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女同士、長屋カフェで友達デート

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今日は初めて長屋カフェに行きます。
今まで昔ながらの純喫茶店にたまに行くくらいだったから、長屋を改装したオシャレな空間で美味しいコーヒーを飲めると思うと、嬉しくて早く着きすぎちゃった。

カフェの最寄り駅の2番出口に、11時に待ち合わせだけど、30分前だった。

さすがにまだ来ないよね。近くのお店でも眺めながら歩いてみるか?
と、階段から地上に出て、周辺を歩く。

…うん、程よく都会。
こんな場所に昔ながらの長屋があるのかな?不思議に思いながら2番出口まで戻り、スマホで店の場所を確認したり、SNSで時間を埋めて待つ。

「みーずき!」
声をかけられて顔を上げると、ゆるふわ巻き毛が目に入る。淡い桃色ワンピースを着た優子だ。
「おー、早いじゃん。」
「早いのはそっちでしょ。15分前に着いた私より早いって。」

クスクス笑う待ち合わせ相手に図星を刺されて、伏目勝ちに視線を逸らす。
「だーって、可愛いラテアートのコーヒー…楽しみなんだもん。」
と、つい本音が漏れると「わかる!」という風に優子もうんうん頷いたので安心した。

 確かに優子もいつもより到着が早いもんな。と、ふふっと微笑みながらスマホで店までの道のりを確認。

ちなみに今日の私の服装は、白いサマーセーターにチャコールのスラックス、アイボリーのトレンチコートである。
相変わらずメンズっぽい服装だけど、どれもレディースの服だったりするのが私のこだわり。

スマホの地図を片手に、優子と肩を並べてカフェへの道を歩き出す。
10分くらい都会の中道を歩くと、香ばしいコーヒー豆をローストした香りが漂ってきた。長屋カフェの店構えはオシャレでクラシカルで、心がときめく。

横スライドの扉を開けて振り向くと、優子がゆっくりと入り口をくぐるので私もそれに続いた。奥から、店主らしき人の声が飛んでくる。
「いらっしゃい。お好きな席へどうぞ。」

木のぬくもりを大事にした、モダンだけど新しい感じの店内を見渡しつつ、入り口に2番目に近いテーブル席に腰を下ろす。
メニューは、QRコードをスマホで読み取ると見れるらしい。テーブルの端に置いてあるそれをスマホカメラで読み込んで、表示されたメニューを眺める。

「ねーね、やっぱりカフェラテは頼みたいよね。」
一通りメニューを見たらしい優子が聞いてくるのでうん。と、頷き。
「ラテアート可愛いし、美味しいコーヒー飲みたいもんね。」
目線を交わし、頷き合う。

「他は何頼もうかな?トーストセットとかあるみたい。」
「ランチタイムだし、良いね。実はおなか空いてるの。」
ぺろっと舌を覗かせていたずらっこみたいに言う優子に、肩を揺らして笑いながら、
「私もー。」
と、語尾を上げて微笑み、和やかな雰囲気でメニューを迷う幸福な時間を満喫する。

どうやらトーストは、そのまま焼いてバターを乗せたやつもあるけど、チーズとか、グラタンとか、色んなバリエーションがあるみたい。サイドにはサラダとヨーグルトが付いてくるらしい。

「シンプルなバタートーストにしようかな…。」
ぽつりとつぶやく私に、優子がメニューから顔を上げて、
「いいね!私もそうしようかな。」
「一緒のにする?」
「うん!」

元気よく頷く優子を見て、手を上げて店員さんを呼び、バタートーストセット2つ。と、セットドリンクにホットカフェラテを注文する。

どんな感じのセットが届くのかなー?と、ワクワク待ち遠しい時間。
店内を見渡して、壁に立てかけてある絵本をお互い手に取ってみる。
どちらも動物マスコットの愛らしい絵本だ。
可愛くてほのぼのしながらページをめくるのに夢中になる。

絵本を最後まで読み終えると、元あった場所に戻す。
心地よい音楽が流れる素敵な店内をぐるりと見渡して、店員さんがお食事を作っている気配に待ち遠しさが募る。

通ってきた入り口近くの壁際には、雑貨を販売しているスペースがあるみたいだ。改めて気づいたので、優子に指さして「行ってみる?」と小首をかしげて聞いてみる。

絵本から視線を上げた優子がコクンと頷いて立ち上がったので、店員さんに「見せてもらいますね。」と、了承を得てスペースへ向かう。

そこにはレターセットやペン、シールなどの文房具に加え、クッキーやチョコなどの可愛いお菓子。コーヒー豆なんかも売っていた。
どれも可愛くてきゅんとする、動物モチーフのデザインだ。

