追放令息と進む傭兵の道。

猫科 類

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店主親子の慰めを背に受けながら部屋に戻る。

部屋の鍵はかかっていなかった。

いくら田舎の村とはいえ無用心な……



扉を開けると、部屋はすでに薄暗かった。

壁に取り付けられた燭台の蝋燭は火が消され、机の上の蝋燭とランタンの灯りだけ。



「随分長いお喋りだったな。」

と、ベッドに寝そべるカリアン。

ベッドに寝そ……



「……その、布類は…」

虫とかいませんよね…?



前世の日本人の感覚は、転生した今世の中世ヨーロッパ風ファンタジー世界の衛生面を産まれた時から拒否した。



なんの力も財力も無かった頃は、子供のワガママと神経質さで親に駄々を捏ねて乗り切った。

領主城でカリアン達と過ごす様になると、両親は勝手に衛生用品に力を注いでくれたし、お小遣いには多すぎるお金を持てるようになった。

その殆どの使い道は【錬金術師】職業レベルを高める為に費やした。

理由は簡単だ。

自分の手で安心安全な石鹸を創り出すことーー
安心安全なシャンプーを創り出すことーー
安心安全な化粧水をーーー
安心安全なファボンリーズ的な物を!!!キレイダキレイダ的な物を!!!オロロンナイン的な物を!!!!ポッカリンスウェート的な物を!!!

とにかく!!

自身が安全で安心だと思える何もかもが欲しかったのだ……!!

だって、井戸水で、外の井戸で、虫とか入ったりとか…………!

ぼっとん便所で、肥やしで、風呂って何?身体拭けばオーケーだろ?

な、世界では限界があったのだ………!!!



色々経験して、多少はこちらの衛生面に身体も精神も慣れてはきたが、気になると、こぅ…たまらなくなる……あ~…やっぱり、待って…!!ってなるのだ…



私はウエストポーチから小さな硝子のスプレーボトルを取り出す。
このスプレーボトルの中の液体はクリン水ハーブの香り付きである。



私の認識ではクリン水香り付きはリーセシューみたいな物なのだ。
ちなみに前世の私はファボンリーズ派だ。

私はスプレーボトルを手にカリアンに近づく。


「……一度、立ちって、いただけると、ありがたいです…」

「……」

嫌な表情のカリアン。


「…一度でいいんで…、……、ん…?」

ここで気付く。

この転がっている巨体は、着替えた様子がない。



この数日、簡易的とはいえ防具を付けていたシャツとズボンと…………


「カリアン、着替えました?」

「……」

「カリアン?」

ふと、木の桶を見る。

使った様子は無い。

つまりは、体も拭いていない………?


