週末は迷宮探検

魔法組

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 ただ、うっとうしそうに睨みつけられただけだった。

 だがたったそれだけのことで、聖は全身の毛穴という毛穴全てに、氷で出来た鋭い針を突き刺されたかのごとき怖気と寒気を覚えていた。

 物理的な圧力さえ伴っているかと思えるほどの敵意に満ちた視線を受け。聖や賢悟たちだけでなく、あの熊さんですらも圧倒されて並々ならぬ恐怖とプレッシャーを感じているようだった。

《されば小奴らを始末さえすれば、貴様は再び儀式とやらを執り行ない。我を完全復活させることが出来ると言うのだな?》
 聖たちを、小うるさいハエでも見るような目つきで一瞥した後。ゲドゥルフは芹沼のほうにと向き直ると、禍々しいほど重い口ぶりで確認してきた。

「む、無論だ」
《……ならば、話は早い》
 ゲドゥルフはスッと目を細めてから、再び聖たちのほうにと向き直り。その顔を一人一人、ゆっくりと嘗めるように眺めた。

「……ど、どうもゲドゥルフさんは、おれたちと戦いたい気分でいるらしいな」
 虎徹の柄に手をかけながら、さすがに震えるような声で賢悟が言った。

「別に、戦いたいと思っているわけじゃないでしょう。ボクたちのような人間の冒険者なんて、ゲドゥルフにとっては虫ケラのようなものです。フッと一息で吹き飛ばしたいくらいにしか考えていないと思いますよ」
 こちらも杖に手をかけながら、しかし普段と同じような冷笑を浮かべる余裕は残して、敦哉も言葉を続ける。

「でもぼくたちだって、そんな簡単に吹き飛ばされたりはしないはずです! ゲドゥルフの復活はまだ不完全なんですから。聖さんが退魔の力を使ってあいつの魂を祓ってくれれば、ぼくたちも小夢さんも助かることが出来るんでしょう?」
 愁貴も、期待をこめた目つきで聖のほうをじっと見つめてきた。

 愁貴に見つめられること自体は聖にとって嬉しいことなのだけど、過分な期待をかけられても困る。
 客観的に考えたならば、聖のレベルではゲドゥルフを祓うことなどどうしたって出来っこないのだから。熊さんの言う通り、ゲドゥルフ封じの結界に乗っかる形になったとしても、まだ少し苦しいと思う。

「確かに。いまの聖ちゃんの力では、不完全体であるとは言えゲドゥルフの魂を小夢ちゃんの身体から追い出すことは、少々難しいかもしれないな」
 そんな聖の思いを見抜いたのか。その頭を軽く撫でるように叩きながら、熊さんは決心したように言葉を続けた。

「それなら私たちの力で、ゲドゥルフの力をさらに弱めてやるしかない」
「それってつまり、おれたちがゲドゥルフと戦うってことですか?」
 賢悟は顔をまっ青にして、脚をぶるぶると震わせながらも、口だけは威勢よく言った。熊さんはコクリとうなずく。

「ああ。もう少しゲドゥルフの力を弱めなければ、聖ちゃんの退魔の力が通じないのだから、仕方がない」
 熊さんは悲壮なまでに深刻な表情を浮かべ、ごくりと唾を飲みこみつつうなずいたが。さすがに少なからず腰が引けている様子の賢悟、敦哉、愁貴の様子を見るとふっと表情を和らげ、優しい口調で言葉を重ねる。

「心配するな。君たちにまで無理に戦えとは言わないさ。なにせ相手はあの史上最悪の邪竜、ゲドゥルフだからな。まだ年若くレベルも低い君たちでは、さすがに少し荷が重いだろう」
「……」
「ここは私と聖ちゃんでなんとかするから、賢悟くんたちは後ろのほうに下がっていたまえ。なに、大丈夫。幸いにもゲドゥルフの復活は不完全なものだし、邪竜封じの結界という助けもある。勝てる可能性はそう低いものでもないはずだ」
(えー? あたしもですかー!?)
 なし崩し的に戦闘要員のほうに入れられてしまって、聖もさすがに内心で不満の声をあげる。

 いくら熊さんの言葉でも、こればかりは勘弁してもらいたいところである。出来れば自分も愁貴と一緒に後方に下がって、影ながら応援のほうに回らせてもらうか。さもなくば全員でさっさと地上に逃げ帰りたいところなのだけど。

 いや、もちろんそういうわけにはいかないのは分かっている。このまま聖たちが地上に逃げてしまえば、芹沼はゲドゥルフ復活の儀式を再開させて、本格的にゲドゥルフをこの世に復活させることになるのだから。

