「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)

文字の大きさ
5 / 5

執務室でお預け

しおりを挟む
 執務机の上には数通の封書、本日最後としてトロンが持ってきたのだが、ルインは今はそれどころではなかった。

「はっ……はぁ、も、うごいてぇ……」

 トロンの首に腕を絡め、肩へと蕩けた頭を預けて、さっきから何度も恋人へのおねだりが繰り返されている。

「だめだよ?まだお仕事中だからね」

 せっかく仕事を片付けたところに再び持ち込まれた封書、口を尖らせたルインにトロンが囁いたのだ。

『代わりにやってあげるよ、その代わり……』

 言われるがままに服を脱がされ、仕事前のご褒美にと散々イタズラをされ、今はトロンのモノで貫かれながらお預けを喰らい続けていた。
 トロンはわざとゆっくり封書を一通ずつ開き、ゆっくりと中を確認してから、ゆっくりと仕分けている。

「あん……あ、ぁ」

「こら、ルイン、勝手に動いちゃダメでしょ?」

 辛抱できずに腕に力を込めてそっと身体を持ち上げた途端、トロンの片手がルインの腰へと伸ばされてぐいと下へと引き戻された。

「はぁん……あ、奥、もっとぉ」

 その衝撃に甘い声が溢れるが、やっぱりルインの恋人は意地悪だ。

「後二通だから我慢して?」

 いつもより封蝋を丁寧に剥がしていると、執務室の扉の向こうからパタパタと足音、次第に大きくなってくる。

 ガチャリ

 ノックも無しにノブが回され、ルインの身体がびくりと震えた。

「あっれぇ?鍵かかってるな、あ、中いないのか」

 不在の表示を確認したのだろう、しかしその場から立ち去る気配はない。
 動かないように体を固くする事で、余計に中のトロンを締め付けてしまったルインの内がヒクヒクと動き出し、自身でも止められない。

「……ん………んっ……」

 トロンの肩に顔を押し付け、声を押さえ込んでいる。
 ふ、と小さく息を吐き、トロンはルインを抱えるように椅子から立ち上がると、静かに後ろを向いた、そっとルインをかけさせて、ゆっくりと引き抜いてやる。

「ぁ……はぁ………んっ…」

「ごめんね、ちょっと意地悪だったかも、父さん来てるから、諦めるまで一緒にいないフリしよう」

 トロンはルインの後ろから溢れるポーションをさっと拭き取り、手慣れた手つきで服を着せ直す。
 最後に執務椅子の情事の跡をきれいに隠蔽し、ルインを抱き上げて長椅子へとそっと横たえた。
 そして、扉の向こうを忌々しげに睨みつける。

「ち、しつこいな。ちょっと追い返してくるから、少し休んでて?」

 言われるがままに瞳を閉じたルインから離れ、カチリと解錠して扉を開いた。

「あれ、なんだ、お前がいたのか」

 いかにも中に人がいるのは分かってましたよと言いたげな態度、トロンの声が低くなる。

「あのさぁ、ルインが寝てるから静かに休んでもらおうって鍵かけといたの!大人しく帰れよ」

「ちぇ~、冷たいなぁ、ま、いいか。じゃ、ルインに伝えておいてくれ、プライトン王国がウチが前に壊した学園都市の再建に立ち上がったんだってさ」

 言いたいことだけは伝えると言う姿勢にトロンはため息を吐いて聞き入れた。

「分かったよ、起きたら伝えとく。そんだけ?ならもう帰れ。あ、俺、今日帰らないからって母さんに伝えといて」

 ついでとばかりに自身の伝言も頼み、トロンは無理やり扉を閉め始めた。

「へいへい、あんまり当代に無理させんなよ」

 トールソンから息子への最後の一言は、トロンにしか聞こえない程度の声量だった。

「うっせ、分かってるよ」

 いそいそと長椅子へと戻ったトロンは、愕然とした。

「ルイン……寝てる、のか?」

 すよすよと気持ちよさそうに寝息を立てているそのあどけない姿。
 トロンは深く深くため息を吐いて、最後の二通を片付けようと執務机へと向かった。
 ピッピと適当に封を剥がして中をざっと確認、即座にポイっと廃棄箱へと放り込んだトロンは、一人背を丸めながら手洗いへと向かうのだった。


 ---


 おまけ

「革だな、これは絶対……」

 執務室の長椅子に腰掛けながら、何やら手帳のようなものと睨めっこをしているトロン。
 ルインはあと三通になった封書から目を逸らし、問いかけた。

「さっきから何ぶつぶつ言ってるの?考え事?」

 口から声が出ていると気づいていなかったらしく、はっと口元を押さえた恋人に、かわいいな、と思ってしまう。
 トロンがよくルインのことを可愛いと言っている気持ちがわかった気がして、少し気分が良くなった。

「その、新しい椅子を用意しようと思ってるんだ。ルインはどんなのがいい?」

「え、まだ使えるでしょ?どこか破れたりしちゃった?」

 先代から使い続けている長椅子は、革張りの良い物のため、手入れにより艶やかな輝きが年季を物語っていた。
 それでも決して傷んでいると言うわけではない。

「いや、ルインが休憩中に寝られるように、背もたれが倒れるやつ作ってもらおうと思って。寝台代わりにもなるやつ」

「そっか、えへへ、色々考えてくれてありがと。じゃ、今の椅子は一回しっかりお掃除して、欲しい人にあげよっか?」

「そうだな、良い物だし。あ、新しい椅子、どんな色がいい?革は何から作ろうか?」

 ルインは執務机へと向き直り、中身を処理しながら考える。

「色は……あんまり変な色だと浮いちゃうからな。焦茶とか?革は……そうだ、トロン、近いうちにお休みとってさ、荒野の向こうの森に行こうよ、それで、出てきた魔物の皮使ってもらおう?」

 ルインからのデートのお誘いに、トロンは勢いよく立ち上がった。

「それ、すっごくいいな。よし、ちょっと俺、向いてそうな魔物がいる場所調べてくる!」

 軽い足取りで執務室を出ていった従兄を見送り、ルインは最後の一枚を近くの引き出しへと納めるのであった。




あとがきっぽいもの

いっぱいいいねとかお気に入り登録とかしていただいちゃいまして、ありがとうございます~
思いついたので書き足しました~
多分半年から数年後くらいのお話?

これにてほんとに完結です
読んでくださってありがとうございました~
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...