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悪役令嬢が××××××××× 13
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デニス先生が目を見開いて、絞り出すような声で言った。
予想外も予想外の人物の登場に、わたしも、クルトも、シャルロットも、驚愕に硬直して現状を整理できないでいる。また反応からして、彼が来ることは、どちらかと言えば王弟派貴族側の人間であるはずのデニス先生すら、知らなかったことのようだ。
「やっぱりお前が裏で糸を引いてたんだな、犯罪組織『アビス』幹部、デニス・レヴィ……いや、デトレス・ヴァーグナー」
ただ一人、この場で飄々としているその男、王弟エルンストだけが、悠々とした足取りでデニス先生に向かって歩いていく。
「わざわざ騙してまで『治癒』異能の持ち主が手元に欲しかったのか? そのために罪もない少女を殺し、ハインツ派の貴族に罪を押し付け復讐心を植え付けるとは……まったくラスボスの名に恥じぬ見下げ果てた外道だな」
「は……? 待て、どういうことだ!」
「――簡単なことだよシャルロット・マグダリア」
呆然としながらも声を上げた麗しのダークヒロインに、エルンスト殿下は淡々と告げた。
「君の親友『ロッティ』を殺したのは、第一王子派の貴族なんかじゃなく、君が拾われたヴェルキアナの犯罪組織『アビス』と、そことズブズブの関係であるウルリッヒ公爵家だった。
……酷な話かもしれないが、君は親友を殺したやつらに、まんまと利用されていたんだよ」
シャルロットが衝撃に目を見開き、何かを言おうと口を開く。
しかし声は出ず、はくはくと開閉した口からは、空気の掠れた音だけが零れ落ちた。
「……どういう、ことですか」
険しい顔をしたクルトが、この場にいる全員の思っていることを代弁した。「エルンスト殿下、どうしてあなたがクーデターを止めるような真似をしたのです? クーデターの首謀者はあなただ、ハインツ殿下が殺された方があなたにとって都合がいいはずだ」
その通りだ。
積極的に動いていたのはウルリッヒ公爵家を筆頭とした王弟派貴族だったが、そもそもクーデターの目的は、エルンスト殿下が立太子されることだったはず。それなのになぜ、彼はシャルロットを止めるような真似をしているのか――。
すると、エルンスト殿下は「当然だが誤解があるようだな」と、至極あっさりとした口調で言った。
「まず俺は王位なんて興味もないし、クーデターを企んでもいない。兄王陛下とは喧嘩はするし意見衝突もするが割と仲が良いし、クーデターはウルリッヒ公爵家が俺の名前を使って勝手に動いただけだ」
「……は?」
「ちなみに、勝手に俺を担いで私兵を集めているやつらを放置していたのは、反現王派の貴族どもを一網打尽にするためだ。ま、これを知っているのは陛下とライナスだけだが」
(はああああああ!?)
待て待て待て待て、情報量が多い。
つまりどういうことだ? 実はエルンスト殿下は国王陛下やシルヴィア王国の敵などではなく、もちろん王位を狙ってもおらず、反現王派やヴェルキアナと繋がっている貴族を捕まえるために芝居を打っていたということか?
(しかも、知っているのは『陛下とライナス』って言ってたよね?)
なら、叔父も全てを知っていたということなのか。
では彼は全て知っていた上で『ネズミを止めろ』と命じたというのか。叔父ならばやりかねないと思いつつ、衝撃で言葉もない。
「……ずっと、ボスはどこから『王立学園にヴェルキアナのスパイがいる』なんてとんでもない情報を掴んできて、どうしてそれを全面的に信用するのか、と思ってたけど」クルトが低い声でぽつりと零した。「敵のボスってことになってる王弟本人から仕入れていたなら、そりゃあ間違いないよな」
「ああああ……」
完全に納得がいった。そういうことだったのか。
敵を騙すにはまず味方から、とは言うが、随分盛大に騙してくれたものだ。叔父の手のひらの上で転がされるのにはもう慣れたけれども、途轍もなく釈然としない。
まあ、『可及的速やかにその正体と目的を突き止めろ』という言い方からして、叔父もネズミの正体そのものには気づいていなかったと思われるので、結局シャルロットとデニス先生を止めなければならないことには変わらなかっただろうが――。
(それにしても、ここに来て王弟エルンスト殿下が陛下の味方だった、っていう展開……。もしかして、四人目の攻略対象って、)
「俺は攻略対象じゃないぞ」
「え、はっ!?」
まるで心を読んだかのようなタイミングでの言葉に、わたしは到底王族に対してすべきではない反応を返してしまった。
……いや、待て。
何故彼が『攻略対象』などという言葉を知っているのか。そういえば、さっきも『ラスボスの名に恥じぬ外道』とかなんとか言っていたような。
わたしが呆然としていると、「おおその反応」とエルンスト殿下が愉快そうな笑顔を浮かべた。
「君、やっぱり、『悪役令嬢のユリア・ヴェッケンシュタイン』じゃないんだな」
「え……?」
「ライナスから君を零課にスカウトしたという話を聞いてから、もしやとは思っていたんだが、万一の時のためにシナリオに介入してよかったよ。悪役令嬢が零課に入るなんて展開は原作にはなかったしな」
「え、え……」
「何もしなかったら君はどう足掻いても処刑ルートだからな。大丈夫、きちんと俺が証言するよ、君は何もやってないってな」
