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57 勇者VS勇者
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スキル鷹の目を発動。そして再び減速を放つ。
時間を稼ぎつつ、荒木の能力の謎を解かなければならない。
──が、荒木の姿が消えた。背後から衝撃。
蹴られた。鷹の目で確認出来なかったということは、単に超高速で移動しているわけではない。
瞬間移動か、もしくは──。
片手をつき、前転しながら振り返る。
荒木は短ランを脱ぎ、指をベキベキと鳴らす。
「気付いたか? 禁忌とかいう種類のスキルらしいぜ、この時間停止はよぉ。この辺りだけなのか、世界全体が止まってんのか知らねーけどよぉ」
禁忌のチートスキル……俺の瞬間移動のようにバカみたいに願望の力を使うか、アトミックフレアとかいう、そもそも使えない自爆技……。強力だが、リスクを伴う。しかも時間停止だと……まさに究極のチート中のチートではないか。
理解できないのは、そんなスキルをアイツは少なくとも短時間に3回は使っている。
「ああ。テメーが思ってる通り、すげぇ力を消耗するぜ。だがな、こいつは俺のオリジナルスキル、吸地精でカバーする事が出来るっ」
荒木の願望の力がギュウウウッ、と高まっていく。そう、この世界は《女神》シエラの願望の力で形成されている。
その願望の力を大地から吸い取っているのか。
「そいつは卑怯っスね……なんかこっちはポイント使わなきゃ必殺技使えないのに、CPUはバカスカ使ってくるゲーム思いだしたっス」
「まだ減らず口叩く余裕があんのかよ。気に入らねぇな」
荒木が離れた位置から拳を突き出す。
男の拳。巨大な拳の闘気の塊が飛んでくる。
剣を抜き、叩きつける。
闘気の塊が破裂。俺は吹き飛びながらスキル飛翔を発動。
──空中へ。ギュアアッ、と一気に上昇。時間停止といっても止められるのは一瞬だろうし、連続では使えないはず。俺の力も7割程度は回復している。遠距離からの攻撃で近づけさせない──。
ガクゥッ、と上昇が止まった。俺の意思とは関係なく。
これは……落ちているのか。スキルはまだ発動中なのに。
グングンと地上が迫ってくる。一体、なにが──。
衝撃、轟音──目の前が真っ暗になる。
高度からの急落下で地中に埋まったようだ。荒木の直接攻撃ではないのでダメージはないが……。
ボンッ、と地中から飛び出す。周りはクレーターのように大きく抉れていた。
「空を飛ぼうが逃げられねえぞ。今のは強重力でテメーを落とした。そんでまた喰らってみるかよ、時間停止を」
荒木の姿が消えた。
時間が止まり、その中で自由に動けるのはアイツだけ。アイツがどう動き、どんな攻撃するのかも見えない。
ドゴオオッッ、と爆発音。焦げながら落ちていくのは荒木だ。俺は空中に飛び出したままの状態。
ブスブスと煙を出しながら荒木は着地。だがよろめいている。それなりにダメージはあったようだ。
「テメェ……味な真似しやがって。調子に乗んじゃねーぞっ!」
そう。地中に埋まっている間にステータスウインドウで使えそうなスキルを調べ、発動させていた。
今のは浮遊機雷。自分の周囲に、触れれば爆発する魔法弾を多数浮かべていた。しかもステルス効果を付与している。
「クソがあっ!」
荒木はまた願望の力を大地から吸収しようとしている。だが──俺はさらに手を打っていた。
減速を解除。地中からドドドドドッ、と無数の雷光の矢が飛び出す。追尾の効果が付いたそれらは荒木の全身に突き刺さり、さらに電撃のダメージも与えた。
身体中から血と黒煙を噴き出しながら、荒木はなおもこちらに向かってくる。
「俺がっ、俺が勇者だっ! テメーじゃねえっ、テメーなんかがっ!」
「見苦しいっスね。まだ俺は本気を出してないっスよ」
剣を鞘に収める。そこから──スキル紫電一閃。鍔鳴りの音のあと、荒木の首がぼろりと落ちた。
これで勝負はついた。元の世界での知り合いだが、構わない。むしろスッキリした。
あとはシエラとイルネージュを正気に戻すだけだ。
俺は振り返り、城のほうを確認する。シトライゼが城の中を捜索しているはずだが……あのヨハンとかいう領主を倒したほうが早いかもしれない。
ドンッ、と背後から押された。
痛み……生温かいドロリとした血……俺のだ。これは俺の血……。俺の背中から胸を、荒木の拳が貫いている。
「油断しやがってぇ。俺は《死を乗り越えし者》だってのを忘れたのか。この程度……俺が味わってきた地獄に比べりゃあよ、たいしたことじゃねぇ」
たいしたことないって……首を落としたのに。間違いなく、確実に殺した。
身代わりや超再生のようなスキルを発動した形跡もない。
これは──マズイ。超再生で傷がふさがりつつあるが、大きなダメージのせいで時間がかかる。その間、荒木が見逃すはずがない。
「知らねー仲でもねーからよぉ、命だけは取らねぇつもりだったが……テメーはマジで俺を殺そうとした。その報いだぜ」
拳を引き抜いた荒木が動けない俺を見下ろしながら願望の力を高めている。
