SRPG転生王女 〜お気に入りキャラの中から結婚相手を選びます~

みくもっち

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17 剣の稽古

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 持っている剣は練習用とかじゃなくて本物の剣だ。もちろんアグナーのほうも。
 稽古だからって万が一姫様にケガさせたらどうしようって思わないのかね、コイツは。

 アグナーは上半身裸のままで離れた位置から剣先をこちらに向ける。

「砦でやったときみてえな魔法の不意打ちもいいが、まずは基本だ。お前用に軽い剣選んだからよ。まずはそれを振ってみろ」

 わたしここに来て一回もわかりました、稽古しますなんて言ってないんだけど。強引なヤツだなあ。女の子の中にはグイグイ引っ張ってくれるようなのがタイプだって子もいるだろうけど。わたしはそういうの苦手。ちゃんとこっちの意思を尊重してほしい。

 とは思いつつ、アグナーが怖い顔して睨んでいるから仕方ない。わたしは剣を上段に構え、そこからえい、やあ、と振り下ろす。

「……あいかわらず構えはムチャクチャだな。その割には剣筋はなかなかいいから、わけがわかんねーな。やっぱ宮廷お抱えの剣士に習ったりしてたのか?」
 
 うぐぅ……そんな公式でも言ってないような設定、わたしに聞かないでくれ。わかるわけないだろ。
 わたしはハハハ、と笑ってごまかし、さらに剣をブンブンと振る。

「だから繰り返し基本的なことを練習すりゃ、実戦でもかなり使えるようになるだろーよ。おい、もっと腰を入れろ。足の位置もおかしいぞ」

 うわ、コイツわたしの腰やら足を触ってきたよ。
 わかった。コイツは稽古とかいってそれを口実にわたしの身体を触るのが目的だったんだ。見た目の硬派なイメージと違ってなんとスケベイなヤツ。

 まあこんな美少女を前にガマンできないというのも分からないでもない。でもわたし王女なんだよ。フツー、時代が時代なら斬首刑とかになっても不思議じゃないと思うけど。どうにもこの世界の価値観とか人物の距離感が分かんない。

「ちっとはマシになってきたな。おい。今度は実際に俺に打ち込んでみろ。遠慮しねーで本気で殺すつもりでこい」

 おやおや、そんなこと言っていいのかね。わたしまぐれとはいえキミに一回勝ってるんだよ? ムリヤリ稽古させられた恨みも重なってとんでもない一撃を見舞うかもしれないというのに。

「ふんぬぁ! こんちくしょっ!」

 わたしの正面からの打ち込み。アグナーは難なく剣で払いのける。
 
「このっ」

 わたしはムキになってそこからさらに打ち込む。けど一発もかすりもしない。
 
「殺すつもりでこいって言っただろ。実戦じゃ何が起きるか分からん。ナメてっとマジで死ぬぞ」

 今度は強く弾かれてわたしは剣を手放してしまった。手はシビれるし、軽いっていっても不慣れな剣を振り回してもうクタクタ。わたしは半べそかいてその場にへたり込む。

「なんだ、もう終わりか? もっと根性あると思ってたんだがな。その程度じゃあ王子サマや騎士サマに守ってもらうのがお似合いだな。これに懲りたらもう二度と前に出てくんじゃねーぞ」

 アグナーの言い方にわたしはムカッ腹が立ち、再び剣を取って立ち上がる。
 なに、その言い方? わたしだって頑張ってるのに。今までの戦いだって足手まといになってないし、それなりに活躍した場面もあったのに。 


 ✳ ✳ ✳


 気付けば小一時間もアグナー相手に打ち込みを続けていた。
 全身疲労でガタガタだ。手もマメだらけだし。アグナーのほうも額に汗をにじませている。

「やればできるじゃねえか。重心の動かし方もずいぶんとサマになってきたしな。どうだ、御付きの騎士なんかにゃ、こんなキツイ稽古つけてもらえねーだろ」

 汗だらけで破顔するアグナー。
 うーむ、そんな顔して言われたらなんも言い返せない。悪気はなさそうだし。本当にわたしの事を想って稽古つけてくれたのかも。

 アグナーは背を向け、鍛冶場のほうへ向かいながらボソボソ呟いた。

「まあ……剣の腕が上がろうと上がるまいと、いざって時は俺が守ってやるけどよ」

 んん? 今なんかわたしに好意的なセリフを吐いたように聞こえたけど。
 もう一度聞こうとしたけど、アグナーはわたしを無視するように剣を打ち始めた。
 ガラにもなく照れてんのかな。なんかちょっとカワイイとこあるじゃん。

 身体を引きずるようにして鍛冶場を出たわたし。
 まさかこんなところで身体を酷使するなんて思ってなかった。まだ街の中を見て回りたかったけど、もう宿に戻ってあとはゆっくり休もう……。

 職人たちの通りを抜けたところで、わたしはドンッ、と通行人にぶつかった。

 いや、これはわざとだ。

 こんなに道が広いのにわたしを狙って──エイナルからもらった杖を奪って走り去っていった。

 わたしは片手をついて倒れ込まないのがやっと。泥棒って叫んだけど、相手は路地を曲がって見えなくなった。

 周りにいた通行人も驚いていたけど、追いかけたりわたしに手を貸したりしない。気の毒そうな顔をして見ているだけだ。
 
 やられた。まさかひったくりにあうなんて。
 高級店の通りから目を付けられていたかもしれない。くっそ、ゲームでこんなイベントなかったのに。

 ヨタヨタと後を追いかけるけど、こんな状態じゃ追いつけっこないし、この広い街で犯人を見つけるなんてムリだ。ここはみんなに相談したほうがいい。
 宿のほうへ帰ろうとしたけど、チラッとエイナルの顔が思い浮かんだ。
 せっかくプレゼントした品がすぐ盗まれたなんて知ったら、悲しむんじゃないだろうか。わたしが油断していたせいもあるし。

 やっぱりここはわたしがなんとかしなくちゃ。
 悲鳴をあげる身体を叱咤し、なんとか駆け足で路地を曲がる。あの杖で早めに回復しとけばまともに動けたのに。今さら言っても遅いけど。

 犯人はフードを被っていたから顔は見えなかった。
 特徴的に盗賊シーフっぽかったけど。多分帝国にも所属してないフリーの盗賊だろう。

 杖の箱を持ったフードの人物が通らなかったかと辺りに聞きながら歩き回る。
 だけど街の住民は目を伏せて言葉を濁らせるばかり。なんだってんだ。絶対にここを通ったから見てるはずなのに。

「ムダだよ、姫様。聞いたって答える人はいないさ。ここらの盗賊団を仕切ってるギオルグに逆らうことになるからね」

 この声……上からだ。
 わたしが見上げると建物の屋根の上に少年。わたしの仲間のひとり、ヴィリだった。
 
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