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28 交渉の結果
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エアハルト様との話を終え、アンスバッハ領へと戻る。
数日してお父様の葬儀についての日程や計画の記された文書が送られてきた。
費用に関してはほとんどがザールラント王家が出してくれるらしい。
本当にお世話になってばかりで、わたしは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
葬儀の当日もエアハルト様がわざわざ出席してくれた。
喪主として不慣れなわたしをあれこれとサポートしてくれる。
トーマスお兄様はまだみんなに正体を明かしていないので、傷の男の変装のままで従者のように付き添っている。
変装した顔ではどんな感情なのかわからないが、トーマスお兄様は棺が埋葬された後もしばらくそこから離れなかった。
無事にお父様の葬儀も終え、エアハルト様にお礼の挨拶をする。
夕食は一緒にと思ったのだが、話もそこそこに切り上げてエアハルト様は王都へと戻っていった。
少しさみしいな、と思っていたわたしにトーマスお兄様が話しかけてくる。
「今回の件で恩を着せるような態度を見せたくなかったのだろう。婚約は望んでいるが、無理強いは決してしない。それが殿下だ」
婚約の再申し込みについてはまだ誰にも話してないのに……。どこから情報を仕入れてきたんだ。
わたしが不審な目を向けると、トーマスお兄様はとぼけたように大きく伸びをする。
「さて、と。心配事のひとつは片付いたな。あとはフリッツのことか」
「フリッツのことまで。お兄様はどこまで知っているのですか」
「……なに、諜報活動を生業としていた癖だ。殿下はロストックへすでに使者を送っている。結果はまだ分からないが」
「交渉をすると言っていたけれど。今日はそんなことは話してくれませんでしたね」
「下手に期待を持たせてがっかりさせたくないのだろう。まだ着手したばかりだしな。こればかりは待つしかない」
「うまくいけばいいのだけれど」
「捕虜の交換という件で話を持っていっているはずだ。こちらにもロストックの兵を捕らえているからな。あちらがどう出るか」
捕虜……もし生きているなら、どこかに捕まっているのか。
場所さえ分かれば交渉なんて悠長なことしないで襲撃して奪還──なんて簡単にいくものじゃない。
焦ったってしょうがない。
フリッツの他にも捕まっている兵がいるはずだ。
わたしが軽率な行動を取ればその者たちにも危険が及ぶ。
「待つしかできないのか」
わたしはそう言って北方の空を睨んだ。
✳ ✳ ✳
それから二週間程過ぎた頃だった。
アンスバッハ城へ急使。王都からの使いだった。
内容は本日中にエアハルト様が訪問するとのこと。
どうやらロストックとの交渉になにか進展があったようだ。
急ぎとのことで詳しいことは会ってから話すようだ。
なんとも急な話で城の中は一気に慌ただしくなる。
「ヘレナ、お願い。着替えと化粧手伝って」
さっきまで鍛錬の途中で汗だくだし、顔も手も真っ黒だ。
こんなんでエアハルト様に会うわけにはいかない。わたしは半泣きでヘレナに頼む。
「その前に湯浴みです。着替えはわたしが用意しておきますので早く」
すでに湯を沸かしていたヘレナに急かされ、わたしは飛び込むようにバスタブへ。
それにしても急すぎる。
さっきの使いも移動中に出したのかもしれない。
わたわたしながら身体を洗っている途中だった。
部屋の外からトーマスお兄様の声。
「おい、殿下はもう近くまで来られているようだ。それと着飾る必要はないぞ。甲冑を用意しておけ」
甲冑って、なんで? せっかく殿下に会うのに。
まるで戦にでも行くみたい。でもここは指示に従うしかない。
「なんなんですか、この前からあの人。ずいぶん怖い顔の方ですけど、イルゼ様にも偉そうに」
ヘレナは傷の男の正体を知らないので口を尖らせて文句を言っている。
まあまあとそれをなだめ、わたしは指定された通りに甲冑を着込んだ。
準備を終え、部屋の外へ出るとさっそく兵のひとりが呼びに来た。
ほとんどの者が城門前でエアハルト様を出迎えているようだった。
わたしも急いで向かう。
城門前の人だかり。声をかけて道を開けてもらう。
ぱっと目に入ったのは先頭で馬に乗っているエアハルト様の姿。
エアハルト様自身は軽装だけど、引き連れている兵士たちは武装している。
その兵士たちの隊列の横には数十人の人間が手枷を付けられ、数珠つなぎになって歩いていた。
「ロストックの捕虜だ。すでに人質交換の話にまでこぎつけていたようだな」
トーマスお兄様がその光景を見て話しかけてくる。
ということは、ロストック側もアンスバッハやザールラントの捕虜を揃えて待っているというわけか。もしかしたらその中にフリッツも……。
エアハルト様は急いだ様子で下馬し、駆け寄ってくる。
