週末は迷宮探検

魔法組

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 邪竜の地下迷宮地下一〇階は、他の九階とはかなり違う構造をしている。

 他の階は天井こそ一〇メートルほどと高いが。前後左右至る所に壁があって文字通り迷宮といった感じの狭苦しく、押し潰されるような圧迫感があった。

 だがこの階は違う。天井など優に数十メートルの高さがあり。なだらかに傾斜している地面はむき出しの土で、ところどころ雑草のようなものまで生えている。

 瘴気が濃いため、さすがにヒカリゴケなどは繁殖出来ていないようだが。その代わり天井近くでは魔法の光球のようなものが太陽のように輝いているため、初春の頃の早朝くらいの明るさは充分にあった。

 一瞬地下迷宮の中であることを忘れそうになるほど広く明るい場所だが。ほとんど動かない空気と、太陽の匂いがしない草や土。なにより青空の代わりに天井に広がる赤茶けた岩肌が、ここが地上ではありえないことを如実に示していた。

 さらにここが地上ではないというもう一つの証拠として。邪竜の屍体から発生した瘴気によって開けられた穴からやって来た魔物たちが、そこかしらに大量にうろつき回っていることがあげられる。

 その大半はゴブリンやジャイアント・アント(巨大アリ)と言った下級の魔物だが。中にはレッサー・デーモンやヴァンパイア、サキュバスといった魔族、フェンリル(魔狼)にサイクロプス(一つ目巨人)といった魔獣の姿も見られた。

 そんな地下空間にいきなり転位させられたことで。聖は頭の中が真っ白になり、しばし呆然とたたずんでいることしか出来なかったけれど。自分のすぐ傍らで微動だにせず倒れている賢悟の姿を見つけると、さすがにハッと我に返る。

 賢悟は右手に元の姿に戻った万能棒を握り締めたまま、気を失っていた。その全身はほぼくまなく氷に覆われており、かなり重度の凍傷状態だ。
 一刻も早く回復呪文を唱えなければ生命に関わると判断して、聖は慌てて彼の横にひざまずき。呪文を唱える準備をするべく胸の前で聖印を組んでいった。

 だが次の瞬間。ふと顔を上げた聖は、たまたまこちらのほうを見ていたらしい三つ首の魔犬、ケルベロスとまともに目が合う。

「ひっ!」
 聖は気の抜けたしゃっくりのようなそんな声をあげただけで。目を逸らすことすら出来なかった。

 ケルベロスは、地獄の番犬とも呼ばれることがある魔獣で。レッサー・デーモンくらいなら一噛みで食い殺すことも出来ると言われるほどの、強大な戦闘力を有している。邪竜の地下迷宮に棲息している魔物の中では間違いなく最強クラスだ。
 性格もすこぶる獰猛かつ、好戦的。相当高レベルの本職冒険者のパーティーでさえも、こいつと出会ったら生きて帰れるかどうか。かなり微妙なところだろう。
 ましてやレベル四の僧侶とレベル一の侍など、爪のひと掻きであっさりと息の根を止められるだけなのは目に見えている。

(……殺される)
 そのように確信し、聖は恐怖のためぶるぶると震えることしか出来なかったが。当のケルベロスは聖のことなどまるで関心がないと言うかのごとく。すぐにぷいと視線を逸らすと、そのままどこかへ歩き去って行く。

(へっ!?)
 どうやら助かったらしいと安堵の息をつきながらも。聖はわけが分からず、ぽかんと口を大きく開け放った。

 魔獣の中でも特に好戦的で。狙った獲物は絶対に逃がさないとまで言われているケルベロスが何故、自分たちのようなどう考えても簡単に狩れるような獲物を見逃してくれたのか。まるっきり理解出来なかったからである。

 ケルベロスだけではない。
 この地下一〇階には他にも大量の魔物や魔族、魔獣が存在しているのに。彼らのうち一匹一体たりとも、聖たちを襲おうとはせず。まるで無関心なのも奇妙であった。これは一体どうしたことなのだろうか。

(あ、そうか)
 そのように訝しく思っていた聖だったが。以前、冒険者になるための訓練所で教官から教わったある事実を思い出し、心の中だけでポンと両手を打ち鳴らした。

 教官の話によると。地下一〇階にいる魔物は、魔界から人間界にやって来たばかりなためか環境に身体が慣れておらず。一時的に闘争本能も殺戮本能も抑えられ、人間で言えば頭がぼうっとしている状態なのだという。

 人間が、標高の高い山に急に登ると酸素不足のため高山病になり、意識がもうろうとしてくるのと同じように。魔物も、瘴気の濃い魔界から薄い人間界にいきなりやって来ると、体調が悪くなるということらしい。

