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第2章 壊れていく世界
4 結とリッカ
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「おっしゃああっっ!」
リッカが魔族の群れに突っ込み、拳でブチのめしていく。
魔族どもは次々と弾丸みたいに吹っ飛んでいった。
そのたびに家屋が破壊されていくので葵は気が気ではない。
もしかしたら生き残った人間がいるかもしれないからだ。
「リッカ! あんまり派手にやりすぎるな! 生きてる人を巻き込むかもしれない!」
「あ~? ここらへんはもう呼びかけてみたろ? 大丈夫だって。生き残ってるヤツなんていねーよ」
リッカがガシャン、と右腕を前に突き出す。
葵が待てって、と止める間もなく右腕に付けている手甲状の装甲がゴバッと発射された。
鉄拳飛環烈迅砲だ。
射出された手甲は魔族10数体をこっぱみじんに吹っ飛ばし、さらに射線上にあった建造物を軒並み破壊。一瞬のうちに更地にしてしまった。
ガシィン、と戻ってきた手甲を装着し、リッカは高らかに笑い声をあげる。
「ぜんっぜん大したことねーなー、魔族ってよ。葵、もっと骨のあるヤツはいないのかよ。こんなんじゃ物足りねーな」
「いや、今日はここまでにしておこう。もうすぐ召喚時間が切れる頃だ。続きはまた明日にしよう」
葵がそう言うとリッカはしゃーねーな、と頭をかきながら一緒に学校のほうへ移動。
もうすぐ校門だというところで、ゾワゾワとうごめく魔族の群れに遭遇。だがこれまでと比べものにならないほどの数。100はいるかもしれない。
さらに先頭には見たことのない個体。
いままでの魔族は形状がグニグニしていて大きさも統一性がなかったが、そいつはくっきりとした人型の形。
赤い目玉と黒い身体は同じだが、その口からははっきりとした人語が発せられた。
「好き放題やりやがって、人間の分際でよォ~! オマエら一体ナニモンだぁ!? この世界の人間は俺らにキズひとつ入れられるはずがねーのによォ~ッ!」
その姿を見たシノが緊張した声を出す。
「気を付けてくだサイ。あれはB級魔族デス。いままでのC級と違い、人間程度の知能があって戦闘能力も高いデス。厄介なのは複数の魔族を従えて現れる指揮官のような役目を持っていることデス」
「へっ、上等だ。オレひとりで十分だぜ。下がってろよ、ふたりとも」
リッカが突っ込んでいく。
葵が止めようとしたが間に合わない。いくらリッカでもあの数はムリだ。
「くっ……アンカルネ・イストワール、発動」
葵は魔導書の力を解放。もうひとり戦姫を喚び出すほかない。いまの自分の力でできるか──。
魔導書の光の中から現れたのは、昨日喚び出した雛形結だ。
結は光の中ですでに刀を抜き、着地すると同時に鞘を捨て、魔族に向かって走り出した。
「助太刀致します」
結がリッカに追いつき、話しかける。
リッカはあからさまに不機嫌な顔でウゼエ、と吐き捨てた。
ガシャッ、と脚部装甲の足裏から車輪を出してローラーダッシュ。結を置き去りにしていった。
「ぬううううっっ!」
幻鋼強化駆動装甲高出力ダッシュからの拳の一撃。
爆走破壊弾丸拳。
密集していた魔族たちが連鎖的に破裂していく。この一発でほとんどの魔族を倒してしまった。
「す、すげえ……」
自分で創ったキャラながら、とんでもない強さだと葵は半ばあきれた。
これなら結を喚び出すまでもなかった。
残りの魔族は10体ほど。人型のB級魔族があわてふためき、逃げ出そうとしている。
「──逃がしません」
結がすでに回り込んでいた。
「な、なんっ、なんだっ! テメーらっ! 本当に人間なのか!? クソがあっ!」
B級魔族がヤケクソ気味に飛びかかる。
結が太刀を一閃──。B級魔族の首は落ちていた。
残りのC級数体は統率する者がいなくなり、戸惑っている。
結は太刀を逆手に持ち、地面に突き立てる。
柄につけている鈴がシャアンッ、と鳴り、光が円形状に広がってパパパパッと魔族たちは消滅していった。
「お見事です、葵サン。戦姫たちもですが、あなたの創造力……もうふたりも同時に喚び出せるなンテ。やはりわたしの見込みどおりデス」
シノが葵の横にピタリとくっつきながら言うと、リッカがローラーダッシュの勢いのまま戻ってきた。
突風と砂ぼこりを叩きつけられ、葵とシノは転倒した。リッカがワリィワリィ、とまったく反省していない様子で謝る。
「にしてもあっちいんだよな、このスーツ。なんか冷却装置とかうまいこと付けてくれよなー、葵」
リッカはぴちっとした全身スーツの胸元のジッパーをジイイイと下げ、近づいてきた。
