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第二章
◆今宵も私は御付きの騎士に痴態を演じさせる
今宵も、シルクのシーツの上には見知った顔の男がいた。彼はいつも通り鍛え上げられた下半身をさらけ出し、両手と膝をついている。上半身は鎖付きのラペルピンを刺したかっちりとした濃紺の騎士服姿であるのに、下半身は何も身につけていない。いっそ全身何も着ていないほうが、恥ずかしくないのではないか。私はいつも彼が不憫でならなかった。
「リアネ様、どうかお慈悲を……」
彼はいつもの台詞を口にする。この三年間、繰り返されてきた言葉を。
私は彼の言葉を合図に、剥き出しになった尻の前に立つ。彼は下半身をさらけ出しているが、私は豪奢なドレスを着たままだ。髪もきっちり結いあげ、化粧もしている。
私はつけまつげで蝶の羽のようにバサバサになった目を細めながら、彼の引き締まった尻を扇の先で叩いた。
ぱしんっと乾いた音が、王太子殿下の寝所に響く。
そうここは、歴とした次代の王の部屋だ。
彼は王太子殿下のベッドの上で、今まさに屠られようとしている供物のように、四つん這いにさせられていたのである。
尻を扇で叩かれて痛かっただろうに。しかし彼は微動だにしない。さすが王宮内の剣技大会で何度も優勝している、屈強な騎士だ。
「……お慈悲を、なんて言われても分からないわ」
私は王太子が書いた台本の台詞を、偉そうに吐き捨てる。
「ちゃんとはっきりお言い、ベイジル」
扇の先を彼──ベイジルの形の良い顎の下に突きつけ、下からぺちぺち当てる。私の台詞に、彼は太めの金の眉尻を下げ、灰色が混じる青い瞳にうっすら涙を浮かべた。普段は短く整えられた金の髪を靡かせ、王都中の女の子から黄色い声援を送られている麗しき近衛騎士・ベイジル。しかし、今はただの雌豚を演じさせられている。普段の颯爽としている姿からはとてもではないが、想像できない顔をしていた。
「わ、私の、不浄の穴と肉棒を舐めて、慰めてください……! リアネ様をみていると、興奮してしまい、私は仕事になりません……っ」
「あら大変。自分の騎士を慰めるのも主人の仕事です。わたくしが舐めて差し上げますわ」
三日に一度口にしている脚本の台詞だが、自分を守る騎士の性処理をする女主人なぞ、ハラスメント甚だしいと思う。でもまぁ、合意の上ならいいのだろうか?
そんなことを考えながら、再びベイジルの尻側に回る。彼の筋肉が盛り上がった脚の間にあるぶら下がったものは、勃ちあがり始めていた。男性器を見るのはベイジルのものが初めてで、最初に見た時は驚いた。だんだん大きく硬さを増すそれに、人体の不思議を見たような気がした。女にはたぶん、硬く膨れる器官はないから。
男性器は肉色をしていて血管がいくつも浮き出ており、けして可愛らしいものではなかったが、自分が触れるたびに反応を返してもらえるのは面白く、未知のものに対する嫌悪感はすぐに無くなった。それにベイジル自身が清潔感を具現化したような清廉な人物だったことも、不快感を感じなかった理由かもしれない。人の性器の反応を面白いと感じるなんて。不敬なのは重々承知だが、私も王太子と同類の変態なのかもしれない。
ベイジルの尻に手を這わせる。指先が冷たかっただろうか、腰がびくりと震え、脚の間にあるものもさらに角度を増した。もうすでに、後孔を舐めなくてもぷくりとした陰嚢の皮膚はぴんと張っている。彼はこの三年間、三日に一度私に後孔を舐められ果て続けている。もはやこれからされる事を想像するだけで勃つようになってしまったのかもしれない。
特殊性癖に目覚めてしまった彼は可哀想だが、これも仕事だ。
私は気づかれないように、ちらりと壁へ視線を走らせる。
この部屋にはただ一人の見物客がいた。
王太子殿下だ。
夜着姿の王太子殿下は、壁際に立ってこちらを食いいるように見つめている。
彼が我々に痴態を演じさせている張本人だ。
口元を両手で覆い、頬を染め、はわわと言わんばかりの表情を浮かべて壁に徹している。
そう、王太子殿下は壁になって身近な男女の痴態を見ないと興奮できない性癖者だった。
我々はさらに、これから変態極まりない行為をするが、これは王家存続のために必要な事柄なのである。
「は、はやくっ……、リアネ様」
「まったく、しょうがない子ね」
「あっ……あぅっ」
私はベイジルの尻の表面を指でなぞる。いきなり後孔は攻めない。存分に指先でそろりそろりと肌を煽ってから、はぁっと息を吐きかける。彼は腰をぶるりと震わせると、腹筋に付きそうなほど勃ちあがった肉棒の先端から、透明な蜜を一滴垂らした。シーツの上には彼が流したもので染みが出来ていた。
三年間というけして短くない間、三日に一度私に調教され続けた、彼の身体の敏感さは相当なものだ。
彼を哀れに思い、今宵も私は歪んだ正義感をもつ。
──はやく楽にしてあげなくては。
ベッドに片膝をのせ、私は両手でベイジルの尻たぶを掴み、むにりと押し広げた。そこには皺が寄る薄茶色の菊門があった。ほかの者と比べたことはないが、ベイジルの後孔は綺麗だと思う。均一に皺が寄り、ブラウンローズのような色合いをしている。なにより、彼の後孔のまわりには毛がない。陰茎のまわりにもだ。騎士は病気を予防するため、ムダ毛を一切生やさないものだと聞いたことがあるが、毛がないのは本当にありがたい。
