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閑話4 壁際のスノーフレーク -1-
しおりを挟む僕の名前はアルフレッド。
コルベール侯爵家の長男だ。
先日僕は運命的な出会いを果たした。
あれはそう、忘れもしない冬の晴れた日の事だった。
「アルフレッド、急で申し訳ないが明日モンロー伯爵家へ向かってくれないか?お前の婚約者候補をモンロー伯爵夫人が紹介してくれるそうだ」
書斎に呼び出された僕は父にそう告げられた。
婚約者候補の紹介という言葉に舞い上がった僕の心は、その後父の口から出た名前に落胆する事になる。
”アーレンハイム子爵家三女、メリッサ・アーレンハイム”
彼女と直接の面識はなかったが、その悪名はこの国に住む貴族であればおそらく全員一度は耳にした事があるだろう。
”貧乏子爵家の阿婆擦れ。”
それが彼女に対する世間の評価だった。
正直に言えば、なんで僕がそんな奴の婚約者候補としてお見合いをしなければならないのかと、この時ばかりは自分の父親を恨まずにはいられなかった。
大方、モンロー伯爵夫人の頼みを断れなかったのであろうと予測はついたが、それでもやはり納得はできない。
モンロー伯爵家と言えば直轄領、アルトシュタイン公爵領に次ぐ王国内で3番目に広い領土を持ち、豊かな土壌と整備された交通網を持った王国西部の中心地である。
家格で言えば当家の方が上であるが、力関係で言えばあちらの方が上である事は何よりも自分たちがよく知っている。
土地ばかりが広く、人口もモンロー伯爵領よりも少ない。
領内に目立った産業もなく、モンロー伯爵家にが持っていなくて我が家が持っている物など、価格と外海に面した港くらいである。
何より、塩害の被害が深刻な我が領地では食料の多くをモンロー伯爵領からの輸入に頼っている為、どうしても彼らに強く出ることができない。
しかし、それでも侯爵家の長兄である自分に対して子爵家の三女を充てがうとは余りにも失礼ではないだろうか。
それもよりにもよって悪名高いアーレンハイム家の三女である。
”父上はなんて情けないのだろうか、侯爵家の嫡男に対して子爵家の娘を当てがうなどと言う話を聞かされておめおめと引き下がるなど”
父への恨みはやがて、モンロー伯爵夫人、そしてメリッサ・アーレンハイムへの怒りと変わっていった。
”そちらにどんな思惑があるかは知らないが、コルベール侯爵家も随分と安く見られたものだ。父上は丸めこめたかもしれないが、僕まで思い通りになるとは思うなよ”
手酷くフってやろう。
僕はそう決意を固め、お見合いへと向かうのだった。
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