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はるかぜ
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ボサボサの髪。
黒縁の眼鏡。
前髪は鬱陶しく伸びている。
こんななりだけど、一応女子、です。
トイレの鏡の横を通るたび、目の端に映る自分に幽霊かよって突っ込む。
こんななりで猫背って、完璧間違うわ。
ときどき悲鳴あげそうになるもん。自分でも。
「みゃあ」
体育館裏の主を呼び寄せる時のあたしの声。
ダミ声である。
みゃあ。
しばらくしてくりっくりの目のちび黒猫が出てきた。
「ほら、チュール」
なめる姿が本当可愛い。
「可愛いってお前のためにあるんだなあ」
しみじみ。
本当可愛い。
「こういうの、ギャップ萌えっていうんでしょうね」
振り向くと、小柄なショートヘアの女子がいた。
「ごめんね。男子じゃなくて」
「大丈夫、わたし、がっついてないから」
普段、一人称はあたしだけど一応、わたしという。礼儀だ。
「鈴宮りんさんだよね」
フルネーム。
「わたし、興味ある人の名前だけ覚えるの。フルネームで」
変わってる。というか、いつのまにか隣に来てしゃがみこんでるの怖い。
チュールがまだ残ってるので、立ち上がるわけにもいかずちびすけを見つめることにした。
「わたし、小林はるみ。はるちゃんって呼んで」
沈黙。
どうやったら立ち去ってくれるだろうか。
「・・・・・・・・」
隣を見ると小林さんがニコッと笑った。
目が強く訴えてる。
「は、はるちゃん」
小林さんが目を細めて笑った。
「それでよし!」
何が?
くしゃくしゃと小林さんに頭を撫でられる。
なぜかほわほわと心が温かくなったのは気のせいだろう。
「鈴宮さんさ、眼鏡取ろうよ」
は?
小林さんに眼鏡を取られ、目をぱちぱちとしばたたかせる。
「お、これ伊達だね」
そうですけど。
「目の色素薄いんだ。グレーって珍しいね」
小林さんが顔を覗き込んだ。
小林さんの顔が整ってるからか圧迫感も嫌悪感も浮かばなかった。
多分彼女が何も考えてないような顔をしてたのもあるだろう。
小林さんが自分のカバンにあたしの眼鏡をしまいこむ。
「ちょ」
「じゃ」
小林さんが片手を上げて去っていくのを呆然と見送っていた。
ふう。
鏡を見る。
ここは放課後の校舎裏にほど近いトイレである。
髪をブラシでとかして、ピンで前髪を止める。
ひいおばあちゃんとお揃いのこの目。
生前大事にしてもらってたからこそ、この目が人前に触れる以上、適当にするわけにはいかないのだ。
ふう。
ま、ひとまずこんなもんか。
ドアを開ける。
校門に向かいながら家にまだ身だしなみグッズ残ってたっけとぼんやり考えた。
「これでいい?」
小林さんに問う。
小林さんは目を丸くしてそれから、花が咲くように笑って頷いた。
黒縁の眼鏡。
前髪は鬱陶しく伸びている。
こんななりだけど、一応女子、です。
トイレの鏡の横を通るたび、目の端に映る自分に幽霊かよって突っ込む。
こんななりで猫背って、完璧間違うわ。
ときどき悲鳴あげそうになるもん。自分でも。
「みゃあ」
体育館裏の主を呼び寄せる時のあたしの声。
ダミ声である。
みゃあ。
しばらくしてくりっくりの目のちび黒猫が出てきた。
「ほら、チュール」
なめる姿が本当可愛い。
「可愛いってお前のためにあるんだなあ」
しみじみ。
本当可愛い。
「こういうの、ギャップ萌えっていうんでしょうね」
振り向くと、小柄なショートヘアの女子がいた。
「ごめんね。男子じゃなくて」
「大丈夫、わたし、がっついてないから」
普段、一人称はあたしだけど一応、わたしという。礼儀だ。
「鈴宮りんさんだよね」
フルネーム。
「わたし、興味ある人の名前だけ覚えるの。フルネームで」
変わってる。というか、いつのまにか隣に来てしゃがみこんでるの怖い。
チュールがまだ残ってるので、立ち上がるわけにもいかずちびすけを見つめることにした。
「わたし、小林はるみ。はるちゃんって呼んで」
沈黙。
どうやったら立ち去ってくれるだろうか。
「・・・・・・・・」
隣を見ると小林さんがニコッと笑った。
目が強く訴えてる。
「は、はるちゃん」
小林さんが目を細めて笑った。
「それでよし!」
何が?
くしゃくしゃと小林さんに頭を撫でられる。
なぜかほわほわと心が温かくなったのは気のせいだろう。
「鈴宮さんさ、眼鏡取ろうよ」
は?
小林さんに眼鏡を取られ、目をぱちぱちとしばたたかせる。
「お、これ伊達だね」
そうですけど。
「目の色素薄いんだ。グレーって珍しいね」
小林さんが顔を覗き込んだ。
小林さんの顔が整ってるからか圧迫感も嫌悪感も浮かばなかった。
多分彼女が何も考えてないような顔をしてたのもあるだろう。
小林さんが自分のカバンにあたしの眼鏡をしまいこむ。
「ちょ」
「じゃ」
小林さんが片手を上げて去っていくのを呆然と見送っていた。
ふう。
鏡を見る。
ここは放課後の校舎裏にほど近いトイレである。
髪をブラシでとかして、ピンで前髪を止める。
ひいおばあちゃんとお揃いのこの目。
生前大事にしてもらってたからこそ、この目が人前に触れる以上、適当にするわけにはいかないのだ。
ふう。
ま、ひとまずこんなもんか。
ドアを開ける。
校門に向かいながら家にまだ身だしなみグッズ残ってたっけとぼんやり考えた。
「これでいい?」
小林さんに問う。
小林さんは目を丸くしてそれから、花が咲くように笑って頷いた。
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