 そうなれば、どの道終わりだ。完全に蘇ったゲドゥルフはこのような地下迷宮からなどあっさり脱出して地上に現れ、ファンタジウム王国のみならずアル大陸全てを蹂躙しつくすだけ。当然、聖たちもそこから逃れることは出来ないだろう。

 そんな最悪な結末を回避する方法はただ一つ。熊さんの言うように、僧侶の持つ特殊能力である『破邪の弾丸』を使って、復活が不完全ないまのうちにゲドゥルフの悪霊を祓うしかなく。それが出来るのはいまこの場に、聖しかいないのだから。

 だが理屈では分かっていても、感情的にはどうしても納得出来ない。

 もちろん聖だってゲドゥルフの完全復活などは阻止したいし、小夢を助けたいとも思っているのだけれど。その反面、なんで自分がそんなことをしなくてはいけないのよという思いもまた、強く心の中に巣食っているのだった。

(あたし……最低だな。さっきは芹沼さんに対して散々偉そうなことを言ってたくせに。いざ自分に被害が及びそうになると、びびっちゃって。自分のことしか考えられなくって……)
 悔しさと自己嫌悪のため聖は下唇をぎゅっと強く噛み締め、爪が手のひらに食いこみそうになるほど左手を強く握り締めた。そうしてなんとか戦う勇気を生み出そうとしたのだけれど、どうしてもそれは出来なかった。怖いものはやはり怖い。

 やっぱり、あたしも後方に下がらせてもらおうと聖は思った。
 どうしても無理だ。あのゲドゥルフを祓うことなんて出来っこない。怖くてたまらないのだと言えば、熊さんとて無理に聖に戦わせようとはするまい。

 熊さんの優しさにつけこむようで気は引けるけれど、これは仕方がないだろう。なに、有能なベテラン冒険者である熊さんのことだ。聖がいなければいないで、またゲドゥルフを封じるための別の手を考えてくれるはずだ。

 そのように自分自身に言い聞かせて、聖は自分は戦うことは出来ないと言うために口を開きかけたが。その機先を制するように、愁貴が一歩前へと足を踏み出した。
 その目に強い意志と深い決意の光を灯らせながら。

「熊さん! 申しわけありませんが、その指示は聞けません。ぼくだってスカイ5の一員なんですから。熊さんと聖さんだけにこんな重大な責任をかぶせて、自分だけ逃げるなんていうことは出来ません。ぼくも戦います! 戦わせてください!!」
「右に同じですね」
 同じく、敦哉も彼に似合わない清々しい声で言葉を放つ。

「いかに熊さんと言えど、武器もなしに独りでゲドゥルフと戦うというのは無茶が過ぎると言うものです。微力ながら、ボクも力をお貸ししますよ。熊さんから見ればまだまだ頼りないでしょうが、囮や牽制くらいの役には立てると思いますし」
「当然、おれだって一枚噛ませてもらいますよ。この虎徹なら、ゲドゥルフ相手だって相当のダメージを与えられるはずですからね。なにより、年下のガキや女の子だけに戦わせて、リーダーのおれが後ろで震えてるってわけにはいかないですよ」
 続いて賢悟も……顔色はまだ青ざめさせたままではあったけれど、不敵な笑みを浮かべつつ口を開いた。

「賢悟くん……敦哉くん……愁貴くん。ありがとう」
 そんな三人の言葉を聞いて、熊さんは感極まったように呟き、手のひらを下にしてすっと右手を伸ばす。それを見て賢悟が大きくうなずいて見せながら、その上に手の平を重ね。さらに敦哉、愁貴もすごくいい笑顔で次々と手のひらを乗せていく。

「……」
 なんか、世代やレベルを超えた男同士の熱血友情フィールドのようなものが形成されているようだ。

 聖はそれに加われず、唖然としながらその場にぼんやりと立っていることしか出来なかったため、戦線離脱を申し出るタイミングを完全に逸してしまった。

「ふ……ふふん。それにしてもまさかあの伝説のじゃ、邪竜、ゲド、ゲドゥルフと戦える日がやって来るなんてな。侍として命運が尽きる……じゃない、冥利につきるというものだ。腕が鳴るぜ」
「鳴ってるのは腕じゃなくて、声のほうじゃないですか? ついでにさっきから手足が細かく震えていますよ」
 必死に虚勢を張って言う賢悟に、敦哉が白い目できっちり冷静につっこみをいれてきた。そんな敦哉の頭を、賢悟が『うるせえ』と怒鳴りながら殴りつける。

「で、でも、戦うのはいいですけど。その場合は、勢い余ってゲドゥルフを殺してしまわないように注意しなければいけませんよね?」
 愁貴が不安げな口ぶりで、そのように尋ねてきた。