何か手を……手を打たないと、死ぬ。
俺はとっさに地面に手をつき、巨大な門をゴオッと出現させた──。
時間を稼ぎつつ、荒木の能力の謎を解かなければならない。
──が、荒木の姿が消えた。背後から衝撃。
蹴られた。鷹の目で確認出来なかったということは、単に超高速で移動しているわけではない。
瞬間移動か、もしくは──。
片手をつき、前転しながら振り返る。
荒木は短ランを脱ぎ、指をベキベキと鳴らす。
「気付いたか? 禁忌とかいう種類のスキルらしいぜ、この時間停止はよぉ。この辺りだけなのか、世界全体が止まってんのか知らねーけどよぉ」
禁忌のチートスキル……俺の瞬間移動のようにバカみたいに願望の力を使うか、アトミックフレアとかいう、そもそも使えない自爆技……。強力だが、リスクを伴う。しかも時間停止だと……まさに究極のチート中のチートではないか。
理解できないのは、そんなスキルをアイツは少なくとも短時間に3回は使っている。
「ああ。テメーが思ってる通り、すげぇ力を消耗するぜ。だがな、こいつは俺のオリジナルスキル、吸地精でカバーする事が出来るっ」
荒木の願望の力がギュウウウッ、と高まっていく。そう、この世界は《女神》シエラの願望の力で形成されている。
その願望の力を大地から吸い取っているのか。
「そいつは卑怯っスね……なんかこっちはポイント使わなきゃ必殺技使えないのに、CPUはバカスカ使ってくるゲーム思いだしたっス」
「まだ減らず口叩く余裕があんのかよ。気に入らねぇな」
荒木が離れた位置から拳を突き出す。
男の拳。巨大な拳の闘気の塊が飛んでくる。
剣を抜き、叩きつける。
闘気の塊が破裂。俺は吹き飛びながらスキル飛翔を発動。
──空中へ。ギュアアッ、と一気に上昇。時間停止といっても止められるのは一瞬だろうし、連続では使えないはず。俺の力も7割程度は回復している。遠距離からの攻撃で近づけさせない──。
ガクゥッ、と上昇が止まった。俺の意思とは関係なく。
これは……落ちているのか。スキルはまだ発動中なのに。
グングンと地上が迫ってくる。一体、なにが──。
衝撃、轟音──目の前が真っ暗になる。
高度からの急落下で地中に埋まったようだ。荒木の直接攻撃ではないのでダメージはないが……。
ボンッ、と地中から飛び出す。周りはクレーターのように大きく抉れていた。
「空を飛ぼうが逃げられねえぞ。今のは強重力でテメーを落とした。そんでまた喰らってみるかよ、時間停止を」
荒木の姿が消えた。
時間が止まり、その中で自由に動けるのはアイツだけ。アイツがどう動き、どんな攻撃するのかも見えない。
ドゴオオッッ、と爆発音。焦げながら落ちていくのは荒木だ。俺は空中に飛び出したままの状態。
ブスブスと煙を出しながら荒木は着地。だがよろめいている。それなりにダメージはあったようだ。
「テメェ……味な真似しやがって。調子に乗んじゃねーぞっ!」
そう。地中に埋まっている間にステータスウインドウで使えそうなスキルを調べ、発動させていた。
今のは浮遊機雷。自分の周囲に、触れれば爆発する魔法弾を多数浮かべていた。しかもステルス効果を付与している。
「クソがあっ!」
荒木はまた願望の力を大地から吸収しようとしている。だが──俺はさらに手を打っていた。
減速を解除。地中からドドドドドッ、と無数の雷光の矢が飛び出す。追尾の効果が付いたそれらは荒木の全身に突き刺さり、さらに電撃のダメージも与えた。
身体中から血と黒煙を噴き出しながら、荒木はなおもこちらに向かってくる。
「俺がっ、俺が勇者だっ! テメーじゃねえっ、テメーなんかがっ!」
「見苦しいっスね。まだ俺は本気を出してないっスよ」
剣を鞘に収める。そこから──スキル紫電一閃。鍔鳴りの音のあと、荒木の首がぼろりと落ちた。
これで勝負はついた。元の世界での知り合いだが、構わない。むしろスッキリした。
あとはシエラとイルネージュを正気に戻すだけだ。
俺は振り返り、城のほうを確認する。シトライゼが城の中を捜索しているはずだが……あのヨハンとかいう領主を倒したほうが早いかもしれない。
ドンッ、と背後から押された。
痛み……生温かいドロリとした血……俺のだ。これは俺の血……。俺の背中から胸を、荒木の拳が貫いている。
「油断しやがってぇ。俺は《死を乗り越えし者》だってのを忘れたのか。この程度……俺が味わってきた地獄に比べりゃあよ、たいしたことじゃねぇ」
たいしたことないって……首を落としたのに。間違いなく、確実に殺した。
身代わりや超再生のようなスキルを発動した形跡もない。
これは──マズイ。超再生で傷がふさがりつつあるが、大きなダメージのせいで時間がかかる。その間、荒木が見逃すはずがない。
「知らねー仲でもねーからよぉ、命だけは取らねぇつもりだったが……テメーはマジで俺を殺そうとした。その報いだぜ」
拳を引き抜いた荒木が動けない俺を見下ろしながら願望の力を高めている。
何か手を……手を打たないと、死ぬ。
俺はとっさに地面に手をつき、巨大な門をゴオッと出現させた──。
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