「え、え、え……」
ま、まさか。まさか……、
「殿下も、前世の記憶があるんですか……っ!?」
予想外も予想外の人物の登場に、わたしも、クルトも、シャルロットも、驚愕に硬直して現状を整理できないでいる。また反応からして、彼が来ることは、どちらかと言えば王弟派貴族側の人間であるはずのデニス先生すら、知らなかったことのようだ。
「やっぱりお前が裏で糸を引いてたんだな、犯罪組織『アビス』幹部、デニス・レヴィ……いや、デトレス・ヴァーグナー」
ただ一人、この場で飄々としているその男、王弟エルンストだけが、悠々とした足取りでデニス先生に向かって歩いていく。
「わざわざ騙してまで『治癒』異能の持ち主が手元に欲しかったのか? そのために罪もない少女を殺し、ハインツ派の貴族に罪を押し付け復讐心を植え付けるとは……まったくラスボスの名に恥じぬ見下げ果てた外道だな」
「は……? 待て、どういうことだ!」
「――簡単なことだよシャルロット・マグダリア」
呆然としながらも声を上げた麗しのダークヒロインに、エルンスト殿下は淡々と告げた。
「君の親友『ロッティ』を殺したのは、第一王子派の貴族なんかじゃなく、君が拾われたヴェルキアナの犯罪組織『アビス』と、そことズブズブの関係であるウルリッヒ公爵家だった。
……酷な話かもしれないが、君は親友を殺したやつらに、まんまと利用されていたんだよ」
シャルロットが衝撃に目を見開き、何かを言おうと口を開く。
しかし声は出ず、はくはくと開閉した口からは、空気の掠れた音だけが零れ落ちた。
「……どういう、ことですか」
険しい顔をしたクルトが、この場にいる全員の思っていることを代弁した。「エルンスト殿下、どうしてあなたがクーデターを止めるような真似をしたのです? クーデターの首謀者はあなただ、ハインツ殿下が殺された方があなたにとって都合がいいはずだ」
その通りだ。
積極的に動いていたのはウルリッヒ公爵家を筆頭とした王弟派貴族だったが、そもそもクーデターの目的は、エルンスト殿下が立太子されることだったはず。それなのになぜ、彼はシャルロットを止めるような真似をしているのか――。
すると、エルンスト殿下は「当然だが誤解があるようだな」と、至極あっさりとした口調で言った。
「まず俺は王位なんて興味もないし、クーデターを企んでもいない。兄王陛下とは喧嘩はするし意見衝突もするが割と仲が良いし、クーデターはウルリッヒ公爵家が俺の名前を使って勝手に動いただけだ」
「……は?」
「ちなみに、勝手に俺を担いで私兵を集めているやつらを放置していたのは、反現王派の貴族どもを一網打尽にするためだ。ま、これを知っているのは陛下とライナスだけだが」
(はああああああ!?)
待て待て待て待て、情報量が多い。
つまりどういうことだ? 実はエルンスト殿下は国王陛下やシルヴィア王国の敵などではなく、もちろん王位を狙ってもおらず、反現王派やヴェルキアナと繋がっている貴族を捕まえるために芝居を打っていたということか?
(しかも、知っているのは『陛下とライナス』って言ってたよね?)
なら、叔父も全てを知っていたということなのか。
では彼は全て知っていた上で『ネズミを止めろ』と命じたというのか。叔父ならばやりかねないと思いつつ、衝撃で言葉もない。
「……ずっと、ボスはどこから『王立学園にヴェルキアナのスパイがいる』なんてとんでもない情報を掴んできて、どうしてそれを全面的に信用するのか、と思ってたけど」クルトが低い声でぽつりと零した。「敵のボスってことになってる王弟本人から仕入れていたなら、そりゃあ間違いないよな」
「ああああ……」
完全に納得がいった。そういうことだったのか。
敵を騙すにはまず味方から、とは言うが、随分盛大に騙してくれたものだ。叔父の手のひらの上で転がされるのにはもう慣れたけれども、途轍もなく釈然としない。
まあ、『可及的速やかにその正体と目的を突き止めろ』という言い方からして、叔父もネズミの正体そのものには気づいていなかったと思われるので、結局シャルロットとデニス先生を止めなければならないことには変わらなかっただろうが――。
(それにしても、ここに来て王弟エルンスト殿下が陛下の味方だった、っていう展開……。もしかして、四人目の攻略対象って、)
「俺は攻略対象じゃないぞ」
「え、はっ!?」
まるで心を読んだかのようなタイミングでの言葉に、わたしは到底王族に対してすべきではない反応を返してしまった。
……いや、待て。
何故彼が『攻略対象』などという言葉を知っているのか。そういえば、さっきも『ラスボスの名に恥じぬ外道』とかなんとか言っていたような。
わたしが呆然としていると、「おおその反応」とエルンスト殿下が愉快そうな笑顔を浮かべた。
「君、やっぱり、『悪役令嬢のユリア・ヴェッケンシュタイン』じゃないんだな」
「え……?」
「ライナスから君を零課にスカウトしたという話を聞いてから、もしやとは思っていたんだが、万一の時のためにシナリオに介入してよかったよ。悪役令嬢が零課に入るなんて展開は原作にはなかったしな」
「え、え……」
「何もしなかったら君はどう足掻いても処刑ルートだからな。大丈夫、きちんと俺が証言するよ、君は何もやってないってな」
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