私は彼の尻たぶの間に、顔を埋めた。
騎士服の胸に下げられた、鎖がしゃらりと揺れる音がする。
「あぁっ!」
まだ、後孔に舌を這わせてはいない。性的なことは、焦らすことでより一層性感を昂ぶらせることが出来ると、後宮の側女研修で習った。
私はまず、菊門の周りを舐めた。それまでぴっちり閉じられていたそこは、私が舌を這わせるたびに、はくはく息をするように、開いたり閉じたりした。後孔の下にぶら下がっている袋にも吸盤のように軽く吸い付く。
「り、リアネさまっっ……」
ベイジルはもどかしい刺激を与えられて辛いのだろう。菊門をひくつかせながら、シーツを皺になるほど強くにぎりしめた。また、ぽとり、ぽとりと肉棒の丸くなった先から涙をこぼす。
私はまず、彼の肉棒に指を這わせた。男はどれだけ己を奮い立たせていても、竿に刺激がなければ射精が難しいからだ。後孔の周りを優しく舐めながら、肉棒を思い切り握りしめる。それは湯に浸したように熱くなっていた。
「はうっ……うぅっ……」
これでもかと肉棒を握りしめた手に力を込め、ごしごしと前後に擦った。途中、段差になったところにも触れるようにした。肉棒の丸い先の下にある括れに触れるとベイジルの腰がいっそう揺れる。彼の好きな場所らしい。かっちりとした騎士服がまくれあがり、六つどころか八つに割れた腹も露わになった。
ベイジルの吐き出す吐息の音が一段と大きくなったところで、私ははじめて彼の後孔へと舌を伸ばした。
「あああぁっっ‼︎ ……ぅっうぐっっ、リアネさまっっ……リアネさあぁっ……」
私の名を呼びながら、ベイジルはこれでもかと背をのけぞらせる。私は舌を緩急をつけて動かし、彼の孔をほじる。ベイジルは行為の前には下剤を飲み、腸のなかを完全に空っぽにしているらしい。臭いどころか、彼が使っているらしい柑橘系の石鹸の匂いがする。毛の処理といい、彼の気遣いもあって、私は快適に彼を攻めることが出来た。後孔の皺を伸ばすように舌を這わせ、中にぬめる舌を差し挿れると、孔がきゅっと窄まった。また、窄まりを押し広げるように、頭ごと舌を動かす。私は彼のなかで抽送した。痛みには強い屈強な騎士も、直接粘膜を抉られる刺激には抗えないらしい。彼は絶叫に近い喘ぎ声を出す。
「あっ、あっ、でるっっ……でます、リアネさまっっ、ああぁっ! あっーーーー!」
後孔への刺激が決定打になったらしい。ベイジルは腰を震わせると、私の手の中で盛大に果てた。彼が出したものは、私の手では到底受け止めきれない。ベッドのシーツの上へ大量に溢れ落ちた。
「あら、こんなに溢していけない子ね。私が掃除してあげるわ」
「うっっ、うっ、も、申し訳ございません、っ……」
一回吐き出しただけでは、ベイジルの若い雄はおさまらない。私は彼の昂りで汚れた手を脇に置いてあった布で拭きつつ、今度は彼をベッドに腰掛けさせると、天に向かってそそりたつ肉棒の先へ舌先をちょんと当てた。
後孔を攻めたあと、一応薬湯で口はゆすいでいる。いくら綺麗にしてあるとはいえ、病気が心配だからだ。尻孔を舐めた口でベイジルの雄を咥えるわけにはいかない。
「はぁっ……はぁ……」
ベイジルは目尻からも肉棒の先端からも、涙を垂れ流している。彼が精を吐き出したこの部屋は、独特の臭いが充満していた。
私はベイジルの前で跪いていた。彼の筋肉がもりあがった腿に手を置き、そのまま、大口を開けて上から彼の雄をずっぽり飲み込んだ。
「ひいぃっっ……!」
ベイジルのものはおそらく大きい。側女に支給される張り形の、一番大きいものよりもさらに太く長かった。口の中には到底全部挿れられないが、私は喉を使ってなるべく奥深くまで咥えこむ。口のなかいっぱいに青臭いような雄の味が広がる。私は口の中でさらに硬さを増すそれに舌をねっとり這わせ、頬を窄めながら頭を前後に動かした。じゅっぽじゅぼとぬかるみを歩くような音が響く。
「はっ……はっ……り、リアネさま、また出ますっっ……ふっっ……ふぅっぐ」
出ると言われたところで上目遣いでベイジルを見ると、彼は顔を真っ赤にして果てた。日頃中庭で剣を振るう、その勇ましい姿が見る影もない。彼はされるがまま、王太子の側女の口へと精をどくどく注いだのだ。
私は口に含んだ精液を、広げた手のひらへとろりと吐き出した。唾液と混ざり合ったそれはつつっと糸をひく。そして粘ついたその白い昂りを、ベイジルの前へ突き出す。
「舐めなさい。あなたが出したものでしょう?」
ベイジルは生理的な涙をぽろぽろ流しながら、なんの躊躇もなく白く汚れた私の手のひらを舐め出した。まるで、犬のように。
これも彼が仕える王太子殿下が書いた筋書きだからだ。
また、壁際にいる見物客にそれとなく視線を走らせる。
私たちに痴態を演じさせている張本人は、シルクの下履きにぴんとテントを張っていた。
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