「かわいいね。」
「目星付けといて、お会計のときに購入しよう。」
提案すると、優子が嬉しそうに頷いた。それを見て口元を緩ませて微笑み、しばらく手に取ったりして眺めてから、一緒に席に戻る。

――深く腰掛けて、程なくしてカフェメニューが運ばれてきた。
テーブルに次々に置かれるトーストセット。サラダも小さなお皿に盛りつけてあってとても可愛い。さらに小皿にヨーグルト、はちみつが掛かってるみたい。
そして、待望のホットカフェラテも置かれた。蝶ネクタイしたクマさんがにっこりと微笑んでいる図柄で、なんともほほえましいラテアートに仕上がってる。

「かわいいね。」
「可愛過ぎるね。」
「今日、何回キュンとしたかな?」
「わかんない。」

ぷはっと上を向いて言うと、優子が目を細めたままテーブルの上をスマホで撮影し始めた。
私もカバンからスマホを取り出し、角度を調整しながら撮影する。
写真を見返すと、上手く撮れてて思わずにっこりした。

そしてしばらく可愛いラテアートを眺めて、心いっぱいに癒しを広げる。


「そろそろ頂こうかー。」
「そうだね。」
「「いただきまーす。」」

声を合わせて言うと、お互いまずはトーストを齧る。芳醇なバターの香りがして、香ばしく焼けたパンとの相乗効果で味わいが豊かだ。

「おいしいねぇー!」

声を弾ませる優子に、私もうんうんと頷いて。

「バタートーストの味って贅沢だよね。」

噛みしめながら言うと、2口目も口に入れて目を細める。
パンを嚙むたびにじゅわっと染み出してくるバターの風味が、なんとも味わい深い。

水分が欲しくなり、カフェラテの下の方にそっと口を付け、ラテを啜る――。
コーヒーとミルクの風味が口いっぱいに広がり、まろやかな苦みに思わず頷いて。

「ラテもめーっちゃ美味しい!」
と、声を上げる。優子もどれどれと、そっと口を付けてラテアートを極力崩さないように飲むと、「んー」と言いながら目が糸のように細くなった。

「こんな美味しいコーヒー、久々だわ。」

嬉しそうに言う優子に「私も。」と、頷いて、顔を見合わせながら2口目も飲んでいく。

「あ。ラテアートが少し下に伸びた。」
「ほんとだ。」

間延びした絵柄も可愛く、のほほんとしていたので、思わずまたスマホのシャッターを切る。


スマホをテーブルに置くとフォークにも手を伸ばし、サラダを口に入れる。シャク、パリっとした歯ごたえに、フレンチドレッシングが好相性でなんとも美味しい。爽やかだ。

上機嫌になりながらまったりと味わっていくと、日頃の疲れなんかが嘘のように吹き飛んで、心を洗濯したような爽快な気持ちになった。

「はー、優子とココに来れて幸せ。」
「ありがとう。わたしもー。」

色んな五感が満たされていくことに満足げにため息をついて、皿を空ける。
ラテアートも最後の方は幽霊みたいに下側が伸びていたので、それも撮影しておいた。

「「ごちそうさまでした~。」」

手を合わせ、伝票を持ってゆるりと席を立つ。
レジ前の雑貨に足を止め、ふと優子が真顔をしたので首をかしげて覗き込む。

「お揃いのペン買おうよ。」
そういう優子に、ぱぁっと笑みを広げ。

「いいね!優子はなんの動物にする?」
「んー、わたしはクマさんかな。ラテアート可愛かったし。」
「じゃあ…わたしはキツネにしよう。トーストこんがりきつね色だったし。」

お互い、語尾を上げて言いながらペンを手に取ると、店員さんに断ってから並べてスマホで撮影してからレジに置く。

「お会計、ここは私が持っとくね。」
そう告げると、優子が慌てて財布を出しながら首を振るので、苦笑しながらやってきた店員さんに「お会計、別々で。」と、告げる。

快く了承されたので、今回は割り勘となった。

「貸し借りはよくないからね。」
払い終えた財布を閉じながら、諭すように言う優子に。「はぁい、ごもっとも。」と、肩をすくめながら、自分もレジを終えた。

まぁいいか。優子の言うことにも一理あるし、心が生き返る――そんなカフェだったことに間違いはないのだから。


店の出入り口を開け、店員に「ごちそうさまでした」と、お辞儀をして連れ立って店を出る。
日が高く、外の空気も清涼で思わず深呼吸したら、優子が腕を引き。

「近くの公園で、花見してから帰ろうか?」
というので、
「いいね。天気もいいし。」
と、お喋りしながら歩き出した。

休日の昼下がりはまだまだ続くのだった――。



vol.2 女同士、長屋カフェで友達デート  fin.
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