 いまのゲドゥルフの身体は元々小夢のものであるため。もしも聖がゲドゥルフの魂を祓う前にあの身体をうっかり殺したら、小夢も一緒に死ぬことになるからだ。

「愁貴くんの心配は当然だな。しかしまた、無用な心配でもある」
 しかし熊さんは愁貴の問いに、苦笑いを浮かべながら自嘲するように応えた。

「何故なら私たち程度の力では、不完全状態であるとは言え、あの邪竜ゲドゥルフを殺すことなど不可能だからな。私たちに出来ることと言えば全知全能全力を尽くして戦ったとしても、せいぜいゲドゥルフの力をほんの少し削ぐことくらいだ」
 言って、熊さんは再び聖の顔をじっと見つめ。ゆっくり言葉を続ける。

「だからこの迷宮を包んでいる邪竜封じの結界の力と、聖ちゃんの法力に頼るしかない。私たちは私たちに出来る限りのことを精一杯やるから。後は、頼んだよ」
 いつものニッコリ笑顔と優しい口調で、熊さんは静かに言葉を綴った。あまりにいつも通りであり、あまりに当たり前のような口調で言われたため。聖も思わずいつものように、はいと応えそうになる。

(いやあの。そんな大事なことをあたしなんかに託されたって困るんですけど)
 自分が完全に置き去りにされたまま、どんどんと進んでいく話に戸惑いつつも、聖は慌てて口を開きかけたが。賢悟の『来るぞ!』という叫び声にかき消され、その言葉も声として発せられる前に喉の奥にと引っこんでいく。

 同時にゲドゥルフがその巨大なあぎとを大きく開いて、『灼熱の息吹ヒート・ブレス』を聖たちに向け、放ってきた。

 愁貴がとっさにウンディーネを喚び出して、水のカーテンを作ってかばってくれたが。持ちこたえたのはほんの一瞬だけ。水はたちまち無数の蒸気となって辺りにたちこめ、炎の余波が聖たちに向かい襲いかかってくる。

 だが、水のカーテンがわずかながら時間を稼いでくれたため、聖たち五人はなんとかその場から逃れて、ブレスの直撃を免れることが出来た。

「吉田! 万能棒をこっちに貸してくれ!」
 賢悟の叫び声に敦哉は一瞬『万能棒ってなんですか?』と言いたげに訝しげな表情を浮かべたが。すぐに気がついたらしく、懐の内にしまっていた剣の柄のような形に戻っている万能棒を取り出し、賢悟に向けて投げつける。

「チェンジ、バトルアックス・モード!」
 受け取った万能棒を掲げて賢悟が声をあげると。例によって万能棒は無数の銀色の粒子となって弾け飛び。続いてそれらは次第に賢悟の右手の中に集まっていき、いままで熊さんが使っていた斧に勝るとも劣らない巨大な刃を構築していく。

「熊さんは、これを使って下さい」
 賢悟は万能棒《戦斧》を熊さんに渡し、自らは虎徹を正眼に構えながら言った。

「ありがとう。助かる」
 熊さんはそれを受け取ると、その使い心地を確かめるように片手で五、六度大きく振り回した。

「虎徹ほどではないが、いい武器だな。もっとも私には少々軽すぎて、使い勝手はあまり良くないが」
「すいません。でもそれしかないんで、なんとか我慢して下さい」
「分かっているさ。それにこっちのほうが私の使っていた斧より、武器としてのランクは数段上だし。素手で戦うよりは一〇倍マシだ。ぜいたくは言うまいよ!」
 熊さんと賢悟は互いに一つ大きくうなずき合ってから左右に分かれて、ゲドゥルフに向かって突入して行った。

「『業火』!」
 その間にも敦哉は、先程から唱えていた呪文をゲドゥルフに向け炸裂させる。

「ヲン、リ~……」
 ウンディーネも口から高圧の水流を吐き出しゲドゥルフに攻撃を仕掛けたが、どちらもさしたる……いや、全くダメージを与えられなかった。せいぜいほんの少しだけゲドゥルフをたじろがせることが出来たかもしれないという程度だろう。

 続いて熊さんと賢悟が、ゲドゥルフの両足めがけてそれぞれ万能棒《戦斧》と虎徹の一撃を食らわせようとする。

 だがそれに気づいたゲドゥルフがその巨大で切れ味鋭いであろう鉤爪を腕ごと大きく振り回して、二人の身体を引き裂こうとしたため。彼らはいったん大きく後ろに下がらざるを得なくなった。

 敦哉も新たな呪文を詠唱すべく杖を掲げ。ウンディーネは愁貴に命じられて新たに水のカーテンを作り出し。それを、仲間たちの身体にと巻きつかせていく。

 こうして……。

 ファンタジウム王国史上最凶最悪の魔物である邪竜ゲドゥルフと五人の週末冒険者たちとの、あまりにも絶望的すぎる戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
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