 邪竜の迷宮地下一〇階に充満している瘴気は、人間からすると思わずむせ返りそうになるほど濃厚に感じられるのだけれど。魔界の生物からすれば逆に、一時的にとは言え体調不良になるほど薄いということのようだ。

 この迷宮の地下一〇階に張り巡らされているいくつかの結界の中には、魔物が意識もうろう状態であることを利用してその精神に干渉し、地下一〇階にい続けることを『不快』だと思わせる効果のものがある。
 そうすることで穴を通って人間界にやって来た魔物たちに、再び穴を通って魔界にお帰りいただこうという目的で張られた結界だ。

 とは言え、それで実際に魔界に帰ってくれる魔物は全体の半数ほど。

 残りの半数は階段を昇って、地下九階へと上がっていき。その後。低瘴気の状態に慣れた後は元通りの獰猛な性格に戻って。他の魔物たちと縄張り争いなどをしながら自分に相応しい場所を探し。その階層に棲みつくようになるのである。

 高濃度の瘴気を好むはずの彼らが、半数程度とは言え何故あえて、さらに瘴気の薄い上の階へ昇っていこうとするのかは不明だ。
 ただ。人間にとっての酸素と違い、魔物にとっての瘴気は必要不可欠のものではないらしい。皆無だったり薄かったりすると不便かつ不愉快ではあるけれど、生命活動に深刻な影響を及ぼすほどのものではないようなのである。

 その証拠に。人間の高山病は山を降りないと治らないが。魔物たちはほんの数時間ほどで、瘴気の薄い人間界の環境にも慣れてくるというのだから。
 そのため魔物の中でも冒険心や好奇心に富んだ者は、未知の世界である人間界に興味を抱き。低瘴気であっても構わず上の階へ昇って行こうとするという説が有力らしい。人間にとってははなはだ迷惑な話だけれど。

 そういうわけなので、邪竜の迷宮最下層である地下一〇階というのは実はそれほど恐ろしい場所ではない。
 超強力な魔族や魔獣も多いが。彼らは魔界から人間界にやって来たばかりであり。瘴気の薄さと結界の効力で体調不良となり意識ももうろうとしているため、人間に襲いかかることはまずありえないからだ。

 それらのことを思い出すと。聖は本格的に安堵して、長々と息を吐き出した。
 もっともそれは、いまのところ魔物に襲われる心配はないらしいというだけのことで。現在聖たちの置かれている立場が絶望的に危うい状況であることには少しも変わりないのだけれど。とりあえずそのことには目をつむっておく。

 それよりいまは……と。聖は気を失っている賢悟のほうにと再び向き直り、胸の前で聖印を組み直しながら回復の呪文を唱え始めた。

「夕闇背にし沈む大地に、星の生命よ降り注がんと。七つの世界の滅び見守りし、貴女の涙がそっと囁く。狂える墓場で亡者が騒ぎ、酌み交わされるは祝いの美酒。寂しげな彼は一人たたずみ、いまひとたびの希望託さん……『治癒の果実』!」

 『治癒の果実』は僧侶系レベル四の呪文であり、現在聖が使える中では最高の治療呪文でもある。だがそれでも一回唱えただけでは賢悟の凍傷を完治させることは出来ず。聖は二度三度と同じ呪文を繰り返し唱え続ける。

 いまだ周囲には多くの魔物の姿があるが。彼らが自分たちを襲うことはまずないと分かっているため、聖は時間をかけてゆっくり丁寧に呪文を唱えることが出来。そのお陰か。徐々にであるが賢悟の容態は確実に快方にと向かっているようだった。

「う……う~ん」
 呪文の唱え疲れで気力体力魔力がだいぶ減少してきたため、少し休もうかと聖が一息ついた頃。賢悟がうなり声をあげながらゆっくりと目を見開き始めた。

 賢悟は一瞬、自分が何故こんな見たこともない場所で倒れているのか分からないといった表情を浮かべて小首をかしげていたが。すぐに記憶が蘇ってきたらしく、息を飲みこみ慌てたように立ち上がった。

「この大馬鹿!!」
 賢悟が無事に目を覚ましたことで聖は心の底からほっと息をつくことが出来たのだが。同時になんとも言いようのない怒りの感情ももくもくと、暗雲のようにたちこめてきたため。大量に唾を飛ばしながらそんな怒鳴り声をあげる。

 賢悟は自分の顔にかかった唾の飛沫をいかにも嫌そうな顔をしながら袖で拭い取ると、眉をひそめて聖の顔を睨み返してくる。

「……神代。お前な。治療呪文を唱えてくれたのはありがたいけど。瀕死状態から回復したばかりの人間に、いきなり唾飛ばして大馬鹿はないんじゃないか?」
「大馬鹿だから大馬鹿と言っただけよっ! それのなにが悪いって言うのよこの大馬鹿!! その頑丈そうな頭蓋骨の中に詰まってるのは豆腐とワカメのミソ汁なの!? よりによって、たった二人でいきなり地下一〇階に転位するなんて……」
 怒りのあまり、聖は両肩を小刻みにプルプルと震わせ怒鳴りつけた。

