はもちろん、聖と参ノ宮も暑さのためかなり意識がもうろうとしてきている。
そろそろ温泉から上がらないと、冗談抜きで誰かが大怪我してしまうかもしれないし。そこまで行かなくても四人そろってゆでダコのようになって、明日一日熱にうなされながら布団の上で過ごす羽目になってしまうかもしれない。
だが、だからと言ってどうすればいい? 高レベル戦士同士の戦いに、たかがレベル四の僧侶でしかない聖になにが出来るというのか。
《聖ちゃん!》
途方に暮れている聖の耳に不意に、静かだが力強く低い声が響いてきた。
(これは、熊さんの声?)
間違いない。迷宮内での戦闘中で、聖たちが迷ったり戸惑ったりした時。いつも必ず的確で適切なアドバイスを放ってくれる、頼もしく安心感をもたらしてくれる声。いま聖の耳に飛びこんできた声は、それと全く同じものだったのだ。
だけどこの大歓声の中、熊さんの声がこんなにもはっきり聴こえるわけがない。戸惑う聖だったけれど。次の瞬間あることに思い至って、観客席にいる熊さんと愁貴のほうにと目を向ける。
聖の視線に気がつくと、熊さんはさりげなく右手の人差し指を天井にと向けた。その指の先へと視線を追いかけた聖の視界に入ってきたのは、薄絹をまとった二〇歳くらいの、はかなげな顔立ちと長くとがった耳を持つ美女の姿だった。
(……風の精霊、シルフ!?)
そのことに気がついて、聖は思わず唾を飲みこむ。
驚いた聖が視線を戻すと、愁貴がいたずらっぽい表情を浮かべながらぱちりと左目をつむって見せる様子が目に入った。どうやらこのシルフ、召喚士である愁貴が熊さんの指示に従ってこっそりと召喚したもののようである。
なるほど。先ほどはシルフが風を操ることで、熊さんの声を聖の耳にだけこっそり届けたのだろう。なのでこの大歓声の中でも、聖は熊さんの声をはっきり聞き取ることが出来たということのようだ。
シルフは風の精霊だけあって、空気の流れがない所では召喚出来ない。
だがこの大浴場は開閉出来る窓こそないものの、空気の入れ変えのための通風孔や排気口などは至る所に設置されていた。そのためわずかながら空気の流れがあるために、召喚条件はクリアしている。
しかし魔法使いや僧侶と同じく、召喚士とてむやみやたらに精霊を喚び出すことは禁止されているのだ。
いまシルフは浴場の天井近くに浮かんでいるし、観客たちは聖たち(と言うか、あかりと冬丘の戦い)に注目しているためその存在は気づかれていないようだけれど。もしもバレたら、愁貴がなんらかの罰を受けることになってしまうかもしれない。
それなのに何故熊さんは……と怪訝に思った聖だったけれど。そんな聖の耳に、シルフがさらなる熊さんの声を届けてきた。
《違法は承知の上だがね。君たち四人の体力ももはや限界のようだ。このままだと君ら……特に冬丘くんと入野さんは熱中症と脱水症状を併発して、かなり深刻な状態になってしまうかもしれないからね》
聖の疑問を解消するように、熊さんが穏やかに言葉を紡ぐ。
《そろそろドクターストップをかけてもいい状況だけど。この大会は景品は豪華だけれどしょせん、一企業の親朴会みたいなものだからねえ。生憎、いざという時のためのドクターなんてものは用意されていないんだ》
だが一社員でしかない熊さんがそろそろこの勝負はやめさせるべきだと言ったところで、熱狂している観客たちは納得しないだろうし。そもそも完全に頭に血が昇っている状態のあかりが、おとなしく言うことを聞くとも思えないと熊さんは続けた。
《仕方がないので、緊急避難ということで愁貴くんに頼んでこっそりとシルフを召喚してもらったというわけさ。大丈夫。後でなにか問題になったとしても、愁貴くんには絶対、責任がかぶさることがないようにするから》
「で、ですけど。ここでシルフを召喚したからと言って、事態が好転するとはとても思えないんですけど? まさかシルフに突風を起こしてもらって、あかりさんや冬丘さんを吹き飛ばすというわけにもいかないですし」
聖は半分独り言のように、口の中で小さく呟いただけだったが。シルフはその声を今度は熊さんの耳に届けてくれたらしく、熊さんは大きくうなずいて見せた。
《もちろん、その通りだ。シルフには私と君との会話の中継をしてもらうつもりで召喚してもらっただけだよ。この事態を収拾させるのは、聖ちゃん。君の仕事だ》
「えっ? あ、あたしですか!?」
《ああ。僧侶であり、入野さんのすぐ近くにいる君にしか出来ないことだ。察するところ入野さんは長くお湯に浸かりすぎているせいで頭に血が昇って、一時的に精神が錯乱している状態なんだと私は見ているが。聖ちゃんはどう思う?》
「は、はい。あたしもそうだと思います」
《なら、話は簡単だ。僧侶の呪文である『精神安定』を彼女に向けて使えばいい》