「……。バッチィままなんですか!?」

「フザケンナ!!浄化魔法をかけた!!!」
ガバリと飛び起きたカリアンが怒鳴り、
イャアァ!!
と飛び退く私。

浄化魔法は聖属性の生活魔法の1つで、身体や物、場所を清潔にする魔法だ。

全人類が使える初歩的な生活魔法の1つ。

この魔法が有るために、この世界には入浴や身体を洗う等の習慣が少ない。

遠征中や戦争中、旅の途中では水は貴重なので非常に有り難い魔法なのだ。

が………

入浴や洗身洗髪の前世記憶を持つ身としては、物足りないというか……不安というか……信用できないというか……


「せっかく水場があるんてすよ!お湯を沸かして来ますから!!せめて!身体は拭いてください!!」

「今から湯を沸かすのか…?面倒だろうが!」

「バッチィ方がダメです!」

「だから!浄化魔法を…!」

「魔法とかの問題ではないんですぅ!!バッチィもんはバッチィんですぅ!!」

私は桶と魔法石のかけらの入った巾着、ランタンを握りしめ部屋を飛び出した。







水場の蝋燭に火を灯す。

隅に束ねられた薪を竈門に焚べて火種石で火を点す。

部屋の奥の窓を開ける。

目の前にロープの付いた桶。

下には暗くてボンヤリとしか見えないが石造りの井戸。



「……」

外井戸……

飲むわけではないし、煮沸するから……



井戸から水を汲む。

一応、水質チェックも行う。

飲んでも問題が無い水質だった。



洗った鉄釜で湯を沸かす。

その間にもう一度水を汲んでおく。



しばらくすれば、熱々の熱湯の出来上がりだ。

その湯を桶に移す。

鉄鍋には新しい井戸水を入れておき、火は灰をかけ、少し弱火にしておく。



桶をもって部屋に戻る。

相変わらずカリアンはベッドに転がっていた。



鞄から平たい巻袋を出す。その中には乾燥させたハーブの葉が種類ごとに紙に包まれて入っている。

その中から数枚ハーブの葉を取り出す。

マリーの葉。

虫除けの効果のあるハーブだ。

香りもミントの様な爽やかな良い香りがする。

その葉を湯に入れ、綺麗な手ぬぐいを1枚湯に浸す。



まだ、熱い。熱々過ぎる……なので、今度は水色に染まったくくり紐の巾着の出番だ。

その中には氷属性の魔法石の欠片が入っている。

その欠片にほんの少し魔力を流してから熱々過ぎる湯に沈める。

お湯の中で氷属性魔法石の欠片は溶けるように消えていく。

チョンと指を漬ければ、熱々熱湯から熱めの湯に温度が下がっていた。



「カリアン、軽くで良いんで身体を拭いてください。」

「……、お前が使え。」

「私の分は今から持ってきます。」

この部屋に桶は1つしかなかったが、水場に比較的新しい桶があった。



桶をテーブルに残して私は水場に戻り、弱めた火を強くして、湯を沸かし、綺麗に洗った桶に入れ、火はしっかり消して水場から出る。

桶と湯は明日片付けても良いかもしれない。

欠伸を噛み殺しながら部屋に戻った。



部屋ではカリアンが上半身裸でベッドに座って身体を拭いていた。

相変わらず筋肉ムキムキだ。



「背中、拭きましょうか?」

「自分でする。」

「まぁまぁ。」

カリアンが湯を使ってくれている嬉しさから気分が良くなり、私は持っていた桶をテーブルに置き、カリアンの持つ手ぬぐいに手を伸ばす。



「おい…」

「せっかくですから。」

にげる手ぬぐいを掴み取る。

観念したように、渋々手ぬぐいから手を離すカリアン。

自分用の桶から湯を少し足して、そこに手ぬぐいを浸す。

ハーブの爽やかな香りが新しい湯の蒸気で立ち上がる。

いい匂いだ。

手ぬぐいを絞り、温かいうちに背中貼り付ける様にかける。

その間に自分用の桶にもハーブを放り込む。

カリアンの背から手ぬぐいを取り、再度湯に沈めてから今度は背中全体を拭き上げる。



広くて大きくて筋肉質なカリアンの背中には多くの傷が有る。

戦いでついたものもあれば、喧嘩でできたもの、暗殺でついたものも有る。

私がポーションや回復薬を作れるようになってからは傷痕が残ることは少くなった。

それでも、傷の深さに見合わなかったり、日が経ちすぎたりと、傷跡が増えることはあっても減ることはない。



「こんなものですか?」

私は、自身の2倍は有りそうな大きな背をしっかり拭き上げ満足していた。



「悪いな…。」

大人しく背を拭かれた本人は相変わらずぶっきらぼうに言い放った。


手ぬぐいを返してから、さて自分もと新しい手ぬぐいを桶に浸す。

ちょうどいい温度だ。



髪を纏めていた紐を解く。

剣帯を外し剣ごと椅子に置き、胴回りを締め付けていたコルセットの紐を解き外し、剣帯を置いた椅子の背もたれにコルセットを引っ掛けると、椅子に腰掛け絞った手ぬぐいを顔に乗せる。