 つい先程。パーティーの誰か一人が犯した失敗は全員の失敗と同じなので、一人に全責任をかぶせることなんて出来ないと偉そうなことを言ったばかりのような気がするけれど。今回ばかりは話が別である。
 腹のうちからこみあがってくる大量の怒りの感情を一気に吐き出すために、聖は大きく息を吸いこんだ。

「一体全体なに考えてんのよ! この超特大ウルトラどスペシャルスーパーマキシマムアンリミテッドグレートデラックスヘビーワンダフルデリシャスハイパーエキセントリックパーフェクトエクサゴールデンストロンゲストメチャクチャ大馬鹿!!」
「だ、だってまさか、芹沼さんをあのまま放っとくわけにはいかないじゃないか。芹沼さん本人ももちろん心配だけど。万一彼女が殺されてゲドゥルフの魂がその中に入りこんだとしたら、あの伝説の邪竜が現代に蘇ることになるんだぞ?」
 さらに多くの唾をシャワーのように飛ばしながら怒鳴りつけてくる聖に。さすがの賢悟もたじたじとなって、後ずさっていったが。それでもそこまで言われるのは心外だとばかりに、口をとがらせながら反論を試みてくる。

「そんなことになったらこのファンタジウム王国だけじゃなく。アル大陸そのものが存亡の危機に立たされる……て言うか、ほぼ確実に滅亡するんだし」
「だからって、たかがレベル一の侍がのこのこしゃしゃり出てったってなんにもならないでしょうが! あなた、さっきあのベリアルっていうデーモン・ロードに手も足も出ないほど一方的にのされどつかれぶち倒されちゃったのを忘れたの?」
「あれは……」
「さらに! この地下一〇階にはそれに加えて、上級の悪魔を魔界から召喚出来るほどの力を持った召喚士か魔法使いもいるのよ? あんたが勝てる見こみなんて、一〇〇億分の一だってないんだから! そのことを分かってるの!?」
「そんなことはない! さっきは少し油断したせいで不覚をとったけど、もう一度戦うチャンスがあれば今度こそ絶対に勝ってみせる! そこに魔法使いが一人くらい加わったって、どうってこともないさ」
「その自信の根拠はどこにあるのか、ぜひ教えてもらいたいわね……。て言うか。そもそもデーモン・ロードなんていう超化け物を相手にするのに油断出来るっていう神経が、まずすごいとあたしは思うけど」
「いやぁ。それほどでも」
「照れるな! あたしは皮肉で言ってるんだからっ! それに、敵がその魔法使いとデーモン・ロードだけなんて限らないでしょう? 他にもいっぱい、デーモン・ロードクラスの手強い手駒がいるかもしれないじゃないの」
 なにしろ敵は、デーモン・ロードクラスの上級魔族を召喚出来るほどの力を持つ魔法使いなんだからと、聖は言葉を続けた。

 前述のように。邪竜の屍体から発せられる瘴気によって開けられた穴を通って地下一〇階にやってきたばかりの魔物たちは、人間を襲うことはない。

 だが召喚系呪文によって人間界に呼び寄せられた魔物や魔獣となると話は別だ。

 彼らは、召喚主から魔力の供給を受けるために、瘴気の濃度が低い人間界でも意識がもうろうとすることはないし。基本的に召喚主の命令に従って動くためである。
 つまりもしも。ベリアルを召喚した魔法使いないし召喚士が、強力な魔族や魔獣を他にも色々召喚していたとするなら。その全てが召喚主の命令に従い、聖と賢悟に襲いかかってくることになる。

「へ?」
 その可能性は全く考えていなかったのか。賢悟は額にタラリと冷や汗のようなものを垂らしながら、ギクリとしたように言った。さらに半白眼で睨みつけている聖の視線に気がつくと、取り繕うような笑顔を浮かべる。

「な、なんてことを言うんだ。おれがそんな程度のことを考えてないなんて、まさかお前、思ってたんじゃ、な、ないだろうな?」
「……声が裏返ってるわよ」
「そ、そんなことは、ないぞ」
「じゃあどうするのよ。デーモン・ロードクラスの上級魔族や魔獣がゾロゾロ一個中隊くらい列をなして出てきたら、あたしとあなただけでどう対抗するって言うの? なにか起死回生の策があるんなら言ってみなさいよ。聞いてあげるから」
 だが、そんな都合のいい名案なぞを持っているわけがなく。賢悟はごまかすように視線を宙にさまよわせ、居心地悪げに貧乏ゆすりなどをしている。そんな彼の態度を見て、聖は大きなため息をついた。
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