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しおりを挟む「あー……腹立ちますわぁ、あのクッッソ王子! 浮気は許しますけど、聖女に本気になってしまうだなんて! 婚約破棄などありえませんわ!」
「ルナリア様、お怒りになられるのも分かりますが、口を謹んでください」
「何よ、ハイドラン。あなたもクソ王子と聖女サマ(笑)の味方なのかしら?」
ごきげんよう。皆様。
わたくしは名門グラナティム公爵家が長女、ルナリア=フォン=グラナティムと申します。
黄金に輝く波打つ髪と大海を思わせる深い青の瞳をもつ、この国きっての美女と名高い令嬢ですわ。
ついでにご紹介しますけど、わたくしのまばゆいばかりの肢体を貪っているこの男は、この国の宰相で、ハイドラン=ヒューゴ=ベリセリウスといいます。
わたくしよりも10歳年上でとても頭の切れる方なのですが、少々物言いが冷淡なのが玉にキズ。でも容姿はとても素晴らしい方で、夜の方の相性もそこそこです。
……え?わたくしの性格が180度変化しているですって? わたくしだって幼馴染の王子が寝取られたばかりの頃はそれはそれは落ち込みましたし、婚約破棄された時は死ぬことを考えました。
でも、時間が経つと不思議なことに、悲しさよりも怒りのほうが上回ってきたのです。
そして今のわたくしの状況をご覧になられれば分かると思いますけど、わたくしは処女ではございませんの。
この国では特に純潔は重要でもないからです。確実な避妊方法があるからか、初潮を迎えれば、少女も淑女も老女までもが、皆が皆やりまくっているのです。婚前交渉は当たり前、愛人の一人や二人いる事は貴族として当然の嗜みなのです。
何もないちっぽけな国。性交ぐらいしか楽しみがないのもありますが。
そ・れ・で・も! ……王子がやらかしたことは許されることではありません。夫婦の寝台はそれはそれは神聖なものなのです。たとえ、性的に奔放で緩やかな国でも、やって良いことと悪いことがあります。ましてや婚約破棄などありえません!
「私はルナリア様だけの味方ですよ」
ハイドランはわたくしの胸を弄る手を止め、切れ長の目を細めました。彼の濃い灰色の髪と瞳は、老けてみえると言われてますけど、わたくしはけっこう好きです。
「ほんとう? ならあのバカ王子と聖女とやらを失脚させてちょうだい」
「失脚? そんなぬるいことは致しませんよ」
「何ですって?」
愛撫が終わったのか、ハイドランはわたくしの膝裏を持ち上げながら微笑みました。
「処刑します」
薄い唇の口角をあげ、確かな声で彼はそう言いました。
「処刑……⁉︎」
「先に挿れさせて頂いても? もう私は限界です」
「え、ええ……」
ここはハイドランの自室のベッドの上。彼はただの閨房のお相手です。浮気相手ですらない。こうして有望な臣下と寝ることも、上に立つ者の勤めなのです。
膝裏に冷たくて大きな手をあてがわれ、脚を広げられました。正直に言いますと、わたくしはこの挿入行為があまり好きではありません。
「……っ!ひっっ……」
生温かい切っ先を押し当てられ、わたくしは小さく悲鳴をあげます。ハイドランのものは太く長く、雁首も立派なのです。
いつも受け入れるだけで精一杯。いくら有望な臣下に取り入るためとはいえ、これは拷問では? と思うことはあります。愛撫だけで終わらせて欲しいのが本音です。
柔らかい肉壁に、引っかかりを感じ、私は背を反らせました。奥まで押し込まれてしまえば大丈夫なのですが、この感触は何回抱かれても慣れません。
律動がはじまり、水音がするようになれば気持ち良さも感じますし、喘ぐこともありますが、それまではただただ、シーツを後ろ手に掴み、圧迫感に耐えます。すぅはぁと深呼吸を繰り返します。
「ルナリア様のここは名器ですね。王子はこれを知らずに別れてしまうとは……くくっ、愚かな男ですね」
「本当、馬鹿な男ですわよね……」
性的に自由な国。もちろん婚約者同士でも寝る事は当たり前なのですが、何故か王子はわたくしには一切手出しをしませんでした。
聖女が現れるまでは、わたくしのことを大事にしてくださっているものだと信じていました。私が男性の象徴を受け入れることが苦手だということを、王子も知っていたからです。
何度もいいますが、次代の王妃候補であったわたくしが宰相と寝るのは当然のことです。よその国では受け入れられない慣習かもしれませんので、公にはしておりませんが。
「あっ、あ、いい、いいわっ、ハイドランっ」
これは演技です。この宰相を気持ちよくさせていれば、わたくしの思い通りに動いてくれるはず。そう思い、擦れる痛みを堪えてわたくしの方からも腰を振りました。
ハイドランの薄い唇が弧を描きました。この男と定期的に繋がっていれば、きっと悪いようにはならない。わたくしは汗だくになりながらも一心不乱に腰を打ちつける男の頭を抱え、絶頂を迎えました。
「愛しています、私の可愛いルナリア様」
わたくしがぎゅうぎゅう膣を締め上げたのが効いたのか、ハイドランも中で果てたようです。わたくしのなかで、彼のものが畝るのが分かりました。
「わたくしもですわ、ハイドラン」
そう、わたくしも彼の内政者としての腕を愛していました。どんなわたくしのわがままも、彼はそれとなく叶えてきてくれました。
きっと、王子の番を名乗る異世界の聖女も、彼が上手く消し去ってくれることでしょう。
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