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第3章 奪還
4 防衛
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カエデがこのホテルに結界を張るまで他の戦姫で守らないといけない。
「でもそんな急には襲ってこないだろう。さっき魔族たちを倒したばかりだし」
葵はそう言ってロビーのソファーに腰かけようとしたが、シノが緊張した面持ちで外のほうを指さす。
「いえ……葵サン。どうやらのんびりとはしていられないようでスヨ」
ロビーから見える外。ビジネスホテルの正面玄関近くにはすでにC級魔族数体の姿が。
「くそ、早すぎる……! ここらの魔族は片付けたはずなのに。もう嗅ぎつけてきたのか」
「数体いるということはさらに増えまスヨ。葵サン、早く魔導書ヲ」
「わかってる! アンカルネ・イストワール、発動」
魔導書の表紙から放たれた光の中。飛び出したのは聖王女、マルグリット・ベルリオーズ。
ガシャン、とシスター服の下に着込んだ甲冑の音を響かせて着地するマルグリット。
「勇者様……この地での防衛を我に任せて頂けた名誉に応え、必ず勝利を捧げてみせる!」
十字聖槍マルグリットを構え、まだ小学生高学年ほどの少女が見上げながら笑う。
魔族が入口のドアを破る前にマルグリットは突進。
外に飛び出し、2体の魔族を串刺しにした。
槍をひねりながら旋回、周囲の魔族を巻き込みながら分断。
さらにC級魔族が集まってくる。
ぐっ、と溜めるように槍を引き、マルグリットは目を閉じる。
たちまち囲まれ、同時に間合いに。ここでマルグリットは目を開く。
ドドドドドッ、と全方位に向けて怒涛の刺突。
魔族の群れは同時に十字聖槍に貫かれ、紙屑のように引き裂かれて消滅した。
ブブブブンッ、と槍を回転させ、脇に抱えるマルグリット。
辺りは静寂に包まれる。押し寄せた魔族は全滅した……が、マルグリットの表情に油断は見られない。
「……その凶悪な殺気、隠しきれるものではない。我の前に姿を見せよ」
凛とした声で呼びかけると、右手の雑木林。急にザアアア、と木や植え込みが枯れて灰のように散っていく。
そこから現れたのは長身の痩せた男。
上半身裸でスキンヘッド。おびただしいタトゥーが入っており、爬虫類のような長いシッポを持っている。
「カンがいいなァ……。俺っちの擬態を見破るなんてよ。にしてもお嬢ちゃん、アンタ美味しそうだなァ」
ベロォ、と舌を出して男は不快な笑い声をあげた。
その姿を見たシノが慌てたように葵の袖をひっぱる。
「!……いけまセン、あれはS級魔族デス。しかも前に戦った幽体とは違う、実体を持った本物の……まさかこんな早く現れるなンテ」
袖をつかんでいるシノの手は震えていた。
葵はそれなら──と、さらに戦姫を喚び出そうと集中。だが急な身体の痺れと動悸。立っていられなくなり、その場に両手をつく。
「葵サンッ!?」
「くそっ、なんだ急に……身体が……」
「へへッ、ジャマァさせねえよ。俺っちの【凶眼】でちっとおとなしくしてな。まずはそこの可愛らしいお嬢ちゃんからだ」
男の両眼が妖しく光る。
敵の能力によって動きを封じられた葵。
マルグリットとシノは耐性があるのか平気なようだが、これでは新たな戦姫を喚ぶことができない。
「魔族にもう気付かれているようデス。戦姫を喚び出しているのが葵サンだということニ」
「どうにかしないと……マルグリットが……!」
マルグリットは穂先を男に向けながら静かに質問している。
「敵の将であるならばまず問おう、貴様の名を。我が聖槍に貫かれて物言えぬ身となる前に」
「ハァ~、俺っちはウルルペクってんだよ、お嬢ちゃん。まあそんな慌てんなよ。せっかくの楽しい時間だ」
「……ふざけるな。勇者様にかけた妖しげな術を解けっ!」
先にしかけたのはマルグリット。
ズシャアッ、と突進してからの突き。ウルルペクは軽々と跳躍してかわす──が、間髪いれず打ち下ろしの一撃。
うひょうっ、とおどけた声を出しながら白刃取りの要領で穂先を受け止める。かまわずマルグリットはぬん、とそのまま地面に叩きつけた。
「うげっ」
地面にめり込んだウルルペクは穂先を放す。すかさず心臓へむけての鋭い突き。だがそれは地を抉っただけだった。
消えたウルルペク。いつの間にかマルグリットの右側面に。そこから拳打の一撃。
かろうじて槍の柄で防ぎ、後退するマルグリット。
ウルルペクは嬉しそうに舌なめずりをする。
「ああ~、フォゼラムに聞いた通りだぜぇ。こいつはホント楽しめそうだ。俺っちたちS級は本来人は喰わねえんだけどよ。お嬢ちゃん、アンタは特別に頭からかじってやるぜ」
マルグリットは両手で槍を持ち直し、石突きを地面に打ちつける。