「報告が後になって済まない。ロストック側から急に日時を指定されたのだ」
「殿下自ら捕虜を連れてこられるとは意外でした。それで、場所と日時は」
「ロストック国内のデッサウ砦。四日後の正午に捕虜の交換を行うとのことだ。しかし条件が」
「条件?」
「護送の兵は五十名のみ。それを率いる指揮官はひとり。そしてそれはイルゼ嬢。あなたを指名している」
「わたしを指名……」
わたしが生きて戻っていることはもうロストック側も知っているようだ。
そしてこの条件。これはどう考えても。
「罠だな。あからさますぎるが。それでも行くのだろう?」
トーマスお兄様がそう聞いてきたのでわたしは頷く。罠だろうがなんだろうが、フリッツが生きているのを確かめるにはこれしかないんだ。
「わたしが自らここへ来たのはそのことでだ。正直、あなたには行ってほしくない」
エアハルト様が深刻な顔で言った。
「急ぎの交渉でここまで捕虜は連れてはきたが、この一方的な内容なら断っても不誠実とはならないだろう。もっと時間をかけて慎重に話し合うべきだ」
「……わたしもそう思いますが、この機会を逃せば二度と交渉できない可能性もあります。それに時間をかければかけるほど捕虜の命も危うくなります」
「あなたは王太子妃となる人物だ。こんな危険を冒すべきではない。わたしのためにもここは一旦諦めてくれないか」
「………………」
「イルゼ嬢」
国の発展や防衛など関係なしにわたしのことを心配している。わたしを必要としている。
心が揺らぎそうになる。でも、やっぱりわたしは──。
「申し訳ありません、殿下。もうわたしの気持ちは決まっています。もしこの先、ロストックの罠によって死ぬことになってもわたしは後悔しないでしょう」
「……止められないか。いや、はじめからわたしの入り込める余地など無かったのかもしれないな」
エアハルト様は首を横に振り、それからトーマスお兄様の肩をポンと叩いた。
「後のことは任せる。どうかイルゼ嬢を守ってやってくれ」
「承知致しました。この命に代えても連れ帰りましょう」
「イルゼ嬢。わたしはここで待つ。なにかあった場合はこの城から兵を出すが、それだけは了承してくれないか」
「……はい。それはお任せします」
「ありがとう。無事に成功することを願っているよ」
こうしてエアハルト様を城に残し、わたしとトーマスお兄様はロストックへ向けて出発した。
本当ならエアハルト様が付いてきたかったのだろうけど、相手の条件に逆らったら捕虜がどうなるか分からない。
トーマスお兄様の場合は変装が得意なので兵に紛れていれば気付かれることはないだろう。
数日してお父様の葬儀についての日程や計画の記された文書が送られてきた。
費用に関してはほとんどがザールラント王家が出してくれるらしい。
本当にお世話になってばかりで、わたしは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
葬儀の当日もエアハルト様がわざわざ出席してくれた。
喪主として不慣れなわたしをあれこれとサポートしてくれる。
トーマスお兄様はまだみんなに正体を明かしていないので、傷の男の変装のままで従者のように付き添っている。
変装した顔ではどんな感情なのかわからないが、トーマスお兄様は棺が埋葬された後もしばらくそこから離れなかった。
無事にお父様の葬儀も終え、エアハルト様にお礼の挨拶をする。
夕食は一緒にと思ったのだが、話もそこそこに切り上げてエアハルト様は王都へと戻っていった。
少しさみしいな、と思っていたわたしにトーマスお兄様が話しかけてくる。
「今回の件で恩を着せるような態度を見せたくなかったのだろう。婚約は望んでいるが、無理強いは決してしない。それが殿下だ」
婚約の再申し込みについてはまだ誰にも話してないのに……。どこから情報を仕入れてきたんだ。
わたしが不審な目を向けると、トーマスお兄様はとぼけたように大きく伸びをする。
「さて、と。心配事のひとつは片付いたな。あとはフリッツのことか」
「フリッツのことまで。お兄様はどこまで知っているのですか」
「……なに、諜報活動を生業としていた癖だ。殿下はロストックへすでに使者を送っている。結果はまだ分からないが」
「交渉をすると言っていたけれど。今日はそんなことは話してくれませんでしたね」
「下手に期待を持たせてがっかりさせたくないのだろう。まだ着手したばかりだしな。こればかりは待つしかない」
「うまくいけばいいのだけれど」
「捕虜の交換という件で話を持っていっているはずだ。こちらにもロストックの兵を捕らえているからな。あちらがどう出るか」
捕虜……もし生きているなら、どこかに捕まっているのか。
場所さえ分かれば交渉なんて悠長なことしないで襲撃して奪還──なんて簡単にいくものじゃない。
焦ったってしょうがない。
フリッツの他にも捕まっている兵がいるはずだ。
わたしが軽率な行動を取ればその者たちにも危険が及ぶ。
「待つしかできないのか」
わたしはそう言って北方の空を睨んだ。