「『精神安定』をですか?」
聖は素っ頓狂な声をあげる。
『精神安定』は僧侶系レベル一の呪文で。もちろん聖は使用することが出来る。
その効力は戦いに熱中しすぎて狂戦士のようになってしまったり、あるいは敵による精神系の攻撃を受けてまともな判断力を失ってしまったりした仲間の精神を落ち着かせて、正気に戻すこと。
前にこの呪文をかけられたことがある賢悟は『バケツ数杯分の冷たい水を、頭から一気にかぶせられたようだった』と言っていた。なるほど。この呪文なら確かに、熱くなり過ぎた頭を冷やすにはもってこいで。あかりたちの戦いを止めることは出来るだろう。
だけど……。
「で、ですが熊さん。迷宮内でない一般の場所で、しかも競技中の選手が呪文を使うというのはまずくないですか?」
《その心配はないだろう。このままではこの場にいる君ら四人とも熱中症を起こしてしまうかもしれないし、あるいは誰かが入野さんや冬丘くんの攻撃をまともに受けて大怪我をしてしまう危険性もあるからね》
なので緊急避難として、『精神安定』の呪文くらいなら使ったところで後々問題になるとは思えないと、熊さんは続けた。
「それはそうかもしれないですけど。でも、観客たちのこの熱狂の度合いをどう思います? あかりさんたちの戦いを見てこんなに興奮してるのに。そこであたしが呪文を唱えてその戦いを中断させちゃったら、不満が残るんじゃないですか?」
実際に温泉の中に入って戦っている選手たちほどではないにしても。結構長い時間熱い湯気が漂う浴場の中にいるせいで、観客たちも少なからず頭に血が昇っており、酔っ払ったような興奮状態にあるようだ。
確かに。ここで聖が『精神安定』の呪文を唱えれば、あかりを正気に戻すことは出来るだろう。けれど当然ながら、そうなれば彼女はもう戦いを続けようとは思わないはずである。
これまで狂戦士のように戦い続けてきたあかりが突如戦いをやめたら、観客たちはどういうことかと訝しく思うだろう。
だがそれもほんの一瞬のこと。なにしろ現在この温泉には四〇〇名ほどの観客がいて、その誰もがこの勝負を注視しているのだから。
となれば。そのうちの何人か……最低でも二~三人くらいはあかりに肩車されている聖が胸の前で聖印を組んでいたということ、つまりなんらかの呪文を唱えたせいであかりが冷静さを取り戻し、戦いを中断させたのだと気づくに決まっている。
そうなったら、冗談抜きで暴動が起こりかねない。
サッカーの試合を観戦していた観客たちがエキサイトしすぎてフーリガンと化し、暴れ回るなどという事件が度々あることからも分かる通り、スポーツ観戦というのは人間の闘争本能をかなり激しく刺激する効果があるものだ。
熱狂しながら楽しんで観ていた戦いが水入り……と言うかお湯入りとなって中途半端な形で終了したのではその闘争本能が行き場を失い不完全燃焼状態となり、不満がたまることは疑いない。
それでも普通の状態なら、暴動とまではいかないだろうけれど。前述の通り暑さと熱さに当てられているせいで、観客たちは酒に酔ったようになっている。
となればその不満を発散させるために暴力という手段を用いようとする者が出てこないとは断言出来ないだろう。
そして一人でも暴力を振るい出すものが出てくれば、後はもう連鎖的である。さすがに人死にが出るほどの大惨事にまでは至らないだろうが、女性や子供を中心に大怪我をする者が出てくる危険性は充分高いと聖は懸念しているのだ。
聖がその思いを告げると、熊さんはうーんと唸り声をあげた。
《考えすぎだとは思うが、絶対にあり得ないこととも言い切れないな。では、こうしよう……》
そう言ってから熊さんは、ある作戦を聖に伝えてきた。
「なるほど。それでお願いします」
聖は小さくうなずくと、観客たちに気づかれないよう口の中だけで小さく『精神安定』の呪文を唱え始めた。
「たああっ! 十文字真空覇っ!!」
そうこうしている間に、あかりは交差させた両手を大きく振り回すことで、自らの目の前に巨大な真空の刃を二本作り出した。
真空の刃は漢字の『十』の形に重なり合うと、そのままお湯しぶきを上げながら猛烈な勢いで冬丘と参ノ宮のほうへと向かっていく。
この攻撃はどうやらあかりのとっておき、奥義的なものらしい。聖の見たところ、その破壊力は侍である賢悟最大の必殺技、飛翔剣稲妻天舞をすらしのぐほどでないかと思われるほどだった。
「ひょええぇーっ!?」
それほどの攻撃が自分に向かって一直線に飛んでくる様子を目の当たりにした参ノ宮は恐怖のため、真っ青にした顔を大きく歪め、目に涙をいっぱいに浮かべながらいまにもちびりそうな悲鳴をあげる。