十字聖槍マルグリットの形状が変化。
刃が炎が波打つ形となり、柄にも炎をイメージした象嵌が浮き出る。
「やってみるがいい、不浄なる魔の存在よ。貴様の魂に救いはない。灰すら残さぬと知れ」
「でもそんな急には襲ってこないだろう。さっき魔族たちを倒したばかりだし」
葵はそう言ってロビーのソファーに腰かけようとしたが、シノが緊張した面持ちで外のほうを指さす。
「いえ……葵サン。どうやらのんびりとはしていられないようでスヨ」
ロビーから見える外。ビジネスホテルの正面玄関近くにはすでにC級魔族数体の姿が。
「くそ、早すぎる……! ここらの魔族は片付けたはずなのに。もう嗅ぎつけてきたのか」
「数体いるということはさらに増えまスヨ。葵サン、早く魔導書ヲ」
「わかってる! アンカルネ・イストワール、発動」
魔導書の表紙から放たれた光の中。飛び出したのは聖王女、マルグリット・ベルリオーズ。
ガシャン、とシスター服の下に着込んだ甲冑の音を響かせて着地するマルグリット。
「勇者様……この地での防衛を我に任せて頂けた名誉に応え、必ず勝利を捧げてみせる!」
十字聖槍マルグリットを構え、まだ小学生高学年ほどの少女が見上げながら笑う。
魔族が入口のドアを破る前にマルグリットは突進。
外に飛び出し、2体の魔族を串刺しにした。
槍をひねりながら旋回、周囲の魔族を巻き込みながら分断。
さらにC級魔族が集まってくる。
ぐっ、と溜めるように槍を引き、マルグリットは目を閉じる。
たちまち囲まれ、同時に間合いに。ここでマルグリットは目を開く。
ドドドドドッ、と全方位に向けて怒涛の刺突。
魔族の群れは同時に十字聖槍に貫かれ、紙屑のように引き裂かれて消滅した。
ブブブブンッ、と槍を回転させ、脇に抱えるマルグリット。
辺りは静寂に包まれる。押し寄せた魔族は全滅した……が、マルグリットの表情に油断は見られない。
「……その凶悪な殺気、隠しきれるものではない。我の前に姿を見せよ」
凛とした声で呼びかけると、右手の雑木林。急にザアアア、と木や植え込みが枯れて灰のように散っていく。
そこから現れたのは長身の痩せた男。
上半身裸でスキンヘッド。おびただしいタトゥーが入っており、爬虫類のような長いシッポを持っている。
「カンがいいなァ……。俺っちの擬態を見破るなんてよ。にしてもお嬢ちゃん、アンタ美味しそうだなァ」
ベロォ、と舌を出して男は不快な笑い声をあげた。
その姿を見たシノが慌てたように葵の袖をひっぱる。
「!……いけまセン、あれはS級魔族デス。しかも前に戦った幽体とは違う、実体を持った本物の……まさかこんな早く現れるなンテ」
袖をつかんでいるシノの手は震えていた。
葵はそれなら──と、さらに戦姫を喚び出そうと集中。だが急な身体の痺れと動悸。立っていられなくなり、その場に両手をつく。
「葵サンッ!?」
「くそっ、なんだ急に……身体が……」
「へへッ、ジャマァさせねえよ。俺っちの【凶眼】でちっとおとなしくしてな。まずはそこの可愛らしいお嬢ちゃんからだ」
男の両眼が妖しく光る。
敵の能力によって動きを封じられた葵。
マルグリットとシノは耐性があるのか平気なようだが、これでは新たな戦姫を喚ぶことができない。
「魔族にもう気付かれているようデス。戦姫を喚び出しているのが葵サンだということニ」
「どうにかしないと……マルグリットが……!」
マルグリットは穂先を男に向けながら静かに質問している。
「敵の将であるならばまず問おう、貴様の名を。我が聖槍に貫かれて物言えぬ身となる前に」
「ハァ~、俺っちはウルルペクってんだよ、お嬢ちゃん。まあそんな慌てんなよ。せっかくの楽しい時間だ」
「……ふざけるな。勇者様にかけた妖しげな術を解けっ!」
先にしかけたのはマルグリット。
ズシャアッ、と突進してからの突き。ウルルペクは軽々と跳躍してかわす──が、間髪いれず打ち下ろしの一撃。
うひょうっ、とおどけた声を出しながら白刃取りの要領で穂先を受け止める。かまわずマルグリットはぬん、とそのまま地面に叩きつけた。
「うげっ」
地面にめり込んだウルルペクは穂先を放す。すかさず心臓へむけての鋭い突き。だがそれは地を抉っただけだった。
消えたウルルペク。いつの間にかマルグリットの右側面に。そこから拳打の一撃。
かろうじて槍の柄で防ぎ、後退するマルグリット。
ウルルペクは嬉しそうに舌なめずりをする。
「ああ~、フォゼラムに聞いた通りだぜぇ。こいつはホント楽しめそうだ。俺っちたちS級は本来人は喰わねえんだけどよ。お嬢ちゃん、アンタは特別に頭からかじってやるぜ」
マルグリットは両手で槍を持ち直し、石突きを地面に打ちつける。
十字聖槍マルグリットの形状が変化。
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