小柄ながらに豊満な谷間。そんなものを突然見せつけられ、葵はうわわわとうろたえる。
「その見苦しいものをしまいなさい。リッカ・ステアボルト。あいかわらず歩く猥褻物なのは変わりませんね」
背後からリッカの首すじにピタリと太刀の刃を当てたのは結だ。
リッカは振り向きもせず、へへへと笑いだす。
「あ~? サービスシーンってやつだよ。ひがんでんのか、結。無理もねーか。お前はぺったん娘だもんな」
「!──よほど死にたいようですね」
「……死ぬのはテメーだっ!」
ボッ、と突然の裏拳。結の頭部がけし飛んだかに見えたが、結はかがんでかわしていた。
そこから立ち上がりざまの斬り上げ。リッカは腕の装甲で受け止める。
「なっ……やめろ! 味方同士だぞ! 聞いてるのか? うわっ」
葵が止めようとするが、太刀と拳がぶつかり合う衝撃波でうしろに転がってしまった。
その背を支えながらシノが言った。
「やはり……小説の内容どおりになってしまいましタネ。複数の戦姫を喚ぶときは注意が必要のようデス。ここにいると巻き込まれてしまいまスヨ」
葵はシノに引きずられ、校門の中へ。
結とリッカの戦いはさらに激しさを増す。
結の連続斬りをローラーダッシュの後退でかわしつつ、リッカは両腕を突き出す。
ドドンッ、と双鉄拳飛環烈迅砲が放たれた。
結は太刀で真っ向から受けたが、さすがにそのパワーの前に吹っ飛ばされる。
戻ってきた手甲を装着し、リッカは追撃をしかけようと接近。
結は吹っ飛ばされながらも空中で回転。近づいてきたリッカに向けて太刀を振り下ろした。
腕を交差して受けるリッカ。だがその威力に片ヒザをつく。
ゴッ、と地面が陥没し、衝撃波が結界内の葵たちのところまで届く。
シノと支え合うように踏ん張りながら葵は叫んだ。
「おいっ! 本当に殺し合うつもりかっ! 俺の言うことが聞けないのか!? お前たちを創ったのは俺なんだぞ!」
だが結とリッカは止まらない。ふたりの周囲の地形が変わっていくほどの戦い。
とても止められるものではない──。
葵がそう思ったとき、ふたりの身体が光を放ち出した。
「あれは……?」
結とリッカ。ふたりがまさに奥義を繰り出そうとした瞬間、二筋の光となって葵の本に吸い込まれていった。
「助かった……。時間切れか」
葵はその場に座り込む。
あのまま戦い続けていたらどちらかの戦姫を失っていたかもしれない。
シノの言うとおり、複数の戦姫を喚び出すときは注意が必要だと本を見つめながら思った。
リッカが魔族の群れに突っ込み、拳でブチのめしていく。
魔族どもは次々と弾丸みたいに吹っ飛んでいった。
そのたびに家屋が破壊されていくので葵は気が気ではない。
もしかしたら生き残った人間がいるかもしれないからだ。
「リッカ! あんまり派手にやりすぎるな! 生きてる人を巻き込むかもしれない!」
「あ~? ここらへんはもう呼びかけてみたろ? 大丈夫だって。生き残ってるヤツなんていねーよ」
リッカがガシャン、と右腕を前に突き出す。
葵が待てって、と止める間もなく右腕に付けている手甲状の装甲がゴバッと発射された。
鉄拳飛環烈迅砲だ。
射出された手甲は魔族10数体をこっぱみじんに吹っ飛ばし、さらに射線上にあった建造物を軒並み破壊。一瞬のうちに更地にしてしまった。
ガシィン、と戻ってきた手甲を装着し、リッカは高らかに笑い声をあげる。
「ぜんっぜん大したことねーなー、魔族ってよ。葵、もっと骨のあるヤツはいないのかよ。こんなんじゃ物足りねーな」
「いや、今日はここまでにしておこう。もうすぐ召喚時間が切れる頃だ。続きはまた明日にしよう」
葵がそう言うとリッカはしゃーねーな、と頭をかきながら一緒に学校のほうへ移動。
もうすぐ校門だというところで、ゾワゾワとうごめく魔族の群れに遭遇。だがこれまでと比べものにならないほどの数。100はいるかもしれない。
さらに先頭には見たことのない個体。
いままでの魔族は形状がグニグニしていて大きさも統一性がなかったが、そいつはくっきりとした人型の形。
赤い目玉と黒い身体は同じだが、その口からははっきりとした人語が発せられた。
「好き放題やりやがって、人間の分際でよォ~! オマエら一体ナニモンだぁ!? この世界の人間は俺らにキズひとつ入れられるはずがねーのによォ~ッ!」
その姿を見たシノが緊張した声を出す。
「気を付けてくだサイ。あれはB級魔族デス。いままでのC級と違い、人間程度の知能があって戦闘能力も高いデス。厄介なのは複数の魔族を従えて現れる指揮官のような役目を持っていることデス」
「へっ、上等だ。オレひとりで十分だぜ。下がってろよ、ふたりとも」