そんな参ノ宮の姿を見て、彼女のことを嫌っている聖でさえもさすがに少し気の毒に思えてきたが。そもそも彼女が余計な提案をしてあかりをこの大会に引っ張りこんだり、しなくてもいい挑発をしたりしなければこんなことにはならなかったのだ。
(自業自得と言うか、因果応報よねえ)
聖はげっぷのようなため息をついた。
だが冬丘も、そんなものをむざむざとその身に受けるわけがない。彼は闘気と気合いを最大限にこめた左の拳で、自分に向かって飛んでくる十字の刃を殴りつけた。
その衝撃で冬丘の左拳は裂け、少なからぬ量の血が噴き出したけれど。十文字真空覇も砕けて、冷たい風と化し周囲に飛び散っていく。
「地龍衝天撃っ!」
さらに。冬丘は今度は右手にも闘気をこめ、その拳で温泉の湯面を叩きつけた。
これもまた本来はお湯ではなく、地面に大きな圧力をかけた攻撃を打ちこむことで大量の土を一度に噴き上げ、敵を瞬時に生き埋めにするという恐ろしい技だ。
本来の土ではなくお湯に対して使ったため、あかりや聖が生き埋めになるということはなかったが。代わりに温泉内の湯量が一気に半分ほどに減ってしまう。
減った分のお湯がどこに行ったのかというと、無数のお湯しぶきとなって大浴場全体にと散らばり広がっていったのである。
「うわあっ!」
「きゃあっ!?」
いきなり自分たちのもとに飛び散ってきた高温のお湯に、観客たちは悲鳴をあげながら目をつむったり、とっさに腕を目の前で組んで顔面をかばおうとし始めた。
さらにはそれらお湯の生み出した大量の湯気が、短い時間ながらも浴場全体を白一色に染め抜いていく。
(……いまだっ!!)
聖は心の中で叫び声をあげると、落ちないよう必死につかんでいたあかりの頭から手を離し、胸の前で素早く聖印を組みつつ呪文の最後の部分を唱える。
「貴女の差し出した手がひとしずくの涙で濡れる。彼は驚き貴女を見るが、貴女の目は潤んでいなかった。やがて彼は気づくだろう。その涙が自分の目からこぼれたものだと。彼はとめどなく涙を流し、貴女の手を濡らし続ける……『精神安定』!」
そうして、聖はあかりに向けて渾身の力をこめた呪文を解き放つ。
そう。これが、熊さんの伝えた作戦だった。
聖に『精神安定』の呪文を使ってあかりを落ち着かせるよう言った後。熊さんはシルフの力を借りて、冬丘にも事情を説明した上である指示を出していたのだ。
それは観客たちの目を一時的にくらませることで、聖が呪文を唱えたことが誰にも気づかれないようにして欲しいというもの。
あかりと戦いたくなどない冬丘はその申し出を快諾し、タイミングを計って地龍衝天撃を放ち。観客席に向かって無数の湯しぶきを飛ばしたというわけである。
それにより観客たちは反射的に顔を覆い、しかも大量の湯気が発生したことで視界は大きくふさがれることとなった。
この状況ならば聖が聖印を組んだことが、ひいては呪文を唱えたことがバレる心配はない。つまり、聖が勝負に水ならぬお湯を差したのだとは誰にも気づかれずにすむというわけだ。
「……ひゃっ!? あ、あれ? あたしはなにを……?」
聖が放った呪文が効果を現し、あかりはハッとしたような表情を浮かべながらきょとんと首をかしげ、戸惑いの声を出した。
やれやれ、上手くいったかと聖はほっと胸を撫で下ろす。
だがまだ終わりではない。観客たちの興奮を完全に燃焼させるためには、この勝負にきちんと決着をつけさせなければならないのだ。
あかりが戦意を失った状態に陥っため、なし崩し的に戦いが終わりましたというのでは、やはり観客たちは納得せずに不満がたまってしまうだろう。
そのような事態になるのを防ぐためには、あかりが正気を取り戻したと観客たちが気づく前に、ルールに則った形で正当に勝負に決着をつけるしかない。
聖はげんなりとした気分でしょうがないなあと呟きつつ湿ったため息をこぼすと。湯煙が晴れ、大浴場の視界が元通りになったタイミングを見計らって、あかりの首にかけていた自らの足の力をゆっくりと緩める。するともちろん……。
ザバーン!
四〇〇人の観客が見守る中。聖はあかりの肩から落下して、温泉の湯船の中にと沈んでいった。あたかもあかりの激しい動きについていけず、力尽きて倒れてしまったのだと宣言するかのごとく。
聖が湯船の中から顔を出し、テッポウウオのように口からお湯を吹き出すと、観客席のほうから『おおっ!』というどよめきの声が上がり。
同時に『ピーッ!』という笛の音が鳴り。実況役であり審判でもある森本が手を振り回しながら、高々に宣伝の声をあげる。
「一二番、神代選手落下により失格! よって第四回温泉大騎馬戦大会は、六番、参ノ宮志津香選手の優勝と致します!」
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