「あ゛ーー……」

あったかい…

本当は湯に浸かりた………



「!っ!」

ゾワリとした感覚が背中の真ん中を撫でるように這い上がり、幾度もの争いで慣れてしまった鉄臭さを鼻の奥の奥に思い出し、喉がへばりつく様な感覚に襲われる。



反らせていた首を勢いよく戻したせいで、手ぬぐいが顔から飛んで膝に落ちたが気にならない。

カリアンと目があった。



「…」

「…、…」





カリアンは何も言わない。

が、手にしていた手ぬぐいをそっとベッドに置くとシャツを着た。

私はすぐにランタンを消した。

椅子から滑るように降り、床に膝をつきながら髪を簡単に紐で括り、剣帯を腰に巻く。

身を低くしたまま窓に近づく。



ほんの少し、窓を開け神経を集中させる。







遠く、すごく遠くのようにさえ感じられるほどの……小さい悲鳴……荒い息……鼻を啜る音……舌打ち……金属の擦れる音……重たく…擦るような足音……



ヒヒン

ブフッ

ブルル



馬の嘶く声がやたらと大きい。



動物は人間よりも何十倍も耳がいい。
そして、危険を察知する。

馬やの方向から落ち着きなく蹄を鳴らす音や息づかいが聞こえる。



「…、おそらく、村の入り口、近い家が押し入られた、と、思います……、今は……ソコだけの様です……」

そっと身を低くして寄ってきたカリアンに、外の気配に集中しながら聴覚だけで得た、推測にも近い情報を伝える。

残念だが、外は暗く微かに察知できる音も小さく把握しきれない。



カリアンの小さな舌打ち。



「店主家族を叩き起こせ。俺は入口で見張る。」

戦斧を片手に身を低くしたままカリアンが部屋を出る。

私もハルバートを手にする。

生憎、ハルバートは槍に分類される為室内での扱いが難しい。

ましてや、小さな村の宿など一振りで壁に円を描く場合もある。

それでも使い方というものはいくらでもある。



カリアンの後に続き部屋を出る。

カリアンが酒場の扉に張り付いたのを横目に確認し、一階の階段下にある扉に向かう。

一階の扉は3つ。

カリアンが張り付いている正面扉。

そして、カウンター横にある一階トイレの扉。

残りのこの扉が店主家族の居住スペースに繋がっているはずだ。



音を立てない様にそっと開ける。

真っ暗な廊下に3つの扉がボンヤリ見える。

1つの扉の隙間からホンワリ灯りが漏れていた。

店主か、ノアか……それとも顔を見ていない店主の奥方か……



そっと光の漏れる扉に近づき耳を済ませる。

紙にペンをはしらせる音がする。



コンコン



小さくノックする。



「…、誰?」

ノアの声。

緊張しているようだが、それ程大声ではない。

私は音をたてないように慎重にドアを開ける。

手にしたハルバートは壁で見えないはずだ。



「あ、あなたは…何か、」

「シー!静かに!」

「!?」

「しゃがんで!」

声を潜めながら厳しい声色でジェスチャーと共に伝え、私もしゃがむ。

つられた様にノアもモタモタとではあるが、しゃがんだ。



ノアは寝る前だったのだろう。

最後に会った時のズボンとシャツ、ベスト、ブーツ姿と違い、綿素材のゆったりとした上下を着て、足元はスリッパだ。

手招きをすると、ソロソロとノアが寄ってきた。



「ノア、落ち着いて聞いてください。野盗か盗賊が村に侵入した形跡があります。」

「え!!?!」

「しー!!」

驚き声を上げそうになる彼の口を慌てて塞ぐ。

勢い余ってノアにのしかかる様な体勢になったが、気にしている場合ではない。



「今すぐ、この建物の中に居る人を酒場のカウンターの奥に集めて下さい。くれぐれも騒いだり、音を立てないで。ここに来るかはわかりませんが、少なくとも村の入口に近い一軒は入り込まれています。」

状況を伝えると、ノアは顔色を悪くしながらもコクコク頷く。

そっと口を覆っていた手を離し、ノアが言葉を発さないのを確認して、彼の身体の上から退く。



「静かに、お願いします。」

そう念を押し、四つん這いで進むノアを見送る。

そっと、ノアの部屋の窓に近づく。

厚みのある質の悪い硝子越しに聞こえる音では、外に変化は無いように感じる。

ノアの部屋の机の上のランタンの火を消し、そっと部屋を出る。

ボソボソと話す声が奥から聞こえてくる。



揉めているのだろうか……



向かうべきかとそちらに身を向けたとき、ノアが四つん這いのままで出てきた。

不安気な表情。

手招きをすると、ソロソロと向かってくる。

その後ろには店主が居た。

青ざめ、戸惑いと不安に揺れた表情をしている。

その後ろにはガウン姿の壮年の女性。

いつもは纏めているのであろう長い茶色の髪は背中に下りている。



慎重にドアを開け、酒場の中を確認する。

正面扉の横の窓から外を伺うカリアンの姿が目に入る。

厳しい表情はそのままだ。



ノアにカウンターの奥を指差す。

コクコク頷くノアは四つん這いのまま向かっていく。



「な、なぁ…ほ、本当に…」

店主は不安気だ。



「恐らく。ここまで来るかわかりませんが、確実に一軒は押し入られています。」

「そ、そんな…」

「ここは、私と彼が居るので死守できますが、部屋に分散されていると守れないので……」

「ま、守って、くれるのか?」

震える声。



「私達だけで逃げても良いですが、」

「お!おい!」

店主が思わず大きい声を上げ、膝立ちになってしまった。



「ちっ!」

ドアの方から舌打ち。

あらら…ご立腹だ……



「落ち着いて下さい。あの通り、私の連れはその気はありません。そして私も。逃げるなら、貴方がたを起こしていないでしょう?」

「そ、それは…そうだが…」

苦笑する私とは正反対に、ハァハァと荒い息を吐き震える店主。

力が抜けたように座り込むその身体に奥方が縋るように手を絡めた。



「すみません。冗談が過ぎました。とにかく、貴方方を守りたいので、静かに指示に従って下さい。」

落ち着かせる様に肩に手を置く。

店主は小さく頷いた。

カウンターの方を見れば、ノアが不安気に顔を覗かせている。



「息子さんの所まで行って下さい。ゆっくりで良いので、静かに。」

シーと微笑む。

意を決した様に店主、奥方の順に四つん這いでカウンターの方に進んでいく。

奥方の後に身を低くして続き、カウンターの奥を確認する。

カウンターの背後は棚になっており、皿やら酒瓶が置かれ、床には薪や根菜等の野菜が置かれている。

親子はそこの隅に一塊になっている。



「もしもの時、皿とか落ちてきたら危ないので、これで頭を守ってください。」

カウンターにあったまな板や木のトレーを親子に渡す。

震える手でトレーを受け取る奥方の目には涙が見える。



「大丈夫ですよ。彼は強いので。」

カリアンの方を指し笑むと、奥方が小さくコクリと頷いた。
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