✳ ✳ ✳
それから二週間程過ぎた頃だった。
アンスバッハ城へ急使。王都からの使いだった。
内容は本日中にエアハルト様が訪問するとのこと。
どうやらロストックとの交渉になにか進展があったようだ。
急ぎとのことで詳しいことは会ってから話すようだ。
なんとも急な話で城の中は一気に慌ただしくなる。
「ヘレナ、お願い。着替えと化粧手伝って」
さっきまで鍛錬の途中で汗だくだし、顔も手も真っ黒だ。
こんなんでエアハルト様に会うわけにはいかない。わたしは半泣きでヘレナに頼む。
「その前に湯浴みです。着替えはわたしが用意しておきますので早く」
すでに湯を沸かしていたヘレナに急かされ、わたしは飛び込むようにバスタブへ。
それにしても急すぎる。
さっきの使いも移動中に出したのかもしれない。
わたわたしながら身体を洗っている途中だった。
部屋の外からトーマスお兄様の声。
「おい、殿下はもう近くまで来られているようだ。それと着飾る必要はないぞ。甲冑を用意しておけ」
甲冑って、なんで? せっかく殿下に会うのに。
まるで戦にでも行くみたい。でもここは指示に従うしかない。
「なんなんですか、この前からあの人。ずいぶん怖い顔の方ですけど、イルゼ様にも偉そうに」
ヘレナは傷の男の正体を知らないので口を尖らせて文句を言っている。
まあまあとそれをなだめ、わたしは指定された通りに甲冑を着込んだ。
準備を終え、部屋の外へ出るとさっそく兵のひとりが呼びに来た。
ほとんどの者が城門前でエアハルト様を出迎えているようだった。
わたしも急いで向かう。
城門前の人だかり。声をかけて道を開けてもらう。
ぱっと目に入ったのは先頭で馬に乗っているエアハルト様の姿。
エアハルト様自身は軽装だけど、引き連れている兵士たちは武装している。
その兵士たちの隊列の横には数十人の人間が手枷を付けられ、数珠つなぎになって歩いていた。
「ロストックの捕虜だ。すでに人質交換の話にまでこぎつけていたようだな」
トーマスお兄様がその光景を見て話しかけてくる。
ということは、ロストック側もアンスバッハやザールラントの捕虜を揃えて待っているというわけか。もしかしたらその中にフリッツも……。
エアハルト様は急いだ様子で下馬し、駆け寄ってくる。
「報告が後になって済まない。ロストック側から急に日時を指定されたのだ」
「殿下自ら捕虜を連れてこられるとは意外でした。それで、場所と日時は」
「ロストック国内のデッサウ砦。四日後の正午に捕虜の交換を行うとのことだ。しかし条件が」
「条件?」
「護送の兵は五十名のみ。それを率いる指揮官はひとり。そしてそれはイルゼ嬢。あなたを指名している」
「わたしを指名……」
わたしが生きて戻っていることはもうロストック側も知っているようだ。
そしてこの条件。これはどう考えても。
「罠だな。あからさますぎるが。それでも行くのだろう?」
トーマスお兄様がそう聞いてきたのでわたしは頷く。罠だろうがなんだろうが、フリッツが生きているのを確かめるにはこれしかないんだ。
「わたしが自らここへ来たのはそのことでだ。正直、あなたには行ってほしくない」
エアハルト様が深刻な顔で言った。
「急ぎの交渉でここまで捕虜は連れてはきたが、この一方的な内容なら断っても不誠実とはならないだろう。もっと時間をかけて慎重に話し合うべきだ」
「……わたしもそう思いますが、この機会を逃せば二度と交渉できない可能性もあります。それに時間をかければかけるほど捕虜の命も危うくなります」
「あなたは王太子妃となる人物だ。こんな危険を冒すべきではない。わたしのためにもここは一旦諦めてくれないか」
「………………」
「イルゼ嬢」
国の発展や防衛など関係なしにわたしのことを心配している。わたしを必要としている。
心が揺らぎそうになる。でも、やっぱりわたしは──。
「申し訳ありません、殿下。もうわたしの気持ちは決まっています。もしこの先、ロストックの罠によって死ぬことになってもわたしは後悔しないでしょう」
「……止められないか。いや、はじめからわたしの入り込める余地など無かったのかもしれないな」
エアハルト様は首を横に振り、それからトーマスお兄様の肩をポンと叩いた。
「後のことは任せる。どうかイルゼ嬢を守ってやってくれ」
「承知致しました。この命に代えても連れ帰りましょう」
「イルゼ嬢。わたしはここで待つ。なにかあった場合はこの城から兵を出すが、それだけは了承してくれないか」
「……はい。それはお任せします」
「ありがとう。無事に成功することを願っているよ」
こうしてエアハルト様を城に残し、わたしとトーマスお兄様はロストックへ向けて出発した。
本当ならエアハルト様が付いてきたかったのだろうけど、相手の条件に逆らったら捕虜がどうなるか分からない。
トーマスお兄様の場合は変装が得意なので兵に紛れていれば気付かれることはないだろう。
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