リッカが突っ込んでいく。
葵が止めようとしたが間に合わない。いくらリッカでもあの数はムリだ。
「くっ……アンカルネ・イストワール、発動」
葵は魔導書の力を解放。もうひとり戦姫を喚び出すほかない。いまの自分の力でできるか──。
魔導書の光の中から現れたのは、昨日喚び出した雛形結だ。
結は光の中ですでに刀を抜き、着地すると同時に鞘を捨て、魔族に向かって走り出した。
「助太刀致します」
結がリッカに追いつき、話しかける。
リッカはあからさまに不機嫌な顔でウゼエ、と吐き捨てた。
ガシャッ、と脚部装甲の足裏から車輪を出してローラーダッシュ。結を置き去りにしていった。
「ぬううううっっ!」
幻鋼強化駆動装甲高出力ダッシュからの拳の一撃。
爆走破壊弾丸拳。
密集していた魔族たちが連鎖的に破裂していく。この一発でほとんどの魔族を倒してしまった。
「す、すげえ……」
自分で創ったキャラながら、とんでもない強さだと葵は半ばあきれた。
これなら結を喚び出すまでもなかった。
残りの魔族は10体ほど。人型のB級魔族があわてふためき、逃げ出そうとしている。
「──逃がしません」
結がすでに回り込んでいた。
「な、なんっ、なんだっ! テメーらっ! 本当に人間なのか!? クソがあっ!」
B級魔族がヤケクソ気味に飛びかかる。
結が太刀を一閃──。B級魔族の首は落ちていた。
残りのC級数体は統率する者がいなくなり、戸惑っている。
結は太刀を逆手に持ち、地面に突き立てる。
柄につけている鈴がシャアンッ、と鳴り、光が円形状に広がってパパパパッと魔族たちは消滅していった。
「お見事です、葵サン。戦姫たちもですが、あなたの創造力……もうふたりも同時に喚び出せるなンテ。やはりわたしの見込みどおりデス」
シノが葵の横にピタリとくっつきながら言うと、リッカがローラーダッシュの勢いのまま戻ってきた。
突風と砂ぼこりを叩きつけられ、葵とシノは転倒した。リッカがワリィワリィ、とまったく反省していない様子で謝る。
「にしてもあっちいんだよな、このスーツ。なんか冷却装置とかうまいこと付けてくれよなー、葵」
リッカはぴちっとした全身スーツの胸元のジッパーをジイイイと下げ、近づいてきた。
小柄ながらに豊満な谷間。そんなものを突然見せつけられ、葵はうわわわとうろたえる。
「その見苦しいものをしまいなさい。リッカ・ステアボルト。あいかわらず歩く猥褻物なのは変わりませんね」
背後からリッカの首すじにピタリと太刀の刃を当てたのは結だ。
リッカは振り向きもせず、へへへと笑いだす。
「あ~? サービスシーンってやつだよ。ひがんでんのか、結。無理もねーか。お前はぺったん娘だもんな」
「!──よほど死にたいようですね」
「……死ぬのはテメーだっ!」
ボッ、と突然の裏拳。結の頭部がけし飛んだかに見えたが、結はかがんでかわしていた。
そこから立ち上がりざまの斬り上げ。リッカは腕の装甲で受け止める。
「なっ……やめろ! 味方同士だぞ! 聞いてるのか? うわっ」
葵が止めようとするが、太刀と拳がぶつかり合う衝撃波でうしろに転がってしまった。
その背を支えながらシノが言った。
「やはり……小説の内容どおりになってしまいましタネ。複数の戦姫を喚ぶときは注意が必要のようデス。ここにいると巻き込まれてしまいまスヨ」
葵はシノに引きずられ、校門の中へ。
結とリッカの戦いはさらに激しさを増す。
結の連続斬りをローラーダッシュの後退でかわしつつ、リッカは両腕を突き出す。
ドドンッ、と双鉄拳飛環烈迅砲が放たれた。
結は太刀で真っ向から受けたが、さすがにそのパワーの前に吹っ飛ばされる。
戻ってきた手甲を装着し、リッカは追撃をしかけようと接近。
結は吹っ飛ばされながらも空中で回転。近づいてきたリッカに向けて太刀を振り下ろした。
腕を交差して受けるリッカ。だがその威力に片ヒザをつく。
ゴッ、と地面が陥没し、衝撃波が結界内の葵たちのところまで届く。
シノと支え合うように踏ん張りながら葵は叫んだ。
「おいっ! 本当に殺し合うつもりかっ! 俺の言うことが聞けないのか!? お前たちを創ったのは俺なんだぞ!」
だが結とリッカは止まらない。ふたりの周囲の地形が変わっていくほどの戦い。
とても止められるものではない──。
葵がそう思ったとき、ふたりの身体が光を放ち出した。
「あれは……?」
結とリッカ。ふたりがまさに奥義を繰り出そうとした瞬間、二筋の光となって葵の本に吸い込まれていった。
「助かった……。時間切れか」
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